堅物剣鬼が双子姉妹に”捕食”べられるまで   作:タク@DMP

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第18話:バット・ザ・キッド

 ※※※

 

 

 

 7月に入ろうかと言うある日の事だった。

 

 白亜高校の放課後は、相も変わらずカオスを極めていた。

 

 

 

「ゲソゲソゲソゲソゲソォォォーッッッ!! 私はねェ!! 可愛い女の子を一回でも良いから触手責めしたかったのよ!!」

 

【エンコテ触鬼 頭足類 タコ目】

 

 

 

 放課後の廊下で暴れ狂うのは巨大な8本の触手を携えた大型鬼。

 

 エンコテウティス──絶滅した巨大な頭足類(イカやタコの仲間)の動物霊である。

 

 此処最近、女子生徒が立て続けに触手の怪物に触手責めされるという事件が起こったため、噂に従ってつるぎ達は鬼の調査をしていた。

 

 結果、調査をしていた双子たちは先んじてエンコテ触鬼の急襲を受ける事になる。

 

 緊急信号を受けたつるぎは、すぐさま部活の稽古を切り上げて、スマホの位置情報アプリから双子たちの救出に向かうのだった。

 

 しかし。

 

「むっ、むぐうううう!?」

「こんの、凍りなさい……ッ!!」

「何だこれは……!?」

 

 エンコテ触鬼は、これまで見た事のある鬼の中でも一際巨大であった。

 

 本体である人型から伸びた八本の触手はいずれも強靭で人を軽々と絡み取るほどだ。

 

 そして、雷花も凍花も鬼に変身しているものの、それを振り切れる気配がない。

 

「私はねぇ!! 葛飾北斎の大・大・大・大ファンなのよーッ!! ゲソソソソソソソーッ!! ……そして今度こそ、我々が海の支配者に舞い戻ってやる」

「此処は陸ですがーッ!?」

「もががががーっ!!」

 

 雷花は既に口の中に触手を突っ込まれてしまっており、凍花は体を絡め取って吊るし上げられてしまっている。

 

「つるぎさん、気を付けて!! こいつの触手、こっちの霊気を直接吸ってきます!!」

「もががががががーっっっ!!」

 

 絵面は完全にいやらしいゲームのそれだが、能力は洒落にならない。

 

 道理で雷花の電気があまり効果的ではないわけだ、とつるぎは納得するのだった。

 

 霊気を吸われている所為で、あまり力を出せないのである。

 

(助けてやりたいが……どうする──ッ!?)

 

「ところで貴方、さっきからゲソゲソ言っていますが、エンコテウティスあるいはトゥソテウティスはイカではなくタコの仲間です」

「え”ッ」

「よくイカの姿で復元されますが、最近の研究では、腕は10本ではなく8本だったとされていて──」

「嫌ァァァーッッッ!! アイデンティティの崩壊ッ!! あんた達散々、私の同族をイカ呼ばわりしておいて今更今度はタコ扱い!? いイカげんにしなさいよーッッッ!!」

「もががががががーっっっ!?」

 

 凍花の口にも触手が捻じ込まれる。どう考えても動物霊のプライドを傷つけ、火に油を注いだだけであった。

 

 そして、つるぎにも触手が襲い掛かる。ステゴ剣鬼に変身し、触手を叩き切ろうとするが──微妙に弾力とぬめりがある所為で、衝撃を吸収され、受け流されてしまうのだった。

 

「ゲソソソソソソソソーッ!! 知らないのォ!? タコを切る時はぬめりを取らなきゃ刃が通らないのよォ!!」

「くそっ、盲点──ッ!!」

 

 そのままつるぎの体にも触手が絡みつく。間もなく、霊気の吸収が始まった。つるぎの体からも力が抜けていく。

 

 絶体絶命──と思われたその時だった。

 

 

 

「──やれやれ、ジャパンの霊術師は随分とレベルが低いんだな?」

 

 

 

 銃声。続いて、エンコテ蝕鬼の悲鳴が上がる。

 

「ぎゃあああああ!?」

 

 雷花、そして凍花を絡め取っていた触手に風穴が幾つも開き、千切れ飛んでいた。

 

