Beginning of MAHAartMATA   作:葉隠小太郎

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第八話 エンド・オブ・デイズ

 

 

天明の大飢饉と呼ばれる飢餓に苦しんだ話がある。

 

此等は当時作付けされていたコメ品種が温暖な地域向けの物であり、今の寒冷向けとは異なり、急激な冷夏の前では育つ事は無かったと記録にある。

 

原因は遠くアイスランドで起こったラキ火山の巨大噴火によるものと推定。

 

成層圏まで達した噴煙がヨーロッパを覆い、分厚い雲として日光を遮ったことで寒冷地化が起こったと記録に存在する。

 

これがフランス革命の遠因と評され、作物の品種改良が重要なファクターとなる理由に繋がったとされる。

 

そして日本でも浅間山の噴火により、麓では毎日のように火山灰が降り積もり、噴煙の影響で冷夏が起こったとされている。

同時に大きな噴火による火砕流が発生、現在の群馬県吾妻郡等へ溶岩による死者が多数出ることとなる。

 

此等の災害の犠牲が出来る限り0に抑えるべく、現在、災害大国日本では各地の活火山が地震などによって刺激され、噴火を起こす可能性を示唆し、近隣住民等の避難訓練を実施。

災害派遣も自衛隊や警察、公営医療機関を中心とした【DRJT(Disaster Rescue Joint TaskForce)】が設立された。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

『現在、気象庁では噴火レベル2に設定し、富士山麓一帯の避難活動を行っています。国土交通省では自衛隊や警察による検問、封鎖が行われており、東名高速道路の区間封鎖、東海道新幹線の運行休止が発表』

 

走る車の中で響いていたラジオが消される。

 

「……近くで下りるぞ。この先からは大通りはみんな立ち往生だとかな?」

「ああ。すまない」

「いいさ。馴染みの店が無くなるのは俺も容認しないからな」

 

急ピッチで手に入れた車、ホンダオデッセイを運転する張に宮本は散弾銃(M1014)に12ゲージシェルをフル装填し、後ろの座席へと置く。

 

「道はあるんですか?」

「まぁ、旧道やらなんやら使う。地元民も忘れたって奴が少しくらいは…」

「いや、その心配は要らない」

「えっ?」

 

手前のICに降りる中、宮本は使っていたプリペイド携帯を親指で貫通させて壊しながら車のナビへ新しい道程を入れる。

 

「おいおい。国道じゃないが主要県道じゃねぇか!?絶対其処にも検問があるぞ?」

「ここで良い。心配するな」

「……まったく」

 

どの様な意図があるのか。

伊達や酔狂で物申す人間でないことは知っている故に指示通り、県道側へとコースを沿って走らせる。

 

そうして数分。

 

「…来たか」

 

宮本の腰ホルスターに備え付けていた拳銃のグリップが付けられた謎の機械を手にし、ハンマーを下へと下げる。

 

銃口部の機械は二つに割れて開き、右側にディスプレイ、左側にルーン文字の入ったキーパネルが現れた。

 

「何だそれ?」

「前にお前さんから手渡されたDDSの大元だ。昔はハンドヘルコンピューターで代用していたがコンデンサやCPUの小型化が開発されるようになったからこのサイズに抑えることが出来た」

「嘘だろ?お前悪魔を召喚する事出来…「これ自体は他の所でも実用化されてるが、スマホサイズは知らん」……そうかい」

 

わざわざ拳銃の様な形にするのか?と張は思うものの、キーパネルを器用に押し、ディスプレイに映される情報を確認しながらスライドしていくと。

 

《メールが届いています》

 

メールログに新着が出る。

 

「………」

 

それを開くと。

 

『ビデオメッセージVOL18録音開始』

 

白衣を着た中高年層の男が現れる。何故だかあまり信じられなさそうな悪どそうな雰囲気を漂わせつつ、衛的現代美術ポーズを取り始めては。

 

『おはよう、こんにちわ、こんばんは、ボンジョルノォ〜!こんなに忙しい毎日を送っている吾輩が君のために折角調べてあげたん物を今ここで…』

 

切った。

 

無表情に。

 

眉間がグランドキャニオンばりに深く刻まれながら。

 

《着信中》

 

ただし、画面には着信が届いているらしい表示が出ている為、否応なしに出るしかないと脅迫されつつある。

 

「……もしもし」

 

仕方がなく通話ボタンを押すと車内のスピーカーから声が出た。

 

