2〜3日に一度投稿。
「え?アリーゼが村を出てった?」
アリーゼが姿を消したと知らされたのは、彼女の父と村の長が僕の家を訪れたときだった。二人は焦りと困惑を隠しきれない表情で、そう話を切り出した。
うーむ、いつかは村を出て行くと
村を出る際、アリーゼの両親は追いかけて引き止めたそうですけど、その説得すら振り切って出て行ってしまったとの事。というか、追いつけはしたんですね…。
『──一緒に冒険者を目指さない?』
(……)
ふと脳裏に数日前の言葉が浮かんだが
『気にするな』と頭を振った。
「タクト君……少し相談があるのだが聞いてくれないか?」
「はい」
とりあえず話だけは聞こうと思い頷くと、そんな僕の様子を確認したアリーゼのお父様が口を開いた。
「アリーゼはね、いつも君の話をしていたんだ…」
(この流れは……)
『嫌な予感がする』とそう本能が警鐘を鳴らす。
「それも楽しそうにいつも君の話をするんだ。
『今日はどんな遊びをした』『今日はこんな事があった』てね」
「……」
「君と遊んでいる時は本当に楽しそうで、今まで見た事もない様な笑顔だったよ…。そんな君だからこそ──」
「お断りします」
「……え」
「え?」
「……えっと、まだ何も言っていないよ…?」
アリーゼのお父様が驚いた声で返す。
確かに、相手が何を言おうとしているかを聞く前に断ったのは少し早かったかもしれない。しかし、僕の頭の中ではもう答えは出ている。
──どうせ言うでしょ?
『アリーゼを連れ戻してくれ』とか『君ならできる』とか、そんな展開はもう読めるんですよ、
アリーゼパパ。
「ええっと…それで、何を相談されたいのでしょうか?」
と一応聞いてみる。形式的にね。僕はすでに心の中で防衛線を張り巡らせている。何を言われても、これ以上深入りするつもりはない。
お父様は少しだけ間を開けると、口を開いた。
「共にアリーゼを連れ戻してく──」
「お断りしますって言ったでしょ!!」
もはや即答。お父様が驚いているが、そんなことはどうでもいい。連れ戻す?絶対無理だ。可能だったとしても、今じゃない。いや、可能でも今後ないね、絶対に。
考えてみてくださいよ。アリーゼを見つけても、どんな顔をして会えばいいか分からないし、確実に面倒なことに巻き込まれるに決まっているんですから。ならばさっさと関わりを断つべきだ。これは冷静に考えた結果です。僕の信念は『来るもの拒まず、去るもの追わず』なんです。
すると、黙っていた村長の爺さんが、突然大きく口を開いた。
「タクトよ、この件はお前にしかできない。あの子を探してきなさい。これは村の総意なのだ」
「……はい?」
え?何それ、何その急展開?さっきまでずっと無言だったくせに、いきなり何を言い出しているんですか、この爺さん。まさかとうとうボケが始まったか?それとも、これが爺さん流の朝のジョーク?まさか本気で言ってるわけじゃないですよね。
「村の総意…?」
「総意じゃ」
「そ、そうですか…」
──え、村の?そんな話、僕には聞こえてなかったんですけど。村民会議の時、僕の家だけ除外されてました?。
アリーゼパパも『え、知りませんよそんなはなし!?』って顔してますけど?本当に総意ですか?そもそもアリーゼが家出したのってついさっきの事じゃ……。
「陰気な子と活発な娘、天秤に掛ければどちらに傾くかは明白だろうて」
「………ん」
──その喧嘩、買います。
村長との話はそれからも続き、村長が解放されたのは日が昇り始めた頃だった。
◆◆◆◆◆
「いい天気ですね…、本当に」
外に出て、思わず空を見上げた。澄み渡る青空が広がっていて、まるで何事もなかったかのような平和な朝だ。だが、僕の心中は複雑だった。
村長はああ言ったが、現実的に考えてみてほしい。二桁にも満たない年齢で旅に出るなんて、僕の両親が許すはずがない。村の総意だのなんだのと迫られても、さすがにそこまで無茶な話を受け入れる親はいないはずだ。
と思っていたのに。
『タクト…貴方はまだ8歳になったばかりよ、だけどその歳で貴方ほどモノを考えて行動できる子供はこの村にはいないのよ?貴方ならきっとやり遂げられるとお母さんは確信しているわ』
『ケツを追わずして男が名乗れるかッ!!。
