見捨てられた俺と追放者を集める女神さま スキルの真価を見つけだし リベンジ果たして成りあがる   作:腰尾マモル

430 / 458
【第430話】例外

 

 

「ガラルド……お前はレストーレを当てることだけを考えて隙を見つけ出して刺せ。その隙は俺とフィル殿で作り出す」

 

 アスタロトに圧倒的な力の差を見せつけられた直後だというのに大胆な作戦を提案するレック。3人の一斉攻撃ですら難なく防がれたというのに2人になってしまえば、ますます手数も火力も減ってしまう事になる。

 

 それでもレックの言葉からは不思議と成功しそうな予感を覚える。フィルも同じ感想を抱いたらしく賛成の言葉を返す。

 

「面白いね、レック君の作戦に乗るよ。攻め方は左右から挟み撃ちにする感じでいいかな?」

 

「いや、フィル殿は俺の斜め後ろから遠距離攻撃で支援してほしい。遠距離だとアスタロトに魔術を撃たれるかもしれないが、俺のスキル『バニッシュ』で何とかしてみせる。バニッシュは消失力を上回る魔術を撃たれたら超過分を消し去る事はできない……だから正直頼み辛いが消し切れなかった分はフィル殿が耐えてくれ……」

 

「やれやれ骨が折れそうな仕事だね。でもやり遂げてみせるよ、それじゃあいくよ!」

 

 前衛後衛どちらにも負担の大きい作戦が始まった。レックは自身の握る剣に氷を宿してリーチを長くすると、突進の勢いを乗せて剣を振り下ろした。アスタロトはレックの長剣を杖で軽々と受けると離れた位置から植物の弓を構えているフィルに魔力を宿した左手を向ける。

 

「まずはフィル、お前からだ。吹き飛べ、ファイアーストーム!」

 

 なんとアスタロトは水属性魔術の素養を持っているのにも関わらず反対属性の火炎を宿した高温の突風を解き放った。

 

 この世界の魔術には『自身の持つ魔術属性と対になる属性は使えない』という絶対的なルールがある。アスタロトは過去視を見た限りだと確か水属性・風属性・闇属性を使っていたから、それぞれの対となる火属性・地属性・光属性は使えないはずだ……どういうことだろうか?

 

 対属性を扱える唯一の例外として思い当たるのはグラッジとグラドが使える属性武器を生み出すスキル虹の芸術(レインボーアーツ)ぐらいだが、そもそもあれは魔術ではなくスキルだし、武器の形状にしかできない制限もあるから話も違ってくる。

 

 俺が驚きの事実に困惑している間にファイアーストームはフィルを丸々飲み込もうとしていた。しかし、レックが片手を後ろに向けるとフィルの目の前に光り輝くバニッシュの波紋が飛び出し、アスタロトのファイアーストームを大きく減衰させる。

 

 少しだけかき消せなかったファイアーストームがフィルの体を襲ったものの、ほとんどノーダメージでフィルはピンピンしている。素早いレックのフォローを見たアスタロトは舌打ちをした後、バニッシュについて感想を語る。

 

「チッ、話には聞いていたが厄介なスキルだな。先にレックを潰しておいた方がよさそうだ。魔術ではなく私自らの手で叩きのめすとしよう。お前に個人的な恨みはないが覚悟するのだな、レック」

 

「厄介なスキルか、褒めてもらえて光栄だ。だが、俺から言わせれば相反する属性を扱える貴方の方がよっぽど厄介だがな。その特性は魔人化したことによって得られたものなのか?」

 

「魔人になったところで相反する属性は使えない。私が6属性を扱えるようになったのは合成の霧による副産物に過ぎない。合成の霧ほどイレギュラーを生み出すものはない。特にそこのガラクタは例外だらけだ、自分でも何となく気付いているだろうな」

 

 アスタロトは俺の方を向いて呟いている。ガラクタと言われるのは腹が立つが『例外』とはどういうことだろうか? 俺は6属性どころか火属性と地属性しかろくに使えない。ほんの少しだけ素養のある光属性にいたっては初級魔術すら発動できない不器用な人間だ。

 

