新訳 ガンダムSeed Destiny オーブの守護神とザフトの燃える瞳   作:faker00

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邂逅

「どうもグラディス艦長。キラ・ヤマトです。今回はデュランダル議長との合意の元参戦しました。あくまで僕個人としての意志による参加でありオーブ軍としてではないということをまずは確認してください。」

 

 

 ミネルバのクルーが注目する中、明らかに格式が高い軍服に身を包んだ女性と青年が相対する。

 

 簡潔に、それでいて意図ははっきりと伝わるように。

 オーブ軍准将としてではなく、1人の人間としての行動だということを強調するように。

 まだ少年の面影が残っている……にも関わらずどこか悟ったような達観した憂いを帯びた瞳が特徴的な青年、キラ・ヤマトは警戒心を持ったままそう告げた。

 

 

 

「分かっておりますわ。ヤマト准将、今回の件はザフトという組織として准将とは何もなかった。それに相違ありません。」

 

 

「助かります。」

 

 

 多分この人は大丈夫な人だ。  

 キラは握手を求める手に応えながらこちらの内情を汲み取った返答をする彼女についてそう思い少し自分の中にある警戒レベルを一段階下げた。

 この2年様々な軍人を見てきたが一目でわかるようなプライドと、支配欲求に駆られたような軍人とは違う。それがキラの、タリア・グラディスと名乗る彼女に対する第一評価であった。

 

 

「それでは行きましょうか。議長が貴方をまっています。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 小惑星にその船体を括り付けていたアンカーを取り除き自由を取り戻したミネルバだったが、今キラと握手を交わしている艦長であるタリアが下した決定は撤退だった。既にセカンドシリーズ3機を奪取した部隊。そしてその母艦である正体不明の艦ーーボギーワンの反応はロストしていてその後の追跡は不可能だという判断だった。

 インパルスパイロットのシン・アスカを含め中にはこの判断を不服とした者もいたがその抗議には一切声を傾けずにミネルバはそのまま帰投。今はまだ生きていたドッグ内で修理が行われている。

 

 そして……現在議長滞在用に準備されたVIPルームでキラ、タリア、そしてプラント代表であるギルバート・デュランダルの三者による非公式会談が始まろうとしていた。

 

 

 

「申し訳ありません議長、セカンドシリーズの奪還は叶わず更にミネルバも深手を負いました。これは全て艦長である私の責任です。」

 

 タリアが扉が開くのとほぼ同時にまず最初に議長に対する謝罪を口にする。結果から言えば目的は達成できず、ザフトとしてはただ痛手を負っただけである。彼女が取った手段は分からないがもしかするとこの場でペナルティが言い渡されてもおかしくない、キラはそう読んでいた。

 

 

「いや、良いんだグラディス艦長。そもそもこのような事態を招いてしまったのはザフト全体の失態でもある。元々あちら側としては念入りに準備を重ねた上での実行だろうし君だけを責める話ではない。先ずはクルーに1人の犠牲者が出なかったことを幸運と捉えるべきだ。」

 

 

「ですが……」

 

 

「私が良いと言っているんだからそれで良いじゃないか。この借りは今後君が艦長として働いていくうえで返してもらう。それで手打ちだ。」

 

 

 だがデュランダルの出した結論は、実質的にはおとがめなしと同等のかなり寛大な処分だった。

 タリアも驚いたような表情を浮かべるがそこで謝罪は終わりだと強引に話が打ち切られたためそのまま何を言うこともなかった。

 

 

「君にも迷惑を掛けたね、キラ君。せっかく2年前の英雄、そして最強のパイロットである君とフリーダムというコンビの力を借りたというのに。」

 

 

「僕が着いた時には既に正体不明部隊は撤退していましたから特には。……あと議長、出来ればその呼び方で呼ぶのは……」

 

 

「ああ、そう言えば君はそう言う呼ばれ方をするのが嫌いだったね。」

 

 

「ええ。」

 

 

