見捨てられた俺と追放者を集める女神さま スキルの真価を見つけだし リベンジ果たして成りあがる   作:腰尾マモル

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【第446話】最後の一対一

 

 

「ネメシスと同化し、クローズの命まで吸った我が身だ。何がなんでもお前達に勝ってみせる」

 

 半透明になったネメシスを鎧のように纏ったディザールは宣言と同時に左手を天に掲げた。すると、ディザールの手にネメシスが持っていた剣が縮小した状態で出現し、凄まじい魔力を纏い始めた。

 

 サイズこそ小さいもののネメシスが巨剣を薙ぎ払った時よりも強い魔力を感じる。あの攻撃を受けたら今度こそパーティーは全滅してしまうかもしれない。

 

 俺達はどんな攻撃がきてもいいよう緊張感を高めて身構えた。ディザールは剣先を天に向けるとネメシスが振るった巨剣とは違うオーラ状の巨剣を作り出し、カッと目を見開いて叫びと共にオーラの巨剣を振り下ろす。

 

「まとめて葬り去るッ! ディストラクションッ!」

 

 

 何かに例えようのない凶悪なエネルギーを纏った巨剣が避ける余裕も無く俺達に振り下ろされる――――

 

 

 

 

 

 

 今、一体何が起こったのだろうか? 俺の視界には巨剣がこちらに向かって動き出しすところまでは見えたけれど、それ以降の記憶がない。

 

 一瞬と表現するのも長く感じるほど短い時間に強烈な痛みが襲ってきたような気がするけれど、何故か今の俺は目も開けられなければ声も出せないし音も聞こえない。

 

 俺は死んだのか? と不安な気持ちが頭をよぎる。あの世なら散っていた人達と会えてもおかしくないし、せめて視界や聴覚ぐらいはあってもいいんじゃないか? ネガティブなのに少し冷静な自分自身が笑えてくる。

 

 光も音も存在しないのはもしかして俺があの世に行ったわけではなく、今まさに生を閉じようとしているからではないだろうか?

 

 だとしたら、このまま終わる訳にはいかない。俺は今まで関わってきた者達の力と想いを背負っている。負けるにしても俺の全部を出し切らないと納得できるはずがない。

 

 俺は自分の内側にある多くの細胞とエネルギーに向かい合い、体の中心に力を入れて魔力を込める。すると心臓の辺りからだんだん体が暖かくなって少しずつ目に光が宿り、周囲の音も聞こえるようになってきた。

 

 指先から順に体も動くようになり、何百日も寝ていた人間のようにゆっくりと起き上がって目を完全に開いてみると俺の周囲が大きなクレーターとなっていた。クレーターの外では魔力を大きく減少させたディザールが立っている。

 

 ディザールの顔を見た瞬間、俺は仲間達が無事なのかと心配になり、慌てて足元を確認した。するとグラッジ、フィル、レックの3人が血を流して倒れていた。だが、不幸中の幸いか戦える状態ではないものの、命に別状はなさそうだ。

 

 更にグラッジ達の周りには折れた剣や植物も散らばっており、俺が発動したであろう熱砂も散らばっている。どうやら俺達4人は高速で振り下ろされた巨剣に対し、反射的に防御技を発動していたみたいだ。

 

 きっと3人が頑張ってくれたから俺は起き上がる事ができたのだろう。俺は多くの仲間達に守られ、支援され、今この場所に立てている。

 

 俺はもうボロボロだが、クレーターの外で立っているディザールもボロボロだ。きっと後数分もすればどちらも立てなくなるはずだ。残った俺とディザールの1対1、これが本当に最後の戦いになるだろう。

 

 俺は痛いのか重いのかも分からない体を1歩1歩前に進め、ディザールの前に立った。近くで見るディザールはとうとう半透明の同化ネメシスをまともに形状維持することすら出来なくなっていて、ネメシスは左腕しか残っていない。

 

 一方、俺も感知の型を維持するのが難しく、辛うじてレッド・モードを保てるかどうかといった具合だ。俺とディザールは互いのボロボロ具合を笑い合う。

 

「フフッ、僕はまだネメシスを残しているぞ……それに比べてガラルドはどうした? ハァハァ……膝が震えているじゃないか」

 

