見捨てられた俺と追放者を集める女神さま スキルの真価を見つけだし リベンジ果たして成りあがる   作:腰尾マモル

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【第452話】祝勝会

 

 

「え~、皆さん。本日は対アスタロト陣営祝勝会にお集まりいただきましてありがとうございます。話したいことは色々とありますが、料理が冷めてしまってはいけません。長い話は後回しにして、まずは各々料理を楽しんで頂けたらと思います。それでは皆さん、お手にグラスを……乾杯ッ!」

 

 大陸中から要人を呼んでいるとは思えない庶民的な宴がシンの挨拶の元に始まった。これじゃあハンターの祝勝会と変わらないじゃないかと思いつつ、懐かしい雰囲気も感じられて気分がいい。

 

 帝国でゴージャスなディナーを食べたいと思っていたけれど、こんなチグハグな祝勝会があってもいいだろう。俺は早速美味い飯を貪るぞ! と気合を入れて各テーブルを眺めていた。するとリリスが俺の服の裾を軽く引っ張りながら声を掛ける。

 

「ガラルドさん、食事もいいですけど折角多くの人が集まっていますし、皆さんのところへ順番に思い出話をしにいきませんか? サーシャさんとグラッジさんもついてきてくれるらしいので」

 

「ん? それもそうだな。他の人達も話す事に忙しくなるかもしれないし、話せるうちに話しておくか。だが、本当にいいのか? 食いしん坊なリリスは今すぐ飯にありつきたいんじゃ?」

 

「ああ、それなら大丈夫です、さっき沢山摘まみ食いをしたので!」

 

「……そういえばそうだったな。それじゃあ、行くとするか!」

 

 俺達は旅の軌跡を辿るように関わってきた人々に挨拶することにした。まずはリリスと出会った思い出の場所ヘカトンケイルからだ。

 

 あの町に関わりのある人物といえば女神長サキエル様と元パーティーメンバーだが、サキエル様は神託の森を離れられない身だ。俺はまず端っこのテーブルにいるネイミーに話しかける事にした。

 

「よう、久しぶりだなネイミー。弟レックを称える会とも言える今回の祝勝会、楽しんでもらえてるか?」

 

「ちょ、ちょっとガラルド君! あんまり大きな声で言わないで……一応、母違いの姉弟って事は伏せているんだから」

 

「あ! すまん……そうだったな。ところで元パーティーメンバーのブルネは来てないのか? 一応、招待は届いていると思うんだが……」

 

「……うん、ガラルド君がこれだけ立派になって英雄扱いされて世の中も変わっていることは勿論知っているのだけど、それでもディアトイル出身者への差別意識は抜けないみたい。レックは立派に変われたのだけどね」

 

「まぁレックは根が良い奴だからな。それに俺だって全ての人間に好かれたいと思うほど傲慢じゃないさ。ネイミーがこうして祝いに来てくれただけでも嬉しいよ」

 

「相変わらずガラルド君は優しいね……あっ! 実はガラルド君に渡したい物があってね。ヘカトンケイル町長からなのだけど」

 

 そう言うとネイミーは俺に1冊の本を渡してくれた。その本は子供向けの歴史本のようでページの真ん中ぐらいに付箋が貼ってある。俺はネイミーに指示されるがまま付箋のページを開くと、そこにはディアトイル関連の情報が書かれていた。

 

 

 

――――ディアトイル民は多くの差別を受けてきたが、これからの時代は生まれや身分による差別を根絶し、皆が笑い合える世界を作っていかなければならない――――

 

 

 

 どうやら既存の歴史本とは違い、ディアトイルを肯定的に捉えた記述になっているようだ。ネイミーは本を鞄に戻すと詳細について語ってくれた。

 

「ガラルド君がヘカトンケイルを出て行ったあの日から町は動き出し、町長も変わり始めたんだってさ。その結果が新しくなった歴史本だよ。ガラルド君の頑張りが未来の子供たちの教育を変えてくれたみたいだね」

 

「……そうか、あの日、町中の人間から白い目で見られた苦痛も無駄じゃなかった訳だな。もし、町長に会う事があったら礼を言っておいてくれないか?」

 

「うん、伝えておくよ」

 

 少し目頭が熱くなってきた俺は話を切り上げてネイミーの元から離れた。ヘカトンケイルで理不尽にパーティーを追放された俺を見て、本気で怒ってレックにビンタしてくれたリリスも今は暖かい笑顔を浮かべている。

 

 改めてヘカトンケイルから全てが始まったんだなぁと実感させられる。それと同時に頑張ってきて良かったと思えてくる。

 

 だが、感傷に浸り続けていたら他の人と話す時間がなくなってしまう。続いて俺達はシンバード勢が多くいるテーブルへ足をのばすことにした。

 