 アスタロトの言っていることが気になるところだが、今はとにかくレストーレを当てる事だけを考えよう。アスタロトに対して一定距離を保ちながら戦い続けているレックとフィルを尻目に俺はレストーレを当てる隙を探し続けた。

 

 今のアスタロトはとにかくレックを潰す為に杖と拳による慣れない近接攻撃で戦っている。レックは的確にアスタロトの隙をついて攻撃を加えているが、アスタロトの体が頑丈過ぎてほとんどダメージが入っていない。

 

 一方、アスタロトの攻撃はレックの体に掠るだけでも大きな衝撃を与えている。既にレックの両腕はかなり痺れているようだ。

 

 とにかく俺が1秒でも早くレストーレを当てなければ……俺はアスタロトから見て右側を走り、牽制をかけることにした。右側を狙った理由はアスタロトは右目が見えないからだ。こんな弱点を突くような戦い方はしたくなかったが、大陸の未来が懸かっている今、甘い事は言っていられない。

 

 俺は拳に熱を纏い、中距離から連続で攻撃を放つ。

 

「数撃てば当たるだ! 喰らえ、レッド・バレット!」

 

 俺は極限まで集中していたのか、それともまた成長したのか、一瞬のうちに3発のレッド・バレットを放つことが出来た。レックの相手をしている今のアスタロトなら側面からレッド・バレットを命中させることが出来る……と思っていた俺だったがアスタロトは余裕の表情を浮かべる。

 

「甘い!」

 

 なんとアスタロトはレッド・バレットの直線軌道上に無詠唱で小さな氷塊を3つ浮かせたのだ。必要最低限のサイズで高密度の魔力を込めた氷塊はきっと高熱・高出力のレッド・バレットですら消してしまうだろう。

 

 きっとアスタロトも俺と同じくレッド・バレットが消えると確信していたはずだ……だが、レックだけは違った。レックは再び手のひらを向けると「バニッシュ」と呟き、消失のエネルギーで氷塊だけを削り取ってしまったのだ。

 

「なんだと!」

 

 虚を突かれたアスタロトが驚きの声をあげる。レッド・バレットは3つの氷塊が浮かんでいたポイントを高速で通過すると、勢いをそのままにアスタロトの顔と肩と腹に熱砂をめり込ませる。

 

「うぐああッ!」

 

 3発のレッド・バレットが完璧に命中した。レックの機転と繊細なスキルコントロールがアスタロトの予想を上回ったんだ! ダメージを受けてよろけたアスタロトは隙だらけだ。俺、レック、フィルの3人はまるで合図を送り合ったかのように走り出すと、一斉にアスタロトへ追撃を放った。

 

「グリーン・アロー!」

 

絶氷閃(ぜっひょうせん)!」

 

「レッド・テンペスト!」

 

 3つの高火力技がアスタロトへ集中し、凄まじい爆炎があがる。これほどのパワーが一点に集中する事は中々ないだろう。

 

 確かな手ごたえを感じたがは徐々に晴れていく煙を見つめていると中から全身に血を流しているアスタロトが現れた。かなり良い調子だ、例えレストーレを刺していないアスタロトでも高火力技を同時に当てればダメージを負わせることが出来るようだ。それが分かっただけで相当大きな収穫だ。

 

 アスタロトは口の中に溜まった血を勢いよく地面へ吐くとレックを強く睨み、杖の先を向けて呟く。

 

「まさかモードレッドの弟がここまで巧みにスキルを使いこなすとはな……。お前達3人の中で主軸になるのは1番火力のあるガラルドだと思っていた。だが、もっともバランスがとれていてスキルに汎用性があるレックこそが中心だと気付かされた。だから多少のリスクを払おうともお前から潰さないといけないようだな」

 

「褒めてもらえて光栄だな。だが、俺のバニッシュを前にしてどうやって潰すつもりだ? 近接攻撃のみに集中して殴りにきても俺は距離をとるし、ガラルドとフィル殿はお前を追いかけるぞ?」

 

「フッ、単純なことよ。バニッシュで減衰しきれない程に強力な魔術を撃ちこめばいいだけの話だ。その間、ガラルド達に攻撃されようとも耐えきるのみよ」

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。