見捨てられた俺と追放者を集める女神さま スキルの真価を見つけだし リベンジ果たして成りあがる   作:腰尾マモル

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【第90話】全力

 

 

 

 俺に腕を引っ張られたレックはよろけながらも何とか立ち上がってレイピアを構える。どうやら完全に心を折られている訳ではなさそうだ。とはいえ、まだまだボロボロなことに変わりはない。俺はレックより先にモードレッドへ攻撃することにした。

 

「俺が先に行く、レックは自分のペースで戦えばいいからな。それじゃあ行くぜ、モードレッド!」

 

「ああ、全力でかかってきたまえ」

 

 余裕綽々なモードレッドに対し俺は緋纏(ひてん)の型で突っ込んだ。フェイント交えて棍でモードレッドを突きまくったが、その全てを見透かされ、難なく弾かれてしまう。

 

「流石は帝国の第1皇子だな、余裕で防ぎやがる」

 

「ガラルドこそ、大したものだ。我がミストルティンでも屈しないうえに反撃する隙もない。とはいえ君もまだ全力は出していないのだろう? 自慢の回転砂と緋色の魔力の最終形態を見せておくれ」

 

 モードレッドは俺が双纏(そうてん)の型が使える事を見抜いていた。緋纏(ひてん)の型の魔力が緋色に偏っていることから瞬時に見抜いたようだ、やはり戦闘勘がいい。

 

 それに加えて『君もまだ全力を出していない』という物言いからも分かる通り、モードレッド自身全然本気を出していないようだ。強すぎて嫌になってくる。こうなったら出し惜しみしている余裕はない、俺は全力でぶつかる事にした。

 

「だったらお望み通り、全力でいかせてもらうぜ、双纏(そうてん)!」

 

 俺の身体に2つの魔力がほとばしる。それを見たモードレッドは邪悪な笑みを浮かべて声を弾ませる。

 

「素晴らしい魔力だ。1人の武人として血が騒いできた。存分に楽しませてもらおう」

 

 そう呟くとモードレッドは一瞬で俺の目の前まで走ってきて剣を振り払った。俺はそれを慌てて棍で防ぎ、サンド・ステップで後ろに飛んで距離を稼ぐ。

 

 そこから小さいサンド・ホイールを3つ作り出してモードレッドへ飛ばした。それをモードレッドは冷静に1つずつ剣で粉砕していったが俺も負けじと追加でサンド・ホイールを飛ばす。更に粉砕されてしまった魔砂(マジックサンド)からもサンド・ホイールを再生成してモードレッドへ飛ばした。

 

 数の圧力で徐々にモードレッドの迎撃が慌ただしくなってきた。多少は追い詰められているのかもしれないが、どうにも決め手に欠けている。

 

 それに双纏(そうてん)は長時間持たないのがネックだから悠長に戦ってはいられない。俺は早めに勝負をつける為に両手に魔力を込めて解き放つ。

 

「一気に勝負を決める、サンド・テンペストォォ!」

 

 双纏(そうてん)状態で初めて放つサンド・テンペストは俺の想像を遥かに超える威力だった。それは帝国の魔力砲を思い出す破壊力であり地面をまるでゼリーのように軽々と抉りながらモードレッドの方へ進んでいる。

 

 しかし、モードレッドは一切焦ることはなく、嬉しそうな声で魔術の撃ち合いを仕掛けてきた。

 

「その暴風、受けてたとう。絶氷閃(ぜっひょうせん)!」

 

 モードレッドの手から正方形の陣が出現し、そこから青白い光が飛び出した。サンド・テンペストと衝突した光は耳鳴りがする程の高音と皮膚が刺されるような極寒の冷気を放出する。かなり高度な氷属性魔術だ。

 

 絶氷閃(ぜっひょうせん)は冷気もさることながら単純に勢いも強く、俺のサンド・テンペストは少しずつ押されていた。このままではジリ貧となり俺が負けてしまう。それはモードレッドも感じていたらしく衝突するエネルギーの向こうから勝ち誇った声が聞こえてくる。

 

「どうやら2つの魔力を合成させてもなお、私のパワーが上のようだな。このまま押し負ければ、サンド・テンペストごと私の絶氷閃(ぜっひょうせん)が君を飲み込んでしまうぞ? 降参することをお勧めする」