 

 そこではヒノミさん、レナ、ストレングさんが談笑しており、俺を見つけたストレングさんが手招きしてテーブルへ呼んでくれた。ストレングさんは酒で真っ赤になった顔を何とか真剣な表情に変えると俺の肩に手を置き、称えてくれた。

 

「お前達……特にガラルドはここまで本当によく頑張ったな。コロシアム、ジークフリート解放、ドライアド復興……実績を数え上げたらキリがない。俺はお前らみたいな優秀な弟子を持てて嬉しかった。だが、それと同時に直ぐに追い抜かれてしまうんじゃないかって怖かったよ。まぁ実際にガラルドもサーシャもリリスも手の届かない英雄様になっちまったがな」

 

 どこか寂しげに呟くストレングさんの言葉に俺は首を横に振って返す。

 

「今も昔も俺の師匠はストレングさんとシンだよ。貴方がいたから双纏(そうてん)の型が会得できて、火属性の特訓もレッド・モードって形に昇華させることで報われた。ジークフリート解放戦では助けに来てくれて嬉しかった。そして1番ありがたかったのは死の山の戦争から帰ってきたばかりで動転していた俺に叱咤激励してくれたことだな。貴方はずっと俺の憧れだ」

 

「……やめろよお前……年寄りを泣かしにくるんじゃないぞ……。もう、俺との会話はいい、それよりヒノミ譲さんとレナも話をしたがっていたから話してやってくれ」

 

 ストレングさんは強引に話を終わらせると会話をヒノミさんとレナに譲った。急に話を振られたヒノミさんは慌てつつも咳払いをして呼吸を整え、改めて祝いの言葉をかけてくれた。

 

「皆さん、今回の勝利、本当におめでとうございます! 私はヘカトンケイルでガラルドさんの勇姿に惹かれて町を飛び出し、シンバードに来て本当に良かったと思ってます。私は戦えないので皆さんのお役には立てませんでしたが、それでも傍に居られて嬉しかったです」

 

 ヒノミさんは俺の両手を握り、ブンブンと上下に振って感謝してくれている。だが、礼を言いたいのはこっち側だ、俺はすぐに礼の言葉を返す。

 

「役に立てなかっただなんてとんでもない! ヒノミさんとレナが命懸けで帝国にスパイしてくれたからこそ俺達は多くの真実を知る事ができたんだ。特にヒノミさんは戦闘能力がないにもかかわらず敵陣の中枢へ潜り込んでくれたんだ。幾ら感謝しても足りないさ」

 

 俺が褒めるとヒノミさんは顔を真っ赤にして俯いてしまう。

 

「こ、ここまで褒められてしまうと顔が熱くなってきちゃいますね。わ、私の話はもういいですからレナさんも褒めてあげてください。レナさんは帝国に潜入する私の事を沢山サポートしてくれたんです。彼女こそ潜入の肝だったので」

 

 やや強引にヒノミさんが話を終わらせると横に座って話を聞いていたレナが俺に笑顔を向けて手を振っていた。

 

「やっほー、ガラルド御一行様、いっぱい食べたり飲んだりしてるかな? ヒノミさんにお褒め頂いた私に酒を注いでくれてもいいんだよ、ガラルド君?」

 

「レナは相変わらずヘラヘラしてるな。褒めようとしていた気も失せちまいそうだが……それでも、ちゃんと礼は言わせてもらうぜ。今まで本当にありがとな、レナ」

 

「お礼を言いたいのはこっちの方だよ。私は元々シンバードに来てからずっと楽しい暮らしをしていたけど、コロシアム準決勝でガラルド君と戦ってからはもっと楽しい日々が始まったよ。私が関わったドライアド復興、ジークフリート奪還作戦、帝国潜入、全てが人生の誇りさ」

 

「誇り……か。だったら俺にとっての誇りは旅路の中で得た多くの仲間達かもしれないな……って、それは流石に臭すぎたか?」

 

「フフッ、酒も入っているだろうし、いいんじゃない? ちょっと年寄り臭いなぁとは思うけどね」

 

「やかましい! 誰が年寄りだ!」

 

 レナとはその後も少しだけ軽口を叩き合ってから俺達はテーブルを離れる事にした。レナには酒が入っているから臭い台詞を吐くのも仕方がないとフォローされたけれど、実は今の俺はほとんど酒は飲んでいない。

 

 認めたくはないが、これが俺の本心から出た言葉なのだろう。歳をとったら色々なものに感謝して、振り返る癖が付いてしまうらしいが濃すぎた冒険のせいで俺もその域に足を踏み入れてしまったのかもしれない。

 

 若干熱くなってきた顔を室内の暑さのせいにしながら俺はリリス達と共に次のテーブルへ向かう事にした。

 

 

 

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