生まれ変わったら赤髪の幼馴染ができました   作:お米大好き

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アストレアレコード映画化かアニメ化してくれないかなぁ、アニオリとかでサブメンバーの話が見たい。


9.トドメの一撃が油断にもっとも近いらしいです。

 

 

「……まじ?」

 

 ステータスの内容を確認した瞬間、頭を抱えざるを得なかった。

 『どうしてこうなったんだ?』期待に満ちていた気持ちは一瞬で崩れ去った。

 

[タクト・───]

 

LV.1

 

[基本アビリティ]

 

力 : I 0

耐久:I 0

器用 : I 0

敏捷:I 0

魔力 : I 0

 

[魔法]

 

戦闘愛者(バトルマニア)】: I

 成長型付与魔法

 

・『身体強化(ブースト)

 〔耐久〕を小補正。

 〔力〕と〔敏捷〕を微補正。

 

・『』

・『』

 

【】

 

 

[スキル]

 

【アカシックレコード】

・即死する。

 一部情報漏洩時に効果発動。

・経験値獲得量小補正

 

 

(『即死する』じゃないが?『早熟する』みたいに発現しないで欲しいんだけど…)

 

 

 魔法もおかしいがそれよりスキルだ、効果発動してしまった場合どうなるんだろうか、心臓が停止する?それとも、魔力暴発(イグニス・ファトゥス)のように体がはじけ飛ぶ?

スキルだしそれはないか?

 

 色々と恐ろしい想像が頭を巡るが、正直そこを心配する前に、もっと気になることがあった。

 

 “開示”ではなく“漏洩”と書いてある点だ。

 

 これが意味するのは、僕自身が情報を誰かに話さなくても『他人から漏れ出してもアウトになる可能性がある』ということじゃないか?

 

 誰かが僕の抱える“情報”とやらに感づいて推測を立てた場合にも効果が発動するんだろうか?そうだとしたら、あまりにもリスクが高すぎる。

 

 

 しかも経験値補正のメリットと即死のデメリットがどう考えても釣り合ってない。

 いくら早く成長できるとはいえ、情報が漏れたら即アウトなんてリスクがデカすぎる。

 

 

 『どう対応するべきかな』と策を考えていたその瞬間、背後から視線を感じて振り返ると、アリーゼが驚いた表情で僕を──いや、僕の手に握られた一枚の紙を凝視していた。

 

「それって死ぬってこと?」

 

 その驚きの声を皮切りに、アストレア・ファミリアの全員がこちらを注視する。

 彼らの目は次々と僕の手元に向かい、状況を察したようだった。場の空気は一気に緊迫感を帯びる。

 

 『しまった』と心中で叫び、慌てて紙を背に隠すが、既に遅い。

 

「これは──」

 

 どうにか誤魔化そうと口を開いた刹那、隣にいたライラが素早く手を伸ばし、僕の口を押さえた。

 

「ちょっと黙れ」

 

 耳元で囁かれたその冷静な声には、明らかな威圧が宿っていた。僕は逆らえず、口を閉じる。

 ライラの目は普段以上に鋭く、事態の深刻さを物語っている。

 

「いくつか質問する。答えは『はい』か『いいえ』だけだ。それ以外はなんも言うんじゃねぇ」

 

 その言葉に圧倒され、小さく頷く。今は冗談や軽率な言葉を挟む余地など皆無だと悟った。

 

 周囲の皆んなも、張り詰めた表情で事の成り行きを見守っている。

 『やっかいなことになったか?』と、そう思わざるを得ない。

 

 

「まず一つ目だ。このスキルに心当たりはあるか?」

 

「……はい」

 

 ライラはじっと僕の返答を聞き『なるほど』と低く呟いて次の問いに移る。

 

「二つ目。このスキルの発動条件や効果を完全に把握しているか?」

 

 答えるべき言葉を迷った。発動条件や範囲については何となく理解しているが、曖昧な部分が多い。

 

「……いいえ」

 

 ここは正直に答えるしかない。適当に誤魔化して納得してもらえるほど、彼女たちは甘くない。

 

 僕の答えにライラは一瞬だけ険しい表情を浮かべた。アリーゼや他の仲間たちの顔にも、不安の色が濃く映る。

 

「最後の質問だ。このスキルに有効な対策はあるか?」

 

 ここで『はい』と答えられればどれだけ良かっただろうか。しかし、言えない。

 スキルの発動範囲についての予測はあれど、確証はない。

 

 (うん?ならいっそのこと……やってみる価値はあるか?)

