堅物剣鬼が双子姉妹に”捕食”べられるまで   作:タク@DMP

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第19話:剣鬼VSザ・キッド

 銃型呪具──魔銃”カラミティ・J(ジェーン)”。

 

 契約者の思うがままに銃弾の軌道を操作することができる。

 

 更に、動物霊の力を封じ込めた魔弾をセットすることで、魔弾を銃の内部機構で複製。

 

 これにより、魔弾のエネルギーが尽きるまではほぼ弾数を気にせずに戦う事が出来るという代物である。

 

 ただし、思うがままに着弾させるには非常に精密な霊気操作が必要となる。故に、契約者には通常の銃撃の練度とは別に、多大なる霊気操作の練度を要求する。

 

『Desmodus,Set』

「銃は剣より強し、だぜーッ!!」

 

 一気に三連射。

 

 放たれた弾丸はコウモリとなって一直線に飛んでいく。

 

(さっきのを見るに、大剣の盾は、霊気をコウモリに吸収されて逆効果だ──斬って落とすッ!!)

 

 しかし、つるぎは霊刀を構え──コウモリたちを一気に斬り払って迫りくる。

 

 全身に重厚なるステゴサウルスの鎧を身に纏って。

 

「ステゴ剣鬼の封──ッ!!」

「やると思ったが本当に弾丸を斬れるのかよ!!」

 

 迫りくるつるぎに、ヴァレットは弾丸を放つ。

 

 だがいずれも斬り伏せられ、距離を詰められてしまった。

 

 半月以上にも渡る訓練により、つるぎは重い鎧を身に纏っても尚、変身前の速度を保てていた。

 

 つるぎ自身がステゴ剣鬼に適応した事を意味していた。しかし。

 

「──だが、この軌道はどうだ!!」

 

 しかし、ヴァレットはストレートな弾道の中にぐにゃりとうねる弾丸を入り混ぜる。

 

 デスモダスの弾丸は──ヴァレットの手でコウモリの飛行のように軌道を変幻自在に変える。

 

 決して刀では斬られない狂った軌道も自由自在に思い描けばその通りに飛んで行く。

 

 つるぎの脇腹に、コウモリが噛みついた。

 

「しまッ──」

 

 霊気を吸い上げたコウモリが膨れ上がり──爆ぜた。

 

 ヴァレットに辿り着く前に、つるぎは膝を突いてしまう。

 

 霊気を吸われたことで、鎧の脇腹は壊れていた。爆風でダメージも受けている。

 

 だが、ステゴ剣鬼の鎧は頑強だ。これでもまだ壊れる様子が無い。

 

「此処では狭いな……場所を変えるか」

 

 つるぎは窓際まで引き下がると、窓を大きく開け放つ。

 

 そして、背中から体重をかけて外へと落下した──

 

「んな──正気かコイツ!!」

 

 すぐにヴァレットは窓から下を見下ろし、銃で追撃。

 

 だが、落下してきた弾丸を斬り捨てたつるぎは、変身を解除。そして立て続けにティラコ獣鬼の御札を切り、地面に手を突くのだった。

 

 樹上で活動していたティラコレオの力を使えば、高所から落下してもダメージは無い。

 

 そればかりか、変身前を遥かに上回る機動力で動くことができる。

 

「荒神つるぎのヤツめ、逃げやがったな!!」

 

 憤ったヴァレットは、窓に足を掛けるとそのまま外へと飛び出した。

 

 背中からは大きなコウモリの翼が生え、つるぎを追うのだった。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 ──海辺の廃工場跡地。

 

 此処ならば迷惑にならない、と言わんばかりにつるぎは逃亡の足を止める。

 

 案の定、後ろからは弾丸を撃ち放ちながらヴァレットが迫るのだった。

 

「鬼ごっこも此処までだ……ッ!!」

「安心しろ、もう逃げん」

 

 刀を構え、つるぎは再びステゴ剣鬼へと変身。

 

(コイツの攻撃は危険すぎる……ステゴ剣鬼でなければ受けきれないッ!!)

