固有スキル『ヘッドスライディング』   作:流石兄者

8 / 9
ネタ帳のネタ達の供養、2回目です。

よかったら見ていってください。


時には日常の話を②

【炎(に焼かれてるけどあれ全然大丈夫そうだな嘘でしょさては人間じゃねぇななんだっけあの中世で狩ってたのいやジビエじゃなくてえーとそうあれだあ)の魔女】

 

 

 パフェ。

 

 その名の語源がパーフェクト(完璧)からきている通り、それはスイーツとして完璧な存在である。

 甘ーいイチゴソースに純白の生クリーム、色鮮やかなフルーツに美味しいアイス!おっと、くるくるのクッキーも忘れないでね。

 

 そんなスイーツの王様と呼ぶべき存在を目の前に置かれたマネちゃんは、それから目を離せなくなっていた。

 それをニコニコしながら見守るタキオン。そんなタキオンを胡散臭そうに見るマンハッタンカフェ。

 

 3人と1パフェがいる状況にもかかわらず誰一人目を合わせていないというなかなかユニークな状況下で、最初に口火を切ったのはマネーガールだった。

 

「どうしたんですかこれ?すっごい美味しそうですね!」

「おや、そう思うかい?それは良かった、それはマネー君のために用意したものなんだからねぇ」

「え、じゃあ……食べていいんですか!?」

「もちろんさ!遠慮はいらないよ」

「わぁ……!ありがとうございます、いただきま──

「待ってください!」

 

 ソフトクリームが乗っているスプーンがマネーガールの口にエントリーする直前。

 焦った表情のマンハッタンカフェにより腕をガシッと掴まれ止められた。

 

「……私言いましたよね?タキオンさんから口に入れるものを貰ったら疑えって」

「心外だよカフェ~。私はいつも実験に協力してくれてるマネー君にご褒美を上げようとしているだけだとも」

「……って言ってますし、大丈夫じゃないですか?」

「なんであなたはそんなにタキオンさんを信じてるんですか……!?」

 

 マンハッタンカフェはショックを受けた。なぜ自分より隙あらば変な薬を飲ませてこようとするマッドの方が信頼されているのか?

 マンハッタンカフェはわからなかった。マネちゃんが研究や遊びに来たときに毎回、美味しいコーヒーを差し入れてるのに!

 まあマネちゃんの「にぎゃい(苦い)!」が見たくなり、時々『砂糖を入れ忘れた』だの『お友達のイタズラ』だのと偽ってブラック飲ませたりしてるけど、きっとそれは関係ないはずだ。

 

「安心していいよ。なにせそのパフェは私が作ったものではない、購入したものだからねぇ」

「あ、そうなんですね。……カフェさん?」

「……まあ、それなら」

 

『私、すんごい不服です』マンハッタンカフェはそんな表情をしながらも許可を出し。

 それを喜んだマネちゃんはニッコニコでパフェを堪能し始めた。

 

 時折「ん~♪」と歓喜の声を上げながら舌鼓を打つマネちゃん。

 その姿はまぎれもなく立派な女子高生(J K)であった。コイツほんとに前世男か?

 

 順調にパフェがマネちゃんのお腹に取り込まれ、体重不足な彼女の貧相な体にカロリーが染み込んでいく中、アグネスタキオンに変化があった。

 パフェが減っていくにつれタキオンの表情がニコニコからニヤニヤと、胡散臭い感じの笑みに変わっていく。

 

 だが、パフェに夢中のマネちゃんとそれをジト目で見るカフェは気づかなかった。

 

「どうやら、食べ終わったようだね。美味しかったかい?」

 

 この言葉を聞き、タキオンの方を見るまでは。

 

「ええ!とてもおいしかっ──?」

「…………?