 

 思いついてしまった愚策、しかしそれもありだと口に出した。

 

「……この件は僕自身でどうにかします。対策は大まかに立てていますし、知られなければ問題ありませんから」

 

 その言葉に、周囲の視線が鋭さを増す。特にアリーゼは、呆れと怒りが入り混じったような表情で僕を睨みつけていた。

 

「タクト、本気でそんなことを言ってるの?」

 

 アリーゼの問いかけは真剣だった。その視線を受け止めながら、僕はわざと軽く肩をすくめてみせた。

 

 

「本気と書いてマジです、って、漢字は伝わりませんね」

 

 僕は軽く笑い飛ばしながら言ってみせたが、その瞬間、鋭い衝撃が頭に走った。

 

「うぐっ!?」

 

 振り返ると、輝夜が険しい顔で立っている。

 僕が抗議するより早く、彼女が冷たい声で言った。

 

「今、この状況でそのスキルの“検証”をしようとしたのか……?」

 

 その言葉には怒りがにじみ出ていて、正直怖い。

 僕の軽口が火に油を注いでしまったらしい。しかし何故こうも察しがいいのかね

 

 ただ、輝夜の怒りと引き換えに一つわかったこともある。

 

【一部漏洩】の条件について、前世の知識である【漢字】のような言語的なものに関しては発動しなかった、軽口を叩いたことでリスクはあったものの、少なくとも僕が前世に使っていた常識は“漏洩(スキル)”の対象外だということが確認できた。

 

 なら僕が持っている情報で、知られてはいけないものとなると、確証はないが、このスキルが危険視しているのはやはり【原作知識】に関するものなのだろう。

 

 前世の言語や日常的な知識は問題にならず、僕が抱える核心的な“情報”こそが発動条件に関わるのかもしれない。

 

 それならばまだ大丈夫、なんとかなるはずだ。

 原作知識の扱いについて慎重になればいいだけなら簡単…ではないけど出来なくはない。

 

 そう、ほっとしたのも束の間、次の瞬間にはネーゼが勢いよく詰め寄ってきた。

 彼女の顔には、信じられないといった表情が浮かんでいる。

 

「今の輝夜の発言は本当なのか!?お前、本当にそんな危険なことをやったのか!?」

 

 彼女の鋭い視線と怒声に思わず身を引きつつ、僕は苦い笑みを浮かべるしかなかった。

 

「……まぁ、ちょっとした検証っていうか、軽く試してみただけです」

 

 その言葉に、ネーゼの表情が一段と険しくなる。まるで雷が落ちる前の嵐のようだ。

 

「ちょっとした検証だと!?もしその“ちょっとした”でスキルが発動してたら、どうするつもりだったんだ!?」

 

 怒気を含んだ彼女の声に、思わず口をつぐむ。内心では『行き過ぎた発言だったか?』と反省しつつも、つい軽口が出てしまう。

 

「その時は、まあ、運が悪かったってことで?」

 

 言い終わるや否や、部屋の空気がピリッと張り詰めた。ネーゼだけでなく、アリーゼやライラ、さらにはアストレア様までもが一斉に鋭い視線を向けてくる。

 

 アリーゼは顔を真っ赤にして拳を握りしめ、怒りを隠そうともしない。一方のライラは呆れたように深い溜息をつきながら僕を見つめていた。その視線だけで、『これはやりすぎた』と後悔が押し寄せる。

 

「お前、本気でそれで済むと思ってんのか!?」

 

「冗談で済ませられる話じゃないんだぞ!」

 