 

 迫りくる弾丸を斬り払う。

 

 今度は──その勢いだけで衝撃波が巻き起こり、地面が抉れた。

 

 流石のヴァレットも吹き飛ばされるが、空中で羽根を広げて何とか態勢を立て直す。

 

「はっ、成程なァ!! 学校じゃあ周りを壊しちまうから全力を出せなかった、と──だがここならもう言い訳は出来んぞ!!」

「言い訳など最初からするつもりはないが……お前は強いな」

 

 つるぎは地面を思いっきり抉るようにして斬り上げた。

 

 コンクリートが砕け、それが散弾のようにヴァレット目掛けて飛ぶ。

 

 一方のヴァレットも飛び散ったコンクリートを撃ち落としたが、数があまりにも多すぎる。

 

「ッ……ぐぅ!?」

 

 腕に、足に、コンクリートの塊がめり込み、更に羽根も貫かれる。

 

 コンクリート片に霊気が込められていたのだ。

 

(刀だけでなく、刀に触れたものにも霊気の付与を──しかも、この一瞬で!? やはり天才か荒神つるぎ!!)

 

(今ので撃墜するつもりだったが……半分は撃ち落とされた。どれほどの瞬発力と霊気コントロールの訓練を積めば、この領域に至る──ッ!?)

 

 つるぎもヴァレットも己の訓練量に驕りを抱いていたつもりはない。

 

(もし、あいつに直に斬られたら、一発でお陀仏は避けられねえな……!)

 

 だが──今、この場での両者の力量は互角。

 

 あるいは──相手は自分以上の力を持っている、と両者は感じ取っていた。

 

(ふざけんなよ、コイツ!! 俺様の今までの訓練量、そんじゃそこらのゴーストバスターの比じゃないぜ!! 天才様よォ!!)

 

(あの数の精密な霊気操作は俺には出来ん、俺が撃てばヘロヘロ弾しか出ないだろう──ッ!!)

 

 故に。両者の認識もまた、同じ。

 

 

 

(こいつ、強い──ッ!!)

 

 

 

「──仕方ねェ此処らで選手交代だ」

『Aurochs,Set』

「オーロックス!!」

 

 故に。再びヴァレットは己のこめかみに引き金を弾く。

 

 魔銃の弾丸は──相手に撃ち込む攻撃用の弾丸。そして、自身に撃ち込んで己を魔人に変える変身用の弾丸。

 

 この2つを自らの意思で自在に切り替える事が出来るのである。

 

 撃ち込まれたのは絶滅した原牛・オーロックスの動物霊。彼らはかつて、その雄大な姿を(ウルス)と呼ばれた──

 

 

 

「チェンジだ──ッ!! パワーにはパワーで勝負してやるよ!!」

 

【オーロックス・ザ・キッド 哺乳類 鯨偶蹄目 ウシ科】

 

 

 

 其れは原牛の魔人。

 

 血煙が上がり、ヴァレットの太腿が牛の後ろ脚の如く太く強靭になっていく。

 

 テンガロンハットからは曲がりくねった長い角が生え、背丈もつるぎのそれに匹敵するほどに大きくなっていく。

 

 文字通り、猛牛の如きパワースタイルだ。

 

 地面を蹴ればコンクリートの床が捲り上がり、物凄い勢いでつるぎの周囲を駆け回りながら銃を撃ち放ち続ける。

 

 一方のつるぎも衝撃波を巻き起こすが、さっきとは違い、ヴァレットが吹き飛ぶ様子は見えない。

 

(牛の膂力で衝撃波にも耐える身体を手に入れたのか!!)

 

(同じ手は二度も喰らわねえぞ!!)