《何で!メールを切ったのかな!!?吾輩の声を聞いてくれてないかな!!?》

「知らん」

『せっかく私が色々とご機嫌が良いときに君から依頼したのを頑張ったのにーーー!!?』

「………」

 

失敗したなという顔で俯く。

 

この愉快痛快ネジの外れた謎の人物は一体誰なのか?と後部のメアリは思う。

 

整えられた口髭は白髪が多く、相応に肌には刻まれたシワがその人物が生きてきた人生を物語っている。

 

《はじめましてお嬢さん。吾輩は〔バーテンダーМ〕。気軽に〔ジミー〕教授と呼んで欲しい》

「はっ…はぁ?」

「教授。今は悠長に話している暇はない」

《ええぇ〜!!どうせ富士山麓に着くまで時間あるじゃない?》

「………」

《まぁ、流石に此処からは真面目な話としよう》

 

次切られたら拗ねちゃうと言わんばかりに一応仕事状態へ切り替え始める。

 

《まず相手の目的だが。君はどうだと考えているかな?》

「さてな。そもそも何故富士なのかも不思議だ。確かに"龍脈"の存在が考えられているが其れでも何をするのか…」

《存外、やる事なんて単純極まりない物だよ?》

 

あまり考えすぎないほうが良いと分析結果をまとめた資料を見ながら口を開く。

 

《連中、一斉に本隊から離脱してる。つまりNSAやら大使館やらが出張って来ることは無いね》

「尾行されてる前提で来ていたが、人員自体には余裕は無かったか…」

《其れでも特殊部隊100単位は多いよ?しかも横須賀から爆薬10キロトンクラスは盗んだとか?》

 

想像より規模が少なかった事にもう少し調べをするべきだったと今更な後悔をしつつ、続けて報告を聞く。

 

《目的は脅威的な天変地異を引き起こして社会全体の不穏感を作る事。其処から現代に現れし、希望たる人物を顕現させる事だよ》

「はた迷惑過ぎる」

《自分の国でやれよって思うかも知れないけどやったらやったでとばっちり来るからホント》

 

右に引いても左に押しても駄目な事がある。

宮本はそう思いながら眉間に指を押さえて頭痛がしそうだと感じる。

 

「希望たる人物とは?」

《雑に言うと……【救世主(メシア)】だよ》

「と言うことは…」

《そう。マイケル・ベケット中佐はメシア教アメリカコミュニティ所属だ。幼少期にサイキックに目覚めて誤って両親を殺害。その後は陸軍の超能力研究機関に入ったとか……まるでMKウルトラ計画の実験体だね》

「………」

 

気になってメアリが助手席へと乗り出し、プロフェッサーの報告を聞くと苦虫を噛み潰したような表情になる。

 

どう見ても資料の内容が明らかにおかしいと感じる。

 

身体全体、細部に至ってはメスの入っていない部分など無いほど検査測定用の機械が埋め込まれ、頭蓋骨は既に人工物で覆われており、まさしく"全身サイボーグ"と呼べる代物に変わり果てていた。

 

《昔〔マクドガル〕大佐という機械化小隊の指揮官が居た。彼は脳に頭脳磁界増幅装置というMKウルトラ計画で得た技術が使われていたが、オーパーツの起動までには出力が耐えられなかった。恐らくその装置を改良したタイプを埋め込んでいるだろう》

(だから防護術式が破壊されたわけか…)

 

若いながらに厄介なものを背負い込んでいる。

そんな感想が頭に浮かび、指令官の素性が知れたことである程度対策を練れる事を考え、早速使えそうな術式を編んでいく。

 

「所で何処からそんな情報を?絶対に米軍どころかペンタゴンとかその辺りから引っ張って…《聞かない方が君の為だが?》…敢えて聞かないのも賢人の行いだな」

 

プロフェッサーからの警告を直ぐに理解し、無理矢理納得する張。

少なくとも藪蛇や蜂の巣を突っついた程度で済まされない事態になりかねないと判断した。

 

《さて。此処まで話したけど連中の目的は龍脈を動かして天変地異と崩壊の原因を作ろうとしてるってのが結論。後聞くのは何かな?》

「……いや。ありがとう。わざわざ調べてもらって」

《いいさ。人生の暇つぶしみたいな物だからね》

 

僕も楽しかったと言わんばかりに髭を触りつつ、笑顔で答える。

 