 

「馬鹿言うな、まだまだ負けるかよ……」

 

 強がったのはいいものの、全く押し勝てる気がしないし策もない。いたずらに消費されていく魔量に焦りだけが募っていく。そんな中、モードレッドがレックを煽る。

 

「どうしたレック、私とガラルドが撃ち合っているのをただ見ているだけか? 今なら側面からでも背後からでも私を攻撃することが出来るだろうに。ガラ空きの相手を攻撃出来ないぐらいミストルティンにのまれてしまったか? だからお前は落ちこぼれなのだ、大人しくガラルドがやられるところを見ているがいい」

 

 モードレッドの煽りに対し、冷静さを失ってでもいいからレックに反撃してほしかったが、レックはその場から動かなかった。ミストルティンを受けても攻撃できている俺が普通じゃないのか、それともレックが異常に耐性が低いのだろか。

 

 俺的にはレックが必要以上に兄に恐怖心を抱いている様に思える。レックの状態がどうであれ、あいつ自身が殻を破れなければ、一生コンプレックスを抱いて生きることになるだろう。

 

 俺は徐々に押されていくサンド・テンペストに必死で魔力を込めながら横にいるレックへ喝を入れた。

 

「お前は言われっぱなしでいいのか! 一生兄貴と比較されて、一生出来損ないと言われ続けていいのか? 今まで積み重ねてきた努力も否定されちまって悔しくないのか!」

 

「平民風情のガラルドに何が分かる……」

 

「お前の苦労なんて知るか! 今のお前が辛そうだから問題なんだろうが! 失敗してもいいから、もう1回踏ん張れ!」

 

「もう1回……。しかし、俺が……俺なんかが……」

 

 レックは震える声で葛藤していた。これまでは声も表情も闘志が宿っていなかったが、少なくとも今は立ち上がりたいという意思が垣間見える。レイピアを握る手の震えが徐々に収まっていき、力強い構えに変わっていった。

 

「そうだ、いいぞレック、その調子だ。何でもいいから俺を援護してくれ。代わりに俺は何があってもお前を守ってやる。レックは友達ではないが仲間だからな。思い切って力を出しちまえ」

 

「仲間……フッ、友達はもちろん仲間もお断りだ。今だけ利害関係が一致しただけに過ぎん」

 

 レックが今日初めて笑みを浮かべた。手の震えは完全に収まり、レイピアの先端には模擬試合の時よりもずっと凝縮された魔力が溜まっている。深く腰を落としてレイピアの先をモードレッドに向け、刀身に軽く右手を添えた。見た事がない構えだ。

 

 目を閉じて大きく深呼吸をしたレックはカッと目を見開くと同時にその場からレイピアで前方を突いた。

 

「全てをかき消せ、バニッシュ・トラスト!」

 

 レックが叫ぶと剣先から光り輝く波紋が放出された。どうやら土壇場で新技を編み出したようだ。

 

 その光は絶氷閃(ぜっひょうせん)に衝突すると、強力な氷のエネルギーを全てかき消してしまった。残されたサンド・テンペストが堰を切った川の如くモードレッドの体を襲う。

 

「させるか! ウインドシールド!」

 

 慌てて両手を挙げて竜巻の防御壁を発動したモードレッドだったが、ノータイムで発動したせいで風の勢いが弱く、俺のサンド・テンペストとぶつかった瞬間に2つのエネルギーは完全に相殺する。

 

 モードレッドに隙が出来たその瞬間、俺とレックは目と目で合図を送り合い、走り出していた。俺は棍を、レックはレイピアを持ち、全力でモードレッドへ突進する。

 

「いけぇぇ! サンド・ステップ!」

 

「間に合え、バック・ガスト」

 

 俺が得意な回転砂を利用した高速移動術、そしてレックが模擬試合で見せた背面に爆風を起こし推進力を得るバック・ガスト。2つの技で左右から突進した俺達はモードレッドの立つポイントでクロスする。

 

「ぐああぁぁっっ!」

 

 棍とレイピアの一閃が黒鎧に直撃すると、モードレッドは呻き声をあげて後ろへ大きく飛んでいった――――棍を握る手に金属同士が衝突する独特の振動が走る……俺達の勝ちだ!

 

 

 

 




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