見捨てられた俺と追放者を集める女神さま スキルの真価を見つけだし リベンジ果たして成りあがる   作:腰尾マモル

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【第51話】労いと家族愛

 

 

 

 帝国兵の襲撃を退けてから時間が流れて深夜になり、ボビ達『反抗組織』のメンバーが集まる時間が迫っていた。帝国兵との戦闘で溜まった疲れを癒し、身支度も整えた俺達はボビのメモに記された近くの地下採掘場へと向かった。

 

 今はもう使われていない地下採掘場は薄暗くて松明を用意していなければ、とてもじゃないが先に進むことはできなかっただろう。

 

 地図に従って先へ先へと進んでいくと、地下採掘場に相応しくない分厚い鉄の扉が現れた。扉をノックすると中から若い男の声が聞こえてきた。

 

「誰だ、名を名乗れ」

 

「俺達はシンバードのギルドに所属しているハンターのガラルド、リリス、サーシャだ。ボビさんの紹介でここまで来たんだ、入れてくれないか」

 

「分かった、だが、扉の向こうにいるあんた達が帝国兵じゃないか確かめさせてくれ。ボビさんの紹介なら必ずメモを貰っているはずだ。メモの下の方にどんな絵が記されているか答えてくれ、それが合言葉代わりだ」

 

 俺達は男の指示に従い、メモの下部分を確認した。そこには灰色の花の絵が記されていた。

 

「灰色の花が描かれているようだが……これでいいか?」

 

「ああ、大丈夫だ、入ってくれ」

 

 そして、分厚い鉄の扉が中にいた若い男によって開かれた。中には必要最低限の灯りをつけた大きな部屋があり、若者から老人まで20人以上の男性が集まっていて、音を鳴らさない拍手のジェスチャーで迎えてくれた。

 

 灯りを最低限にしているのも、拍手で音を鳴らさないのも帝国兵に場所がバレないようにする為なのだろう。

 

 出迎えてくれた男たちの中にはボビの姿もあり、俺に気がついたボビは駆け足で近づいてきて笑顔でお礼を言ってくれた。

 

「サーシャちゃん達、来てくれたのか! いやぁ本当に嬉しいよ、さぁ、こっちに来て座ってくれ」

 

 俺達は奥の席へと案内されて椅子へ座る。ボビは大きな紙を広げたあと、俺達へ改めて自己紹介をしてくれた。

 

「ようこそ、ガラルド君、リリス君、サーシャちゃん。ここは今の帝国支配に反抗する為に作り上げた秘密基地であり、ここにいる皆は反抗組織『ラナン』のメンバーだ。ワシは一応リーダーを務めている。今日は話を聞きに来てくれて感謝している」

 

 ラナン? サーシャの名字『ラナンキュラ』と重なっていることが気になった俺は詳細を尋ねるとボビは嬉しそうな声で答える。

 

「その通り、これは我々がとてもお世話になったラナンキュラさん、つまりサーシャちゃんの親父さんの家名から頂いているんだ。ラナンキュラさんは帝国がくるまではジークフリート全体の工業を纏めていた凄い人だったんだ。指導力、組織を纏めるリーダーシップ、そして自身の技術力、何をとっても1番だった尊敬すべき人物だ。だから敬意を込めて名前を付けさせてもらったんだ」

 

 分かってはいたが、やはりサーシャの親父さんは相当凄い人の様だ。組織名にされる程の人だから今日の話し合いにも参加しているかもしれないと周りを見渡してみたが、親父さんの姿はなかった。俺は今日の話し合いに親父さんは参加しないのかを尋ねるとボビは気まずそうな表情を浮かべ、サーシャの方を見ながら答えた。

 

「名前まで付けておいてなんだが、ラナンキュラさんには反抗組織の存在を秘密にしているんだ。あの人はもう頑張らなくていいんだ。あの人は15歳から今までジークフリートの為に馬車馬の如く働いて尽力してくれた。サーシャちゃんも大きくなり自立した今、我々は年老いたあの人にゆっくりしてもらいたいんだ。だからラナンキュラさんには黙っておいてほしい」