 ……ッ!タキオンさん、貴方……!」

「おっと、言っておくが本当に嘘はついていないよ?そのパフェを買ったのはモルモット君さ」

「……タキオンさんのトレーナーさんが?」

「ああ、何でも『食べると気分が絶好調になるパフェ』らしい」

「何やってるんですかタキオンさんのトレーナーさん……」

「ちなみに売ってたのはたづな君だそうだ」

「何やってるんですかたづなさん……」

 

 なんかやべーアッパー系のオクスリが入ってそうなパフェを平然と売っている学園。それを購入して平然と渡してくるトレーナー。

 これには流石のタキオンも怖かったのか、ちょうどよく来た渡されたものなんでも口に入れちゃう赤ちゃ──マネちゃんを実験台にし、安全性を確かめることにしたらしい。

 

「さて、マネー君。気分はどう──

 

 カフェの怒りの矛先をどうにか学園に逸らすことに成功したタキオンが、マネーガールの方に視線を向けた。

 その先には。

 

 

 

今まで見たこともないくらいのイイ笑顔で、鼻歌を歌いながら、ゴキゲンに踊り狂っているマネーガールがいた。

 

 

 

「気分ですか!?サイコォォォ!!!!!」

「そ、そうかい……」

 

 

 ピカーン

 

 

 

 絶好調ウマ娘のヒントLvが1上がった。

 

 

 

「おっ!?なんかスキルも手に入っちゃいましたよ!なにこれどう使うのあっははははは!」

「うーん、やっぱり実験は大事だねぇ」

「……そうですね」

 

 なぜここまでマネちゃんのタガが外れているのか。

 それは、反動。それが大きすぎた。

 

 常時なにかしらのバッドコンディションがついているマネちゃんは、常に『不調』もしくは『絶不調』状態であった。

 それがやべーパフェの効果でいきなり跳ね上げられたのだ。ロケット並みの急加速により3,4段階も。

 

 まさにテンション爆上げ。テン上げってやつである。

 

 故に今こうしてマネちゃんが、まだサタデーのナイトではないのにフィーバーしてるのも仕方のないことなのだ。

 

「今ならどんなレースでも一着取れちゃいそうな気がします!早速桐生院さんに出走登録してもらわないと!」

「え、ちょ、「行ってきます!!!!」

 

「ま、待ちたまえよマネー君!

今日は進化したスキルがどんな効果を持っているかの研究をする予定だっただろう!?」

「……諦めてマネーガールさんを元に戻す方法を探してください」

 

 

 

 

「~~♪~~~~♪」

 

 階段をまるで蝙蝠男のライバルのピエロのように踊りながら降りていくマネちゃん。

 

 最高の笑顔と共に、リズミカルに腕を動かし、空を蹴り上げる。

 

 五体すべてを使い全力で通行の邪魔になっているマネちゃん。でもそんなの気にしない!

 だって気分が絶好調!どこかからノリノリの音楽が聞こえてくるような気さえするのだから!

 

 そんなゴキゲンでノリノリなマネちゃんは当然、注目を集めていた。

 

「うわ、どうしちゃったんだろうマネーガールさん」

「あー、あれだ。徹夜明けなんだよきっと。ほら、目の隈すごいじゃん」

「あれ元からじゃなかった?」

「そうだっけ?おーいマネちゃん!なんかいいことあった?」

「パフェ貰ったー!!!」

「おぉ、よかったね~」

「パフェ一個であんな喜ぶんだ……今度落ち込んでたらあげてみようかな。見てて面白いし」

 

 

 幸いにも『邪魔だなー』より『珍しく元気そうでよかった~』が勝ったおかげで彼女は止められることはなかった。

 周囲から生暖かい目で見られながらも校内を歌って踊りながら練り歩くマネちゃん。

 

 そんな絶賛黒歴史大量生産中の彼女に興味がわき、話しかけようと近づく勇気あるウマ娘がいた。

 

 

「ねぇ、アンタってマネーガールよね?」

「んー?そうですよー!!」

 

 

 そのウマ娘の名はスイープトウショウ。

 トンガリ帽子がとっても目立つ、駄々っ子魔法少女であり──

 

 

 キュピーン

 

スイープ

 

『燃えるウマ娘』『魔術師』が一時的に使用可能になりました。

 

 

 