調べついでに何を手に入れたのかは聞かないでおこうと宮本は思いつつ、そろそろ時間切れがやって来る。

 

《では。グッドラック》

「ああ。今度は"彼女"と一緒に店の方へ行くよ」

《うんうん、オリジナルカクテル用意しとくね》

 

通信がここで切れる。

 

恐らくは自衛隊が報道規制向けに作ったジャミング装置の範囲内に入った為であろう。

 

宮本はディスプレイを閉じ、ホルスターへ仕舞いながら前へと向く。

 

「……居るぞ。歩兵戦闘車二台と軽装甲車二台が塞いでる」

 

張の冷や汗交じりの言葉はその視線の先に映る封鎖状況を語る。

 

市販された乗用車と頑丈な軍用車両では明らかに差があり過ぎると言えよう。

 

「大丈夫だ。検問を受けてくれ」

「……ああそうかい」

 

呼び止められればどうなる事かと不安は出るものの、今はそれに従うしかなく、見つけられた自衛官から停止指示の笛が鳴らされた。

 

「此方は全面封鎖中です!直ぐに引き返して下さい!」

「……だとよ?」

「俺が話す」

 

車を一時停止し、宮本が直ぐに降りる。

呼び止めた自衛官の胸ポケット上と肩に付けられている階級章を一瞥し、彼が二等陸尉である事を確認する。

 

「申し訳ありません。此処からは全て封鎖していますので直ぐに引き返して避難をしてください」

「分かっている。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

コウマ陸佐。

 

その名前を聞いた瞬間、陸尉の顔はしかめつつも所持している短距離通信機器を手に取り、マイク部分に話しかける。

 

「此方、へ地点。コウマ陸佐どうぞ」

《……此方コウマ陸佐。状況説明を》

「了。陸佐の名前を出した一般人が此方に居ます。どうぞ」

 

ただのイタズラか何かか?

と思いながらも、上官である陸佐へと繋ぎ、一応の指示を仰ぐ。

 

《…一般人の名前は?》

「…失礼ですが写真付きの身分証を見せてもらえますか?」

「……ああ」

 

陸尉の指示に従い、宮本はコートの内ポケットに入れていた免許証を渡す。

直ぐに手持ちのライトで照らしながら写真と本人を確認し、通信を行う。

 

「宮本真之介。年齢27、神奈川県横浜市伊勢佐木異人町に住居しているとの事です」

《………そうか》

 

通信越しにため息が聞こえてくる。

 

そしてすぐに。

 

《……通せ。命令だ》

 

異例と言うべき言葉が出る。

それには陸尉も思わず聞き直した。

 

「…もう一度すみません。聞き取れなかったですが?」

《通すんだ。責任は私が持つ》

「……り、了…!!」

 

一体何が起こっているのかと不可思議な命令であるが、厳格な縦社会である自衛隊で前線指揮官からの命令を聞かない訳には行かず、陸尉は封鎖中の自衛官に車一台通れる隙間を作るように指示を出す。

 

直ぐ様バリケードの一部が撤去され、そこを通るように指示棒を照らされ、張は車を動かした。

 

「…申し訳なかったな」

「いいえ。これも仕事です」

 

何を察したのか、陸尉は敬礼し。

 

「いってらっしゃい」

「……ああ」

 

宮本は敬礼を返して走っていく。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

富士山麓

 

 

2日前から別働隊による拠点開発が済み、簡単ながらジャララバードの基地より快適な設備の中で両腕の整備が進められる。

 

「噂は所詮噂でしたね。計器の故障も不調も見受けられません」

「都市伝説が独り歩きは何処の国でも珍しくはない。と言うことでしょう」

 

右腕の腱部分を取り替え、マニュピレーターの反応速度も28%上げてみる。

 

刺突に特化した貫手のスタイルと斬撃の平手の瞬時変換が出来るように調整が済めば、後は成り行きに任せられる。

 

「…失礼ですが大尉。我々が見た通り…」

「ヤツは生きている。古代中国より生来する神秘…神仙たる存在が頭部裂傷による死亡があると?」

「しかし、あの状態で生きている人間がいるわけがありません!生命維持における重要箇所二つを失っては如何なる生物であろうとも…」

「其処が甘い。未知の遺物を前にすればどの様な奇跡も普遍的代物に変わる」

 

そう容易くは死なない。

一部では魔術刻印なる魔術師の積み重ねてきた結晶がある限り、死から遠ざかると聞いている。

 