 大戦の英雄、そう呼ばれるのをキラは嫌っている。

 いくら華やかな言葉で誤魔化そうとも、どれだけ人を救おうとも、自分の手で殺めた人を蘇らせたりすることは出来ない。それが戦争だと言われてしまえばその通りなのかもしれないが自分の手は血塗られている。その事実から逃げよういうという気持ちは毛頭なく、それと同時に賛美されるのもキラは受け入れる気はなかった。

 

 

「それは済まなかった。だが君の力を借りてよかったと思っているのは本当だ。おそらく君がいなければミネルバは墜ちていただろうからね。どうも報告によると敵が撤退したのは実に不可解な状況だったようだし……しかしその撤退の数分後に君が救援に来たと聞いて納得した。彼らは何らかの方法で君がくることを察知したのだろう。それで辻褄があう。」

 

 

「ですがそれは。」

 

 

「分かっている。ミネルバはまさしく最新鋭だ。そのミネルバよりも速く察知するということはどれだけの技術をあのボギーワン、そしてその大元が持っているかわからない、ということだからね。全く悩ましいものだ、ユニウス条約違反のミラージュコロイド使用というだけでも厄介だと言うのに。」

 

 キラの懸念に同意したのかデュランダルは沈痛な面持ちになる。

 キラも引っかかっていたのだが、フリーダムの速度なら通常戦艦のレーダーがその存在を感知してから離脱するまでには充分な余裕を持って辿り着ける。だというのにキラが見たものは括り付けられたミネルバとそれを剥がそうとするミネルバ所属のMS隊のみだった。

 ということはだ、それだけで判断するのは早計だが今回の強襲部隊はなんとか均衡を保っている世界のバランスを崩すような一歩先の技術を所有している可能性があるということに繋がるのではないか?この懸念は消えそうになかった。

 

 

 

 ーーもちろん例外はある。

 

 

 今回の件がその例外によるものとは思えなかったがキラはある2人のことを思い出した。ナチュラル、コーディネーターの違いどころの話ではない、本当に通じ合い技術の範疇を超えた存在のことを。

 

 ムウ・ラ・フラガ、そしてラウ・ル・クルーゼ、彼等の互いの共感、察知は言葉では説明できないものがあった。そしてキラもクルーゼとは本来有り得ない共感を体感したことがある。目の前にいないのにいるような、聞こえるはずがないのに聞こえる、そんな感覚だ。だがそれはないと分かってもいた。

 2人とも2年前の決戦……あの激戦を極めたヤキン・ドゥーエの闘いで命を落としたのだから。

 

 

「まあそれについてはおいおい私達も動いて解明するとしよう。それではキラ君。そろそろ本題に入ろうか。その本題なのだが……」

 

 

 肘をテーブルに付き議長が少し身を乗り出す。

 

 

「そうですね。僕達は今回セカンドシリーズ3機が強奪され、一連の行動があったということは感知していませんし、もちろん参加もしていない。そしてプラントの政情不安を試みてこの事実の公開はもちろん行わない。こちらとして執る手段はこれで大丈夫ですか?」

 

 

キラとしても恐らくこういう話が主題になるだろうなと感じてはいたので事前……言ってもデブリ帯からここにたどり着くまでの間にフリーダムのコックピットで考えた即席のものだが……に考えておいた回答をすらすらと述べていく。

 

「驚いたな。もしかしたら君には政治家としての才能もあるのかもしれないな。」

 

 

 それに対して心底驚いたように目を見張りながらデュランダルは賞賛の言葉を贈ってくる。 

 これが彼の望む満点に近い答えだったのだろうとキラはそう判断した。

 

 

「お言葉ありがとうございます。そしてこちらからの条件なのですが……」

 

 

「もちろんこちらも分かっている。さっき君と話した内容にプラスしてアスハ代表の訪問の件もその事実自体を消すなり、もしくは何か理由を付けた公式訪問、という形にしよう。」

 

 