 

 魔銃を両の手で構え、撃ち放つ。

 

 速度はさっきより遅いが──銃弾の纏う霊気の大きさが桁違いに大きい。

 

 瞬時につるぎは、これをまともに刀で斬り払おうとすれば刀身が圧し折れるであろうことを予期した。

 

 故に──大剣を顕現させて正面からそれを受け止める。

 

「受けてみろよ──オーロックス・カラミティ・パニッシュ!!」

 

 ──めき、めきめきと音を立てて大剣に罅が入った。

 

 つるぎは目を見開いた。今まで破られたことが無かった大剣でのガードが、あっさりと打ち砕かれたのである。

 

 大剣は砕け散り、つるぎの胴に大筒の如き威力の弾丸が打ち込まれる。

 

「がはっ、ごほっ……!!」

 

 更にそこへ追い込むように、ヴァレットは弾丸を撃ち込む。

 

 しかし、つるぎは敢えて変身を解除。ティラコ獣鬼の力を足に纏わせ、跳び上がって天井に張り付いて避けるのだった。

 

 刀を天井で構えたつるぎは、天井を思いっきり蹴り──ヴァレットに飛び掛かる。

 

 当然、正面から魔弾を撃ちだしたヴァレットだったが、つるぎは体をねじり、弾丸を避けてみせる──天井に弾丸が炸裂し、崩れ落ちた。オーロックスの弾丸は重くて威力も桁違いに高いが、デスモダスの弾丸と違って軌道を変えられないのだ。

 

(だぁかぁらぁ、何で避けられるんだよ、弾丸をッ!! おかしいだろがッ!!)

 

 ヴァレットの戦慄は計り知れない。

 

 手を変え品を変えつるぎを追い込んでも、全く有効打を与えられない事に苛立ちさえ感じてくる。

 

(さっきのはマジで相性が悪かっただけかよ!! 畜生!!)

 

 エンコテ触鬼に苦戦していた様を見るに、刀が通りにくかっただけ。しかも、これだけの強さを見るに、自分が介入しなくともいずれ自力で突破していた可能性が高い、とヴァレットは考える。

 

(弾速が遅いのと、銃口の向きでおおよその弾の軌道は読める──ッ!!)

 

 霊刀による袈裟斬りがヴァレットに加えられた。

 

 オーロックスの頑強な鎧をも切り裂かれ、ヴァレットはフラつくのだった。しかし、その最中でも弾丸を入れ替えており。

 

「やるじゃねえか……だが、これならどうだ!?」

『Enchoteuthis,Set』

「エンコテウティス──ッ!!」

 

 再びヴァレットの姿が変わっていく。

 

 後頭部はタコの触手のようなものが髪のように生えており、腕にも触手が絡みついている。

 

「双子ちゃん達を纏めて手籠めにするような悪い男には、お仕置きが必要だなァ!!」

「誤解だ!! 俺はむしろ襲われた側──」

「知るかァ!! どんな手を使ってでも潰す!!」

 

(こっからはマジでアドリブだ……頼むから倒れてくれよ、このバケモノ!!)

 

 内心、びくびくと願いながら彼は引き金を弾くのだった。

 

 なんせ、さっき捕まえたばかりでエンコテウティスの力は使った事が無いのである。

 

 憑依した人間、あるいは扱い方によって動物霊の力は性質を変えるのだ。

 

 弾丸は──真っ直ぐに飛ぶ。

 

 それをつるぎはあっさりと見切って躱すが──次の瞬間だった。着弾地点から触手がめきめきと音を立てて生えてきたのだ。

 

「何ィ──ッ!?」

「成程、そう言うやつか!! 弾の仕様は理解した!!」

 

 ヴァレットはつるぎの足元に続け様に弾丸を撃ち込む。

 

 更に触手が増えて、つるぎの身体を絡め取った。

 

 刀で切り裂こうとするつるぎだったが、例によってぬめりと弾力に阻まれ、なかなか断つことができない。

 

 一方のヴァレットも追加の触手を撃ちだそうとするが、銃から弾は射出されない。エネルギー切れである。

 

