もしよければ見ていってください。
まるでゲームのようにステータスが見れる。それはきっと、大きなアドバンテージとなるだろう。
数値が伸びているのを見れば成長を実感できるし、体調が悪い時に見れば何が原因かすぐ分かる。
そして何より重要なのは、自身の力量を知れることだ。
何が得意で、何が不得意か。自分が足りないのは何か。
それがひと目でわかるのは、一種の超能力と言っていいだろう。
ウマ娘という生き物が日夜デッドヒートを繰り広げるこの世界でも、その有用性は変わらな──
〔マネーガール〕
弾道 1
ミート G+
パワー F
走力 F+
肩力 F
守備力 G+
捕球 G+
スキル
【ヘッドスライディング】【レーザービーム】【威圧感】【お祭りウマ娘】【走塁○】【ホーム突入】【代打○】
「相変わらず役に立たないなぁ……これ」
物事には、ケースバイケースってのがあってだね。
ステータスにはその人が知りたい情報が書いてなければ意味が無い。
そんな当たり前だけど大事なことを思い出させてくれた彼女はマネーガール。TS転生ウマ娘である。
知らない男の死に様なんぞに興味を持つ方などいらっしゃらないと思うので、割愛して必要なことだけ話していこう。
始まりは突然である。
気がついたら三女神像の前で入学証書を手に持ちながら突っ立っていた彼……いやこの段階じゃもう彼女か。
あぁ、安心してほしい。誰かに憑依した訳じゃなく無から湧いたので、不幸になっているのは元男1人だけである。
彼女は当然、非常に混乱した。
・死んだ後なんの説明もなしにトレセン学園にぶち込まれたこと。
・前世で存在しなかったウマ耳とウマ尻尾の感覚を脳にぶち込まれたこと。
・『これが今のお前やで』と言わんばかりに突然目の前にブォンとクソみたいなステータス画面をぶち込まれたこと。ご丁寧に顔写真付き。
これらを全て同時に食らった彼女は脳が熱暴走を起こしぶっ倒れた。
そんな突発性患者を発見した
そのおかげで熱暴走を克服した脳は処理速度が限界突破し、全ての処理を完了。
こうして、『突然転生したけどなんか受け入れられたTS転生者』が爆誕したのである。
(なんかこの体、実家の場所どころか親の顔すら思い出せないんだけどヤバくない?)
トレセン学園を追い出されたら途方に暮れることになる。
その事実に気づいた彼女はとりあえずトレセン学園で暮らすことにした。
万が一卒業までに実家を探し出せなかった時の為に金を稼がなければならない。
彼女のトレセン学園での目的は、金稼ぎと一時的な避難である。
そして今日は彼女のターニングポイント。初めての模擬レースの日だ。
「マネちゃん、震えてるけど寒いの?」
「……活躍出来るか不安なんだ。もしも最下位になったらとか考えると、震えが止まらな「ウララがあっためてあげるね!」
「う〜〜ん、聞いてないね~。でもありがとねー」
模擬レースと聞けば重要度は低そうに聞こえるかもしれないが、そこはもはやトレーナー達が一年生を見極めスカウトする場と化している。
ここでいい成績を残せるかどうかで、今後の学園生活が大きく変わってくるだろう。
不安がまたぶり返してきた彼女はもう一度ステータス画面を開いた。
〔マネーガール〕
弾道 1
ミート G+
パワー F
走力 F+
肩力 F
守備力 G+
捕球 G+
スキル
【ヘッドスライディング】【レーザービーム】【威圧感】【お祭りウマ娘】【走塁○】【ホーム突入】【代打○】
「なんなんだろこれ。なにが……どれ?」
彼女は知る由もないがそれはまごうことなきパ〇プロだった。
とりあえずパワーと走力?とやらを伸ばせばいいのかなと考えどうにかFまで伸ばし、なんかいっぱい持ってたスキルポイントで使えそうなのを見境なく取ってはみた。
だがそもそもゲームが違う。ステータスはウマ娘と同じなのか、スキルは発動するのか、それさえわからない。
それこそが彼女を怯えさせていた原因である。
「あ、居た!ハルウララさんとマネーガールさん、次はあなたたちの番ですよ!」
「え、マネちゃんと一緒に走れるの!?やったー!
よーし、負けないからねマネちゃん!」
「うぅ、マネちゃん負けちゃうかも……」
「えぇー!?し、しっかりしてマネちゃん!あのね、走るのってすっごい楽しいんだよ!」
ハルウララは地上に舞い降りた大天使であるという説があるが、おそらくその説は正しい。そうだろう?