 対するデュランダルの答えもキラにとって満点に近い答えだった。

 これでオーブ代表としてこのアーモリー・ワンを訪問していたカガリ・ユラ・アスハ、カガリに対して無駄ないちゃもんがつけられる可能性は極限まで減ったとみて良い。事実がどうあれ世の中には面白おかしく憶測を呼ぼうとする人間が大量にいるのだ。

 

 

「そうだ……失念していたのだがアスハ代表の容態はどうなのかね?あまり重傷てはないということだが。」

 

 

「脳震盪を起こしているのと少し出血がある程度見たいです。今はアスランがついているので」

 

 

 そうか、と議長が安堵の声を漏らす。

 緊急避難としてザクに乗り込んだアスランとカガリは戦闘に巻き込まれたというのはキラも聞いていたが負傷したというのは想定外の事態だった。

 ただ軽症であったことが救いであり、それについてザフトや議長に何か求めるつもりはなかった。

 

 

「そして、アスラン・ザラ……か。彼がいたからこそその程度ですんだのだろうし彼にも感謝の念を伝えておかねばならないな。あの3機相手にたかが量産型のザク1機で対応するなど無謀の極みだと思ったものだがまさか機体まで残して生還したのだからね。彼もまたその名に恥じない、というわけか。」

 

 

「軍からは手を引いているとの事ですが彼の状況判断力を未だに一級品だと思い知らされましたわ。あのデブリ帯に阻まれ絶対絶命な状況でも彼は的確に判断した上での策を提示してくれました。」

 

 

 アスラン・ザラ、カガリのボディーガードとして同行した彼はどうやら緊急事態に際して自らの素性を明かしたらしい。プラントでは色々と面倒になりかねない立場の彼がそんな行動に出たと言うのはキラにも驚く事実だったが、そのアスランの話題になったとたんここまで黙っていたタリアも賞賛の言葉を述べる。

 

 

「彼……アスランも闘っていますから。」

 

 

 政治なんてしたこともないのにカガリを支えるために見知らぬフィールドで必死に闘っている、その親友の存在はキラにとっても誇りに思える存在であり、そしてかけがえのないものだった。

 

 

「それは間違いないだろう。だが……苦言を呈したいわけではないのだが、彼の闘う舞台は間違っているのではないのだろうか?」

 

 

「……どういうことですか?」

 

 

 今日この会談の中で始めて否定、疑問の言葉を発したデュランダルに間髪入れずに聞き返す。

 デュランダルのその言葉にはなにかやるせなさと、そして今までにない冷たさが混じっていた。

 

 

「アスラン・ザラ、彼が今を精一杯に闘っているのは分かっている。だが私は思うのだよ。それを上手くできる人なら他にもいるだろうし、もっと彼を最大限に活かす場所は他にあるのではないか?とね。例えば君のようにMSに乗れば更にその存在は大きくなるだろうし、そうでなくても軍人としての彼は正しくザフト最高傑作だ。オーブの若い軍人を育てる立場につけば将来は安泰だろう。キラ君、私はこう思うのだよ。人は生まれながらにして自分に向いている才能というものを誰しもが持っていて、そこを見つけ、そこで活きるのが最も幸せなのではないかと。」

 

 

 

 君はどう思う?そう問いかけるデュランダルの瞳は何かを試そうとしているように見えた。

 

 

「確かにその通りかもしれません。誰しも人は自分に向いているものを探すものですし、だからこそ自分探しなんて言葉が生まれた、とも考えられます。けど……それでも選ぶ自由はあるべきだと僕は思います。そしてアスランはカガリと共に寄り添う道を選んだ。単純な数値としてみる効果は確かに低いかもしれない、けどそうして自分で選んだ道を間違いだとは思いません。」

 

 

 ーーそれだからこそ僕もここにいる。

 

 

 自らが選んだ道だからこそ人は歩いていけるのだ。

 全て流れるままに過ごした日々があるから分かる。キラはこの2年、それを信じつづけていた。

 

 

