見捨てられた俺と追放者を集める女神さま スキルの真価を見つけだし リベンジ果たして成りあがる   作:腰尾マモル

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【第88話】投票戦間近

 

 

 

 満身創痍のレック達を連れてドライアドへ戻った俺達は彼らをベッドで寝かせたあと自陣の本部へ戻った。そして無事に死者を出さずに戻れたことを祝って皆で乾杯する事となった。

 

「みんな、レック達の救助についてきてくれて本当にありがとう。無事助け出せたことを皆で祝福しよう、乾杯!」

 

 まだ夜にもなっていないのに俺達は盛大に盛り上がった。助けだせた事が嬉しいのは勿論のこと超危険な樹白竜(じゅはくりゅう)から無傷で生還できたことが盛り上がりを加速させているのかもしれない。

 

 俺も気分よく酒を飲んでいるとリリスが俺の横に座って話しかけてきた。

 

「お疲れさまでしたガラルドさん。無事レックさん達を助け出せて良かったですね」

 

「ああ、そうだな。欲を言えばレックに礼の1つでも言ってほしかったが帰り道の途中で気を失ってしまったからな」

 

「意識が戻れば言ってくれるかもしれませんよ? 何だかレックさんは初めて会った時よりも優しく、責任感が強い人になったような気がするのです」

 

「元々レックは真面目な奴だし、俺以外の人間には優しかったさ。ただ、ディアトイルへの差別意識が強い帝国で育ったから俺の出生地が分かってからは加速的に嫌いになったみたいだがな。まぁ元々無能だったからバレる前からそこそこ嫌われてはいたんだが」

 

 自分で言っていて少し悲しくなってきた。いくらレックとはいえ嫌われるのはやっぱり辛かったし、出生地のことがバレた時にレックから向けられた冷たい目線は今も忘れられない。

 

 俺達が各地で活躍してきたことをきっかけに世界から少しずつ差別意識が無くなってきてはいるものの、それでもまだまだディアトイルは嫌われている。大陸会議にてドライアド復興計画に俺の名が挙がった事で一部の国の代表者が差別的発言をしていたのがいい例だ。

 

 そんな事を思い出していた俺はよほど暗い顔をしていたのか、リリスが心配そうに声を掛けてきた。

 

「大丈夫ですよガラルドさん、レックさんも含めて世界は少しずつ変わってきています。だからそんな悲しそうな顔をしないでください。どうか私の豊満な胸に顔をうずめて元気を取り戻してください」

 

 相変わらずのリリス節というか何というか、きっとリリスは冗談を言って俺に笑顔になって欲しかったのだろう。最近リリスなりの気遣いや立ち回りが分かってきた気がする。そんな優しいリリスを心配させる訳にはいかない。いつもの調子で言葉を返す事にしよう。

 

「ハハッ、遠慮しておくよ。別に豊満でもないし」

 

「酷いですよガラルドさん、私ってば脱いだら凄いのに……。でも、ちょっと笑って元気になってくれて良かったです。投票戦まであと数日しかありませんからね。元気出していきましょう」

 

「おう、リリスの言う通りだな。今日はいっぱい騒いで明日からまた頑張ろう!」

 

 そこからは頭を空っぽにして宴を楽しんだ。

 

 

 

 

 

 

 樹白竜(じゅはくりゅう)との戦いから時間は流れ、2日後には境界線越しに無事復活したレックの背中を見かける事もあった。だが、俺からもレックからも話しかける事はなかった。

 

 そして、復興作業の日々は続き、気がつけば投票戦1日前になっていた。どうやら大陸則(たいりくそく)によると2国間で空白地を争奪する場合、投票戦当日に票を入れる他国の代表者、もしくは代表者代理がドライアドを訪れ、票を入れる流れになるようだ。

 

 各地から各国の投票者達が復興具合の確認も兼ねて前日にドライアドを訪れ始めた。シンバード代表である俺が来客でもある投票者達をお迎えしながら人数を数えてみたが、大陸の約半数の国が投票に参加してくれるようだ。大陸会議ほどではないものの中々の数である。

 

 投票者全員を宿へ迎え入れる事が出来たことだし、自分もそろそろ休もうかなと考えていると遠くの方から黒い馬に乗った黒い鎧の男がゆっくりとこちらへ近づいてきていた。俺はあの男を知っている……モードレッドだ。