大天使に励まされ続けるという、誰もがお金を払ってでも受けたい贅沢な治療を受け何とか持ち直したマネーガール。
ハルウララに手を引かれ、真ん中あたりのゲートに収まる。
ここまで来たからには仕方ないと腹をくくった彼女の脳内に突然、前世で聞いたことがあるキュピーンという音が鳴り響いた。これはたしか、スキルが発動した時の音。
そしてその音と共に脳内に浮かんだ言葉。それは──
『威圧感』
「わわっ!?マネちゃんの近くにいるとなんかピリピリする!」
突如としてマネーガールから発されたプレッシャー。
今すぐにでも「中央を無礼るなよ」とか言いそうな彼女が放つオーラは、ハルウララ以外の周囲のウマ娘を集中力をかき乱し、委縮させる。
当の本人は『今の何!?』とウマ耳をピーンとさせながらびっくりしていたが。
まあ、結果として委縮した彼女たちは出遅れて。
マネーガールは、周囲に遮るものが無い状態で快調に出発した。
走る。
走る。
ただひたすらに走る。
差しだの追い込みだの知識としては知っていたが、実際に走る側となるとそんなの考えてられなかった。
結果として彼女が選んだのはただひたすら前を走ればいい逃げ。そしてどうみても掛かっている。とりあえずトレーナー達からは『掛かりやすい子』と認識された。
そんなことはつゆ知らず、ただひたすらに一着を目指すマネーガール。
脳に響く効果音と共に『走塁〇』という文字が踊り、さらに体が加速する。
塁なんてどこにあるの?なんて野暮なツッコミはしなかった。とにかくプラスに働くなら何でも大歓迎。
このまま快調な一人旅になると思われたが、最終直線にて突如後ろから追い上げてくるウマ娘が現れた。ブリッジコンプだ。
その気配を察知したマネーガールは歯を食いしばり、速度を上げようとするが体が応えてくれない。これが最高速なのだろうか。
『ホーム突入』というスキルも発動したが、彼女に変化は起きなかった。
このままでは追いつかれる。
背中に氷でも突っ込んだかのような嫌な寒気が彼女を襲った。
マネーガールは負けられない。
今の彼女を動かしているのは夢でもウマソウルでもない。このままではいずれなってしまうであろう住所不定無職。
それには絶対なりたくないという強い、強い意志だった。
ブリッジコンプとは背負っているものが違うのだ。種類的な意味で。
「がぁぁぁぁあああぁぁあ!」
負の感情が詰め込まれた咆哮を放つマネーガール。そんな彼女の鬼気迫る思いに応えたのか、最後のスキルが発動した。
『ヘッドスライディング level1』
その言葉が脳裏によぎったその時、マネーガールを中心に景色が塗り替わり始めた。
緑が青々としていたターフはダート──いや、グラウンドに。
どんな一年生が入って来たのかを見に来た上級生やトレーナー達は熱狂的な観客に。
皆をぽかぽかな陽気で包んでいた春の陽気は殺ウマ的な暑さを持つ真夏の太陽に。
必死に応援歌を歌いながらタオルを振り回すメジロマックイーンは……多分無から生えてきた。
その中心にいたマネーガールは、いつの間にか『ヴィクトリーズ』というユニフォームを着て、茫然と塁に立っていた。
突如発生した異常事態にマネーガールは非常に混乱していた。
『これが領域展開ちゃんですか』『私はヴィクトリーズに入団していた……?』『まさかこれ固有スキル?ヘッドスライディングが?』『この演出の豪華さ、私ひょっとして星3?やったー!』など、次から次へと押し寄せる思考の波に溺れている。
そんな彼女を我に返らせたのは、キィィィンという快音だった。
マネーガールには野球経験はない。だが、どうしてかわかるのだ。
今、大きく空へと舞い上がった白球。あれはホームランにはならないと。
なら、走らなければ。あれが取られる前に、ゴールにたどり着かなければならない。そう本能が叫んでいる。
頭が何かを考える前に、彼女は本能に身を任せた。
「マネーガール!!!!走ってくださいまし────!!!!!!!」
ついでにメジロマックイーンも叫んでいる。まだ挨拶すらしたことがない彼女の声援は、ちょっとだけマネーガールの速度を上げた。
さっきまで自分が立っていた場所が何塁だったのかさえ分からない。そんな彼女の行先を本能が舵を取る。
次々と白い四角を踏み、砂埃を巻き上げる。なんでレース中にこんなことやっているのかという疑問は、観客とご令嬢の声援が搔き消した。
がむしゃらにグラウンドを駆け、しかし焦燥感に駆られる。あのボールに先を行かれてはならないと。
ちらりと後方を見ると、なぜかそこにはボールを持ったブリッジコンプがいて。
振りかぶって、投げた。
白いレーザーが後方から追い上げてくるのを感じる。
まずい、このままだと間に合わない。
あと数メートル。その勝利までの距離を。
ウマ娘の身体能力、それにすべてを賭け。