神仙ともなればたとえその身をバラバラにしようとも別の身体を複製する事だって出来るだろう。

 

論理的にはある種の沼の男(スワンプマン)になってしまいかねないが。

 

兎も角。

 

「あの男はやってくる。絶対に」

 

次こそは決着を着けよう。

 

そう思いながら、爪を砥ぎ続ける。

 

 

 

…………

 

 

 

黄金色に輝く麦畑。

 

ずっと走り続けても端まで辿り着けないほど遠く、広い其処は開拓し続けてきた我が家の土地であった。

 

少年の頃は実りの時期に走り回ることが好きで、祖父の飼う牧羊犬と一緒に追いかけっこをするのが楽しみであった。

 

いつかこの土地を譲り受ければ麦を刈り、製粉して売買する。

 

羊の毛を刈ってウールにする為の加工をする。

 

様々な野菜を育てて其れを子供達と食べる。

 

そんな夢のような毎日を送れるはずだった。

 

散弾銃を持った両親に殺意を向けられるまでは

 

 

 

「……嫌な夢だ」

 

悪夢というのはいかなる時でもやって来る。

 

身構えている時には死神はやって来ないと誰かが言った記憶があるけれど、恐らくその誰かが死神なのではとその時は思った。

 

このままもう一度目を閉じるかと思うも、また悪夢にうなされるくらいなら起きていたほうがマシだろう。

 

簡易ベッドから起き上がり、手や足の関節を回して軽いストレッチを行ってから外へと出る。

 

「中佐、まだ仮眠中では?」

 

そう心配をかけてくるのは部下の一等軍曹。

もう一人は恐らくトイレでもしているのかテントの警備から一時離脱していた。

 

「……気が立っているのか眠れないのだ。すまない」

「いいえ。であれば糧食の方からコーヒーを持ってきますが?」

「手が空いた時に頼む」

「コピー!」

 

こうしてみると自分には勿体無い部下達とは思う。

 

米陸軍のみならず空軍、海軍、海兵隊、沿岸警備隊。

 

其処から選抜されて配属され、国の為に尽くす事を決めた精鋭達が此処にいる。

 

これから来るであろう組織はこの国を1000年以上守ってきた護国の鬼将達だ。

むざむざ死にに行かせるつもりは無いが、犠牲なく済むことは不可能であろう。

 

だからこそ、尚更成功させねばならない。

 

「…救世主。我等には其れが必要なのだ」

 

我らが主によって選ばれた存在。

この末世じみた世界で奇跡と呼ばれる存在を呼び出すにはこれだけしかない。

我らが主がそれを行わぬならば、我々がやらねばならない。

 

「………」

 

そうこうしている内に、あの少女が捕まっているテントの前へと辿り着いていた。

 

何か意味があるわけでも無いけれど、最後に聞くことがあるかも知れないと思って来てしまったわけだが。

 

「……失礼する」

 

一言言ってから入り口のドアをめくって中へ入る。

 

人としての尊厳を持つならば礼儀はどの様な人物であっても行わねばならない。

いや、人であろうが無かろうが、自由意志を有して感情や知恵が持つならばなのであれ、礼を尽くす事が必要だ。

 

「………」

 

手と足に鎖を着けた少女を見る。

特殊仕様であるため如何に怪物と謳われる存在でも引き千切る事は容易ではない。

そのせいもあってか、今は恐ろしいほどに大人しくしていた。

 

「……食べないかね?」

「………マズイ」

「まぁ。流石に本職には劣るか」

 

少し食べたらしいが2〜3口で止めたらしいベイクドビーンズとフィッシュケーキがある。

 

油が戻ったかの様な酸化した風味に中身のパサつき具合がミスマッチにミスマッチを繰り返す絶妙な不味さのフィッシュケーキ。

口当たりは脂でザラザラと感じて、豆は煮すぎてグニャグニャに柔らかく、トマトの酸味を越えて舌や喉がチリチリするベイクドビーンズ。

 

これを不味いと言えるくらい飼い慣らせた宮本という男の手腕は相当だと改めて理解させられる。

 

「……話すこと、無い」

「何がかね?」

「私達…"救世主"じゃナい」

 

驚いた。

 

如何に神代の存在とは言え、異なる術式の代物を理解したとは思わず目を見開いたまま何も言えずになってしまう。

 

「ナゼ?救世主…欲しい?」

「……何故、か…」

 