 スキル『一掃』の進化系、『スイープ』の起動条件でもあった。

 

 

 

「……あれ?なんで今スキルが……?」

 

 想定外のスキルの起動。急に脳裏をよぎる嫌な予感。

 だがその理由を考えることはできなかった。

 

「あのさ、アンタって実は……

 アタシと同じ魔法使いだったりしない?」

「…………………………へ?」

 

 思考停止。

 なぜその結論になったのか理解できなかったマネちゃんはアホみたいに口をポカンとあけた。

 それを見かねたのかスイープは解説を付け加える。

 

「アンタのレース、すごかったわ。飛んだり跳ねたり、回ったり!あれ、魔法でしょ!?」

「あ、あーそういう……」

 

 自身が発生させた超常現象。それをスイーピーは魔法と解釈したらしい。

 実際は魔法ではなくスキルなのだが、それを言っても理解してもらえるか怪しい。

 そして何より、目の前にいるスイープの目が、それはもうキラッキラに輝いているのだ。

 もし今ここで『魔法じゃないよーん』なんて言ったら彼女の目から光が失われるかもしれない。

 

 そんなことになったら、微笑ましいものを見るような目でこちらを眺めている周囲の野次ウマから『そうか、そうか、つまりきみはそんなやつなんだな』って言われてしまうだろう。たぶん。

 

(ど、どうすれば……?)

 

 もう魔法って言ってしまおうか。スターシェル(照明弾)ぶん投げて『ルーモス(光よ)!!!』とか言えば誤魔化せるでしょ。

 

 追い詰められた頭でそう考え始めたマネーガールは、護身用として持ち歩いている野球ボールを取り出そうと懐に手を突っ込んだ。

 

 その瞬間。

 

 

 キュピーン

 

魔術師

 

 

 突如、バサァ!という音と共にどこかから大きな黒い布が現れた。

 人ひとり余裕で隠せそうなそれは瞬時にマネーガールを覆い隠し、包む。

 

 すわ現代に一反木綿でも蘇ったのかと騒然とする周囲。

 そんな中驚きつつも取り込まれたマネちゃんを助けようとスイープは手を伸ばした。

 

 だが、手が届く前にしゅるりと布は剥がれおち。

 

 

 

大きなトンガリ帽子を頭に載せ、黒いローブを身に纏ったマネーガール(ハロウィン)が姿を現した。

 

 

 

「????????」

 

 困惑しながらもまじまじとおニューの服をながめるマネちゃん。

 自身に突如新衣装が実装されたことに頭が追い付かず、喜ぶことができていない。そんな彼女の代わりに大いに喜ぶものがいた。

 

「す……すごいわ、すごいわ!あなた、本物の魔女なのね!グランマみたいでかっこいいわ!」

「え、あ……う、うん。そうだ、私は魔女だぞー!」

 

 マネーガールは無邪気な子供に弱かった。正確には無邪気な子供の純粋な視線に。それはそれはもうザコだった。

 ヤケクソ気味に叫ぶマネーガール。もう取り返しつかないねぇ。

 

「ねぇ、なんか魔法使ってみてくれないかしら!アンタの魔法見てみた──

 

 キュピーン

 

燃えるウマ娘

 

 

 

 

その言葉が聞きたかった。

 

そう言わんばかりに瞬時にスキルが起動し。

 

マネーガールの体に火が付いた。

 

 

 ボウッという異音。揺らめく赤。感じる熱。

 突如として目の前のウマ娘が発火するという、もし織田信長が見たらトラウマがフラッシュバックするであろうその光景は。

 

「」

 

 流石のスイーピーも絶句し、顔を青ざめ、涙目にさせるほどのインパクトを誇っていた。

 

(まずい……!)