 廊下の奥から硬い靴の音が聞こえてくる。

 

 まるで西部劇のガンマンのようだった。テンガロンハットを被り、赤い皮のジャケットを身に着けている。

 

 時代錯誤も良い所だが──特に目を引くのは金色に塗り固められた右手の銃だ。宝石が埋め込まれており、それが常に妖しく輝いている。

 

「……さあ、オールインの時間だぜお嬢さん」

「ッ……貴様ァァァーッ!? よくも私の美しい触手を!?」

 

 雷花と凍花は解放され、地面に投げ出される。

 

 怒りの声を上げ、エンコテ触鬼は銃声の主に迫りくる。

 

 だが──テンガロンハットを優雅に上げた少年は、手に構えた黄金に輝く銃を片手で構えると、更に3発、銃弾を撃ち込むのだった。

 

 銃弾は羽根を広げたコウモリ霊へと姿を変え、鬼に喰らいつく。

 

「ぎぃっ!? こ、これは──」

「霊気を吸い取るのはお前の専売特許じゃねえぜ。今まで散々吸った分、たっぷりと喰らいなッ!!」

 

 喰らいついたコウモリ霊が思いっきり膨れ上がる。

 

 エンコテ触鬼の霊気を吸い尽くし、破裂寸前の風船のように膨張していく。

 

 

 

「”カラミティ・パニッシュ”!!」

 

 

 

 間もなく、コウモリ霊が爆音を立てて爆ぜた。

 

 エンコテ触鬼の身体は爆発に巻き込まれ、崩れ落ちる。

 

 そこにトドメと言わんばかりに、更にもう1発、銃弾を撃ち込んだ。

 

 

 

「ほうら、封霊弾ッ!!」

 

 

 

 鬼の霊気が、撃ち込まれた銃弾に吸い込まれていく。

 

 そして、間もなく鬼は、取り込んでいた女子生徒の姿へと戻り──後にはコロコロと音を立てて銃弾が転がっていた。

 

 それをテンガロンハットの少年は慣れた手つきで回収するのだった。

 

 弾丸には──巨大タコの姿が刻まれている。

 

「あ、アッと言う間に、封印した……!」

「この人、強いです……!」

「ッ……!」

 

 尚、触手から解放されなかったがために唯一爆発に巻き込まれたつるぎはゲホゲホ咳き込みながら、テンガロンハットの少年を見上げる事になる。

 

「お前は……」

「──久しぶりだな……荒神つるぎィ──ッ!! ゴージャスな俺の事を忘れたとは言わせんぞ……ッ!!」

 

 つるぎは目を見開いた。

 

 金髪に碧眼。そして、ニヒルな笑み。その全てに──

 

 

 

(誰──ッ!?)

 

 

 

 ──全く覚えが無かったのである。

 

「おい!! 何とか言えよ!!」

「……」

「何故黙っている!!」

「す、すまない……」

 

(マズい……相手を怒らせてしまっている……そもそも俺を見て怖がらない相手など、霊術師か動物霊のどっちかなのだが──)

 

 コミュ症発動。

 

「す、すまん……友人があまりいないもので……親しい相手に少なくとも金髪のガンマンは居なかったはずなのだが……」

「クソッタレ!! 俺様のようなモブは覚えても貰えないのか!!」

「あ、えーと、助けて頂いてありがとうございます」

 

 つるぎ、正座して礼。彼なりの誠意の伝え方であった。

 

 雷花と凍花も思い出したようにぺこぺこと礼をするのだった。

 

「もう少しでえっちな同人誌みたいになるところだった! ありがとう!」

「助けて頂き、感謝します」

「ちーがーうーのーッ!! お礼を言うのは礼儀正しい日本人の美徳!! でも、俺が欲しい言葉はそっちじゃないのーッ!!」

 

 駄々をこねる男。

 

 しかし──いい加減、埒が開かないと思ったのか、咳払いし──銃を構えて名乗りを上げる。

 

 

 

「俺様はバット・ヴァレット!! 世界をまたにかける、ゴージャスなゴーストバスターだッ!!」

 

 

 

 流石の3人もその名前には憶えがあった。数日前につるぎの祖父から聞かされていた、凄腕のゴーストバスターだからである。

 

