堅物剣鬼が双子姉妹に”捕食”べられるまで   作:タク@DMP

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第13話:因縁

 ※※※

 

 

 

「白亜高校周辺を、結界で固めろ。鬼と動物霊を取り逃すな──ッ!!」

 

 

 

「ええッ!? 都内に鬼が発生!? そっちの対処に追われてる!? クソッ、なかなか援軍が……!!」

 

 

 

「だーかーら、ウチは来々軒じゃねーって言ってんだろ!! ドリキャスの出前はやってないんだって!!」

 

 

 

 ──このように、霊術師たちは東京で発生した動物霊及び、鬼の大量発生の対処に追われていた。

 

 ある者は異変発生の中心となっている白亜高校の閉鎖。ある者は都内での動物霊の封印。ある者は迷惑電話の対応──それぞれがそれぞれの戦いに挑んでいた。

 

 そして当然、異変の中心である白亜高校内部に突入しようとした術師たちも居たが──

 

「ダメです!! 結界が既に何者かによって展開されています!! 侵入できません──ッ!!」

「チッ、先手を打たれたねェ……こっちの術を真似されたか……!! 臆すんじゃないよッ!! 人間の力、畜生霊に思い知らせておやりッ!!」

「ハッ!!」

 

 ──既に白亜高校周辺は結界によって閉鎖されていたのである。

 

 動物霊は中から出る事が出来るが、人間は外から中へ入る事が出来ないように「設定」されてしまっている。

 

 その上から更に、数人がかりで結界をかぶせる事で動物霊や鬼がこれ以上外に出る事を防いだものの──もし元凶であるあの巨大キメラに暴れられでもすれば破壊されてしまうくらいには心許ない守りだ。

 

「鹿島の所の”守りの鹿目”と同じ……ッ!! あの化け物の中にもメガロケロスの動物霊が居るねェ……!!」

 

 ギリ、と冥土ナースは唇を噛み締める。

 

 援軍を連れてきた、と言ったものの、校内に入れなければ何も意味が無い。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 襲い掛かる鬼たちを叩きのめし、封印し、ついでに動物霊が侵入しないように御札まで貼り、3人はヘトヘトの身体を引きずって屋上までやってきた。

 

「や、ヤバかったね……こんなに鬼が湧いたことなんて無かったのに」

「……ええ。出会ってきた個体は全て封じ込めましたが……」

「此処からが本番だ」

 

 つるぎは霊刀を構えたまま、自らが前に出て扉を開けようとする。

 

 そこに──雷花、そして凍花もドアノブに掛けた手に掌を重ねた。

 

「まーた自分が前に出ようとしてる」

「……私達は3人一緒ですよ。どんな修羅場でも」

「……そうだったな。行くぞッ!!」

 

 3人は一斉に屋上に雪崩れ込んだ。

 

 下からでも見えていた巨大なキメラの怪物から、止め留めなく動物霊が零れ落ち続けていく。

 

「見れば見る程、不気味なんですけど──ってか、何アレ……尻尾、ムカデ!? ムカデだよねーッ!?」

「姉さんしっかりしてください……アレはアースロプレウラ、植物性の巨大ヤスデです」

「虫じゃんッッッ」

「雷花」

 

 ぎゅっ、とつるぎが雷花の手を握り締めた。

 

「……大丈夫だ。俺が傍にいる」

「ッ……ボ、ボクだって! 守られてばっかじゃない! ……虫は見ただけでゾワゾワするけど、そんな事言ってる場合じゃないよね!!」

「さぁて──申し開きを聞きましょうか? ……洞道コトリ。いえ──()()()()()()()

 

 キメラ合成鬼が此方に気付いたのか、重い躰を引きずって此方を向いた。

 

 頭部はティラノサウルスにトリケラトプスの角を無理矢理付けたような外観になっており、胴体は合成した動物霊の多さゆえか半ば崩れ落ちてしまっている。

 

 何処までもグロテスクな巨大キメラは呻き声を上げたのち、心胆を寒からしめるような声で言った。

 

「ははぁん……漸く来タね……ッ!! こうして相対するのは、かれこれ7年ブリかしらァ?」

「7年ぶり? お前と出会ったのは、この学校が初めてだよね!?」

「……いいや、俺はこの声に覚えがある」

 

 つるぎは霊刀を構えた。

 

「そうヨ、ボウヤぁ! 貴方は私に二度モ騙サレタ!! 私ノ助けを求メル声で──私達を封ジタ祠を、壊シテクれたモノねぇ!!」

「……まさかッ……お前、あの時の!?」

「……やっぱりな」

 

 7年前、運命のあの日。

 

 野山を走って遊んでいた3人の元に聞こえてきた声。

 

 それは、助けを求める声であり──同時に、悪霊の呼び声でもあった。

 