 

 さっきまで満面の笑みではしゃいでいた子、その笑顔が自身のせいで曇ってしまった。

 それは今のマネーガールにとって、自身の体に火がついたことよりもまずい事態であった。

 

 幸い、火がついているにもかかわらず、なぜか熱さも痛みも感じないし呼吸も問題なくできる。

 なら大丈夫。多分新衣装マネーガール(炎上)とかでしょ。

 

 そのように問題を先送りにしたマネーガールは、スイープを泣き止ませ笑顔を取り戻そうと頭をフル回転させる。

 一つの解決策を思いついた。

 

 

「ど、どうだー!私こそが『焔纏いの魔女』!マネーガールだー!」

 

 

 絶好調なテンションだったからこそ思いついたその策。

 

 火を掌握し、操る魔女。そう思わせること。それこそがマネーガールの狙いだった。

 実際は掌握どころか勝手に発火して主人をセルフ魔女狩り状態にするやべースキルだが、そんなの言わなきゃわからない。

 

「私に燃やせないものはないの。よろしくね、スイープさん!」

(お願い!泣き止んで!後生だから!)

 

 今のところ自分しか燃やしてない、そんなマネーガールの顔は真っ赤だった。

 恥じらいにより赤くなった顔を炎で隠しながら、懸命にキャラぶれっぶれの魔女を演じ続ける。

 

 そんなマネちゃんの努力は──

 

「そ、そうだったのね!『焔纏いの魔女』、かっこいいわ!」

 

 無事に、実を結んだ。

 

「異名がついてるってことは、有名な魔女なのかしら?」

「そ……そうね。ファンタス〇ィック4のウーマントーチって知ってる?」

「知らないわ!」

「あれ実はわたs……え、知らない?そ、そっかぁ……」

 

 世代の差に打ちのめされながらも、無事に笑顔を取り戻した。

 そのことにほっとしたマネちゃんは、やっと訪れた平穏な時間を楽しもうと── 

 

 

 

「あそこです!マネーガールさんが燃えてるんです!」

「承知っ!今助けるぞマネーガール!」

「マネちゃん大丈夫!?死んじゃやだよ!」

「おいおいおいマネー君!面白いことをやるときは事前に連絡してくれって言ったじゃないかぁ!」

 

 

 畳みかけられる言葉の波。噴射される消火剤。それに対抗するため出力が上がる焔。

 一斉に襲い掛かったそれは、マネーガールの対処できるキャパシティを大幅にオーバーしていて。

 

 慣れないハイテンションとスイープへの対処で疲弊したマネーガールの精神は悲鳴を上げながら、ブラックアウトした。

 

 

 

 

 説明

 

 

<マネーガール>

 

 やる気UPスイーツによりテンションがおかしくなっていた状態の記憶が全部残ってたTS転生ウマ娘。

 もちろん黒歴史になり、ベットの上でびったんびったんした。それをおさかなさんごっこだと認識したハルウララもびったんびったんした。

 

 得意な魔法はルーモス(スターシェル)インセンディオ(燃えるウマ娘)

 あとデパルソ(ホーム突入)

 

 この度『ハロウィン』と『炎上』の2つの新衣装が実装された。やったね。

 

<スイープトウショウ>

 

 魔女友ができてウキウキ。スキル『スイープ』の効果もあるが、実際に魔法(スキル)を見せられ好感度はうなぎのぼり。

 一日で友情トレーニングができるレベルまで仲良くなった。

 

 ちなみにあの後ルーモス(スターシェル)も見せてもらった。

 スイープトウショウの絆ゲージは最大だ!

 

 

今回登場したスキル

 

・スイープ

 

『スイープ』と名のつくウマ娘と交流する時に発動。

 

 めっちゃ仲良くなれる。

 交流している間、『魔術師』『燃えるウマ娘』が使用可能になる。

 

 この後マネちゃんは一掃のステータス上昇効果が消えたことにめっちゃ焦ることになるが、それは別のお話。

 

・魔術師

 

 新しい衣装が解禁される。

 

 トンガリ帽子とローブの魔術師風衣装。これでハロウィンもばっちり!

