見捨てられた俺と追放者を集める女神さま スキルの真価を見つけだし リベンジ果たして成りあがる   作:腰尾マモル

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【第453話】祝勝会 その2

 

 

 シンバードの人間が集まっているテーブルから離れた俺達は次にアイアンやシルバー達のいるテーブルへと向かった。そこでは俺が声を掛けるよりも先にサーシャが飛び出してアイアンの横へと座り、挨拶を始める。

 

「お疲れ様お爺ちゃん、お兄ちゃん! いっぱいご飯食べてる?」

 

 サーシャが問いかけると頬に食事を突っ込んだシルバーが先に答える。

 

「おお、サーシャ! 挨拶回りをしてるのか? 兄ちゃんは既に3人分ぐらいは食べてるぞ。今日は祝勝会に呼んでくれてありがとな。そんでもっておめでとさん、ガラルド御一行!」

 

 シルバーはリスみたいに頬を膨らませたまま敬礼みたいポーズで俺の方へ向いて祝いの言葉をかけてくれた。そんなシルバーの言葉を受けてサーシャは少し首を傾げながら言葉を返す。

 

「ガラルド御一行って……サーシャはお兄ちゃんもお爺ちゃんもガーランド団の一員だと思っているんだよ? 2人が船を作ってくれなきゃ死の海は越えられなかったんだから」

 

 俺と同じことを考えていたサーシャが言葉を返すとアイアンは遠い目をしながら思いを語り始めた。

 

「ワシもガーランド団の一員か……嬉しい言葉じゃな。思えば、この歳になってここまでワクワクできる物作りが出来るとは思わなかったわい。これもサーシャが頑張って故郷を救い、家族を繋いでくれたおかげじゃな。改めて言わせてくれ、ありがとなサーシャ、お前はワシの自慢の娘じゃ」

 

「お爺ちゃん……」

 

 アイアンは薄っすらと涙目になりながら思いを語る。横にいる奥さんのコリーさんも同様だ。そんなやりとりに貰い泣きしそうになっているとアイアンは少しモジモジしながらサーシャの今後について尋ねる。

 

「ところでサーシャはシンバードの復興が終わったらどうするつもりなんじゃ? またドライアドに戻って働くのか? それとも、ようやく再会できたネリーネ夫妻と一緒に暮らして家族の時間を取り戻すのか?」

 

 聞いた話によるとサーシャの実の両親であるネリーネ夫妻は戦争の後、エンドの研究所から身柄が解放されてすぐにサーシャと再会を果たし、家のある北方のウィッチズガーデンに帰ったそうだ。

 

 その時の事をサーシャは多くは語らないから俺も深くは聞いていないが、10年ぶりの再会ともなると色々気まずさや気恥ずかしさがあるのかもしれない。

 

 アイアンもそれを分かっているからこそモジモジしていたのだろう。そんなアイアンとは対照的にサーシャはハッキリとした口調で答えを返す。

 

「サーシャはシンバードの復興が終わったら、しばらくの間はドライアドで仕事しつつ定期的にジークフリートとウィッチズガーデンに行くつもりだよ。血の繋がった家族も繋がってない家族もどっちもサーシャにとっては宝物だもん」

 

 アイアンにとってこれほど嬉しい言葉はないだろう。俺と違ってサーシャには失った時間を取り戻せる家族がいる。これからは仕事も程々に家族との時間を増やしてほしいものだ。

 

 それから俺達はしばらくアイアン達と話をした後、別のテーブルへ挨拶に行く為に一旦離れる事にした。

 

 

 

 

 

 

 次に俺達が向かったのはグラハム、ソル兵士長、ゼロのいる大陸南の人間が固まったテーブルだ。彼らは俺達に気付いて手を振ると最初に語り掛けたのはグラッジだった。

 

「父上、それに皆さん。今日は遠くから祝勝会に来ていただきありがとうございます。料理とお酒は楽しんでいますか?」

 

 グラッジが尋ねると、まず最初にグラハムが言葉を返す。

 

「ああ、楽しんでおるぞ。ずっと苦しい思いで続けていたイグノーラ王という責務を離れ、息子が多くの人から称えられている場に居合わせられたことが本当に幸せだ。今日ほど料理も酒も美味い日はない。父グラドにも是非、孫の大きくなった姿を見せてやりたかった……そうだろソル兵士長?」