 声に従い、祠を破壊したつるぎ達の前に現れたのは無数の黒い靄。

 

 そして、それに飲み込まれた雷花と凍花は動物霊に憑りつかれ、つるぎは──荒神家代々の体質により、憑依を免れた。

 

「お前のように、力だけはあって無駄に純粋なガキは、騙し甲斐ガあったワ! カカカカッ!!」

「つまり、貴方が全ての元凶……ですか」

「やいやいやい!! 何でこんな事をするんだよ、動物霊!!」

「私が──弱イからヨっ!!」

「弱い……?」

 

 つるぎが訝しむように言った。

 

 

 

「そう!! 弱かったから、あの祠に封ジラれた動物霊の中で、私ダケが封印が甘カッタ!!」

 

 

 

「弱かったから、コウして見過ごされ、着々ト力を付ける事が出来たッ!!」

 

 

 

「デモ──()()()()()()、私達ハ絶滅シタのヨッ!!」

 

 

 

 のたうち回る巨大キメラは、愉快そうに言った。

 

 最早、今のキメラ合成鬼は元となった動物が何なのか分からない程に変性してしまっている。

 

「目的は何だ……!」

「人類の絶滅ッ! お前達も動物霊の仲間入リよ!」

「……やっぱりそうくるか」

「人類があの日、私達ノ楽園ニ訪れナケれば──ッ!! お前達ノ楽園モ、地獄に変エてやるわッ!!」

 

 悍ましい獣と竜の咆哮が重なり合う。

 

 キメラは咆哮すると、重い体を揺らして襲い掛かるのだった。

 

 無数の動物霊のレプリカが一斉につるぎ達に雪崩れ込む。

 

「ステゴ剣鬼の封──ッ!!」

 

 すぐにつるぎは霊刀を構え、御札を切り裂く。

 

 中からは黒い靄が噴き出し、鎧となって纏われる。

 

 次々に動物霊がつるぎに噛みついた。しかし──頑強な鎧には傷ひとつ付かない

 

 そればかりか、つるぎの放った突きでレプリカたちは掻き消え、大きな風穴が開いた。

 

 突破口は開かれる。雷花が跳んだ。そして凍花が空高く飛んだ。

 

 思いっきり凍花が息を吸い込み、そして吐き出す。

 

 

 

 

「──凍土の颶風(コールドボレアス)ッ!!」

 

 

 

 

 ピキピキピキと音を立てて、キメラ合成鬼が凍り付く。

 

 そしてそこに、電光の如き勢いで駆け抜ける雷花が拳を握り締め──キメラ合成鬼の身体を駆け抜けていく。

 

「生者の領域に、死者が入り込むなーッッッ!!」

 

 右の拳にはプラスの電気を纏わせ、雷花は思いっきりキメラの頭部を殴りつけた。

 

 巨体に電気が流れ込んでいく。

 

 同時に体を覆っていた氷が砕け散り、キメラはバラバラになっていく。

 

 しかし──それでも、無数の動物霊が組み合わさって構成されていたに過ぎないキメラは、再び再構成されていくのだった。

 

「ウッソでしょ!?」

「姉さんッ!!」

 

 殴った勢いで落下した雷花を、凍花が足で服を掴んでキャッチする。

 

 だが、キメラは再び歪に蘇っていくのだった。このままではキリがない事を、この場の3人は察する。

 

 あの巨体は動物霊たちが肉の壁として押し固められて構成されており、身体を崩しただけでは中の本体にまでダメージを与えられていないのだ。

 

 それを示すかのように、大量の翼竜がキメラの体から現れ、凍花は一時撤退を余儀なくされた。

 

(そして、憑依先である人間に動物霊を封じ込めなければ意味が無い……!! 更に、元凶たる呼獲箱(コトリバコ)の回収までしないといけないのか!!)

 

 重い躰を引きずりながら、つるぎは襲い掛かる鬼たちを次々に斬り払った。

 

 鈍重だが、漸くつるぎも勝手が分かってきた。ステゴ剣鬼は──想像以上に頑強極まりない。

 

 そこに、雷花と凍花も現れ加勢に入る。追ってきた翼竜をブレスで凍らせて撃墜した凍花が問うた。

 

「つるぎさんッ! その鬼の姿、どんなカンジですか!?」

「1人で多人数を相手するのに、これ以上ないが……身体が重すぎる」

「要するにタンクって事ですね……!!」

「タンク?」

「MMORPGで言うタンク職、敵のヘイトを買って、攻撃を一心に集める職業です」

「成程な……! 俺にぴったりだッ!!」

「でも無茶は厳禁だよ!? それに、つるぎだけ痛い思いをするなんて有り得ないから!!」

「安心しろ、これは自己犠牲じゃない。いつもの役割分担だ」

 

