見捨てられた俺と追放者を集める女神さま スキルの真価を見つけだし リベンジ果たして成りあがる 作:腰尾マモル
「ハハッ、どうやらアスタロトも随分と苦戦しているようだね」
離れた位置で戦っていたクローズとグラッジ達は俺が立っているバルコニーに合流すると、開口一番クローズが自虐を込めてアスタロトを煽っていた。そんなクローズを見たアスタロトもまた薄く笑みを浮かべて言葉を返す。
「フッ、人の事を言える立場か? クローズの方こそボロボロじゃないか。そっちはブロネイルも含めて2人いるんだ、楽ができるはずだろう?」
「それがそうもいかないのさ。サーシャ君が的確にシン君とグラッジ君をサポートしてきてね。サーシャ君を潰そうにもシン君が守って近づけないんだ。それにグラッジ君の
クローズが指差す方向を見てみると確かにブロネイルがうつ伏せで倒れている。その様子を見たアスタロトは肩をすくめ、呆れた表情で呟く。
「それで、そこまでボロボロになっているのか。言い訳をするなと言いたいところだが、老化具合を見る限り
アスタロトの言葉を聞き、改めてクローズの方を見てみると確かに顔が老化しているのが確認できる。元々、湖の洞窟で初めて会った時からクローズは20代後半にしか見えない若々しい見た目をしていた。
だが、クローズはゼロの父親であるワンの体を乗っ取っているから若く見積もっても肉体年齢は40歳ぐらいのはずだ。若さを保つために肉体へ何かを施していた可能性はあるだろう。
そんなクローズが今は年相応の40代半ばぐらいの見た目まで老け込んでしまっている。グラッジ達がクローズに相当なダメージを与えてスキル
このままクローズにダメージを与え続けて、戦いを続けるのが不可能なレベルまで
クローズは少し渋みの増した顔で肩をすくめると甘えるような声で提案をもちかける。
「助けを求めたんじゃなくて協力しにきたと言ってほしいなぁ。アスタロトだって毒を喰らって苦しい状態だろう? ここは互いに協力し合って彼らを倒そうじゃないか」
「……私が毒を受けたのを知っているという事は……またコウモリを忍ばせていたのか?」
やや不機嫌な表情を浮かべたアスタロトが何やら聞き慣れない『コウモリ』という単語を呟いた。するとバルコニーに置いてある植木鉢の裏から突然、見覚えのあるコウモリが飛び出してクローズの肩へと止まる。
あのコウモリは確かアスタロトが湖の洞窟に侵入してきた時に肩に乗せていたコウモリだ。あのコウモリはアスタロトが洞窟内部を探る為に扱っているものだと思っていたが、まさかクローズのものだったとは……。どうりで洞窟へ突っ込んできたアスタロトが暴走した際に直ぐ駆けつけることができた訳だ。
100日以上経ってから知る事になった新情報に困惑する中、クローズはバツが悪そうに頭を掻いていた。
「ごめんごめん、盗み聞きみたいになってしまったけど、それはアスタロトの事を心配してのことだからさ、許しておくれよ。代わりと言っちゃなんだけど、私からとっておきの情報を教えてあげよう。きっとアスタロトだけじゃなくてガラルド君も知りたい情報のはずだ、何故ならガラルド君の強さの秘密についての情報だからね」
なにやらクローズがとんでもないことを言い始めた。確かに気になる情報ではあるけれど、ここで話を始めるのは何か狙いがあるのではないだろうか? もしかしたらアスタロトの毒を時間経過で回復させようとしているのかもしれない。
ここはすぐに攻めた方がよさそうだ。俺はすぐに拳を前に構えたが横に来ていたリリスが俺の肩を掴み、首を横に振って小声で呟く。
「待ってくださいガラルドさん。ここは時間をかけてじっくりと話を聞きましょう」
「いいのか? 話をしているうちにアスタロトの毒が回復していくかもしれないぞ?」
「私達の持ち込んだ毒は長時間作用するはずです。
確かにリリスの言う通りだ。各人の回復力とレック達の戦線復帰を狙うなら、ここは会話を続けて時間を稼ぐべきだ。
サーシャといいリリスといい、俺の周りにはキレ者が多くて助けられるばかりだ。俺はグラッジ達の目を見て頷き、話を聞く意思を伝えてクローズに話を続けるよう促すと、早速クローズは話を始める。
「それじゃあ、まずは私がガラルド君の強さの秘密に気付いたタイミングから話そうか。私が気付いたのはドライアドでガラルド君の攻撃を受けた時だ。あの時に肌で触れた魔力で確信したよ、この魔力は複雑すぎるぐらい複雑なもので“混ざりきっている”とね」
クローズの言っている事がさっぱり分からない……。リリス達も俺と同じく判然としない表情を浮かべているが、アスタロトだけは何かに気付いたのかハッとした顔をしていた。
俺が言葉の真意を尋ねるとクローズは更に話を続ける。
「ガラルド君の体には君自身が持つ魔力と緋色の魔力があることは知っているよね? シルフィさんの細胞を少なからず引き継いでいるのだから何ら不思議ではない。だけど、ガラルド君の攻撃からは2種の魔力以外の存在も確認できたのさ」
「何だ、その魔力っていうのは?」
「正直私が聞きたいぐらいだよ、と言うのも色々な人種や魔獣の魔力、しまいには植物や動物の魔力すら感じるほどにガラルド君の魔力は複雑なんだ。ハッキリ言って意味が分からない。だけど、ここで思考を停止したら学者失格だ。だから私は必死に考えて1つの結論に至った。それはガラルド君の複雑な魔力は
「ちょ、ちょっと待て! なんでクローズが
俺が否定の言葉を発するとクローズは横を向くとバルコニーの床の亀裂に生えている枯れかけの草に硬貨ほどの大きさの光る魔力を飛ばして付着させた。すると、枯れかけていた草は少しだけ緑色を濃くし、葉に艶を取り戻して元気になりはじめた。
草を見つめて指をさしたクローズは更に
「植物1つ育てるのにも『光、水、栄養』色々なものが必要だけど、そこの草は私が放った小さな魔力だけで元の状態に回復しただろう? この事から分かるように魔力という存在はとても多くの情報・要素を含んでいる」
「……それが、俺の
「……君はアスタロトの子供でもあるのに頭が悪いなぁ。端的に言えば
「赤子の俺の体を散々いじくっていた事実は『記憶の水晶』で知っている。だが、お前らは魔人や人間の細胞だけじゃなく、魔獣や植物の細胞まで合成の霧で取り込ませやがったのか? まさかザキールやフィルにも同じことをしてないだろうな?」
「私達は合成に必要となる一部の薬や植物を除けば『人間と魔人以外の細胞』は取り込ませていないよ。それにフィルとザキールはガラルド君と違って土台が優秀だったから多くの細胞を取り込ませる必要がなかった。この事からガラルド君は特異体質と言ってもいいだろう。だから私はガラルド君の成長について更なる仮説を立てる事にした」
「仰々しい説明が好きな奴だな。ここまできたら最後まで付き合ってやるよ。言ってみろよ、その仮説とやらを」
「私が立てた仮説……いや、理論と言った方がいいかな。今からヒュドラ理論と名乗る事にしよう。ガラルド君の体にはそのヒュドラ理論が適応されているのさ!」