「まさかお前が”黒船のヴァレット”……!?」

「ヴァレットって、あのヴァレット!? ”黒船”って異名のヴァレット!?」

「黒船がすっごいことで有名なヴァレット!?」

 

 しかし──”黒船”という単語を聞く度にヴァレットの顔は悲しみで歪んでいった。

 

 仕舞には──嗚咽を漏らしながら泣き出す始末。

 

「うぐっ、ひぐっ、ひぐっ、こいつらぁ、俺の事”黒船”って言っだぁぁぁ~~~」

「何故そこで泣くッ!?」

「やめてください! ご主人様は今、すっごいおセンチなメンタルなんです!」

 

 その時だった。ふよふよ、と音を立ててヴァレットの持つ銃から、コウモリの動物霊が飛び出した。

 

 声は可愛らしい鈴を転がすような少女の声だ。

 

「何だコイツ」

「お初にお目にかかりますぅ! あたしはデスモダス! ヴァレット様の忠実なるシモベですっ♡」

 

【デスモダス・ドラクラエ 哺乳類 コウモリ目 チスイコウモリ科】

 

「ですもだす……?」

 

 雷花が首を傾げた。

 

 そこに、物知り凍花が口添えする。

 

「デスモダス……チスイコウモリの学名ですね。動物霊ということは、絶滅種のドラクラエ……現生するナミチスイコウモリより少し大きな種類だったとされています」

「ドラクエ?」

「ドラキーではありません」

 

 デスモダス・ドラクラエは、中南米で発見されている吸血コウモリの化石に付けられた学名である。

 

 とはいえ、言ってしまえば少し大きなチスイコウモリでしかない事もあり、比較的マイナーな古生物だ。

 

 だが、動物霊の強さは知名度に比例しない。先程のエンコテ触鬼をあっさりと爆砕せしめたのは、このデスモダスの力なのだろう、とつるぎは判断する。

 

 腹がたぷたぷになるまで獲物の血を吸うチスイコウモリの生態を、相手の霊気を吸い取って自らを爆弾に変える──という戦術に応用したのだ。

 

「ところで、なんで君の御主人様は、こんなに情緒不安定なの?」

「ご主人様の涙腺がダメダメなのは今に始まったことではありません! ただ、今回は特別で、誰にも言えない理由が──決して日本に来る途中で黒船が爆沈したから、とかそういうわけではなく──あっ言っちゃった」

 

 ダメダメなのはこの使い魔ではないか、とつるぎは察する。

 

 言ってはいけない事を秒で言った。既にもう無能の匂いが漂ってくる。一言で言い表すと──余計な事をする類の無能の匂いが。

 

「黒船爆沈したんだ……しかも割と最近じゃん」

「じゃあ只のヴァレットじゃないですか」

「良いもーんッ!! まだ、俺様には”魔弾のヴァレット”って異名があるもん!!」

「そんな頭痛が痛いみたいな肩書をお出しされましても」

「いや、そんな事はどうでも良い」

「どうでも良い~~~!? 俺様の黒船が沈んだのがどうでも良いーッ!? アレ凄かったんだぞ!! 動物霊の霊気をエネルギーにして半永久的に動くし、姿も消せるし、電力も供給できるし、P〇5もSw〇tchも出来たんだぞ!!」

 

 正直哀れだとは思う。しかし──つるぎとしては、一方的に因縁を付けられているのは良い気分がしない。

 

「俺はお前の顔は見たことがある気がする。ヴァレットはどうせ偽名だろう? 本名をせめて教えてほしい」

「誰がお前なんかに教えるか!!」

「失礼ですが、貴方がつるぎさんに会ったのは何年前ですか?」

「7年前だッ!」

「それなら多少なりとも顔が変わってたりするよ。本名も名乗りもせずに”俺の事を覚えているか!”って言うのは、世紀末のヒャッハーだけだよ!!」

「そうですよ、ご主人様! ご主人様が対人スキルダメダメなのは今に始まった事ではありませんが、この場では少し頑張らないと!」

 

(このコウモリは主人をメタクソに貶さないと気が済まない病気にでもかかっているのか)

 

 つるぎ以外の女子勢全員から詰められ──ヴァレットの目が泳いだ。

 