「左腕しか残っていないのに偉そうにしてんじゃねぇよ。俺は空元気すら出せないが、ここが最後の正念場だ。クソ親父は俺が1人で倒し切ってやるよ」

 

 そこから俺とディザールによる1対1の戦いが始まった。ディザールは魔術で作り出した氷の剣とネメシスに持たせた剣の二刀流で斬りかかり、魔術師としての戦いを完全に捨ててネメシスとの同化を活かした戦闘スタイルで挑んできた。

 

 あまり近接戦慣れしていないディザールでもネメシスの動きを取り入れているせいか、隙が少なく俺は攻めあぐねていた。だが、ディザールが繰り出す2本の剣はどちらも威力は大きく減衰しており、レッド・モードでしっかりと防御すれば体に直接剣撃を受けても耐えられる程度の威力だ。

 

 俺がディザールの顎に拳撃を放ち、ディザールは俺の横腹に剣撃を当て、剣を掴んだ俺がディザールを地面に叩きつけ、投げられたディザールが残った剣で俺の膝を斬りつける。一瞬も気の抜けない一進一退の攻防が続く。

 

 頭から流れてきた血が俺の右目に入り、視界も悪くなってきたその時、俺の硬直を見逃さなかったディザールが側面に回り込み、俺の右腹を剣で斬りつける。

 

「ぐああっ! やりやがったな! お返しだ!」

 

 俺は気合と筋肉で止めたディザールの剣を右手で掴むと、そのまま体を捩じり、左拳を放つ。しかし、大振り且つ正面から軌道を見切ったディザールは難なく拳撃を躱して懐に侵入する。そのまま俺の左斜め後ろに移動し、両腕を俺の首に絡めて締め上げてきた。

 

「うぐぐぅうぁぁっっ!」

 

 声にならない声をあげる俺。対してディザールは荒々しい息切れと共に勝ちを宣言する。

 

「ハァハァ……どうだ! 泥臭いガキの喧嘩じみた最後になったが、お前は首を締められて終わりだッ! このまま地獄の苦しみを味わいながらグラドの元へ逝くのだな!」

 

 意識が少しずつ薄まっていく……。この状況を切り抜ける手を考えなければならない……はずなのに何故か俺はディザールの言動について考えていた。

 

 廃王園(はいおうえん)で戦い始めた時のディザールはもっと余裕のある態度で敵ながら完成された戦闘スタイルを確立していたと思う。しかし、今のディザールは本人が言うようにかなり泥臭い戦い方になっている。

 

 魔量が少なくなり、クローズもネメシスもいなくなったことでなりふり構えなくなったのは理解しているが、それにしたって奴らしくない……。いや、もしかしたら今のディザールが本来のディザールなのかもしれない。

 

 仮面を被り、アスタロトと名乗り、悲劇によって悪へ堕ちることで奴は変わらざるを得なかった。だが、本来ディザールはリーファと初めて会った時の頃のように不器用で不愛想で素直じゃないけれど、根っこの部分は優しくて子供っぽい奴なのだろう。

 

 そんなことを考えていたら尚の事、本当のディザールを引き出して思いっ切り喧嘩をしたいし、させてやりたい。大陸人類の未来が懸っている状況ですら俺の頭の中はスケールの小さい事ばかり考えている。

 

 だが、スケールが大きかろうが小さかろうが今はとにかく窮地を切り抜けなければいけない。首を絞められ、あまり口を大きく開けられない状況の中、何とか首を少しだけ前に傾けた俺は前歯で思いっきりディザールの腕を噛んでやった。その瞬間、ディザールは首を絞めていた両腕を緩め、体を捩じって両腕から抜け出した俺は思いっきりディザールの腹を殴りつける。

 

「うぐっっ! ガラルド……貴様ッ!」

 

 ディザールは呻き声をあげると腕の噛まれた跡と腹を抑えながら涙目で俺を睨んでいる。こんな表情を浮かべるディザールは初めてで正直気分が良い。俺は右手の握りこぶしを広げた左手に撃ち込んで乾いた音を立て、掛かってこいとディザールを煽る。

 

「首絞めは有効な手段だが、喧嘩っていうのは何でもありの戦いだ。噛まれることぐらいは想定しておかないとな。ほら、掛かって来いよ。魔人になって胡坐をかいていたお前に喧嘩のやり方を教えてやるよ」

 

 

 

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