 おまけとして早着替え機能もある。魔法少女に変身はつきものさね。

 

・燃えるウマ娘 

 

 火炎属性付与(エンチャントファイア)。もしくはセルフ・インセンディオ。

 一定時間燃える。

 おまけ的な効果として、スタミナに余裕がある間受けたデバフを軽減する。

 

 この炎は、『服だけ溶かすスライム』みたいな気持ち悪い優しさと都合のよさを持っており、『燃えちゃまずいもの』を燃やさない。

 

『あれを燃やそう』とマネちゃんが考えた時のみ、炎としての効果を発揮。

 それのみを的確に燃やすが、火球を飛ばすなんてことはできないため直接触れる必要がある。

 そのため他者を攻撃する場合、触れたり抱き着く必要がある。そんな敵ダクソに居なかったっけ?

 

 今のところスイープを喜ばせるためか、カルストンライトオやオグリキャップが焼き芋をやるときにしか使っていない。

 

 ちなみにマネちゃんが気絶した後、秋川理事長が持ってきた消火器VS燃えるウマ娘の仁義なき戦いが発生。

 燃えるウマ娘が勝利した。

 

 次回!『消火栓VS効果が切れる直前の燃えるウマ娘』!お楽しみに!

 

 

 

 

【サポートカードイベント>>> 幻覚の 正体みたり でちゅねママ】

 

 夜、担当ウマ娘を寮まで送り届けた帰り道──

 

「あうぅ、やっぱり怖いよ……私には無理だよ……」

 

 その声が聞こえたほうを見ると、膝を抱えながら道端に座り込んでいるウマ娘を発見した。

 

【どうしたの?】

「……?

 あ、○○さんのトレーナーさん、こんばんは」

 

 私の声に反応し、そのウマ娘は顔を上げる。

 見ると、蹲っていた子はマネーガールだった。このところ何かと話題のウマ娘である。

 

 やれ、桐生院さんに向かってレース場の中心で愛を叫んだだの。

 やれ、URAを買収してジュニア級で葵ステークスに出ただの。

 やれ、家どころか家族もない、天涯孤独のおいたわしいウマ娘だの。

 やれ、ST-2(サティ)に対抗するために、タキオンによって作られた改造ウマ娘だの。

 やれ、違うぞ彼女は宇宙から来たウマ娘そっくりのUMA娘なんだぞだの。

 

 情報が錯綜しすぎて何が本当でなにが嘘かわからないが、火のないところに煙は立たない。

 彼女と会って話すまでは、とにかくやべーウマ娘なのだろうと思っていた。

 

【どうしたの、こんなところで蹲って。風邪ひいちゃうよ】

「し、心配させてすみません。その……えっと」

 

 だがマネーガールは、自分が想像していたのとは180度くらい違うウマ娘だった。

 

 破天荒の真逆。礼儀正しく、素直でおとなしい子。

 困り眉で「あはは……」とこちらに笑いかけているその儚げな表情と、真っ白な肌に痛々しいほど染みついた目の隈が庇護欲を駆り立てる。

 

 そう、ゴールドシップ(やべー奴)というよりは、『不幸体質』が『暴走する超能力』に置き換わったライスシャワーというような。 

 まさにそんな感じのウマ娘であった。

 

「実は、以前お話した幻覚。帰り道でまた見ちゃったんです」

【そっか、だから……】

 

 彼女と話すようになってから、一つの相談を受けた。

 なんでも、「ガラガラを持ったウマ娘が無言でおいでおいでしてくる幻覚が見える」のだとか。

『それ幻覚というより怪異じゃない?』と思ったりもしたが、困っている彼女を放っておくこともできず、解決するべく東奔西走した。

 

 もはや彼女のかかりつけ医と化している保険医に相談し、

『やっぱり怪異じゃない?』と思いマンハッタンカフェに相談し、

 藁にも縋る思いでゴルシちゃんなんでも相談センターにも相談した。

 

 そして、その果てに手にいれた情報は『圧倒的睡眠不足』『少なくとも怪異や幽霊ではない』『幻覚を通り抜けることができれば脳がまぼろしだと認識し治る(要出典)』の3つで。

 今すぐ解決できるような情報は手に入っていなかった。

 