「ふむ……参考になったよ、ありがとう。それではそろそろ終わりにしようか。代表とアスラン君はザフトが責任を持って地球圏まで送り届ける。君が希望するなら宙域に入ったところからフリーダムで護衛すると良い。タリア、君も戻って大丈夫だ。」

 

 

 その言葉がどう届いたのかはキラには知る由もない。結局表情を変えることもなく会談の終わりを告げたデュランダルに頭を下げてタリアと共にキラは部屋を出た。

 

 

 

 

 

 

 

「おわっ!」

 

「きゃ!」

 

「……!?大丈夫かい?」

 

 

 部屋を出ると同時に目の前にいた2人の赤服をきた少年と少女にぶつかりそうになる。自分より年下に見えるその2人が妙に印象に残った。

 それも当然かもしれない。2年前から准将という地位にこそいるもののキラもまだ18才、軍人としてはまだまだ最若年層の部類にはいる。加えて地位が地位なので普段から接する相手はほぼ年上だ。こういう機会はこの時こそあまり深く考えなかったが実際のところほとんどない。

 

 

 

「アハハ……ごめんなさい。あの、キラ・ヤマトさんですか?」

 

 

「えっ?うん、まあそうだけど……」

 

 

「やっぱり!それじゃあアスランさん」

 

 

「こらルナマリア!、シン!余計なことしないの!」

 

 

「ゲッ!?艦長まで!おいこら行くぞルナ!すいませんでした!」

 

 

「あ、ち、ちょっと引っ張んないでよ!」

 

 

 軍服に似つかわしいとはとても言えないミニスカの少女……ルナマリアが何か尋ねようとするがタリアの一喝と、その場にいたもう1人のシンと呼ばれた少年に阻まれ何が言いたいのかもわからぬまま退場していった。

 キラはその姿をただ呆然と見守ることしかできなかった。

 

 

「あの……」

 

 

「悪かったわね、ヤマト准将。あの子達はうちの期待の星でね。あの引きずってるほう……シンがインパルス、色々聞いてきた方がルナマリア、あの赤いザクのパイロットなのだけれど。」

 

 

 本当にまだまだ子供だから困る、とタリアは頭を抱える。

 その隣でキラはなるほど、と心の中で納得していた。ザフトの赤と言えばエリートの証、そう簡単に着れるものではないということはアスランから少しだけ聞いていた。

 そしてタリアの言った機体は一目見ただけで分かるくらいには他の量産型に比べ遥かに滑らかな挙動を見せていた。それを操っていたのが赤服、それもかんに期待の星と言わしてる逸材なら納得がいく。

 

 

 

「貴方がザフト所属ならみっちりしごいてあげてほしいけれどそういうわけにはいかないものね……ごめんなさい。それじゃあ私もそろそろいくわ。部屋は分かる?」

 

 

「はい。ありがとうございます。グラディス艦長。」

 

 

「タリア、で良いわよ。それじゃあまたいつか。」

 

 

 

 ーー医務室にでもよっていくかな。

 

 タリアを見送ったあとカガリとアスランを訪ねることに今後の方針を定め廊下を歩く。今日は色々とあったからいい加減見知った人に会いたいしゆっくりしたい。

 振り返ると朝苦過ぎるコーヒーを飲んだのが遙か昔に感じる、その後宇宙にでて、会談をして、久し振りに目まぐるしい1日だった。

 

 

「シンとルナマリアか。」

 

 

 ボソッと名前を呟く。何の理由が有るわけではない。なんとなく、どうしようなく彼等2人のことは忘れられそうになかった。ただそれだけだ。 

 

 

 

 

シン・アスカとキラ・ヤマト、これが始めての邂逅であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




やっとですね……とりあえず今作のキラがどんな感じなのかはそろそろつかんで頂けたかと。
 次回はシンに視点を戻してある地点から、そしてユニウスセブンへと向かっていきます。それ以降はオリ展か、それとも原作準拠か、まだ迷ってます。

それではまた!

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