 怒りと呆れが入り混じった声が次々に飛んできて、僕は肩をすぼめることしかできなかった。

 明らかに自業自得だとわかっているが、これでよかったとも理解している。

 どのみちどう言い訳しても火に油を注ぐだけなのは間違いないのだから嵐が過ぎ去るのを待とう。

 

 ネーゼ達の問い詰めるような視線がさらに強くなり、逃げ場がない今、何とか場を収める方法を必死に探し始めた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「……はぁ」

 

 長い説教と折檻を受けた後、ようやく解放されて僕は外の空気を吸おうとひっそりと居を抜け出した。

 少し歩けば、朝の冷たい空気が心地よく肌に触れる。

 気を引き締め直すにはちょうどいい風だ。

 

 

 『少し散歩でもするかな』と歩き始めてしばらくすると、後ろにかすかな気配が感じられた。

 誰かがついてきているようだが、特に気にしないことにする。

 

 追われる生活が長かったせいか、視線に対して妙に敏感になっている気がする。

 ベル・クラネルもこの様な気持ちだったのだろうか?。いや、そもそも状況が違うか…。

 きっとこの視線は気遣いからなのだろうし。

 

「にしても本当に旅は終わったんだなぁ…」

 

 ぼんやりとした感慨を胸に、街の中を歩き続ける。

 朝の静けさがどこか非現実的に思えて足取りは軽い、けれど、これから考えるべきことは山ほどある。

 

 まずは生活のことだ。

 

 日用品代はファミリアで出してくれると言っていたけど、装備はどうしようか、お古を借りる手もあるけど、せっかくだから自分のものが欲しい気もする。

 

 目を落とせば、手にしたステータスの紙が風に揺れている。こうやって数値で見るなんて、まるでゲームみたいだ。

 僕の現状を例えるなら

『始まりの町を出て草原へ一歩踏み出した』くらいの段階だろう。

 まだ力も耐久もほとんどゼロだけど、これから少しずつ成長していくんだと思うと、妙に心が踊る。

 

「それに」

 

 僕はふと思い出し、ステータスの魔法欄に目をやる。

 

[魔法]

戦闘愛者(バトルマニア)】: I

 成長型付与魔法

 

身体強化(ブースト)

〔耐久〕を小補正。

〔力〕と〔敏捷〕を微補正。

 

「成長型なんて、いかにもロマンだよなぁ……」

 

 思わず独り言が漏れる。

 

 今のところ効果は大したことがないが【成長型】という響きには特別な魅力がある。

 まだ未完成、未熟な自分をまるごと肯定してくれるような感覚。

 

 

 最初から強いものより、こうした成長の方がワクワク感が全然違う。

 

 RPGだって一周目は木剣から銅剣へ、そして銅剣から鉄剣へ──と、少しずつ強くなっていく過程が楽しいんだ。

 

「…現実だとその途中で終わったら洒落にならないけどね」

 

 冗談めかして呟くが、実際に命がけの冒険である以上、成長の過程を楽しむ余裕なんて本当はない。

 それでも、今は少しだけ、こうして未来に思いを馳せたくなる。

 

「さて、どう動こうかね……」

 

当面の目標は装備や道具を揃えるための資金だ。

 

 オラリオの外に埋めてきた“アレ”を売ることが出来れば、一気に資金が手に入るのにな……。

 だけど、ここに持ち込めたのは小道具程度のもので、それも売れるような代物じゃない。

 

 どうしたものかと頭を悩ませながら歩いていると、後ろから気配が近づいてきた。

 案の定、つけてきていたライラが、不意に声をかけてくる。

 

「なに悩んでやがんだ?」

 

 ライラの声に、僕は肩をすくめながら振り返る。

 

「お金が欲しいって悩んでただけです、くれます?」

 

 

 軽く流そうとした僕の言葉に、ライラは『やだね』と気のない声を返し、少し沈黙が続く。

 

 また説教か何か始まるのかな?とそう思いながら歩き続けると、ライラが話題を変えるように切り出した。

 

「おい、さっきのスキルの件だが」

 

 その言葉に、僕は思わず足を止める。

 