「ゴールドシップさんのアドバイス通りに、幻覚に突進してみようとは思ったんですけど……やっぱり怖くて」

 

 そう話すマネーガールの体はプルプルと震え、ウマミミがペタッと伏せられ、尻尾は力なく地面を這っている。

 変なところで勇気があるなぁと思いつつ、彼女の目の隈をこれ以上濃くしないためにも寮まで送ることにした。

 

【よかったら、寮まで送るよ】

「……いいんですか?すみません、助かります」

【寮に着けたら大丈夫そう?】

「はい。ウララちゃんもいますし、きっと大丈夫です。

 ……あの」

【どうかした?】

「怖いので……手をつないでも、いいですか?」

【いいよ】

「!ありがとうございます!」

 

 そうして、2人で手をつなぎながら夜のトレセン学園を歩き始めた。

 いつの日か彼女がぐっすりと眠れる日が来ることを祈りながら。

 

 

 

 

 

 道中会話も特になく、とても静かな夜だった。だがその静寂が心地よくもあった。

 この間にマネーガールの精神も安定したように見え、少しほっとする。

 もうすぐ寮に着く、何事もなく終わりそうだと思ったその時だった。

 

 

 

歌が、この穏やかな時間を打ち破った。

 

 

 

「ゆーりかごーの (うーた)をー」

 

 

 ヒュッと、隣から息をのむ音が聞こえる。

 その音を発したマネーガールの方を見ると、先ほどの穏やかな表情が嘘のように凍りつき、顔が青ざめている。

 じわじわと繋いでいる手に汗がにじんだ。だが、この汗が彼女だけのものかはわからなかった。

 

 

「カーナリヤーがうーたうよー」

 

 

 慈愛に満ちた、綺麗な歌声だった。だが、この場にはふさわしくない。絶望的に。

 それ故に、子供を寝かしつける為の優しい歌が、ただただ恐怖を呼び起こす歌に変化する。

 そして、それはだんだんと近づいてくる。

 それにつれ、さらに一つの音が増えた。

 

 

 カランコロンと、ガラガラの音が。

 

 

「ねーんねーこ、ねーんねーこ、ねーんねーこーよー」

 

 

 震える体に鞭を打ち、なんとか音の発生源の方を向く。

 我々を恐怖のドン底に突き落としたものは何か。

 

 

 

それは、マネーガールの言っていた『幻覚』と特徴が一致する。

ガラガラを持ったウマ娘、スーパークリークだった。

 

 

 

「あ、あわ、あわわわわ……」

 

 これが彼女の言っていた幻覚だろうか。ならなぜ、私にも見えている?集団幻覚?

 ならこの歌と音は?幻聴?集団で?あり得るのか、そんなことが。

 

「し、死球『レーザーデッドシェ──あ、ああ……!」

 

 マネーガールが懐からボールを取り出そうとしたが、しかし手の震えがひどすぎて落としてしまう。

 ……ボールでなにをしようとしていたのだろうか。

 

 そんないっそ面白いほど怯える彼女を見ていると、冷静さを取り戻すことができた。

 おそらくあのスーパークリークは本物だ。なぜこんな怖がらせるようなことをしているのかは皆目見当もつかないが。

 

 さて、自分はどうするべきか。

 

 自分がスーパークリークに聞いてみてもいいが、マネーガール自身に解決させるべきかもしれない。

 少々酷かもしれないが、それが彼女の成長につながるかも。

 

 

 

 >【マネーガールを勇気づける】

【何をしているのかスーパークリークに聞く】

 

 

 

 

 マネーガールを勇気づけることにした。

 

 つないでいた手を離す。そうすると彼女の表情が絶望に変わってしまったのを見て、慌ててしゃがんで目線を合わせ、向かい合う。

 

【落ち着いて、大丈夫だから】

「あ、ああ、トレーナーさん!ち、ちちか、近づいてくるんです!どうすれば!?」

 

 予想よりも恐慌状態に陥っていた彼女の目はグルグルと渦を巻いており、おおよそ正気とは言えない状態であった。

 ……判断を誤ってしまったかもしれない。

 

