見捨てられた俺と追放者を集める女神さま スキルの真価を見つけだし リベンジ果たして成りあがる   作:腰尾マモル

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【第451話】勝利の宴

 

 

 遂にディザールとクローズを倒した俺達は拘束されているストレングさんやソル兵士長達を解放することができた。クタクタになった体を引きずりながら、廃王園(はいおうえん)から繋がるシンバード王宮殿1階書庫の隠し扉を目指して歩いていた。

 

 廃王園(はいおうえん)に突入する時はディザールが王宮殿の中庭に開けた大穴から滑ってきたけれど傾斜がきついし、本来ならシンが用意した書庫を経由するルートを通るのがセオリーだから、そちらを通ることに決まった。

 

 激戦の後ゆえに全員の足取りが重く、地上に出るだけで1時間以上かかり、ようやく陽の光が拝めると思ったら外は夕方になろうとしていた。書庫の窓から見る外は戦闘による煙も上がっていないし、戦闘の音も聞こえてこない。

 

 とはいえ書庫のある位置が他の建物に囲まれていてよく見えないだけかもしれないから、王宮殿の入り口から外へ出るまでは安心できそうにない。俺達は廊下を歩いていき、ゆっくりと正面扉を開けると俺達の視界には戦闘を終えて勝どきをあげる兵士達の姿があった。

 

 

 

――――魔獣達が次々と退いていくぞ! 我々は勝ったんだ! ――――

 

――――ガラルド様が、皆さんが、アスタロトを倒してくれたんだ! ――――

 

――――ワアアアアァァァァァ! ――――

 

 

 

 毛穴にまで響きそうな大歓声がシンバード中に響いている。どうやらディザールが亡くなったことで徐々に死の扇動(クーレオン)の効果が収まり、魔獣達が制御を失って四方へ散ったようだ。

 

 改めて戦いが終わったのだなと目頭が熱くなってくる。それは他の仲間達も同じようでリリスとサーシャを筆頭にぼろぼろと涙をこぼしている。

 

 王宮殿の入り口で勝利を噛みしめる中、シンバード兵の1人が俺達に気付いて指をさし、大声をあげる。

 

「シン様とガラルド様だ! それにお仲間の方々も全員無事だぞ! 皆あつまれ! 勝利の胴上げだ!」

 

 兵士達は俺達が抵抗する間もなく一斉に取り囲み、俺達全員を胴上げしはじめる。

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ! 俺は帝国の人間で!」

 

 レックは自身が胴上げされる立場ではないと言葉を返すが、兵士達の大声がかき消す。一方でフィルは……

 

「おっとっと、騒がしいのは得意じゃないんだけど……たまにはいいかもね」

 

 満更でもない顔で体を宙に浮かせている。

 

 その後も兵士達の胴上げは続き、グラッジは体の痛みと喜びで再び涙を流し、体が軽いサーシャは胴上げで高く上がり過ぎて木に引っ掛かっていた。リリスは宙に舞いながらも遠くを見つめることでアイ・テレポートを使って逃げ出し、シンと俺は為すすべなく兵士達にもみくちゃにされていた。

 

 正直、戦闘後で全身が傷ついているから胴上げされるのも痛いのだが、今はこの痛みすら心地いい。シンは俺の数メード横で宙を舞いながら半笑いで今後の事を語り始めた。

 

「これは中々兵士達が解放してくれそうにないね。とりあえず、兵士達の興奮が収まり次第、俺達は各地への連絡業務を済ませよう。それが一段落したら祝勝会かな。とは言っても街はボロボロだけどね」

 

「そうだな、とりあえず今は兵士達の気が済むまで宙を舞うとするか」

 

 俺とシンは交互に浮かびながら話し合いを終え、それからも兵士達の手厚い出迎えを受け続けた。

 

 この心地よい歓声に包まれながらいつまでも胴上げされていたい気分だが、正直死闘続きだったから眠気が抑えられそうにない。胴上げの最中に寝る戦士なんて前代未聞かもしれないが、これだけ頑張ったのだから許されるだろう。

 

 

 

 歓声という名の世界一贅沢な子守唄に包まれながら眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 帝国陣営とアスタロト陣営との戦争から早40日――――俺は戦争で傷つき、復興に追われていたシンバードの復興作業を一旦止めて、祝勝会会場の飾り付けの仕上げをしていた。ついに今日は待ちに待った祝勝会当日だ!

 

 本来ならシンバード王宮殿で豪華に祝勝会を取り行うところだが、シンとレックを中心とした王族たちが『格式じみた祝勝会より、酒場で行うような祝勝会がしたい』と言い始めて、結果的にギルド『ストレング』で行われる事になったのだ。

 

 まぁ要人だけがギルドに入り、兵士達は外でバーベキュー風に楽しんでもらえば狭いギルドでも何とか開催することはできるだろう。でも、どうせなら帝国で一流の料理人に豪華な料理を運んでもらって、楽をしたかったというのが本音だ。こんな庶民的な会にしたいなんて貴族の考える事はよく分からない。

 

 とはいえ自分達で食事や飾り付けを用意するのも乙なものかもしれない、何故なら皆が本当に楽しそうだから。特にリリスは楽しそうでアイ・テレポートを駆使して高度なつまみ食いを披露してシリウスと妹達に怒られている。時間はかかったけれどリリスが家族や親友と再会できて本当によかった。

 

 サーシャはシルバーと口喧嘩しながらも楽しそうに飾り付けをしていて楽しそうだし、俺も初めてお目にかかる実の両親ネリーネ夫妻とアイアン夫妻が娘を褒め合って語り合っている姿はとても幸せそうだ。

 

 敵討ち的な立場の人間が多かった俺達パーティーの中でサーシャは『取り戻したいという想い』が比重を占めていた。だから勝利を経て彼女の幸せそうな顔が見られて心底嬉しい。

 

 グラッジは虹の芸術(レインボーアーツ)で調理道具を生成する作業をやらされていて忙しそうだが、それでも楽しそうだ。大陸南のグラハム、エリーゼさん、ソル兵士長などにシンバード料理の解説をする彼の姿は長い旅をしてきた男の貫禄を感じる。

 

 ずっと人里離れた場所を彷徨い続けて、父親や慕っている兵士長から命を狙われていたグラッジが今は遥か北方の地で同じテーブルを囲んでいる。今の彼の姿にはこみあげてくるものがある。

 

 他にも俺が旅を通して関わってきた多くの人間が祝勝会に出席してくれているようだ。七恵(しちけい)の楽園のフローラみたいに一部離れられない者は残念ながら祝勝会に参加できなかったものの、それでもかなりの出席率だ。

 

 あまり人の多いところが好きではないフィルですら今回は参加してくれている。とはいえ知り合いがあまりいないせいで子供のようにシリウスの後ろにくっ付いている訳だが。それでも薄っすら笑みを浮かべて楽しそうだからホッと一安心だ。

 

 どんどんと出席者も増え、ギルド内の酸素も薄くなるんじゃないかと思えてきた頃、シンが酒を入れる箱の上に立って一拍置いて皆の視線を集め、仰々しく咳払いをしてから祝勝会の開始を告げる。

 

「え~、皆さん。本日は対アスタロト陣営祝勝会にお集まりいただきましてありがとうございます。話したいことは色々とありますが、料理が冷めてしまってはいけません。長い話は後回しにして、まずは各々料理を楽しんで頂けたらと思います。それでは皆さん、お手にグラスを……乾杯ッ!」

 

 

 

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