「……何のことですか?」

 

「何のことって顔じゃねぇよ。お前、わざとあの場でやったろ」

 

 ライラの目は鋭く、まるで嘘を見透かすように僕を睨んでくる。

 

「検証の事だ、あの場でやる必要はなかっただろ? もっと落ち着いて検証できる状況はいくらでもあったはずだ」

 

 言葉に刺があるわけではないが、その冷静な口調から話すまで逃す気はないと察せられた。

 

「はぁ……必要でしたよ」

 

「あ?」

 

「みんなの前で、そしてアストレア様の前でやる必要があったんです。スキルの発動条件を確認するだけじゃなく、彼女たちにスキルの性質をきちんと理解してもらうために」

 

 ライラは腕を組んで僕の言葉を黙って聞いていたが、その視線にはまだ疑念が残っているのがわかった。

 

 

「ほら、考えてみてくださいよ。オラリオの外から来た少年が団員の半分と知り合いで、しかも最悪なタイミングでオラリオにやって来た……そんな奴、怪しまれて当然じゃないですか?」

 

 ライラは少し眉をひそめたが、反論はしない。

 それが事実だと分かっているからだろう。

 

「それだけならまだよかったんです。でも、僕には『隠し事をしていますよ』って告げるような怪しいスキルまで発現した。これじゃあ信頼を得るどころか、ますます疑われるだけですよね」

 

 自嘲気味にそう言いながら、少しだけ視線を逸らす。

 

「だからあの場で検証を実行しました。これで怪しい少年から“スキルに悩まされる危なっかしい少年”くらいには印象が変わったんじゃないですかね?そうだと嬉しいです」

 

 そう締めくくると、ライラはふっと小さく息をついた。

 

「まぁ、なんだ…やり方が汚ねぇなぁ」

 

 ライラが肩をすくめながら、苦笑交じりに呟く。

 その視線は少し呆れながらも、どこか感心しているようにも見えた。

 

「僕もそう思いますよ。でも、ここで綺麗に立ち回ってる余裕もないですしね」

 

「確かに、綺麗事だけじゃ生きていけねぇ、でもよ、あんま他の奴らには心配かけすぎんなよ」

 

「気をつけます」

 

 今回の一件で僕の望み通りに進んでくれればいいけど、信用を得られていない点には変わりない。

 

 本当にやるべきことは山積みだ。

 

 信頼を得ることや強くなることはもちろん大事だけど、スキルのせいで他者を簡単に頼れなくなってしまった。

 だけど、それは考え方を変えれば、僕以外の誰かが未来を変える可能性が下がるって事だ。

 知らない場所で誰かが変化を起こしたらきっと僕は対応できない。

そう考えるとこの結果も良かったのかもしれない。

 

 僕の知識がもたらす変化に依存せず、自分で解決できる力を身につける。

 それが、きっと今の僕にとって一番の課題なのだろう。

 

「……まぁ、どうにかやってみるしかないですね」

 

 独り言のように呟くと、ライラが不思議そうに僕を見たが、特に何も言わず、そのまま歩き出した。

 

 散歩から帰ったらダンジョンへ行きたいとアリーゼに相談しよう。

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 夕方になったころ、僕は拠点の庭でノインと向かい合っていた。

 

 

 木漏れ日が差し込む中

『どうしてこんな展開になったんだ…』と内心でため息をつく。

 

 ことの発端は、僕がダンジョンに行きたいと提案したことだ。

 話を聞いたアリーゼが

『実力を見てからにしましょう!』と言い出し、みんなが賛成した。

 

 結果、実力を測るための模擬戦をすることになったのだ。

 

 最初は他のメンバーが相手になる予定だった。

 

 けれど、僕が『アリーゼには手の内がバレてるので嫌です』と正直に伝えたら、彼女は苦笑しつつも納得してくれた。

 次に輝夜が候補に上がったが『何かする前に負けると思います』と言ったら、彼女も呆れたようにため息をつきつつ引き下がってくれた。

 

