見捨てられた俺と追放者を集める女神さま スキルの真価を見つけだし リベンジ果たして成りあがる 作:腰尾マモル
「ハッハッハ! ガラルド君の成長は予想以上だ。右腕なんて折れてしまっているよ。やっぱり君の『もう1つの力』が作用しているようだね。これほどの力を見せられたら私も出し惜しみするわけにはいかない。2つ目のスキルを使わせてもらおう」
クローズは折れていない左手で体を支えて立ち上がると、俺に目線を合わせて『もう1つの力が作用して強くなっている』と訳の分からない事を言いだした。しかも、自身がもう1つスキルを所持していることも示唆している。
俺の『もう1つの力』が何のことを言っているのか知りたいところだが、戦闘中のクローズは意味深な事を言って動揺させてくることはあっても詳細を教えてくれはしないだろう。
それより今はクローズのスキルを先に知ることを優先しよう。俺は早速サーシャへ指示を送ることした。
「サーシャ! 今すぐ全知のモノクルをクローズに当ててスキルを解読してくれ! 解読が終わるまではサーシャに近づけさせないからよ」
「う、うん! 分かったよ!」
サーシャは懐から慌てて全知のモノクルを取り出すと光をクローズへ照射し、解読を始めた。一方、クローズはサーシャの持つ全知のモノクルを眺めて目を輝かせている。
「へぇ、面白そうな物を持っているね。光を当てた生物を分析するアーティファクトかな? 学者の私にはもってこいのアイテムだ、君達を殺した後に奪うとしよう。その為にもまずはスキル『シェディン』を使わせてもらわないとね」
初めて聞く単語を呟いたクローズは自身の体から青色の淡い光を放ち始めた。すると驚くことに奴の体に刻まれた傷が瞬く間に回復してしまった。それどころか、折れて腫れあがっていた右腕すらも治してしまい、左手で右腕を叩きながら治療が完了しているのか確かめている。
俺が必死の思いで与えたダメージが無に帰されてしまった……。奴のスキルは驚異的な治癒能力なのだろうか? 推測を続ける中、解読を終えたサーシャが声を震わせる。
「わ、分かったよクローズさんの後天スキル『シェディン』の詳細が! このスキルは脱皮という意味を内包していて使用すると傷や魔量を回復できるの。だけど、その代償に余命が削られる……ううん、肉体を加齢させるの……」
先天スキル
きっとクローズは
「私は研究を通して知識欲さえ満たせればいいと思っていた。だから、
クローズは楽しそうに過去を語っている。奴を止めるには回復力を上回る一瞬の高火力で葬るか、回復限界がくるまでダメージを与え続けるしかないのだろうか? 俺が頭を悩ませている一方で全知のモノクルを見つめ続けていたサーシャは説明を続ける。
「クローズさんの持つ2つのスキルについては分かったけど、魔力と魔量については分からなかったの。古代文字で書かれた数値が読めなかった訳じゃなくて、数値が数秒ごとに乱高下していて本当の数値が分からないの……。これじゃあモードレッドさんの時と同じだよ!」
数値が安定しない現象は一体何なのだろうか? 厄介なスキルと謎の現象で頭が痛くなっていたところへクローズが言葉を重ねる。
「ほほう、そのアイテムは魔力と魔量まで測る事ができるんだね、ますます手に入れたくなってきたよ。これは私の予想でしかないけど、恐らく『ある条件を満たした者』は魔力や魔量を数値化するのが難しくなるだろうね。あ、条件は勿論教えてあげないよ、精々悩むといいさ」
クローズの言い回しは相変わらず腹が立つ……。その後、サーシャはアスタロトとブロネイルにも全知のモノクルを照射したけれど知っていたスキル情報以上の事を知る事はできず、魔力と魔量も分からなかった。
クローズ達の魔力と魔量が分かれば、どの敵を誰が相手するかを決める指標になっただけに残念だ。とにかく今は1番手強いであろうアスタロトを後回しにして、クローズとブロネイルを各個撃破して数を減らし、残ったアスタロトを全員で叩くしかなさそうだ。
俺、リリス、サーシャ、グラッジ、レック、シン、全員が武器と拳を構えるとクローズとブロネイルも戦闘態勢に入った。相変わらずアスタロトだけは微動だにせず、余裕の表情を浮かべているが手を出してこないなら好都合だ。一気にクローズとブロネイルを片付けてやる。
俺は再びクローズに一撃を与えるべく、レッド・バレットを放った。しかし、クローズは回し蹴りでレッド・バレットを消滅させると冷たい目でこちらを睨み、低い声で言い放つ。
「流石に3発も同じ技を当てられるとは思わないことだね。君達は総力をあげて私の
言葉こそヒントを与えているような言い方だが、声色からは強い殺気が迸っている。さっきまでとは違い真剣さを感じるクローズは風の魔力を足裏に集中させ、爆風と共に飛び出した。
目にも止まらぬ高速移動で前衛にいる俺かグラッジに突撃してくる……と思って防御を構えた俺だったが、クローズは俺とグラッジの間を駆け抜けていき、一瞬でリリスの前に移動する。そのまま左手でリリスの肩を掴み、右の拳を振りかぶる。
「回復と瞬間移動持ちのリーファ君は厄介だ、真っ先にやらせてもらうよ」
冷たく言い捨てたクローズは圧縮された魔力を右拳に纏い、思いっきりリリスの腹へ振り抜く。
「がはっ!」
リリスは呻き声と共に大量の血を吐きだし、後ろへ大きく吹き飛んでしまった。後衛のリリスに重たい一撃はマズい……。頭の中が焦りと怒りで混濁した俺は気が付けば、レッド・ステップを発動し、クローズの顔を殴りとばしていた。
クローズはさっきと比べると真剣になったぶん動きのキレが増しているけれど、充分戦える相手だ。俺に殴られて歯が1本外れたクローズは口から血を垂らし、
「どうだいアスタロト? リーファを攻撃できない甘々な君の代わりに私が一撃で戦闘不能にしてあげたよ。これでリーファは動けないから瞬間移動で仲間を庇う事もなくなった。ゆえに君が再びリーファの腹を貫くようなアクシデントは起きないはずだ。ガラルド達を皆殺しにすると言ってもリーファだけは殺さないつもりなんだろう?」
「……ああ、その通りだ。リーファは私に光を与えてくれた恩人だからな。リーファだけは絶対に殺さない」
「だったら、そろそろ私とブロネイルを手伝ってくれてもいいかな? ガラルド君達は結構手強いから2人だと骨が折れるんだよね。まぁ、実際に骨を折られたわけだけど」
「……くだらない冗談はともかく、そろそろ私も加勢した方がいいだろうな。万全を期しておくべきだろう」
最悪なことにアスタロトが動き出してしまった。リリスが戦闘不能に追い込まれ、6人から5人になってしまった俺達に対し、向こうは2人から3人になり戦力増強だ……。
余裕の表情を浮かべるアスタロト達とは対照的に俺の手汗は止まらない。