新訳 ガンダムSeed Destiny オーブの守護神とザフトの燃える瞳   作:faker00

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集う運命

「良い調子だ。うん、ザフトの最新鋭って言ってもこんなものか。拍子抜けだね。」

 

【大佐、あまり気を抜きすぎないように。】

 

「分かっているさイアン、仕事はこなすさ。慎ましくな。」

 

 

 現在も戦闘中……のはずなのだが諫めるように話しかけてくる母艦であるガーディ・ルーの艦長であるイアン・リーに答えるその男の態度は休暇中に自宅で優雅にティータイムを過ごしている人物のそれに近いものだった。

 

「おおっと!そんな簡単には当たるわけにはいかないなあ!」

 

 その余裕はたとえ敵MSに照準を合わせられビームを撃たれたところで変わることはない。

 当たらなければ問題ない、そう言いたげに完璧な機体制御で愛機であるエグザスを駆る。

 そうしてまた笑みを浮かべるが外からその素顔を伺い知る事は出来ない。仮面に包まれたその顔は輪郭の動きから大まかな感情を読み取ることが出来る程度だ。

 こんな外見だがその実力、人望は本物であるからまた面白い。

 

 地球連合軍第81独立機動群ファントムペイン、地球連合軍の中でも数が限られ重要機密の一つである強化人間、エクステンデットを率いる彼の名はネオ・ロアノークと言った。

 

 

【ネオ!あいつやっちゃって言いよね!】

 

【戦艦潰しなんて腕が鳴るぜ。】

 

【ネオ……終わったら褒めてくれる?】

 

 

「はいはい、わかったから落ちつけお前達。アウル。OKだ。思いっ切りやってこい。スティング、あまり不用意に近づくなよ?あれはまだまだ牙を持ってるからな。ステラ、ああ。もうちょっと頑張ったらな。」

 

【【【了解!】】】

 

 

 ーーまるで仲の良い弟妹だな。

 

 殆ど同じタイミングで入った通信に手早く答えるとそんな日常的な光景を思い浮かべた自分に苦笑する。

 そんなことはあり得ないというのに。

 

 だが案外子供というのはあっているともネオは思った。彼等の外見は10代後半だがその心は純粋、まだ何も知らない子供だ。……だからこそ僅か数時間前に3人で数百人の敵兵を死に追いやってもあんな風に無邪気に笑っていられるともいえるのだが。

 

 

「頭が痛くなってくるな……」

 

【は?何か異常が?】

 

「いや、そういう訳じゃない。ただこちらの事情だよ。」

 

【あまり感情移入し過ぎないように。あれら、は兵器です。普通に考えれば疲れますぞ。】

 

「ああそうだな。」 

 

 

ーー感情を読まれるとは随分焼きが回ったもんだ。

 

 全てお見通しのようなイアンの回答にネオはやれやれと心の中で苦笑する。

 最初はどこまでつまらない男かと思ったがそれはどうも思い違いだったらしいと改めて関心する。もしかしたらいいコンビになれるかもしれないと…イアンがどう思っているかはネオには知るよしもないが。 

 再び無機質に飛んでくるビームに対応していると状況が動いた。

 

 

「やるじゃないかイアン!これで奴らは袋のネズミってやつだ!」

 

 対応していたトリコロールカラーのMSもその異変を察知したから焦ったかのように後退していく、さっきまでは一方的に攻めてくれたが今度はこちらの番だ。

 時間をかけた仕込みの成功を喜びながらも油断はない。目的は元々MSだけだったかが少し欲張るのも有りだろう。

 

 追撃を掛けながらその成果を見る。

 ザフトの誇る最新鋭艦ミネルバ、今日が初陣という事もありまだまだ綺麗に輝いているその船体は大きな小惑星の地面に押し付けられていた。

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 デブリ帯をセカンドシリーズ3機を強奪した部隊を追って進むミネルバ、その速度は流石に最新鋭という出力を誇っており交戦に入るまでは順調だったのだ。だからこそ、追撃しているのは自分達という意識からか気付いたときには全てが手遅れだった。

 

「はめられた!」

 

「ええ!?」

 

 ネオがその成果にほくそ笑んだその時、絡め取られたことにも気付かずにいたミネルバの艦内でいち早くその事態を察知して叫んだ男がいた。

 

「そうみたいね……これを抜け出すのはかなり……」

 

 同じように事態の深刻さに気付いたのか艦長のタリアも苦虫を噛み潰したような表情で考え込んでいる。

 ミネルバは危機を迎えていた。

 

「どういうことですか?アレックスさん?」

 

 官制を務めるメイリン・ホーク……現在出撃中のルナマリア・ホークの実の妹でもある……が何が起こったのかわからない、という表情で問いかける。

 それに対してアレックスと呼ばれた青年は努めて冷静に、かつ危機の重大さを伝えられるように思案してから答えた。

 

「ブリッジからも幾筋のワイヤーが見えるだろ?敵艦を追っているうちにあれの配置がミネルバでは抜けられない大きさの密度になってしまったんだ。恐らくあれがどんどんと幅を狭めてミネルバの動きを制限するだろう。そうして最終的には……」

 

「……!あの小惑星に叩きつけられるってことですか!?」

 

「残念ながらその通りだ。皆衝撃に備えろ!後数分もしないうちにコントロールを失う!!」

 