 

「ええ、同感です。いつの間にかグラッジ様は私より遥かに強くなり、私の憧れていたグラド様に負けないぐらい強くなられた。1度は本気でグラッジ様を殺そうと刃を向けた私が皆さんと手を取り合い、協力して戦争を終えられた事が本当に幸せです。今はもうグラハム様もグラッジ様も王族ではありませんが、私は永遠にあなた方へ忠義の剣を捧げますよ」

 

 グラハムもソル兵士長も晴れやかな笑顔を浮かべている。イグノーラに辿り着いたばかりの頃はまさかこんな未来が待っているだなんて思ってもいなかった。

 

 辛い現状があっても本気で打開する方法を模索して、頑張り続ければきっと敵同士だった彼らみたいに分かり合える日が来るのだろう。俺のこれからの人生にも活かしていきたいものだ。

 

 本当はもっとグラハム達と話したいところだが、今はグラッジとグラハムが親子仲睦まじく話しているからそっとしておこう。

 

 一応、グラハムとグラッジは俺にとって双子の兄弟と甥っ子という関係だけど、関わってきた時間が長い彼ら同士の方がずっと話したいことが多いはずだ、話せる時にいっぱい話しておいた方がいいだろう。

 

 俺は先にテーブルの端で暇そうにしているゼロへ話しかける事にした。ゼロは俺と目が合うと待ってましたと言わんばかりに話しかけてきた。

 

「いや~、グラハムさんは息子との会話に夢中で僕のことなんかほったらかしだよ。代わりにちょっと話さないかいガラルドさん?」

 

「ああ、いいぞ。俺も話したいことがあったからな。クローズ……いや、ワンの事とかな」

 

「別に僕に合わせて父の事をワンと呼ばなくてもいいよ。結局クローズは父ワンの体を乗っ取った数千歳の魂なんだから。で、話を戻すけど改めて言わせてほしい。ワンの正体を暴き、クローズを止めてくれて本当にありがとう。結局あいつは死んでないけど殺すだけが敵討ちじゃない。これからクローズは善行という名の償いに奔走することになるんだ、最高に気分が良いよ」

 

 仲間内の中でも比較的クローズに対する恨みが大きいゼロに肯定的な言葉を貰えて正直ホッとしている。本当はトドメを刺して欲しかったんじゃないか? と心配していたからだ。

 

 ゼロが本心を言っているとは限らないが、表面だけでも肯定的に返してくれてのだから充分ありがたい。

 

 ゼロは笑顔を浮かべると握手を求めてきて返す事にした。少し照れ臭くなってきた俺は話を変える事にした。

 

「ゼロはこれからどうするんだ? もうアビスロードのウィッチズケトルに戻って研究を続ける必要もないだろ?」

 

「そうだね。少なくとも戦いに関する研究はしなくていいと考えているよ。だけど、僕のお爺ちゃん……サウザンドは未だワンとの戦いの後遺症で廃人状態だ。だから、今後はお爺ちゃんを治す方法を探る研究をしようと考えているよ。それが上手くいったら次は世界中をブラブラして面白い研究材料を探しに行こうかな。その時はガラルド君についていくのも悪くないかもね?」

 

「俺はまだ今後の事を決めていないけど、旅をするときは皆に伝えるよ。タイミングが合えば一緒に旅をしよう。ゼロがいれば心強いからな」

 

「フフフ、復興で大変な時期なのに何だかウキウキしてきたよ。この調子ならお爺ちゃんも直ぐに治せそうな気がしてくるね。一緒に旅立てる時を楽しみにしているよ」

 

 ゼロと約束を交わしている間にグラッジも語らいを終えたようで俺の元へ寄ってきた。俺達はグラハム達に別れを告げると次のテーブルへ向かった。

 

 

 

 

 

 

 次のテーブルへ向かうとそこには1番大きなテーブルを囲む多くの知り合いがいた。ルドルフ、シリウス、トーマス、パープルズ、そしてリリスの双子の妹であるライラと年の離れた妹のフィアもいるようだ。

 

 俺達が近づくと彼らの中で最初に声を掛けきたのはルドルフだった。

 