 どすん、と剣を構えたつるぎは迫ってくる巨大肉食獣を尻尾で薙ぎ払った。

 

「雑魚達を俺が引き受けて一気に薙ぎ払う。凍花がブレスでキメラの身体を凍らせて、雷花がその間に本体の場所を特定する」

「──バカがッ!! それなら3人纏めて消し飛ばしてくれるわッ!!」

 

 キメラ合成鬼が動物霊のレプリカたちを押し固め、巨大な光線を撃ち放つ。

 

 しかし、ステゴサウルスの背のプレートの如き盾を顕現させたつるぎは──真正面からそれを受け止めてみせるのだった。

 

「ぎぃっ……!? 馬鹿な、今のが効いていない……だとォ!?」

「……散開ッ!! 手筈通りに行くぞッ!!」

「うんっ!!」

「了解ですッ!!」

 

 再び空を飛ぶ凍花。

 

 ディモルフォドンやプテラノドンといった翼竜の群れが彼女を襲うが、空中戦に於いて凍花は無敵だ。

 

 霊気を解放するだけで周囲の気温が一気に下がり、近付く邪魔者たちは氷漬けになって地面へ墜落していく。

 

 そして、再びキメラに向かってブレスを放つのだった。

 

「ぐぎぃいいいいい!? 寒イ!! 寒い寒イ寒い!!」

「とっとと出てきたらどうですか? ……レプリカの中に隠れてないで」

「お断りよォォォーッ!!」

 

 ずぽん、と音を立てると、キメラから鳥のような足が生えていく。

 

 そしてあろうことか、胴から上が氷漬けになったままつるぎと雷花目掛けて走り始めたのだった。

 

 氷も解けてしまっており、先程よりもキメラ合成鬼の力が増していることを示している。

 

「雷花ッ!! 合わせろッ!!」

「う、うんッ!!」

 

 つるぎが背中から身の丈程もあろうかという巨大な大太刀を取り出す。

 

 そして、迫ってきたキメラ合成鬼目掛けて大太刀を突き立てる。

 

 強靭なステゴ剣鬼の脚力は、巨体をも押しとどめるものであった。

 

「ぎぃいいいいいいい!! 押し潰れなさいッ!! このこのこのォォォーッ!!」

「悪いが、もう俺は潰れるつもりは無い……ッ!!」

「貴方の所為で、そこの二人は動物霊に憑カれたのよォ!! 貴方さえ居なければ、今頃平穏な生活を送っていたかもしれないのにねェ!!」

「……雷花ッ!!」

「う、うんっ!!」

 

 もう、つるぎはキメラ合成鬼の戯言に耳を貸しはしなかった。

 

 そんな事はもう、つるぎの中ではとっくに解決した問題だったからだ。

 

「──だとしても……この二人には俺が必要で──俺も、双子たちが必要だッ!!」

「ボク達のこと何にも知らない癖に、好き勝手な事を言うなッ!!」

 

 大太刀でキメラの進撃を受け止めている間に、雷花が思いっきり跳躍する。

 

 殴るだけでは中の本体にダメージは与えられない。それならば、貫くだけの話だ。

 

 凍花が空から鋭く尖らせたアメフトボール大の弾丸を撃ちだす。

 

 そして、撃ちだされた弾丸を受け取り、雷花は弾丸にマイナスの電気を流し込み、そしてキメラ合成鬼に肉薄するとそれを捻じ込んだ。

 

 

 

「”電導式・氷の穿釘(アイスバンカー)”ッ!!」

 

 

 

 プラスとマイナスの電気は引き合う。

 

 さっき、体内に流し込んだプラスの電気と、弾丸に流し込んだマイナスの電気は引き合い──弾丸は物凄い速度でキメラを貫いた。

 

「ぎゃあああああああああああああああ!?」

 

 絶叫がキメラから響き渡った。

 

 中を貫かれ、本体にダメージが入ったのだ。

 

 のたうち回りながら、キメラは暴れ回るが、体幹がガッタガタの巨獣ではつるぎの相手にならない。

 

 大太刀の一振りで倒れてしまうのだった。

 

「ク、クソッ、おのれェ……!! まとめて喰らい尽くしてくれる……!!」

 

 だが、今度はキメラの体から大量のバッタが姿を現す。

 

 流石の雷花も顔を真っ青にしてしまい、つるぎに向かって飛びつくのだった。

 

「逃げろ逃げろ、逃げ惑えッ!! 人類を危機に追いやるのは、いつだって小さな生き物だッ!!」

「──今に限っては逃げてくれたのを感謝しますよ、姉さん」

 

 間が悪い事に、昆虫は冷気に弱い。

 