 ライラには最初から『面倒くせぇ、やらねぇよ』と断られ、セルティとネーゼも僕が気配を察知して逃げ出そうとしたため除外。

 

 魔法使いと戦っても意味ないですし、ネーゼには種族差と手の内が少しバレてるのもあって現状勝負になる気がしません。

 

 そして最終的に『あとはリューさん以外でお願いします』と伝えた結果、同じヒューマンでLV.2への昇華(ランクアップ)を控えている、ノイン・ユニックさんと対決することに。

 

 ノイン・ユニック……正直言って、彼女について僕はほとんど情報を持っていない。

 

 知っているのは、せいぜいジャガさんに殺される順番くらいだ。

 直接話したこともなければ戦闘スタイルも性格も、何もかもが未知数の相手。

 

そもそも、こうして模擬戦の場に立つことすら想像していなかった。

 

(さて、どうするか……)

 

 僕の武器は木の盾と剣、服装はくたびれた茶色いマントと普段着。

 よく見てみれば中層突入時のベルくんと似ているかな?アーマーはないけど。

 まぁ、でも、実際に着てみると意外と動きやすく、ポケットも多いので小道具の収納にも便利だ。

 

 そうぼんやりと考えながら、ノインの姿を観察する。

 

 ノインは片手剣を肩に担ぎ、左手には小ぶりな盾を構えながら、悠々とした態度でこちらを見ていた。

 

「加減はしてあげるから安心していいよ」

 

 そう言ってわずかに笑う。その表情には余裕が滲んでいて、僕を見下しているわけではないが、相手が格下だという確信が感じられる。

 

(なるほど、舐められてるな……ありがたい)

 

 彼女の構えや動きをじっくりと観察しながら、静かに呼吸を整える。

 ノインの戦闘スタイルは、僕と同じ片手剣と盾を使用するものだ。その他の装備は特に見当たらないが、となると、剣さばきと防御の切り替えに優れ、攻守のバランスを重視する戦い方をするのだろうか?

 

 事前に『なんでもあり』というルールをアリーゼにもノイン本人にも確認済みだ。

 少しだけとはいえ、策を練る時間も与えられていた。

 

(準備はできた、狙うは短期決着……)

 

 ノインも今はまだLV.1だけど、僕は恩恵を授かったばかりの新参者。

 加えて彼女はランクアップを目前に控えている実力者で、今の僕とでは身体能力の開きは歴然だ。

 

 ゲームで例えるなら、これは完全に【負けイベント】だ。

 絶対に勝てない相手と戦う展開だけど、むしろその状況が楽しく感じてしまう。

 

 負けるとわかっていても、大技やアイテムを試してみたくなるあの感覚に似ている。

 結果は見えている――でも、“もしも"があるかもしれない。

 

 そんな期待感が僕の胸を少しだけ高鳴らせていた。

 

「それじゃあ、準備はいいかしら!」

 

 アリーゼの明るい声が庭に響き渡る。周囲で見守る眷属たちも、緊張した面持ちで試合の開始を見守っている。

 

 僕は木剣を構え、ノインと向き合う。彼女は余裕の笑みを浮かべたまま、片手剣を軽く肩に担いでいる。

 

 

「よーい……スタート!」

 

 その合図と同時に、僕は木剣を振りかぶり、全力で投げつけた。

 

「なっ!?」

 

 ノインが一瞬、驚きの声を上げる。観戦していた眷属たちも『剣を捨てた!?』とざわついた。

 

 木剣は一直線にノインを目指して飛んでいく。しかし彼女は素早く盾を構え、その勢いを見事に弾いた。

 カランッ、と音を立て木剣は無力に地面へと落ちる。

 

 その隙に、僕は全力で距離を詰める。木剣を投げたのは、ただの陽動に過ぎない。

 ノインが木剣に気を取られている隙に、一気に距離を詰めた。

 わずかな時間の中で彼女の懐へ潜り込むと、ノインの片手剣がすぐさまこちらに向かって振り下ろされる。

 

 鋭い一撃──避けるにはあまりに速い。

 

