見捨てられた俺と追放者を集める女神さま スキルの真価を見つけだし リベンジ果たして成りあがる   作:腰尾マモル

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【第78話】緋色の瞳

 

 

 

 モードレッドからの大量の質問に答え続けた俺から今度はこちらからビエードに関わる質問を投げかけてみよう。

 

「今度はこちらからも質問させてくれ。ビエードと初めて会った日、しばらく会話をしていて気になった事があるんだ。それはビエードが魔獣の襲撃周期を知っていたことだ。兵を動かす立場にあるビエードが的確過ぎる魔獣対策をしていたことを鑑みるに、上の立場のモードレッドさんも襲撃周期を知っていたんじゃないか?」

 

 俺はモードレッドの表情を探るべく目を見続けた。しかし、モードレッドは下を見続けたまま目を合わそうとはしない。そして、下を向いたままビエードの人となりについて語りはじめる。

 

「いいや、私は知らなかった。ビエードは腕こそ立つが性格にはやや問題がある男だった。だから善人であるローブマンと繋がりがあって教えてもらったとは考えにくい。きっと独自の調査で規則性を見つけ出したのだろう。そして自分だけの秘密にしておいたのではないのかね?」

 

「ローブマンが善人だというのは俺も同意見だ。そのローブマンが最近俺達に情報を教えてくれた点から考えてみてもローブマン自身が襲撃周期の事を知って日が浅いのかもしれないな。ビエードはだいぶ前から予測していたみたいだし。ローブマンなら行く先々で気に入った人間に情報を教える可能性もあるだろうから、だいぶ前から知っているならとっくに大陸中に広まっているはずだ」

 

「うむ、きっとそうだろうな。私から話せるビエードの情報はもうなさそうだな」

 

 俺の勘だがモードレッドは妙にこの話を早く終わらせようとしている気がする。本当は魔獣の襲撃周期を知っているのにも関わらず黙っていたのなら、他国の安全を犠牲にして自国のアドバンテージを得ようとしていることになる。そんな行為は大陸中から非難されるレベルの大問題だ。

 

 俺は少し揺さぶりをかけるべく更に話題を振った。

 

「ならもう1つ聞かせてくれ。俺達がビエードに魔獣の襲撃周期の話をした時、奴は俺に向かって『きみはエンドの1人なのか? それともエンドの仲間がいるのか?』と聞いてきた。恐らく奴はエンドと呼ばれる存在を通して襲撃周期を知ったようなんだ。モードレッドさんはエンドという言葉が何を示しているのか知っているか?」

 

 モードレッドは俺の問いかけに対して下を向き、顎に手を当てながらしばらく沈黙する。深く何かを考えているようだが、返ってきた言葉に欲しい情報はなかった。

 

「色々思い返してみたが、やはりエンドなんて言葉は知らないな。役に立てなくて申し訳ない」

 

 俺はこの時モードレッドは嘘をついているのではないかと考えた。人は嘘をつくときに無意識に口や顎を隠したり、鼻や耳たぶに触れる事が多いらしい。

 

 俺は以前ビエードとの論戦で大負けしたことが悔しかったから少しだけ心理や討論について勉強していたのだ。と言っても独学で学ぶのは厳しいから頭が良くて幼い頃から人生経験が濃いサーシャに色々とレクチャーしてもらったのだけれど……。

 

 一応、国政に携わっていくことになるなら役立つこともあるかもしれない……と考えていたけれど本当に役に立つかもしれない。俺は交渉術の基本である情報の後出しでモードレッドに揺さぶりをかけてみる事にした。

 

「あの日エンドの1人なのかと尋ねられた俺は自分をエンドの関係者だと偽って探りを入れたんだ。するとビエードは直ぐに俺の嘘を見破りこう言ったんだ『ガラルド君がエンドじゃないのはバレバレだ。自分のような低い立場の人間にわざわざ尋ねる事柄なんて無いはずだ』ってな。大佐というそれなりの立場であるビエードがそんな事を言うのなら帝国の上層部はエンドについてもっと知っているんじゃないかと推測していたのだが……あんたは本当に何も知らないのか?」