その問を私が答えると正直公私の私側に寄ってしまうだろうが。

 

「……全ての為だ」

「すべて?」

「……ああ。全ての人々が救われねばならない」

 

たとえ一つの島国が滅びようとも、其れがいつか未来に繋がるのであれば。

 

「……そんな…コト、出来ナイ」

「出来る出来ないではない。やるかやらないかと言う話だよ?」

「………」

 

この子は幼いながらに聡明だと思う。

恐らくは相当英才教育を受けてきたと見てもおかしくはなく、その態度も立ち振舞も毅然とした面持ちであった。

 

「ただ、少なくとも君達は救世主に相応しい生まれである事は間違いない。そうだろう?」

 

「〔ルルワ〕。アベルの妻に当たり、〔キングゥ〕は〔エノス〕に当たる存在であると」

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

メソポタミア文明最古とされる王の名前は〔アルリム〕という。

 

この人物は神話的な記述に大洪水以前から都市国家エリドゥを統べていたとされる偉大な王であった。

 

そしてアルリムは十字教にも由縁が存在している。

 

其れは、この人物が人類最初の男である"アダム"と同時代に存在し、セトの系図からはアルリムとエノスが同等性を有しているとも考えられていた。

 

 

 

「【メシア教】の分派、グノーシス主義の【マンダ教】による反乱行為は本国すら把握していないと?」

「それ愚か、危険分子と認知していない者が多数いる。なにせ一万にも満たない小規模勢力だ。俺でも探すのに手間がかかったぜ…」

「だから悟られず、息を潜めて行動出来た…正直大きくなり過ぎて目が届かなくなっているのは如何なモノでしょうか?」

 

富士山周辺の市町村に避難警報が出されて6時間が経過し、夕方に差し掛かる頃。

 

明らかに自衛隊とは異なる装束を纏う集団が集落の集会所を拠点としていた。

 

黒を基調とする軍服らしき洋装は太平洋戦争時の士官が使っていた様な意匠を持ち、その中でも一際目立った者が2人居る。

 

華奢で小柄な少女、紫がかった灰色の長い髪と少しばかり短さの目立つスカートを履きこなす。

 

対して、その隣には奇妙な派手な者が其処にいる。

大樹と言ってもいいその立ち姿に布を巻いた二振りの武器を背に収めた男を見たならば思わず立ち竦んでしまうだろうと考えられる。

 

「どうみる?〔柊〕」

「どうと…ただの土台崩しでは?例の人(イエス・キリスト)を"偽預言者"って言いたい過激派の考えですし」

「……まぁそうだろうな」

 

男は指で髪飾りを揺らし、考え込む。

 

グノーシス主義は現状十字教主流派から枝分かれした分派と言っても過言ではない。

 

その理由に、現在まで伝えられている開祖と言える預言者達を偽物と断言し、〔洗礼者ヨハネ〕を含め、〔セト〕〔エノス〕〔アベル〕を真実の存在とマンダ教では教えられていた。

 

しかし禁欲的な宗派たるマンダ教は他の宗教よりも融和は難しく、新しい入信者の数よりも死に臥せる者たちの方が多く、知る者も自然消滅すら考えていた。

 

(だからこそ、最後と言わんばかりに返り咲こうとした訳だが…)

 

まさかNSAや米軍特殊部隊にまで手が及んでいたとは想定しておらず、非正規戦のスペシャリスト達による情報操作はこの段階まで知られずに行われていた事で、皆歯噛みする状態であった。

 

故に、この場に集まった者達はその身勝手さを怒り、内面に秘めながら戦う事を決めている。

 

「〔音柱〕殿。全部隊配備完了しました。いつでも行けます」

 

音柱と呼ばれた男は報告に入った通信士に対して口を開く

 

「ああ。敵は長い間テロリストや敵対勢力と戦い続けてきた歴戦の戦士だ。命掛けだぞ?」

「はっ…!なれば相手に不足なし。我ら護国の鬼兵。何としても打倒します…!!」

「では行って来い。後詰めは任せろ」

 

護国。

 

その為に戦い続けてきたと言っても過言ではない者達が集まり、相手の野望を破るべく行動する。

 

音柱〔宇髄天元〕は見る。

その覚悟を。

 

〔柊シノア〕は見る。

その思いを。

 

これより、日本の明日を懸けた戦いが火蓋を落とす。

 

 

 

to be continued

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