顔だけはいい幼馴染とだべるだけ 作:ナオー
「おーう喜べユズトー、幼馴染の手料理だぞー」
ばん、と扉が開け放たれて、布団に入ってスマホを見ていた俺をミオが叩き起こした。
いや、起きてはいたのだが結構うつらうつらとしていたところにミオが来た感じ。
「かもすぞ……」
「かもすの!?」
そして起こされたら当然不機嫌だ。
寝ぼけているから自分でもなんて言っているのかわからん。
というわけで少しまって、俺は何とか布団から抜け出した。
「で、なんだって?」
「土曜の午前中に暇そうなユズトへ、幼馴染が手料理を届けて上げようという話」
「ほーん、じゃあ何作ったか言ってみろ」
「肉、焼いた」
「それは一般的には手料理とは言わない」
「なんだとぉ……」
いや、手料理ではあるけれど。
男の手料理じゃん。
絶対ハンバーグ捏ねて作ったとかじゃないぞ。
細切れ肉焼いただけだぞこいつ。
「私だってなぁ、レシピ見ながらなら料理くらいできるんだよ……!」
「知ってる、というか同じことなら俺もできる」
「前作ったカレーは美味しかったですね……!」
ミオの家は仕事が忙しく両親が不在がち。
俺の家は両親の仕事が土日休みではなく週末は一人になりがち。
そんなわけで俺達は、互いに身を寄せ合って昨日残りを食べたりカップラーメンを食べたり。
こうして適当な料理を食べたりしているわけだ。
どっちか気が向いたほうが料理を作る感じで、ふたりとも気が向かなかったらインスタント食品だ。
たまに二人でやる気をだして、料理らしい料理を作ったりもする。
今日は、ミオがやる気を出して肉を焼いたらしい。
偉いぞぉ。
「ユズトが私を偉いと内心で褒めているのがわかる。正面から褒めろ」
「偉いぞぉ」
「ふふん!」
「いや普通にありがとな、完全に今日はインスタント麺のつもりでいたわ」
日曜ならショップ大会があるので、そのついでに外食したりもするが。
土曜は特にそういうこともないので家に籠りがちだ。
なのでこうして、米を昼に食べる機会は貴重だったりする。
「しかも聞いて驚きなさる」
「ふむ、なんだ?」
「今日は結構、手間をかけました!」
上機嫌なミオ。
どうやらよっぽど今日はやる気があったらしい。
普段なら肉を焼いた後に適当に生姜焼きかけておわり、とかザラだからなお互いに。
それはそれで美味しいんだけど、俺は生姜焼きに温泉卵をかけたいんだよ。
大抵は置いてない。
「肉にソースかけて、揉んで、焼いて、そして最後にチーズをドン」
「普通に上手いやつじゃないか」
「へへへ、チーズは最高の万能食材なんだよぉ」
なんてはしゃぎながら、二人でリビングに向かう。
肉はすでに焼き上がった状態で更に分けられていた。
ここで分けずに放置しておくと、骨肉の醜い争いを始めるのが俺達だ。
それが楽しい時もあるが、普通に食べたいなら最初から等分しておくのが無難である。
「ご飯は今から盛るよ、あちゅいうちに食べたいから」
「んじゃ飲み物は用意する、麦茶でいい? あと噛んだ?」
「麦茶でいい、いつも悪いね爺さん。あと噛んでない」
というわけでご飯の盛りつけをミオが、飲み物の用意を俺が。
役割分担を終えて即行動。
もう時刻は十三時に近いくらいなので、お互いさっさと食べたいのだ。
じゃあもっと早く飯用意しろよと言われたら、ご尤もである。
「できた」
「こっちもできたぞ、氷はいるか?」
「二つ……!」
「あいよ」
というわけで、準備を終えて席につく。
いただきますと礼儀正しく口にして、一口目――
「……を放り込む前に。思うんだけど美少女の手料理ってSNSに挙げたらバズる気しない?」
「するんじゃない? やってみれば」
「よしきた、いくぞぉ!」
言いながら手元に置いてあるスマホで写真を取り、少し操作。
俺もSNSを覗いてみる。
どうやらマジで上げたらしい。
バズるかなぁ、これ。
「というわけで、改めて食べようね」
「ああ、ありがたくいただくよ」
「追加の焼き肉ソースはそこじゃ」
「どうも」
なんて言いながら、早速一口。
ソースが絡まった肉は柔らかく、チーズがいい感じにそれを支えている。
うまい。
誰が作ってもうまい料理であるということを除けば、最高の手料理だ。
ミオに感謝しなければ。
「おいっしー、やっぱこれだよこれ。ソース足そ」
「まぁ、そりゃうまいよな」
しかも肉が牛肉だ。
ソースかけてチーズと絡めたらどんなものでもうまくなるあろうが、豚と牛だと牛のほうが合う気がするのは俺だけか?
「いやー、我が家の冷蔵庫から牛こまを見つけた時は天啓が走りましたね。これだー! って」
「それでやる気を出したわけか」
ところで、牛ってあんまり常備するイメージないんだけど。
というか俺の家だと基本豚しか常備してないんだけど。
もしかしてこれ、何かの料理に使うものだったりしない?
まぁ、タダの牛コマならまた買いに行けばいいんだけどさ。
とはいえ、せっかくご満悦のミオに冷水かけたいわけではないので、今は触れないでおいた。
後で補填に牛こまかいに行くことになって、ミオがついてこいと言ったらついていこう。
同罪だ、同罪。
「飯がすすみなすなー」
「ミオって、結構よく食べるよな。あと噛んだ?」
「そう? ユズトと同じくらいだと思うけど。あと噛んでない」
「男子と同じくらいってんなら、まぁ結構食べる方だと思うよ」
俺は別に食は細くもなければ太くもないと思う。
「その割には、全然育たないんだよね、私」
「食生活的には、育つどころか太りそうだけどな」
「それもないなぁ、美少女だから」
「美少女は関係あるのか……」
いや、容姿を維持するために努力してるなら関係あるだろうけどさ。
してないじゃん、ミオって完全に自然体じゃん。
クラスの女子連中に話すなよ、話したら殺されそうだ。
まぁ、そんなことを話す勇気はミオにあるわけないんだけど。
「美少女ごちそうさまでした」
「なにそれ……」
「美少女だからつい……」
「とりあえず、皿とかはこっちで片付けるぞ」
「ほんと? さんくー」
そりゃまあ作ってもらったんだから、後片付けまでさせるのはだめでしょう。
というわけで、食べ終わった皿を集めて流しへ。
「ところでこの後どうするんだ?」
「ゲームをします。最近色厳選にハマっててさー」
「あのめちゃくちゃ見つけにくいやつ」
「なんで外伝作だと色違い出たら光るのに、本編だと光らないんだろうねぇ」
なんて話をしながら、俺の部屋に引っ込んでいくミオを見送った。
ミオだけに。
というか別に俺の部屋行く必要なくない?
家戻るの面倒なのはわかるけどさ。
と、思ったら部屋から顔だけを出してミオが問いかけてくる。
「……私、なにか忘れてない?」
「さぁ」
適当に返しつつ、俺は皿を洗っていくのだった。
――なお、ミオがすっかり忘れ去っていた美少女の手料理でバズるかどうかについては。
そもそもミオのアカウントがあまりに男の子しすぎていて、女性のアカウントだとバレていなかったためバズることはなかった。
つくればうまい男飯系幼馴染