「よう! ガラルド、今日は祝勝会に呼んでくれてありがとよ。ガラルドがディアトイルを出て行った時は正直かなりビックリしたけど、それが全ての始まりだったんだよな。ディアトイルを変えたいと唯一人動き出したお前がこうやって大陸そのものを変えちまったんだ。すげぇ奴だよ、ガラルドは」

 

「それを言ったらルドルフも大陸会議以降かなりディアトイルを盛り上げてくれているじゃないか。昔じゃディアトイルの人間が外の街で各国の人間とテーブルを囲んで談笑するなんて考えられなかった。コミュニケーション能力の低い俺にはできない外交だよ、ルドルフこそ大したもんだ」

 

「へへっ、まさか褒め返されるとは思ってなかったな。まぁ戦争の最終局面で人質にされちまった俺なんかより、今はあっちにいる大先輩達を称えてやってくれよ。俺達よりずっと長い期間頑張っていたんだからな」

 

 そう言うとルドルフはシリウスとフィアとライラの方を指差した。ルドルフの言葉に従い、一旦席を離れてシリウス達のいるところへ近づくとシリウスが先に話しかけてきた。

 

「やあ、ガラルド御一行。今回は祝勝会に呼んでくれてありがとう。まさか、妻のフィアとライラ義姉さんと盟友リーファ……いや、リリスと共に宴を出来る時が来るとは思わなかったよ。結局、私は過去を語ってレストーレを託すことしか出来なかったが、それでも少しは君達の役に立てたみたいで嬉しいよ」

 

 殊勝な物言いをするシリウスに対し、リリスは首を横に振り、盛大に称えだす。

 

「確かに最後を決めたのはガラルドさん達だけど、それでも皆シリウスには凄く感謝してるよ? シリウスは若い頃から命懸けで死の海を渡って、帝国や五英雄の為に50年近く戦い続け、身分まで捨てたんだもん。私にとってシリウスは誇りで五英雄の中で生き残れた数少ない親友だし、1番の頑張り屋さんだよ」

 

 本当にリリスの言う通りだ。皇族という立場があったとはいえ50年間息を潜めながら戦ってきたシリウスの精神力は尋常ではない。大陸の皆は俺をやたらと褒めてくれるが、シリウスの事をもっと褒めてやって欲しいと思う。

 

 その為には大陸中の人々にシリウスが何をやってきたのかを1から説明しなければいけないから骨は折れるが、歴史は正しく伝えていかなければいけない。だから、これからは為政者が伝えるなり、本に残すなりしていかなければならないだろう。

 

 リリスに褒められたシリウスは照れ臭くなり視線を逸らすと話題を強引に変えて、ライラとフィアの背中を軽く押してリリスの前に2人を移動させた。

 

 突然前に出された2人は困惑しつつも、昔と変わらないリリスの笑顔に迎えられて姉妹らしい砕けた会話を続けていた。

 

 今の俺には血の繋がった肉親が双子の弟であるグラハムと甥っ子にあたるグラッジしかいない。だから同じ屋根の下で暮らしてきた姉妹と話ができているリリスが少し羨ましかった。そんな彼女のやりとりを眺め続けていると最後にフィアが話を締める。

 

「私より8歳上のリーファお姉ちゃんが今は私より40歳以上若い見た目をしていて不思議なき分だよ。あの日、私の病気を治すためにリーファお姉ちゃんが大陸南へギテシンを採りに行ったことが全ての始まりなんだよね……。リーファお姉ちゃんは私の誇りだよ」

 

「フィアちゃん……」

 

「結果、私は生きる事ができてシリウスの妻になり、大陸の為にずっとダリアで働く事ができた。そして、リーファお姉ちゃんと再会する事もできた。これ以上ないくらい幸せな人生だったよ。でも、リーファお姉ちゃんは女神に転生したばかりで人生まだまだこれからなんだから名一杯楽しんでね? 冒険も恋も……ね?」

 

「ちょ、ちょ、ちょっと! 私を揶揄わないでよ、フィアちゃん!」

 

 リリスは俺との関係性を公表しているというのに慌てふためいている。自分からはグイグイと好意をアピールしてくるのに他の人から突かれると途端に慌てだすのは正直可愛いくて面白い。

 

 そんなリリスの顔のほてりが消えた頃、シリウス達と別れた俺達は時計を眺めて時間が随分と経っている事に気が付き、足早に最後のテーブルへ向かう事にした。

 

 

 

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