 

 ずっと頑張ってきた人を労いたい彼らの気持ちはよく分かる。リリスとサーシャも納得したようで目を合わせて頷き合った。そして、ボビは反抗の計画が書かれているであろう大きな紙を指さし、説明を始めた。

 

「それじゃあ、今ワシらが進めている計画を説明する、まず帝国兵についてだが――――」

 

「ちょっと待った!」

 

 俺達が入ってきた扉からノックの音とともに聞き覚えのある声が聞こえてきた――――サーシャの親父さんだ。

 

 直ぐに声の正体に気がついたボビは急いで扉を開けた。ボビと親父さんの間に何とも言えない沈黙が流れ、先に親父さんが口を開く。

 

「久しぶりだな、ボビ。悪いがガラルド君とボビの会話を扉越しに聞かせてもらった。水臭いじゃないか、ワシも仲間に入れておくれよ」

 

「ラナンキュラさん……話を聞いていたなら分かるだろ? 俺達は貴方に休んでいてほしいんだ。いい歳なんだしさ」

 

「娘の難病を治すために背負った借金も近いうちに返せるから最近はいくらか仕事を緩めさせてもらっておる。だから、体力的にも問題ない。お前達の組織を手伝う事だって出来るはずじゃ」

 

「ラナンキュラさんならそう言うと思ったよ。でも貴方は借金を返し終わっても、サーシャちゃんの目標の為に今後もずっと働き続けるつもりなんだろ?」

 

「止めろボビ! ここで言うんじゃない……」

 

 出会ってからずっと温厚だった親父さんが声を荒げて言った。どうやら『サーシャちゃんの目標の為』という言葉に親父さんが反応したようだが、どういう意味か分からない。俺はボビさんに尋ねようとしたが、それより先にサーシャが声を掛ける。

 

「ねぇ、サーシャの目標の為ってどういうことなのボビさん」

 

 前に出ようとしたサーシャだったが、親父さんが腕で抑えて呟く。

 

「……サーシャ、何でもないから下がってなさい。それとボビ――――娘のいる前でその話をするのはズルいと思うぞ」

 

「そうだろうさ、でもそれだけ俺達が親父さんのことを心配していたことは分かっておくれ。それにサーシャちゃんの目の前でこの話を始めてしまったのだから、悪いが最後まで言わせてもらうよ、ラナンキュラさん」

 

 親父さんはやむを得ないといった表情でボビに許可を出した。ボビは俺達へ説明を始める。

 

「ラナンキュラさんはね、サーシャちゃんが実の両親を探せるようにお金を貯めようとしているんだ。工場を売り払って薬代を確保して、サーシャちゃんがハンターとして巣立った後も、周りが心配するぐらい働き続けていてね」

 

「……嘘でしょ?」

 

「いいや、本当なんだ。きっと残りの借金を払い終えた後もずっとがむしゃらに働き続けてしまう。それぐらい優し過ぎる人なんだ。そんな人が俺達の組織の面倒まで見始めたら、いよいよ働き過ぎて倒れてしまう。だから黙っていたんだ」

 

 親父さんはどこまで娘想いなんだろうと涙が出そうになった。きっと娘の心に影を残さない為なら何だってする覚悟があるのだろう。

 

 もし仮に実の両親と出会い、本当は悪い両親じゃないと判明して、サーシャが実の両親と一緒に暮らすことになったとしたら、親父さんの元を離れていってしまう……そんな可能性だってありえるのに、親父さんは只々サーシャと仲間達の幸せだけを願って行動している。

 

 ボビの言ったことは正に図星だったようで親父さんは何も言い返せずに黙ってしまった。誰も悪くないのに気まずい雰囲気がこの場を支配する。

 

 

 

 

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