「チッ!! 随分と燃費が悪いこって──だが、こいつで仕舞いだッ!!」

「マズい、抜け出さなければ──ッ!!」

「もう遅ェよ!!」

 

 再び、バット・ザ・キッドへと姿を変えたヴァレット。

 

 デスモダスの弾丸がフルバーストでつるぎの胸元へと撃ち込まれる。

 

 

 

「デスモダス・カラミティ・パニッシュ!!」

 

 

 

 喰らいついた三匹のコウモリが大きく膨れ上がる。

 

 そして──触手も巻き込み、大きく爆ぜるのだった。

 

「さぁて、流石にコレでくたばっただろ──」

「……げほっ、げほっ、まだだ……ッ!!」

「いっ……!? おいおい、待てよ、まだ動けるのか!?」

「助かったぞ……鎧が少々重かったんでな……!!」

 

 爆炎の中から、腕を抑えながら霊刀を引きずり、つるぎは現れる。

 

 鬼気迫る眼光。ヴァレットは思わず後ずさった。ステゴ剣鬼の鎧は確かに破壊された。しばらくつるぎは、ステゴ剣鬼には変身できない。

 

 だが、彼の最大の武器はまだ残っている。鍛え上げられた圧倒的なフィジカルと、霊刀だ。

 

(こ、こいつは、間違いない……!! 俺様が昔公園で見た、剣鬼の眼差し……!!)

 

(あいつ、エンコテウティスの弾丸を連射出来なかった……燃費が激しく悪いのか……! なら、まだ勝機はある……!)

 

「俺は……あいつらを守らなきゃいけないんでな。このくらいで倒れるわけにはいかない……ッ!!」

「バカを言うなよなあ!! 女の子二人守るんなら、俺様如きに苦戦してたらァ、いけねえだろが天才様よォ!!」

「耳が痛いな……ッ!! だが、オマエは強いぞヴァレット!!」

 

 つるぎが御札を切ると、大量のバッタが彼の周囲を取り囲む。

 

「目晦ましのつもりかッ!! 見えているぞ──俺様にはッ!!」

 

 大量のバッタはヴァレットを狙って飛び掛かる。だが──彼には見えていた。

 

 バッタの群れの隙間から動く彼を。そこから移動する位置を予測し、デスモダスの弾丸を偏差もかけて撃ち込んだ。

 

 

 

「うぐッ!!」

 

 

 

 呻き声と共にバッタが全て消え去った。

 

 つるぎの体にコウモリが噛みついており──間もなく膨れ上がって起爆する。

 

 爆音。そして爆風。つるぎはゴロゴロと転がっていき、工場の壁に叩きつけられたのだった。

 

「勝っ──たッ……!?」

 

 目を見開いたヴァレット。

 

 だが、彼が自らの勝利を素直に喜ぶことは無かった。

 

 深々と、彼の脇腹には──霊刀が突き刺さっていたのである。

 

 ヴァレットが発砲した瞬間、つるぎも霊刀をブン投げていたのだ。

 

「まさか、あのバッタの群れの中で正確に獲物を撃ち抜けるのは……俺様だけじゃ、無かったって言うのか……!?」

 

 つるぎは答えない。

 

 だが、ヴァレットもまた、霊気を砕かれて変身が解除されていく。

 

 霊気を纏って変身する魔人にとって、霊気を切り裂いて穿つ霊刀による一刺しはまさに致命傷。

 

 体中に霊気が霧散していき、ヴァレットは気を失った。

 

「ちょっ、ご主人様!? ご主人様―ッッッ!?」

 

 デスモダスが飛び出し、ヴァレットに声をかけるが返事はない。

 

 そして──それを見てデスモダスは首を横に振った。

 

 

 

「あーあ……やっぱりご主人様は……ダメダメですねぇー……ククク」

 

 

 

 不穏な笑みを残し、デスモダスは魔銃へと戻っていく。

 

 勝負は──引き分けに終わるのだった。

双子はどっち派ですか?

  • 雷花
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