新訳 ガンダムSeed Destiny オーブの守護神とザフトの燃える瞳   作:faker00

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狂いだした歯車

「アスラン・ザラ?」

 

「そうよ!あのアスラン・ザラが今このアーモリーワンにいるみたいなのよ!貴方だって気になるでしょ!?シン!」

 

 名前くらいは知ってるけど別に関係があるわけじゃない。なのになんだってこんなに興奮してるんだ?

 ザフトレッドと呼ばれる一部の特別階級の軍人にしか着ることの許されない真紅の軍服の下をピンクのミニスカに改造するという前代未聞の事態を堂々とやってのけたことで知られるザフトきってのエリート、そのルックスからも人気のある少女、ルナマリア・ホークの興奮した姿を目にしてシンと呼ばれた少年の反応は冷ややかなものだった。

 なぜかというとそもそもそんなものにシンは興味の欠片もないからだ。

 

「別に…そんなもんどうでもいいだろ?」

 

「良くない!あのねえ、アスランさんは間違いなく前大戦ザフトで最強のパイロットだったのよ!?あんたもインパルスのパイロットなんて大役任されてるんだから少しくらい興味持ちなさい!」

 

「あいた!」

 

 人差し指でデコをビシッと弾かれる。

 どうしてかは知らないがシンは全くといっていいほど昔からルナマリアには頭が上がらないのだ。オーブからプラントに移住してきた時に彼女が積極的に話し掛けてきてからと言うもの何だかんだ一緒にいる腐れ縁のような存在なのだが……身長で追い抜いたのも僅か1年前の話だ。後は語るまでもないだろう。

 

「だからってそれとこれとは別だろ!?だいたい本当にいるのかよ、あの人。確か今はオーブにいるんだろ?」

 

「うーん…確かにね…けどヴィーノが見たって、何だかグラサンつけて中途半端な変装してたみたいだけど。」

 

「はあっ!?それだけかよ!ヴィーノの話一つでよく信じられるなルナも…」

 

「やっぱり怪しい…かな?」

 

「怪しい。絶対に。」

 

 自分の預かり知らぬところでボロクソに言われているメカニックの悪友には済まないという気持ちはあることはあるがあまりに信憑性が薄すぎる。

 全く面倒な情報を持ってきてくれたものだと心の中で悪態をつきながらシンは止めていた足を再び進める。

 

「だいたい前大戦の英雄だなんて言っても怪しいもんだ、オーブのキラ…そう、キラ・ヤマトだっけ?あいつだって軍にいることはいるけど前線には音沙汰なしだ。ラクス・クライン共々実は大したことないんじゃないの?ただ担ぎ出し安かったからそうなっただけで…」

 

「…ほんとにシンってオーブも前大戦の名残も何もかも嫌いよね。」

 

「当たり前だろ。俺は戦争をなくしたくて軍にいるんだ。そんなものに特別な感情…憧れなんて持つはずないじゃないか。」

 

「それはそうだけど…」

 

 ーー我ながらずいぶんと意地になってるな…

 シンは自分の言動をすぐさま後悔した。こんな事を目の前の少女に八つ当たりしてもただ困る人が増えるだけなのに。…だがそれでも譲れない思いがシンの胸中を支配していた。

 

「(けど…全てを奪った戦争も、その英雄も、俺は肯定するつもりはない…!)」

 

 この事を考えると何時も感傷に浸ってしまう。そのせいだろうか、目の前に迫っていた人影に気付くのが大分遅れてしまった。

 

「…イッた!」

 

「…あっ!すいません!」

 

 ーーやっちまった!

 

 ぶつかった相手が自分よりも小さな小柄な少女だったことも災いしたか、別段力を入れたということもなかったのだが豪快に弾き飛ばす形になってしまった。

 

 

「大丈夫か!?」

 

「ああ、大丈夫だアレックス…」

 

アレックスと呼ばれた男がシンに弾き飛ばされてしまった金髪の少女に手を差し伸べる。大きなサングラスにその顔は隠され素顔を窺うことは出来なかったがシンはその時確かに何か感じた。…ただそれがなんなのかを説明することは到底出来そうにもなかったが。

 

「……だから気をつけろと言っているだろ…?済まないな、君も大丈夫か?」

 

「え、ええ。俺は特に何とも…」

 

 ーーと言うよりも女の子に弾かれるようなことがあれば俺は一生立ち直れないと思う。

 言葉にこそしなかったがシンは本気でそう思った。

 

「それじゃあ失礼する。ほら行くぞ、会談に遅れる。」

 

「うるさいな、子供扱いするなよ!」

 

 そんなおてんばな妹としっかり者の兄といったありがちな弟妹のような会話を繰り広げながらその2人は歩いていった。

 その姿をシンとルナの2人はただ呆気にとられたように見つめていた。

 

