見捨てられた俺と追放者を集める女神さま スキルの真価を見つけだし リベンジ果たして成りあがる 作:腰尾マモル
とはいえ戦い方は至ってシンプルだ。今いる戦力の中で精鋭は
地上進行組は朝からゆっくりと移動してシンバードを囲み、俺たち
本音を言えば優秀な戦力であるソル兵士長、トーマス、ゼロ、シルバー、ルドルフ、フィル、パープルズとも一緒に戦いたかった。だがトーマスは西へ休戦の報告に行って帰って来てはいないし、ゼロもフィルも西方の戦いに行ったきりで連絡がない。
ソル兵士長とシルバーとルドルフは恐らくストレングさん達と共に
だが、人質ならまだ助けられる望みはある、虚を突いて彼らを助けられれば、そのままこちらの戦力に加わってもらってアスタロトとの戦闘を優位に進められる可能性もある、頑張りたいところだ。
人質といえばザキールとブロネイルも拘束してソル兵士長達に預けたままだ。もし、ソル兵士長達が人質にされていれば必然的にザキールとブロネイルがアスタロトに渡ってしまう事になる……最悪の場合俺達はアスタロトとクローズとザキールとブロネイルの4人を相手にしなければいけないことになる。
最悪の可能性も想定しておこうと皆に伝えた後、俺達は更に話し合いを続けた。気が付けば外も夕焼けに染まっており、何とか話し合いを終える事ができた。
最後に全員の気勢を高めるべくシンが代表して声を掛ける。
「皆、明日はいよいよ決着の時だ。これまで敵側にどんな手を打たれようとも俺達は生き残り、帝国と手を取り合うところまで到達することが出来た。明日は散っていった者、死の山に残っている同胞たち、そして未来を生きる者たちの為にも絶対に勝利を掴み取ろう。そして、長きにわたる因縁に決着をつけ、本当の意味で大陸を1つにしよう。それでは……解散!」
休んでいる兵士達に気を遣い、俺達は無言で拳を掲げ、シンの言葉に応えた。もう、俺達が取るべき行動は全て決まった。あとは明日に向けて体を休めるだけだ。俺は仲間達に別れを告げると集会所内にあてがわれた部屋のベッドで休むことにした。
柔らかいベッドの上に寝転んだ俺はボーっと天井を眺めていた。日中の激闘も相まり、今ここで目を瞑ればすぐにでも眠れそうなぐらい疲れている。だから本当はさっさと休むべきなのだろう。
それでもすぐに目を瞑る事はできなかった。目を瞑り、明日になり、戦いが始まれば良くも悪くも俺達を取り巻く環境が大きく変わるはずだからだ。
因縁に決着をつけた後、どんな未来が待っているのか。アスタロト達を拘束できれば大陸はどうなっていくのか。勝った後の平和な世界について考えているにもかかわらず何故か不安な気持ちになってくる。
気が付けば俺は部屋を出て外を散歩していた。夜の冷えた空気で眠気が無くなっていくのを感じる。集会所から少しだけ東に移動したところにある診療所の前を通ると窓越しには怪我をした大勢の兵士達の姿があった。
本当はもう戦いを止めて休ませてやりたいところだが彼らは必死に怪我を治療し、痛む体を引きずりながら明日の戦いに挑もうとしてくれている。彼らは俺にとって本当に誇りだ。
今は少しでも怪我が良くなりますようにと祈りながら診療所前を通り過ぎようとしたところで診療所の2階の窓からサーシャが顔を出しているのが見えた。サーシャは俺を見つけるとすぐに階段を降りて外へ飛び出し、俺に話しかける。
「やった! ガラルド君が通りそうな気がして外を見ていたら本当に来てくれたよ。寝ていたら悪いかなと思って話しかけなかったんだけど、本当は少しだけ話したいことがあったの。良かったら少し話さない?」
「ああ、構わないぞ。それじゃあ集会所外の休憩スペースに行くか」
俺達は小さな丸机を挟んで対面で座ると早速サーシャが笑顔で語り掛けてきた。
「最後の戦いの前に言わせてほしいの。ガラルド君、今まで本当にありがとう!」
「な、なんだよ改まって。ちょっと照れくさいぞ……」
「だってガラルド君はサーシャがドラゴンニュートに殺されそうになっているところを駆けつけて助けてくれたり、いじめられているところを救ってくれたヒーローだから。コロシアムの優勝賞金を使ってジークフリートを助けてくれた事もあったよね。沢山の冒険にも連れて行ってくれて多くの真実と歴史を知ることもできたよ。それに今はアスタロトを倒す事でサーシャのお父さんとお母さんも救おうとしてくれているだもん、ヒーローとしか言いようがないよ!」