【お、落ち着いて!あれは本物の──】

「落ち着く……そうだ、ゴールドシップさんの言う通りに、ここは──!」

 

 そう言うや否や、止める暇もなくスーパークリークに向けて走り出したマネーガール。

 しかし恐怖デバフが相当効いているのか、かなりその速度は遅い。

 

 結果として、マネーガールは小走り程度の速度でスーパークリークに接近し──

 

 スーパークリークの胸に衝突した。

 

「わぷっ!?」

 

 そのバストは豊満であった。

 

「……え?あれ、なんで?なんで触r

「やっと、来てくれましたね。マネちゃん。 

お母さん、ずっと待ってたんですよ」

「…………きゅう」

 

 ハルウララよりホラー耐性が無いマネちゃんにマジモンのホラーが襲い掛かり、一撃で意識を刈り取っていった。

 しょうがないよ。私も怖いもんこれ。

 

「あらあら~、安心して寝ちゃったんですね。よしよし」

 

 自身が気絶させたということに気づかずマネーガールを抱きしめ、撫で始めたポジティブモンスター。

 ……もう手遅れだが、とりあえず事情を聴いてみることにしよう。

 

【こんばんは、スーパークリーク】

「あら?こんばんは、○○ちゃんのトレーナーさん。こんな夜遅くに何してるんですか?」

【こっちのセリフなんだけど……】

「私ですか?マネちゃんが心配で迎えに来たんです」

 

 おそらくマネーガールにはあの世から迎えが来たと思われていただろうが、それを言ったら事態が悪化しそうなので黙っておく。

 

「ふふ。最初はマネちゃんが自分から来るまで待っていたんです。

 でも、ぜんぜん来てくれないし、目の隈も酷くなるばっかり。恥ずかしがり屋さんでかわいいですが、これ以上寝不足になるのは見過ごせません。

 だから迎えに来たんです。安心させるためにお歌を歌いながら」

 

 マネーガールには幻覚扱いされていたし、安心どころか恐慌状態にさせていたのだが、それを言ったら事態が悪化しそうなので黙っておく。

 

「でも、最後には自分から抱きついてきてくれました。お母さん、とっても嬉しいです」

【……お母さん?】

「?はい、お母さんですよ~」

【……そっか】

「はい♪」

 

 

 これは理解してはいけないものだ。

 そう思った私はそれ以上聞かず、マネちゃんお持ち帰りスーパークリークをそのまま見送ることにした。

 

 最後、連れ去られるマネーガールの手がこちらに向けて伸ばされている気がしたが、きっと幻覚だろう。

 彼女は気絶しているはずなのだから。

 

 

 

 

 その時、ふと閃いた!

 

 このアイディアは、担当ウマ娘とのトレーニングに活かせるかもしれない!

 

 担当ウマ娘の成長につながった!

 

 根性が30上がった

『強心臓』のヒントLvが3上がった

 マネーガールの絆ゲージが少し減った。

 

 

 

 説明

 

 

<マネーガール>

 

 翌日、スーパークリークの部屋で起きたマネちゃん。

 起きてすぐの寝ぼけた頭に全力の甘やかしを叩き込まれ――

 

 悪くないな、と思った。

 

<ナリタタイシン>

 

 それをドン引きしながら見てた。相部屋で倒錯的なプレイをしないでほしいと、切実に思った。

 

<偽造書類>

 

 大いなる力により『家族:なし。母候補:スーパークリーク』が『母:スーパークリーク』に書き換えられていた。

 多分これが一番のオカルト。

 

<担当ウマ娘>

 

 突然トレーナーから怪談みたいな話を聞かされた可哀そうな子。

 

 えーと、つまり?

 マネーガールさんのお母さんが夜、歌いながらマネーガールさんを迎えに来たっていう話ですか?

 え?実際にはお母さんじゃない?お母さんを名乗っているウマ娘?

 

 なにそれこわ。え、実話?昨日の出来事!?ちょ、助けなくていいんですか!?




ゆりかごの歌

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。