 アレックスの予想通りその知らせを聞いたクルーが安全を確保する頃にはミネルバの機体は大きめの小惑星に縛り付けられていた。

 がっちりと食い込むワイヤーは特注なのかミネルバのパワーをもってしても引きちぎるのは困難だった。この瞬間ミネルバは宇宙に浮かぶ的に成り下がった。

 

 

 

「グアッ!!」

 

 アレックス本人もその衝撃に船内を転がり回る。

 様々な経験を積んできたが流石に航行中の戦艦で地面に叩きつけられるという経験はない。 

 生き残ることが出来たのなら今後の話のネタになるかもしれない。普段そんなジョークを考えたりするような性格ではないが何故か今回に限ってはそう思った。それほど状況は絶望的だとアレックスは睨んでいた。

 

「シン!レイ!ルナマリア!全機戻って艦の援護を!このままでは沈みます!」

 

 早くも冷静に戻ったタリアが通信機を通じて指示を出撃中のMS隊に飛ばす。

 それは正しい判断だとアレックスも思った、逆に言えばそれしかないとも言うことができるが現時点で出来ることなどそれくらいしかないのだ。

 

「この艦の武装は!?」

 

 急いでこの状況の打開策を考えねばならない、アレックスはそう感じていた。MS隊の帰還はあくまでも対処療法だ、こんなにでかい的が止まっていては防ぎきることなど出来はしない。撃沈までどれだけあるのか?そう考えると少しでも大口情報が欲しかった。

 

「教えなさい!今は猫の手でも借りたいの!」

 

「は、はい!タンホイザーに40mmCIWS……」

 

 とは言ってもアレックスはザフトの軍人ではない。どこまで教えて良いものかと戸惑うクルーだったがタリアの鋭い叫びが飛ぶ。

 艦長である以上タリアは戦況から目を離せない。とにかくここから抜け出す方法は任せた、そう任せられたかも同然の指示だった。

 

 

 

 

「これしか……ないか。」

 

 あまり乗り気はしないがこれぐらいしか策は思い浮かばなかったがこれしかない。武装、艦のオプションパーツ、その全てを聞いた上でも現状を打開できるアイデアは少ない。そう感じたアレックスは覚悟を決めた。このままでは艦そのままが落ちてしまう。それだけは避けるべきだと判断した。

 

「艦長!」

 

「なに!?今手を離せないからそのまま伝えて頂戴!」

 

「予備燃料タンクをパージしてください。一気に切り離してそれをミサイルで破壊すればこの小惑星をえぐる程度の威力は出せるはず……それと同時に出力を全開にしてその爆風に乗って加速、このワイヤーごと引きちぎって離脱しましょう!」

 

「ば、バカをいうな!」

 

我に帰ったかのように副艦長を務めるアーサーがそれは無謀だと止めに入る。

 

「この超至近距離でそんなことをすればただではすまないぞ!下手をすれば自爆、仮に成功しても動力源に重大な欠陥が生じたらその後なにもできないぞ!」

 

「そんなことは分かっています!」

 

 ……今必要なのはそんな正論ではなく、生き残るための手段だ! 

 そう叫ぶが流石に二の足を踏んだかクルーの意見はアーサーのそれに傾きつつあった。艦長であるタリアはまだ判断こそ下していないがかなり迷っているようにも見える。

 

 ーーくそ!万事休すか!

 

 アレックスはこの判断は受理されないと判断した。

 こうなったらいっそのこと自分の正体を明かしてでも……

 

 そう思い変装の為につけていたサングラスに手を伸ばす、……するとそこで異変に気がついた。今の今まで酷くなる一方だった爆音が完全に止んでいる。それに異常を感じたのはアレックスだけではなかった。

 

「シン!?一体なにが?」

 

【分かりませんよ!けど突然全機引いていって……】

 

MSに乗っているのであろうシンと呼ばれた少年も困惑した表情を浮かべている。となるとなにか撃墜したとかいうわけでもないようだ。それなら一体何が…?そのアレックスの疑問をさらに深めるかのように敵は更に行動に出た。少し距離をとると各武装を乱射、ミネルバとの間に小惑星の破片でバリゲートを作ったのだ。

 

 これはまるで追撃を受けて逃げているようではないか?

 一度逆転した立場が再び元に戻ったかのような行動にアレックスも混乱した。

 

 一体……何がしたい?

 

 

 

「こちらに接近する機体あり!識別番号は……オーブです!」

 

「オーブだって!?」

   

 あまりの急展開にミネルバ全体が唖然としていると突然メイリンが叫ぶ。 

 アレックスの混乱はここに極まった。なぜ、オーブの機体がここにいる?そもそもそんな機体があるのか?

 その混乱は数分後。思わぬ形で解けることになる。

 

【こちらオーブ軍所属、フリーダム、パイロットのキラ・ヤマトです!ミネルバ聞こえますか!?】

 

「キ……ラ……?」

 

 なんで……お前が?

 

 見慣れた機体、聞き慣れた声にアレックス・ディノはアスラン・ザラに戻っていた。

 

 

 

 

  




キラにもシンにも視点あてないと難しいですね…

オチとしてはネオが直感でキラ、というか格の違う相手が来るのを予測したということです。

今度こそキラとシンが出会う……はず。

それではまた!

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