見捨てられた俺と追放者を集める女神さま スキルの真価を見つけだし リベンジ果たして成りあがる   作:腰尾マモル

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【第424話】中央突撃

 

 

 樹白竜(じゅはくりゅう) ラボレの協力によって上空を高速で駆けていった俺達は振り落とされないように必死に耐えながらシンバードに到着する時を待っていた。

 

 馬なら数時間かかるシンバードへの道もラボレなら数十分で着く事だろう。とはいえ、これだけ高速飛行されれば先に体が疲れてしまいそうだ。俺が「もう少しだけ減速してくれ」と頼むとラボレは鼻で笑い、速度を半減させる。

 

 

――――久しぶりの飛行で加減を見誤ったようだな。それとも人間が脆いだけか? 元々樹白竜(じゅはくりゅう)は空中戦に長けたドラゴンだからな。以前の戦いでは洞窟の中だったこともあり不覚をとったが、空での戦いであれば――――

 

 

 何だかラボレが随分と饒舌だ。気持ちよく喋っているからとりあえず黙って聞いてあげる事にしよう。ラボレの語りを聞きながら空を駆けた俺達は各々、上空の景色を楽しんでいた。

 

 記憶の水晶による過去視で少しだけ空の旅を覗いたことはあるけれど、やっぱり自分の目で直に見る景色は別格だ。眼下に広がる広大なシンバード領に見惚れているとグラッジが寂しげな表情で呟いた。

 

「まさか、子供の頃の夢が叶うとは思いませんでした。ドラゴンに乗り、大空を翔るという夢が……。これが戦争の為の移動ではなく、冒険だったならどれほどよかったでしょうね」

 

 グラッジの言っている事は凄く共感できる。俺も空や海の冒険にはいつまでも子供じみた夢を抱いている。絵本の中のような冒険に憧れを抱きつつも一生味わう事は出来ないだろうと思っていた。けれど今は夢のような景色を見つめている。

 

 こんな局面で夢の1つが叶うなんて皮肉な話だ。だからだろうか……俺は新しい夢を皆に呼びかけていた。

 

「戦いが終わって全てが落ち着いたら、皆で今日みたいな景色を見つけに行こう。使命も責任も憎しみも無く、ただただ冒険心のみで眺める景色はきっと最高だからな」

 

 俺の言葉を受けて皆が頷きを返してくれた。アスタロトとの戦いが終わったらレックを殺すと言っていたラボレですら、空気を察して何も言ってはこなかった。

 

 グラッジは寂しげな表情を笑顔に切り替え、南の海を眺める。

 

「その時はリヴァイアサンにお願いして色々なところへ行きましょう。もしかしたら大空以上に凄い景色が海の中で見られるかもしれませんよ」

 

 より一層未来が楽しみになる話で盛り上がる中、突然ラボレの体が小刻みに震えだした。何かあったのか尋ねるとラボレは体だけではなく声まで奮わせて問いかける。

 

 

――――お前達の言うリヴァイアサンとは海神龍リヴァイアサンのことか? ――――

 

 

 ラボレの問いにグラッジが肯定するとラボレは小さな声でぼそりと呟く。

 

 

――――まさか、あの化け物とすら関りがあるとはな……。これは私も迂闊なことは出来ないな……――――

 

 

 もしかしてラボレはリヴァイアサンにビビっているのだろうか? 友達の親に怯える子供のような態度のラボレに困惑しているうちに俺達はシンバードの近くに到着していた。

 

 あと3分ほど飛べばシンバード王宮殿真上の空に着けるだろう。眼下に広がる大地にはシンバードを囲み、魔獣群と戦っている兵士達の姿も見える。みんな順調に頑張っているようだ。

 

 地上の兵士達が気を引いてくれているから後は俺達が空から中央へ攻め込むだけだ。鼓動が高まるのを感じながら王宮殿の方を見つめていると何やらバルコニーに人影が見える。

 

 あのバルコニーはかつてシンバードに来たばかりの俺とシンが披露会という名の戦闘試験をした場所だ。俺は双眼鏡を手に取りバルコニーを見つめる。そこには驚くことにクローズが立っていた。

 

 しかも、クローズは目が異常に良いのか遠くにいる俺に目を合わせ、笑顔で楽しそうにこちらへ手を振っている。ああいう飄々とした態度は過去視の時と変わらず腹立たしい。

 

 まさか、こんなに早く見つかってしまうとは思わなかった。クローズ達に対空攻撃の時間を与える前に一気に攻め込んでしまった方がいいだろう。俺は早速ラボレに指示を出す。

 

