見捨てられた俺と追放者を集める女神さま スキルの真価を見つけだし リベンジ果たして成りあがる   作:腰尾マモル

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【第421話】ドライアドの夜 その2

 

 

 廃王園(はいおうえん)突入前夜――――気持ちが落ち着かず散歩を続けていた俺はたまたま遭遇したサーシャとグラッジと会話をすることでかなり気分が楽になっていた。2人と話を終えた俺は他の仲間達とも話しておきたい気持ちが湧き、あわよくば会えないだろうかと考えながら散歩を続ける事にした。

 

 俺はドライアドに初めてきた時の事を思い出しながら色々な場所を歩いていた。思えば最初の頃のドライアドはアーサー率いる帝国によって民が連れ去られて、もぬけの殻になっていた。草木もでたらめに生え散らかり、家屋も傷んで酷いものだった。

 

 その後はシンバードの人間が中心となり少しずつ復興を続け、第4部隊の兵士達と自治を分け合ったり、近くでシルバーとサーシャがレースをしたこともあった。歩いているだけで色々と思い出が蘇ってくる。

 

 帝国に連れて行かれた元ドライアド民もちょっとずつ今のドライアドに戻ってきはじめていて戦争前のドライアドは本当に賑わっていた。

 

 今は戦争の影響と最終決戦前という状況ゆえに静かな場所になっているが、明日俺達が勝利できれば賑やかな場所に戻すことが出来る、その瞬間が今から楽しみだ。

 

 俺の足は気が付けばドライアドを東西に分けた境界線付近……つまり、かつて俺とレックが試合をした武舞台に来ていた。あの戦いはレックを気遣って双纏(そうてん)状態こそ使わなかったものの緊張感のある良い試合だった。

 

 戦争みたいな戦いではなく模擬試合やコロシアムみたいな競技として戦いのみが存在する大陸を1日でも早く実現したいものだ。そんなこと考えていると後ろから誰かが俺の肩をつついてきた。

 

「よう、ガラルド。お前も眠れないのか?」

 

 声が聞こえて後ろを振り向くとレックが立っていた。レックは武舞台の上に腰かけると夜空を見上げながら自身の気持ちを語り始める。

 

「あの日、ここでガラルドと試合をした俺は思い返すのも恥ずかしくなるぐらい嫉妬心を拗らせていた。多くの修羅場をくぐり抜けてきた努力家のガラルドを相手に器の小さいお坊ちゃんの俺が勝てるはずなんかないのにな、ハハッ」

 

「……自嘲できるぐらいには過去の傷と向き合えているみたいだな。レックが本心を語ってくれている訳だし俺もあの頃の事を話すよ。レックには酷かもしれないが、実はあの模擬試合は手を抜いてたんだ。緋色の魔力をあまり使わないようにしてな」

 

「俺は模擬試合以降のガラルドの本気を何度か見てきた、だから手を抜かれていたことは勘付いていたさ。色々と気を遣ってくれていたんだろ? お前の器は本当に大きい。馬鹿な事をしでかしてきた俺が1番分かってるつもりだ」

 

 レックは高く評価してくれているが俺は言うほど立派な人間ではない。それどころか模擬試合の数日後にドライアドの川沿いでレックと会話した時はこれから頑張っていくと宣言するレックに対してキツイ言葉を返してしまった記憶がある。

 

 俺はその件を含めてレックに謝る事にした。

 

「俺は別に器が大きいわけじゃない。レックはドライアドの川沿いで話した時の事を覚えているか? 『自分の殻を破る事が出来た、ありがとう』と言ったレックに対し、俺は過去を水に流し切れず、虐められていた過去を掘り返してしまったことを」

 

「ああ、覚えているさ。確かあの時ガラルドはこう言っていたな『レックは俺がディアトイル出身という足枷を持っているから捨てたんだろ? いや、足枷というより嫌悪感に近いか、俺の素性を知った人間の多くは、害虫でも見るかのような目を俺に向けてくるからな』って。あの時の俺は咄嗟に否定したが、図星過ぎて自分で自分を殴りたくなったよ」

 

「あの時の俺はレックがパーティーメンバーのブルネとネイミーの事は大事にしているのに俺の事は大事にしてくれなかったのがずっと許せなかった。今思えば神託の森でレックが命懸けでネイミーを救おうとしたのも大事な姉だからっていうのもあるだろうが、根っ子の部分で自己犠牲も厭わない善人性もあったんだろうな。そして、今のレックは身分や出生国で差別するようなことは絶対にしない。最高に良い奴になったと思うよ。あの時はチクチク言い返してしまってすまない」

 

「あ、謝らないでくれ! 悪いのは圧倒的に俺なんだ! むしろガラルドは憎んでいる相手にすら慈悲の心を傾けてくれたし、手加減もしてくれた。モードレッド兄さん相手に『レックは優秀な戦士なんだ!』と説得してくれた事もあった。だからガラルドの優しさを俺は一生忘れない! これまでのこと全てに礼を言いたくて話しかけたんだ。今まで本当にありがとう、ガラルド」

 

 レックは慌てながらも熱のこもった礼をくれた。やらかしたことを思い出すのはお互い辛いところはあるけれど、それでも俺達が真の親友になる為に必要な過程なのだとしたら今晩の語らいも悪くないのかもしれない。

 

 レックは下げていた頭を元に戻すと、改まって咳払いをして明日の戦いについて語り出す。

 

「明日は人類の運命を決める大事な戦いだっていうのに楽しみな気持ちを抱いている自分がいる。全てをさらけ出した自分がガラルドの横に並んで戦えるからだ。だが、同時に不安もある。アスタロトに勝つことが出来ても俺の戦いは続いていくからだ……。バイオル兄さん、ミニオス兄さんとどう折り合いをつけていけばいいか分からないし、モードレッド兄さん亡き今、帝国がどうなっていくのかも分からない」

 

「レック……」

 

「それでも未来について悩めるなんて贅沢な話だよな。何度拾ってきたか分からない命だ。生き残ったら皇族だろうが施政者だろうが戦士だろうが精一杯生きて命を輝かせてみせるぞ。それに俺なりに考えている帝国のビジョンもあるしな」

 

「帝国のビジョン? それはなんだ?」

 

「そいつは生き残ってからのお楽しみだ。まぁ俺はアスタロトに勝った後、樹白竜(じゅはくりゅう)に殺されるかもしれないけどな、ハッハッハ!」

 

「ったく、笑い事じゃねぇぞ……」

 

 俺は肩をすくめつつもレックに釣られて笑っていた。グラッジと同じように最終決戦後のやりたいことを伏せられてしまったけど、また1つ楽しみが増えた。ひとしきり笑い合った後、最後にレックが剣先を俺の前に差し出した。

 

 行動の意味が分からなかった俺は「なんだこれは?」と尋ねるとレックは照れくさそうに答える。

 

「その……あれだ、他国では男同士が友情を確かめ合う時に拳を合わせたりするだろ? 帝国流では武器同士を合わせるんだよ、だから……」

 

 モジモジしたレックにここまで言わせたなら応えない訳にはいかないだろう。俺は棍を取り出してレックの剣に重ねると、別れの言葉をかける。

 

「明日はよろしく頼む。帝国のビジョンとやらを見ない内に死んじまったら、あの世でモヤモヤしちまうからな」

 

「ああ、必ず見せてやる、アスタロトを倒してな!」

 

 俺とレックは笑顔で頷き合い、その後は何も言わず、互いに背を向けて武舞台から去っていった。

 

 

 

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