マネーガールは飛んだ。
飛べない豚はただの豚らしい。なら飛んだウマはなんというのだろうか。
後方から見ていたハルウララはのちにこう語った。「まるでペンギンさんみたいだった」と。
領域は失われ、世界は元の形を取り戻す。
茶色から緑に戻った地に綺麗なダイブを見事敢行したペンギンガール。そんな奇行に動揺したのかブリッジコンプの走りが一瞬乱れる。
マネーガールの起伏のないぺったんこな体は華麗に芝を乗りこなした。
そして「痛だだだだだだだだ!!」という気迫に満ちた声と共に、彼女はゴールに文字通り滑り込んだ。グラススライダーに改名できるかもしれない。
地に倒れ伏したマネーガール。そんな彼女に掲示板を見る余裕など残されていなかった。
母なる大地から伝わる地響きを肌で感じ取り、慌てて外側に転がって逃げる。
そのまま阿呆みたいに突っ伏していたら後続のウマ娘に踏まれ、良くてうどんかワイン、最悪の場合死体になっていたことだろう。
ローリンガール並みにごろごろ転がり、目を回した彼女にゴールしたハルウララは笑顔で近づいた。
「マネちゃんすごいねー!ハナ差?で、1着だって!良かったね!」
この世界で初めてのレース。そこで一着を取った彼女の感想は──
「すっっっっごいお腹痛い」
「え、大丈夫!?変なもの食べちゃったの?」
「うーん。多分…………打撲、かな」
腹から着地した彼女の体操服は、高校球児並に汚れていた。
説明
〈ペンギンガール〉〈グラススライダー〉〈ローリンガール〉〈灰とヒッコリーのバットで武装した首都の国会議員〉〈皇帝ペンギン一号〉
〈マネーガール〉
このお話の主人公。TS転生者。名前の由来は守銭奴ではなく野球の映画。マ〇ーボール面白いから見てね。
〈ハルウララ〉
いつもなにかしらの理由で顔色を悪くしている主人公を心配し、庇護すべき対象とみている大天使。かわいい。
ステータス
弾道 レースには関係ない
ミート レースには関係ない
パワー ウマ娘のパワーとは別物。レースには関係ない
走力 幸いなことにウマ娘のスピードと同じ
肩力 レースには関係ない
守備力 レースには関係ない
捕球 レースには関係ない
スタミナ この画面じゃわからない
根性 この画面じゃわからない
賢さ この画面じゃわからない
パワー この画面じゃわからない
今回発動したスキル
・ヘッドスライディング
マネーガールの固有スキル
ゴール直前で競り合ってた場合発動。ゴールに頭から突っ込み判定を有利にさせる。
低確率で怪我をして保健室送りになることがある。
極低確率で後続のウマ娘に轢かれ保健室送りになることがある。
普通はヘッドスライディングしたら危険行為として怒られるが、スキルとして発動した場合のみ許されるらしい。
ひょっとしたら三女神かシラオキ様あたりが『面白いからOK』といって誤魔化してくれているのかもしれない。
進化先『気迫ヘッド』
・威圧感
ゲートの中で発動。
周囲のウマ娘に威圧し、出遅れさせやすくする。発動タイミングといい、盤外戦術じゃないこれ?
・走塁〇
走力が上昇する。塁がなくてもなんか発動した。
・ホーム突入
ラストスパートに発動。
ゴールに突っ立っている人がいた場合、そいつを吹き飛ばす。
進化先『重戦車』
発動しなかったスキル
・お祭りウマ娘
特定のレースの時、能力が大きく上昇する。
・レーザービーム
何か物を投げた時に発動。
投げた物がレーザービームのように鋭く飛ぶ。アデュー。
進化先『高速レーザー』
・代打◯
レースの出場理由が誰かの代わりだった場合発動。
能力が上昇する。そんなことがレースで許されるかどうかは不明。
進化先『代打の神様』
もし楽しんでいただけたなら幸いです。
短編として投稿しましたが、評価や感想をもらえたらもうちょっと続くかもしれません。
ここ好きも大歓迎です。よろしくお願いいたします。
マネーガールにトレーナーをつけるとしたら?
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沖野トレーナー
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無から生えてきたオリトレ
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大丈夫沢博士
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桐生(院)ちゃん
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樫本理事長代理
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その他