 

「会談…ってなに?」

 

「さあ?」

 

「と言うよりもあのグラサンって…」

 

「「……まさかねえ。」」

 

 ハハハと2人笑いあう。なんてことはない、どこかのお偉いさんがボディーガードを引き連れてこれから何か重大な会議に望むのだろう。そしてそのお偉いさんならちゃんと今このアーモリーワンにいるのだ。

 

「まさかデュランダル議長に?」

 

「そうだとしたら俺大丈夫かな…そんな重要人物にぶつかったうえ弾き飛ばしたなんて知れたらインパルス落とされるんじゃ…」

 

「いくら何でもそんなことは……」

 

「おい、ルナ?なんとか言ってくれよ…」

 

「……さあ、気合い入れてブリーフィングいくわよ!ミネルバの入水式を飾るのは私達MS組なんだから!」

 

「……軍法会議かな。」

 

 覚悟を決めた方が良いかもしれない。

 先ほどまでの憂鬱も、苛立ちも、何もかもが吹き飛んだ。そうして新たに浮かんだ危機にめまいをお越しながらシンはルナマリアの後ろを歩くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遅いぞ2人とも!いくら赤服と言っても遅刻は感心しないぞ。」

 

「すいません。副艦長」

 

 ブリーフィングルームの扉を開けると既に自分達以外は席についているようだった。入ると同時に小言を言ってくる副艦長であるアーサー・トラインの言葉を聞き流して自分の座るべき席とそこをとってくれているであろう友人の姿を探す。

 

 

 ーーいた。

 

 

 その中性的かつ整った顔を不機嫌そうに歪めながら早くこっちにこいと言わんばかりにこっちを睨んできている。

 

「…ルナ」

 

「…レイ様のお説教タイムは免れないわよ…覚悟を決めなさい。」

 

 

  

「シン、早くしろ。お前たちのせいで進行が滞っている。」

 

 しびれを切らしたかそのイライラを隠そうともせず怒気を孕んだ声がシンとルナに向かって投げられる。

 この男の逆鱗には本当ならなるべくふれたくない。何故かというと後が怖いからだ、まるで蛇のようにしつこく抉ってくる。これは文句など一つもなしで、投降する敗残兵のごとく従順に従うしかないだろう。

 

 

 

 

「いや…ゴメンよ、レイ。」

 

「言い訳なら後で聞こう。ルナマリア、お前もだ。」

 

「あちゃー…まあそうなるわよね。」

 

 シンもルナもお互いに「ここはどちらも絶対に逆らわない。それがお互いの為だ」とアイコンタクトを交わしてから不機嫌極まりない青年の隣に並ぶ。彼はシンと同い年のはずなのだが…誰にきいても彼の方が年上に見えると答えるだろう。それくらい貫禄というかオーラに違いがある。

 

 レイ・ザ・バレル、今年の軍育成学校の主席を取った言うなればザフトの誇るスーパールーキー、MS戦闘、CQC、射撃、諜報、全てに優れたその才覚に人は彼のことを「アスラン・ザラの再来」と呼んでその将来を嘱望した。

 もちろん尋問活動もスペシャリスト。その威圧感たるやシン、ルナマリアこそ苦笑いしながら受け流すことが出来るが一般兵…所謂グリーンの兵ならばそこで失禁しかねないものがある。

 そんな彼に睨まれたシンの居づらさは既に作戦前から神経を極限まで張りつめさせるに至っていた。

 

 

「(今度からは遅刻厳禁…いや、常にレイと行動しよう。そうすれば何も問題はないはずだ。)」

 

 本日シンが掴んだ、これが第一の教訓だった。

 

 

「これで全員揃ったわね…それじゃあリラックスタイムもここまで。本日のミネルバ入水式に置けるブリーフィングをこれより行います。私はタリア・グラディス。この艦、ミネルバの艦長を務めるので以後は艦長と。…戦闘任務ではないですがこれが記念すべきミネルバ初任務です。議長も視察に訪れていますから各員全力を尽くすように。」

 

 タリアから出された、議長、という言葉にその場の雰囲気が変わる。前代表パトリック・ザラの死後混乱のさなかにあったプラントをまとめ上げ、その政治的手腕と地球との融和を軸にした政策で今や国民の誇りとなっている代表、ギルバート・デュランダルの名を出されれば嫌でも気合いが入るというものだ。

 その証拠にいつもはおちゃらけているルナマリアも、普段クールなレイでさえも背筋に力が入っているのがよくわかる。

 

「よろしい。気合いが入ったみたいですね。それでは説明に入るのです……」

 

「大変だ!!!」

 

 その姿をタリアが見て満足気な表情を浮かべたその時だ。息を切らした護衛兵がブリーフィングルームに飛び込んできたのは。

 