 そして、体育座りになったヴァレットは気恥ずかしそうに言った。

 

「あ、いや、そのぉ……俺……本名はマイケル・ジョンストンって言います……」

 

 ──割とフツーの名前であった。

 

 だが、それはそれとして、その名前は雷花の記憶に引っ掛かったようである。

 

「……マイケル……あーッ! そう言えば昔、近所にそんな名前の子が住んでた気がする!」

「居ましたね……私も今思い出しました」

「確かに今、思い出した……近所に外国人の子供が住んでいたような」

「なあデスモダス、俺今度からマイケルって名乗ろうかな」

「血迷わないでください、ご主人様! ただでさえダメダメなご主人様は、名前で箔を付けなきゃもっとダメダメです!! 貴方はこのままでは”ダメダメの負け犬マイケル”です!!」

「そうだよなあ、デスモダス!! 俺様の事を分かってくれるのは、お前だけだよなあ!!」

 

(このコウモリ今、”負け犬”って余計な単語を付け足したな……)

 

「えーと……それでマイケル」

「ヴァレットと呼べ!!」

「何というか……俺を恨んでいる理由、というのは……?」

 

 ピキピキと青筋を浮かべ──ヴァレットは叫んだ。

 

 

 

「俺はお前の所為で、近所の公園で遊ぼうと思っても遊べなかったんだッ!!」

 

(えっ……そんな理由で恨まれてたのか俺……)

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 ──マイケル・ジョンストン、当時8歳。

 

「うわーい、ボールで遊ぶぞ──ヒッ!!」

 

 

 

「──982、983、984、985──」

 

 

 

 公園には──剣鬼が居た。当時8歳にして160cmの荒神つるぎの姿があった。

 

 口からは息を漏らし、凄まじい覇気を以て竹刀を素振りするつるぎを前にして、マイケル少年は恐怖と共に──ちびった。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「あの時の屈辱ッ!! 忘れはせん!! 忘れはせんぞーッ!! おかげで二度と公園で遊べなくなったわーッ!!」

 

(そんな事で恨まれてたのか……)

 

「あー……つるぎ、当時からクッソ目付き悪かったから……」

「勝手に威嚇して追い返したように思われたんですね」

「いーや、アレは威嚇していたッ!! 間違いないッ!!」

 

 つるぎは首を横に振る。これでは全く覚えていないのも無理はない。なぜなら、つるぎは只一心不乱に素振りをしていただけだからである。

 

「済まんが、俺は全く君の事を覚えていない……」

「それだけじゃあない! 俺様の家は代々ゴーストバスターの家系さ! 天才の霊使いのお前と、凡才の俺はいっつも比べられたッ!! 両親はお前を引き合いに出して、俺に精進しろと口酸っぱく言った!!」

 

 ヴァレットは床に手を突く。

 

 幼少期から、つるぎの霊気は凄まじいものだった。

 

「それがどれだけ耐え難かったか、お前に分かるか!? 天才ッ!! お前の年齢で、あそこまでの霊気を練られる奴は早々居ない!!」

 

(そりゃあ鍛えたからに決まっているが……同年代からは、そう見られていたのか……!)

 

 彼が怯えていたのは、つるぎの気迫だけではない。竹刀に練り込まれた彼自身の霊気の総量に恐怖していたのである。

 

 とはいえ、当のつるぎはと言えば、近所に住んでいた外国人の子供が霊術師の家の子供であることすら知らなかったのであるが。

 

「俺様はアメリカに帰ってから実力を付け、多くの動物霊を倒して来たッ! だが、いつも喉奥に引っ掛かった魚の小骨のように、お前の事を覚えていたよ、荒神つるぎ!!」

 

 バット・ヴァレットは、今となっては凄腕のゴーストバスターだ。

 

 沈みはしたものの、黒船に大量に封じ込められていた動物霊がその証である。

 

 しかしそれでも、幼少期に出会い、比べられ続けていた「天才」に、脳を焼かれ続けていたのだ。

 

「あれから早7年ッ!! 俺様はゴーストバスターとして大きく成長したのだッ!! お前のような天才にも負けん実力を付けてなァ!!」

「とんだ逆恨みですが……」

「どーする、つるぎ?」

「……」

 