「そんな事を言ったら俺だって何度サーシャに助けられた事か。だからお礼なんていいさ、俺達に借りだとか上下だとかそんなものは無い。肩を並べてフォローし合う仲間なんだからさ」
「それでも……それでもサーシャはどうしてもお礼を言いたかったの! 明日はサーシャも大活躍するよ! 全てに決着をつけてガラルド君に最高の景色を見せてあげるから。明日はお互い頑張ろうね!」
俺はもっと話したかったけれどサーシャは頬を染めたまま診療所へ帰っていってしまった。比較的素直なサーシャでもやっぱりちょっと照れくさかったのだろう。運よく会う事ができてよかった。
俺は良い気分に浸りながら散歩を続けることにした。すると今度はドライアドの外から南入口に入ってくるグラッジの姿を見つけた。グラッジはこんな時間に何故ドライアドの外を歩いていたのだろうか? 気になった俺は早速グラッジに話しかける事にした。
「お疲れグラッジ! なんでこんな時間に町の外へ出ていたんだ?」
「あっ、ガラルドさん、散歩していたんですね。僕が外に出ていた理由ですが、実はリヴァイアサンに会いに行っていたんです。ここからなら海岸も近いですし」
「リヴァイアサンに? 明日は空から
「リヴァイアサンには明日全ての決着がつくことを教えておきたかったんです。仮に僕達が負けてしまった場合、その後はリヴァイアサンは元の生活に戻っていいよ、と伝えていたんです。僕が死ねば会話を出来る人がいなくなり、リヴァイアサンは待ち続ける事になっちゃいますからね」
「そんな負けた後のことなんて……いや、それを伝えておくのも大切か。グラッジらしい誠実な対応だな」
「単に自分の力に自信がないだけかもしれませんけどね。ところで話は変わりますが決戦前に少しだけ伝えたいことがあったのでお時間いただいてもいいですか?」
グラッジは少しソワソワした様子で尋ねてきたから俺は首を縦に振った。すると、グラッジは大きく深呼吸をして気分を落ち着かせると真っすぐに俺を見つめながら言った。
「ガラルドさん、これまで僕のことを沢山助けていただき、本当にありがとうございました。貴方がいたからイグノーラを……大陸南を救う事が出来ました。貴方がいなければ僕は死んでいたと思いますし、父グラハムも助けられず、エリーゼお婆ちゃんにも会えなかったと思います。お爺ちゃんの最期の手紙だって見つけられず、お爺ちゃんの技も僕の中で生き続ける事はなかったでしょう」
「それを言ったら大陸南に上陸した直後の俺達を暖かく迎えてくれたグラッジこそ恩人だと思ってるよ。これまでの軌跡は全てグラッジの強い意志と努力によって紡がれてきたものだ。だから俺は助けた訳じゃなくて横に並んでグラッジと一緒に頑張っただけさ」
「ガラルドさんならそう言うと思ってました。それでも僕は感謝を伝えておきたかったんです。僕の立場から見たらガラルドさんは叔父にあたる人物ですが、僕は心の中でガラルドさんの事を兄であり師匠的な存在でもあると思っています。そして憧れを抱くと同時に最高のライバルだとも思ってます。感謝だけでなく僕の認識も伝えておきたかったんです」
「最後の戦い前だからか? グラッジもサーシャと同じように照れくさいことを言ってくるなぁ……だが、そんな想いにも応えないとな。俺もグラッジの事を弟みたいに思ってるし、最高のライバルであり相棒だと思ってる。明日はお互いがお互いを守り合おう、頼りにしてるぜ」
「はい! よろしくお願いします!」
気が付けば俺とグラッジはどちらからともなく拳を突き合わせていた。恋人ですら関係性を再確認するのは気恥ずかしいものだから親友なんて尚更恥ずかしいものだが、今日だけは特別だ。
グラッジは合わせていた拳を離すと最後に気になる言葉を言い残す。
「この戦いが終わったら僕とサーシャさんからお誘いしたいことがあるんです。だから明日は必ず勝ちましょう。おやすみなさい!」
「お誘いしたいこと? えっ?」
俺は間抜けな声で聞き返したがグラッジは悪戯な笑みを浮かべたまま小走りで去っていってしまった。
今から追いかけてグラッジの休んでいる部屋まで聞きに行くのもカッコ悪いし、戦いに勝ちさえすれば後で聞けるはずだ。だから楽しみは取っておくことにしよう。
俺はもう少しだけ散歩を続ける事にした。グラッジ達と話してとっくに緊張と不安が減って楽になっていたけれど、何となくまだ他の仲間達と話せる気がするし話したいと思ってしまったからだ。