 

「…………私は何も知らない。」

 

 モードレッドはぼそりと呟いた後、再び深呼吸をして沈黙し、無表情になっていた。つまり幼馴染のシンが教えてくれた『モードレッドの焦っている状態』だ。

 

 この後さらに質問を重ねて追及することも出来るのかもしれないが、国の代表を怒らせることになってもいけない。今は帝国がエンドと関りを持っている可能性が高いという情報を知れただけでも大収穫だ。俺はここで話を終える事にした。

 

「色々教えてくれてありがとうモードレッドさん。それじゃあお互いのことを話し合えたところで宴会の場に戻るとしようか」

 

「待ちたまえ。最後に1つ聞いておきたい。ローブマンは君達に自身の顔……瞳を見せてくれたことはあるかね?」

 

「瞳? ああ、見せてくれたよ。見た事が無い色の瞳だったな」

 

 ローブマンはコロシアム決勝後に俺、リリス、サーシャにだけ緋色の瞳を見せてくれた。だから極力隠したいと思っているはずだ。今、この場所にはシンもいるから瞳が何色だったのかは伏せておいた。が、その配慮は無駄に終わる事となる。

 

「その瞳は緋色ではなかったかね?」

 

「なっ! ローブマンの瞳が緋色だと?」

 

 何故かシンが大声で緋色の目に食いついた。何かを知っているのだろうか? それにローブマンの瞳の色を知っているリリスも何故か気まずそうに俯いている。そんな俺達をよそにモードレッドは話を続ける。

 

「ローブマンとは少ししか会話をしたことがないから彼について詳しい事は知らない。ただ、帝国が所有する古文書に興味深いページがあり『数百年前、緋色の目を持った遊牧民族が存在し、類まれな戦闘能力を持ち、魔獣を狩りながら各地を放浪していた』と記述されていてな。ローブマン自身が遊牧民なのかは知らないが、彼はもし同じ眼を持つ人がいたら仲良くなりたいし、戦ってもみたいと言っていたよ」

 

「そうだったのか、いつかローブマンも仲間と会えるといいな。今の話を聞く限り緋色の目を持っていない俺がローブマンと戦ったり、仲良くなれたのはラッキーだったのかもしれないな。俺が遊牧民の代理になれたようなものだしさ」

 

「…………。」

 

「…………。」

 

 俺は素直に自分の思いを述べたのだが、何故かリリスもシンも頷かずに黙ったままだった。2人の態度が気になった俺は理由を尋ねようとしたけれど、それより先にモードレッドが妙な事を言い始めた。

 

「案外、ガラルドも緋色の目を持っているのかもしれないぞ。君の親は誰だか分かっていないのだからな」

 

「何を言ってんだ。自分の目は何度も鏡で見た事があるが、何の変哲もない黒い瞳だ。あんたの目にもそう映っているだろうに」

 

「なら私が確かめてやろう」

 

 そう言うとモードレッドはいきなり腰を落とし脇に吊るしていた剣の柄を握った。それと同時に盗賊をひざまずかせた時よりも何倍も大きな重圧……あらため殺気が俺達の体を襲った。

 

 蛇に睨まれた蛙どころではない。プレッシャーを浴びた俺は瞬時に棍を構えて後ろへ飛んで距離を空ける。緊張で今にも背中をつってしまいそうだし、恐ろしさで手に持つ棍が震えているのも分かる。モードレッドは攻撃してくるのかと思ったが、そのまま剣の柄から手を離し、姿勢を直立に戻す。

 

 そして、壁に立てかけてある鏡を指差して俺に言った。

 

「ガラルド、鏡を見たまえ。君の瞳は何色だ?」

 

 俺は自分で自分を疑った。なんと鏡に映る俺の目はローブマンと同じ緋色となっていたのだ。

 

 

 

 

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