「何事です!ここはミネルバクルー以外立ち入り禁止のはずです!」

 

「ハッ!すみませんグラディス艦長!しかし急を擁するので…」

 

「急を擁する…?分かりました発言を許可します。」

 

 尋常ではないその護衛兵の様子に何か感じたタリアは発言を許可した。

 シンもその判断は正しいと感じた。…一体何があったのか。

 

「先程5分ほど前にアーモリーワン内部にスパイが侵入!新型機セカンドシリーズがが奪取され、現在ザクが一機で対応しています!ブレイズザクファントム、ガナーウォーリアの調整は完了していないのですがインパルスはでれます!すぐに出撃を!」

 

「なっ…!」

 

 ブリーフィングルームが俄かに騒がしくなる。こんな時に襲撃、しかも最新鋭の新型セカンドシリーズが奪われた、となれば現在このアーモリーワンのどこかにいるであろう議長の命も危ないと言うことだ。まともな神経の持ち主なら落ち着いていられるはずがない。

 

「艦長!」

 

 シンはすぐさま立ち上がった。護衛兵の話だとここをどうにか出来るのは自分をおいてほかにはいない。

 シンは一秒でも早く出撃したかった。

 

「…分かりました。シン!インパルスを出撃させて!ミネルバも直ぐに出します!総員戦闘配置へ!」

 

「「「はい!!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

「…シン!」

 

「どうしたんだよレイ。おまえのはまだ出れないんじゃ…」

 

「よく聞け、シン。お前は強い。だから絶対に負けない。この言葉を忘れるな。」

 

「ああ!」

 

 格納庫へと向かう道を全力で走っているなかわざわざついてきて忠告してくれたレイに感謝の意を示し片手をあげる。

 

 ーー分かってる…俺は負けない!

 

 そのまま走りつづけまだ正式にはロールアウトされていない自機に乗り込む。コアスプレンダー…端から見ればただの戦闘機だがこれが次世代MSインパルスの肝になる…!

 

『コアスプレンダー、発進準備完了!発進どうぞ!…気をつけてね。シン』

 

「ああわかってる!シン・アスカ、コアスプレンダー、いきます!!」

 

 管制を務めるルナマリアの妹、メイリンの合図と同時にシンはコアスプレンダーを起動させ、飛び出して行った。

 この合図がその先も続くシンの激闘の始まりを告げる鐘の音になるとも知らずに…

 

 

 

 

ーーーーー

 

数十分前 オーブ首長国連邦 首都オノゴロ 軍総本部

 

「…っ!これは本当なの!?」

 

「…はい。間違いありません。」

 

「これじゃあカガリとアスランは…!」

 

「巻き込まれる可能性も…」

 

 キラは報告された内容と自分の不甲斐なさに顔を歪めた。

 

ーー連合の誇るエクステンデットがアーモリーワンに侵入した。恐らく目的はミネルバの入水式に合わせてお披露目予定だった新型機の強奪。

 

「くそっ!これじゃあ2年前となにも変わらないじゃないか!!」

 

「はっ…?2年前…ですか?」

 

「…!いや、何でもないんだ!」

 

 自分がストライクに出会った時とこれでは全く同じ…あまりの状況の一致に歯噛みする。兆候はあったのだ。だがしかしそれは本当に些細なものでまさかこんなにもはやく連合が動くとは到底思えなかった。

 

「…」

 

 キラには確信があった。これを放置すれば再び世界は混沌に包まれる、と。

 

「(恐らくアーモリーワンは歓迎ムードで一般人も多い。あんな状態でエクステンデットなんかに入り込まれたら軍にまともな対処が出来るとは思えない…!)」

 

 

 

ーーならやることは一つしかないじゃないか

 

 

 

「マードックさんを呼んで!あと僕のパイロットスーツの準備を!」

 

「…!一体なにを!?」

 

「フリーダムでプラントへ飛ぶ!今は行かないと大変なことになる!」

 

「しかしそんなことをすればカガリ様の極秘訪問の件が…」

 

「構うもんか!今は非常事態だ!次はないから早くして!」

 

「……わかりました!」

 

 秘書をどやしつけて自分も脳内を、パイロット、キラ・ヤマトに切り替える。

 

 執務室を駆け出しキラは思案する。

 

「(ブースターを使っても20分はかかる…カガリ、無事でいて!)」

 

 

 そうして準備を整えキラも飛び出した。これが彼の思い虚しく再び戦争の中へと引き戻す出撃とも知らずに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




どうもです!

初っ端から原作とは違う方向へ行ってますね…

早すぎるキラとシン、そしてアスラン邂逅がもたらすのは一体何なのか?

次回もご期待ください!

それではまた!

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