 

 モードレッドは俺達の前まで来て馬から降りると俺に話しかけてきた。

 

「素晴らしい復興具合だなガラルド。流石はシンバードだ」

 

「どうしてモードレッドさんがここに……この投票戦は帝国対シンバードなんだぞ。あんたは投票できないはずだが」

 

「もともと私の部隊がドライアドの遥か西へ足を伸ばしていたのも理由ではあるが、かわいい弟の働き具合が気になってな。帝国へ帰るついでに寄ってみただけだ」

 

「かわいいねぇ……。前に話した時に兄の愛情なんか感じなかったがな」

 

「兄弟には色々な形があるのだよ。もっとも家族のいない君には分からないだろうが」

 

 モードレッドは分かりやすく腹の立つ煽りをしてきた。初めて会った時は仲良くとはいかないまでも普通に話せていたのだが。大陸会議の途中からは反感を買ってしまったから結構嫌われているようだ。俺は皇帝の血に嫌われる才能があるのだろうか?

 

 俺はモードレッドとの会話を早く切り上げたくてレックのいる場所を指差す。

 

「なら大切な弟にさっさと会いにいけばいいじゃないか。ここは東西の境界線付近とはいえ一応シンバード側だ。レックは向こうにある大きな屋敷にいるはずだぞ」

 

「そうか、ならガラルドも一緒に来てくれ、まとめて話したいことがある。帝国陣地側には話を通している。それでも1人で第4部隊側に行くのが嫌なら他の仲間も連れてきてくれて構わないぞ」

 

「え? どういうことだ?」

 

 俺はモードレッドに聞き返したが、奴は何も言わずレックのいる屋敷の方へ歩いて行った。仕方なく俺もリリス、サーシャ、ストレングを連れてレックのいる屋敷へ向かった。

 

 そして屋敷に辿り着いた俺達が扉を開けると、そこには青ざめた顔をしたレックと冷たい目で弟を見下ろすモードレッドの姿があった。

 

 俺がリリス達と合流している間にレックはモードレッドにこれまで何があったのか全て話したのかもしれない。俺は率直にモードレッドへ尋ねる。

 

「レックから今まで何があったのか全て聞いたのか?」

 

「そうだ。シンバード相手に復興で後れを取り、模擬試合では本気を出していないガラルドに負け、しまいには功を焦って難敵・樹白竜(じゅはくりゅう)に手を出して返り討ちに合って敵国に救助される始末。帝国人としても弟としても、目も当てられないゴミだ、あいつは」

 

 レックが色々とやらかしてきたのは確かだが、いくらなんでも言い過ぎだ。ましてや兄であるモードレッドにそんな事を言われては気の毒すぎる。俺はもう少し言葉を選べとモードレッドに言ってやろうとしたけれど俺より早くリリスが動いていた。

 

「ちょっと言い過ぎじゃないですか? レックさんは私と初めて会った時よりもずっと強くなっていましたし部下にも慕われています。復興に関しても東側の私達がリードしているのは確かですが気を抜けないぐらいに帝国第4部隊も頑張っています!」

 

 昔からレックの事が嫌いだったリリスがモードレッドに反論している。1度はレックにビンタをかました間柄だが曲がったことが大嫌いでなおかつ困っている人がいれば好き嫌い関係なしに守ろうとするリリスらしい行動だ。

 

 しかし、モードレッドはリリスに対し、冷たく言い放つ。

 

「結果が全てだ。愚弟は成果を出せないばかりか、周囲の人間までを危険に晒している。競い合う君達にこんなことを言うのは屈辱だが『復興実績・魔獣討伐実績・防衛力』全てにおいて君達シンバード側の勝利だ。明日の投票戦、結果は火を見るより明らかだろう」

 

 ここにきてモードレッドは白旗とも取れる言葉を発した。敵陣ということもあり俺達は互いに目を合わせて小さく喜んでいたが、モードレッドはそんな事などどうでもいいと言わんばかりに、レックに冷たく言い放つ。

 

「レック、お前には罰を与える。今から裏庭に来い」

 

「は、はい……分かりました兄上……」

 

 唇と肩をガタガタと震わせながらレックは返事をする。この怖がりようは明らかに異質だ。一体どんな罰が与えられるのだろうか……。

 

 

 

 

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