 一方のつるぎの顔は──複雑そのもの。

 

 傍から見ればいつもの仏頂面にしか見えないが、此処でつるぎの事をずっと見てきた凍花が解説する。

 

「姉さん、これはアレです。久々に自分を怖がらない同性の同年代の人間が出てきて嬉しそうなのと、自分の素知らぬところで逆恨みされてて複雑──という顔です」

「いつものつるぎのコミュ症発動しちゃってんじゃん……」

「おいそこ女子二人ィ!! 何をコソコソと喋っているッ!!」

 

 ヴァレットが双子たちを指差した。

 

「大方、そいつの腰巾着か、脅されて仲間についてるって所だろーがな……男同士の因縁に邪魔立て無用ッ!! すっこんでろ!!」

「ムカッ」

「むっ」

 

 そう言われると、双子たちはムキになって反論せざるを得ない。

 

 すっこんでろ、は別に構わない。だが──「腰巾着」だとか「脅されて仲間についている」という言葉は聞き捨てならなかった。

 

「失礼なッ!! 私はつるぎさんの彼女ですッ!!」

「超ムカつくッ!! つるぎはボクの彼氏だよッ!!」

「えっ」

「あっ……」

「あっ……」

 

 思わず言ってしまい──辺りが静まり返る。

 

 つるぎは口にはしないが「何言ってんの!?」と言わんばかりに硬直。

 

 顔を真っ赤にしたヴァレットは──怒りのあまりあらぶった。

 

「ふ、ふ、二人同時に付き合っているゥゥゥ~~~!?」

「あ、いや……ちょっと、語弊が……」

「語弊って何さ!! まごう事無き事実だよ!!」

「姉さん、今この場では火に油ですッ!! 誤魔化す時と場合を選んでくださいッ!!」

「双子を同時にィ!? 女心を誑かす、男のクズめッ!! やはり今此処でお前はゴージャスに消毒してやるッ!!」

 

 話しても無駄だろう、とつるぎも霊刀を構える。多少の苛立ちも抱えながら。

 

(全くどいつもこいつも……ッ!!)

 

「──構えろ、荒神つるぎ!! 俺様は、お前を此処で倒しに来た!!」

「……望むところだ。降りかかる火の粉は祓うまで」

 

 戸惑う双子たちに、つるぎは目配せして──言った。

 

「雷花、凍花ッ!! 荒神家と鹿島さんの所に報告だ、こいつは此処で俺が食い止めるッ!!」

「え、で、でも──」

「姉さん。つるぎさんの指示に従いましょう」

「う、うんっ……!」

 

 双子たちが走り去っていくのを見届けた後、つるぎは御札を構える。

 

(コイツは強い……強いが、良くも悪くも霊気から邪悪さは感じない……ッ!! どうにか鎮圧すれば話は分かりそうなものだが)

 

 つるぎもまた、身体が昂っている。自分とほぼ同格、あるいはそれ以上の相手を前に心が震えているのだ。

 

(久々の強敵、1対1の決闘──挑まれたならば受けるが道理ッ!!)

 

 銃を構え──ヴァレットが叫ぶ。

 

 

 

「──デスモダスッ!!」

「御意でーす♪」

 

 

 

 

 

 ヴァレットが──自らのこめかみに銃を押し当て、引き金を弾いた。

 

 そして、ヴァレットの身体が──黒い靄に包まれていく。

 

 

 

「──獣填ッ!!」

『ready』

 

 

 

 銃から無機質な音が聞こえ、魔法陣がヴァレットの足元に展開される。

 

 そして──後に残るのは、全身が黒いアンダースーツに包まれ、コウモリのような羽根が生えたガンマンの怪人だった。

 

 頭部はテンガロンハットが相変わらず被さっているものの、目元は切れ目のような鋭い眼光が覗いている。

 

 

 

 ──バット・ザ・キッド。人は、ヴァレットのこの姿をこう呼ぶ。

 

 

 

「これが俺様の”魔人”としての姿だ。いや……ジャパンでは”鬼”って言うんだったかな?」

双子はどっち派ですか?

  • 雷花
  • 凍花
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