今は俺たちの若い頃より今は多少マシな世の中にはなっている、タクトよ、お前はこんな小さな村に止まるような器じゃない、だから胸を張って行ってきなさい!!』
等と両親に言われ、僕は旅に出る事になりました。ふざけないでくださいよ…。
誰が行きたいと言いましたか?多少辛くとも農業をやりつつ、親の脛をしゃぶって生きていくという僕の将来設計が台無しですよ。
村長も村長ですよ、一家庭の少女を連れ戻す為だからと村から子供を追い出すなんてどうかしている。
両親で無理だったのなら仲のいい幼馴染なら連れ戻せるかもしれない?僕を過大評価しすぎでは?両親で無理なら他者も無理ですよ。
常識的に考えて……いや、異世界で前世での常識を求めるのは間違っているかもしれませんが、それでも間違っていますよ。
「……はぁ」
「タクト君……本当にすまないね……」
最初はアリーゼパパに"僕が同行する"という話だった筈が、大人の働き手は手放せん、だの、昨今モンスターの動きが活発化しているだの理由をつけて、結局僕一人で旅に出ることになってしまった。
もう、どこからどうツッコめばいいのかわからないが、無理矢理押し付けられたこの状況とはいえ、村長を傷物にした僕には既に逃げ道はなかった。
「もういいですよ、ところでアリーゼが何処へ向かったかは分かっているんですか?」
このやるせない気持ちを払拭するため、早々に村を離れることにした。
「ああ…この先を北に真っ直ぐ、どうやらオラリオに向かったらしい」
「オラリオ……?はぁ、もうこれは
まぁなんでも良いです、それでは」
『え、ちょっと待ってタクト君!?』と背後から聞こえるが僕はそれを無視して走りだした。
とりあえず北に真っ直ぐ、オラリオとやらに着くまで出会わないことを願いましょうか。
◆◆◆◆◆
薄暗い森の中、1人の少年が道から外れた木の陰に身を潜めて座り込んでいた。
「お腹が空いたぁ…オラリオ何処ぉ?村を出て2週間、食料が底をつきましたよ。道中に街どころか村さすら無かったんですけど…。どこかで道が逸れましたかねぇ…」
……もう無理、動けない。本当になんで僕がこんな目に。
もう泣きたい、今すぐにでも寝たい。けどお腹が減っていて眠れない……もうダメだぁ。僕はこのまま死ぬんだぁ。
空腹と睡眠不足で意識が朦朧としている時、ふと目の前に影が差した。
「ん……何?」
「子供か…」
「…貴方も子供では?」
目の前にいたのは僕より少し身長が高いくらいの女の子、泥に汚れてはいるけどこの世界初めて見る
「この様な場所で何をしていた?」
「……行き倒れてます…」
「そうか」
少女は少し思案した後、僕に1本の竹の筒を渡してきた。僕はそれを無言で受け取ると少女は言った。
「飲め」
「……」
喉が渇いていた僕は無我夢中で飲んだ。すごい美味しい、なんだこれ?本当に水? ……あれ?意識が薄れる……あぁダメだ眠い、もう無理……おやすみなさいぃ……。
眠ってしまう直後『お、おい』と焦る少女の声が聞こえた気がしますが、僕はその眠気に抗う事なく寝てしまいました。
生まれ変わって八年、村を追い出される形で旅を始めた。
前世を含めればもうとっくに20を超える歳の筈なのに対して、どうしてか言動は幼稚的、この小さな肉体に精神が影響しているのか、僕が子供っぽいだけなのか、それはよくわからない。
でもそんなの正直言ってどうだっていい、僕は僕が楽しければそれでいい。
旅は辛い、だけどそれはもう変えられない今である。
なら今を楽しもう、この旅の先には必ず過酷な未来が待っているとしてもだ。
だってそれはどうしようもなく理不尽で、感動的な未知であり既知な情景なのだから。
その一歩を僕は今日、この瞬間踏み出した。
これが
プロフィール
タクト・───
年齢、8歳
性格、悪い
特技、不意打ち
強さ、真っ向から挑めばアリーゼには普通に負ける、ただしなんでもありのルールなら高確率で勝つ。
・相手の木剣を事前に削ったり、対戦前に罠を作成、砂かけなど勝つためなら方法を厭わないタイプ。
設定
・基本丁寧語?に近しい話し方。下手に出て寝首を掻くタイプ。
・平和主義とよく口にするが、本人は娯楽に飢えやすく楽しむ為なら割となんでもする。
・一歳になる頃には、ダンまちの世界だと気づき最初は浮かれていたが数年後アリーゼと出会い『ここはただの異世界』だと現実逃避を開始する。
・一応善性