「最悪な事に早くもクローズに見つかった……ラボレ、急いで王宮殿に突っ込んでくれ。奴らに考える時間を与えたくない!」

 

 

――――うむ、仕方がない。振り落とされぬようにしっかりと掴まって……待てガラルド! 空に大量の魔獣が浮かんでいるぞ? ――――

 

 

 困惑した声をあげるラボレに釣られて再度、王宮殿の方を見つめると夥しい数の飛行型魔獣がこちらへ向かってきていた。

 

 まだ遠くにいるから全てを把握できているわけではないが有翼の目玉魔獣『アーリマン』 人型の石像に羽の生えた魔獣『ガーゴイル』 コウモリのような羽を持ち、大蛇のような尾を持つ竜族『ワイバーン』 どれもギルドなら高額の依頼書が発行される強敵ばかりだ。

 

 いくら樹白竜(じゅはくりゅう)と言えど何百匹、下手すれば千匹を超える飛行型魔獣の群れを突っ切るのは厳しいだろう。ここは一旦様子を見た方が良さそうだ。俺はラボレに指示を出す事にした。

 

「あの数はまずい、一旦中央への突入は見送りだ、止まってくれラボレ」

 

 

――――断る。空中戦のできる魔獣があれだけいれば陣形を整える時間を与えてしまう。私の飛行ならば長い距離さえあれば誰にも追いつけない加速が可能だ、このまま一気に突っ込み、お前らを王宮殿に降ろし次第、私はすぐにシンバードを離れよう。しっかり掴まっているのだな――――

 

 

「お、おい! ちょっと待ってく――――」

 

 ラボレは俺の制止を聞かずに全力で飛び出してしまった。距離的にシンバードの西門上空に着く辺りから息をするのも苦しいぐらいの加速が始まり、俺達は落とされないように必死にしがみつく。

 

 結果、ラボレの体は空中に浮かぶ飛行型魔獣を次々と弾き飛ばしながら瞬く間に中央の王宮殿へと近づいていき、クローズの立っているバルコニーの上空へと到着していた。

 

 空に浮かぶラボレの背から体を乗り出して真下を眺めると、クローズは目をかっぴらいてこちらを見ている。流石のクローズといえど、ここまで豪快に突破されるとは思っていなかったようだ。

 

 後はラボレから降りて王宮殿の中を進み、シンの案内で地下空間の廃王園(はいおうえん)に行くだけだ。とは言ってもクローズが邪魔してくる可能性はあるのだけれど。

 

 俺達はラボレに礼を伝え、背から飛び降りてバルコニーに着地する。するとクローズがわざとらしい拍手で俺達を出迎える。

 

「まさか、大型のドラゴンに乗って包囲網を突っ切ってくるとはね。私の人生経験でもこんな奇策は思いつかなかっただろうね、驚いたよ」

 

 嬉しそうに笑うクローズは正直癪にさわる。さっさと本題に入る事にしよう。

 

「御託はいい、早くアスタロトの元へ行かせてもらうぞ。お前は案内してくれるのか? それともここで邪魔してくるのか?」

 

「せっかちだね、ガラルド君は。少なくともバルコニーで戦う気はないよ。ここよりもっと戦いに相応しい場所が廃王園(はいおうえん)にあるからね。それに私が1人で君達と戦っても今は人間の体だから勝てないだろうしね」

 

「ほう、随分と弱気じゃないか。いや、正直と言ったほうがいいのか? 戦力比を口にしちまったら今ここで俺達に包囲されて倒されるかもしれないぜ?」

 

「フフフッ、私の心配より上空にいる君達のドラゴンを心配してあげた方がいいんじゃないかな? ほら、上を見てごらんよ」

 

 クローズの言葉に従い上を見てみるとラボレの周囲を大量の飛行型魔獣が囲んでいた。ラボレは俺達を降ろしたらすぐに離れると言っていたのに全くその場から動いていない。

 

 ラボレの体をよく見てみると身に纏う魔力がかなり弱弱しくなっている。この事実から推察するに恐らく超高速飛行は魔量消費が激しい移動だったのだ。それを承知でラボレは俺達を届ける為に無茶をしてくれたのだ。

 

 このままではラボレが危ない……だが、俺達が飛行型魔獣の相手をしていてはとてもじゃないが体力・魔量が持たずアスタロトとは戦えない。

 

 厳しい状況に唇を噛みしめる中、クローズが高笑いと共に俺達を煽りはじめる。

 

「さあ、どうする英雄ガラルド御一行? 消耗覚悟でドラゴンを守りにいくかい? それともアスタロト討伐の為にドラゴンを見捨てて廃王園(はいおうえん)に突入するかい?」

 

 

 

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