 だから剣を捨て空いた右腕を振り下ろされる剣に向けて突き出した。

 

バキッという乾いた音が響いた。

 

 僅かな痛みが右腕を襲い、僕は顔を少しだけ歪めた。だが、同時に剣の勢いを止めることには成功したらしい。

 驚きと困惑の表情を浮かべたノインが、こちらを見下ろしている。

 

「ちょっ、正気!? 何考えて──!」

 

 彼女の言葉を遮るように、僕はその先の行動に移る。

 痛みを堪えながら右手を彼女の服に伸ばし、強引に掴むと、間近に引き寄せた瞬間、口に溜め込んでいた液体を勢いよく吐きかけた。

 

「なっ――!?」

 

 ノインの目が驚きで見開かれる。すかさず、上下の歯に仕込んでおいた火打石をカチッと鳴らす。

 

ボッ!

 

 炎が目の前で弾け、ノインは反射的に後退する。冷静に見えても、突如目の前に現れた火に対する防御反応は避けられない。その動きは確かに早かったが、僕の狙いはそこじゃない。

 

 彼女がバックステップを踏んだ瞬間、僕は足元の土を力いっぱい蹴り上げた。

 

 砂が舞い上がり、ノインの視界をふさがんと、土が飛びかかる。

 彼女は咄嗟に盾を構え、顔を守る態勢を取った。

 

「くっ……!」

 

 その反応の速さはさすがと言うべきか。けれど、僕にとってはそれも想定内だ。

 僕は手にした木製の盾を力任せに投げつけた。

 狙いはノインの盾──彼女の防御そのものを崩すためだ。

 

ガンッ!

 

 木の盾が彼女の盾に直撃し、衝撃でノインの体勢がわずかに崩れる。

 

 その隙を見逃すわけにはいかない。僕は即座に体勢を低くし、爆発的な勢いで距離を詰めた。

 

(後一手ッ!!)

 

 勝負をかけた一撃を放とうとしたその瞬間──。

 

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 気がつくと、空には満天の星が広がっていた。辺りは静かで、夜の冷たい空気が肌に心地よく触れる。

 

(……夜?)

 

 ぼんやりとした頭で状況を理解するまでに数秒かかった。そうだ、僕はノインとの模擬戦を――。

 

「あっ、目が覚めた!」

 

 耳に飛び込んできたのは、ノインの声だった。振り返ると、彼女が心配そうな顔でこちらを覗き込んでいる。

 

「ごめん……本当にごめん!」

 

 いきなり頭を下げられ、僕は思わず身を起こそうとしたが、頭がズキリと痛む。

 

「うわっ、動かない方がいいって。怪我、結構ひどかったんだからね」

 

 怪我?と混乱する僕に、ノインは苦笑しながら続けた。

 

「正直、私も焦ったんだ。あんたがあんな動きをするからさ……姿勢を崩されて、勢いで剣を振ったら、それが頭に当たっちゃったみたいで……本当にごめん」

 

 あの時の状況がフラッシュバックする。僕は間違いなく最後の一手を狙っていたが、その結果がこれか……。

 

「いや、僕も無茶したから。気にしないでください」

 

 痛みを堪えながらそう言うと、ノインはホッとしたように肩を落とした。

 

 しばらくすると、マリューがやってきて僕を診てくれた。彼女の治癒魔法のおかげで大事には至らなかったものの、頭部の打撲だけでなく、腕に仕込んでいた木材は折れ、ちょっとした内出血が出来ており、唇と舌にも少し火傷の痕が残っていたらしい。

 

「用意周到だし、火まで使うとか、本当無茶するねあんた……」

 

 ノインが呆れ混じりに言いながらも、どこか安堵の表情を浮かべているのが分かった。

 

「……次があればもっと慎重に攻めてみます」

 

 最後の一手に焦りが出ていた、物事上手くいきすぎるのもよくないな。

 

 今日の教訓は胸に深く刻んでおこうとそう心に決めた。

 

 





スキルに関してはアストレア様は関係なく、恩恵が刻まれると同時に勝手に生えてきたものです。

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