 ダマになってつるぎ、そして雷花に向かうバッタの群れに、思いっきり冷気の塊を直上から落とす。

 

 

 

「──”凍土の爆弾(コールドボム)”」

 

 

 

 一瞬で冷気が爆ぜて、後にはグラスホッパー氷河が出来上がる。

 

 バッタを閉じ込めた氷のオブジェの完成だ。

 

 そこに、つるぎが太刀を振り払い──オブジェを根っこから叩き斬る。

 

「虫は──殲滅ーッッッ!!」

 

 そして宙に浮かび上がった氷のオブジェを、雷花がマイナスの電気を纏った拳で叩き砕くのだった。

 

 

 

「”電導式・氷の散弾(アイスショットガン)”ッ!!」

 

 

 

 電気を帯びた氷の破片が──次々にキメラに襲い掛かる。

 

 当然それらもキメラの肉壁を貫通し、ズタズタにしていくのだった。

 

「ぎ、ぎゃあああああああ!?」

 

 悲鳴を上げる巨獣は激痛でのたうち回る。

 

「……もう分かりましたか? 私達は、つるぎさんの所為で、平穏を失っただなんて考えたことないですよ」

「ってか、よくよく考えたら、お前がつるぎを騙したからこんな事になってるんじゃん!!」

「……諸悪の元凶が何を言っても説得力がないというわけだ」

「畜生ォ……恨めよ、恨メよォ……!! 何で、何でお前達、ソンナに仲が良いんだよォォォ……!! うっ、ぎぎぎぎ」

 

 屋上からごろり、とキメラ合成鬼の身体が落ちていく。

 

 向かう先はグラウンドだ。

 

「ヤッバい、あいつ逃げた!!」

「逃がしませんッ!!」

 

 持ち前の高速軌道で双子はキメラを追う。つるぎも一度変身を解除し、ティラコレオの力を足に纏って大きく跳躍。

 

 グラウンドに向かったキメラを追跡するのだった。

 

「待ちなさいッ!!」

「ク、クソッ……!!」

 

 態勢を立て直したキメラはレプリカ霊をエネルギーに変えた砲撃を放つ。

 

 だが、やぶれかぶれに撃ったそれが当たるはずもなかった。

 

 着地するなり、雷花が拳に電気を溜め、キメラの前に降り立つ。そして、凍花が冷気を一気に展開して、キメラと雷花の周囲を取り囲む氷のドームを作り出した。

 

「お仕置きだッ!! ”電導式・凍土遊戯(コールドゲーム)”ッ!!」

 

 ドーム内には一斉に雷が降り注ぎ、キメラを滅多打ちにしていく。

 

 そして、今度は凍花が氷のドームを解除したところに──ティラコレオの力を解放して間合いを詰めたつるぎが迫った。

 

「よくよく考えれば──攻撃の威力が重くて動きが遅いなら──」

「く、来るなァァァーッ!?」

「──攻撃の瞬間まで、変身しなければ良いだけの話だッ!!」

 

 迫りくるレプリカ霊を霊刀で斬り払い、一気につるぎは距離を詰める。

 

 剣を振り払う瞬間、ステゴ剣鬼の封に傷をつけ、インパクトの瞬間に──武装を身に纏うのだった。

 

 

 

「──”壊”ッ!!」

 

 

 

 渾身の力を込めた、重い必殺の突き。

 

 雷の嵐で弱り切ったキメラの身体が──崩れ落ちていく。

 

 レプリカ動物霊は消え失せ、他の動物霊たちも皆、拡散していく。

 

 

 

 後に残るのは──核たる本体のみ。

 

 

 

「甘いッッッ!! 甘いのよッ!!」

「ッ!?」

 

 

 

 ──つるぎの胴に、音速を超えた蹴りが加えられた。

 

 

 吹き飛びこそしなかったが、内臓にダメージを受けた彼は吐血しながら膝を突く。

 

 

 

「つるぎッ!?」

「つるぎさんッ!!」

 

 

 

 地面に降り立ったのは、動物霊の肉壁を失った1体の鬼。

 

 全身には羽根が生え揃っており、足はダチョウのように強靭だ。

 

 何より特徴的なのは頭部。鳥のタマゴのような形状をしており、それを守るようにして手の形をしたオブジェが幾つも張り付いている。

 

 その側面には、飛ぶにはあまりにも頼りない大きさの翼が生えていた。

 

 

 

「時間稼ぎにハ……なりましたわねェ……ッ!! クククククッ!!」

 

 

 

【ドードー怨鬼<完全体> 鳥類 ハト目 ドードー科】

 

 

 

 そして、問題の呼獲箱(コトリバコ)は、鬼の胴体に埋め込まれているのである。

双子はどっち派ですか?

  • 雷花
  • 凍花
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