新訳 ガンダムSeed Destiny オーブの守護神とザフトの燃える瞳   作:faker00

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思惑

「なにやってんだ、あいつ?」

 

 

「さあな。」

 

 

 見てはいけないものを見てしまったようないたたまれない気分になり隣を歩く長髪下に諦めにも似た表情を見せる数少い同期、レイ・ザ・バレルに見解を求めるが残念ながら聡明な彼にもこの状況を説明するというのはかなり難解なようである……

 

 ーー着てるのが赤じゃなきゃ今頃は警備員が駆けつけて適当に処理、最悪尋問室行きだろこれ。

 

 

 そんな物騒なことを思いながらレイと全く同じタイミングで溜め息をつく。

 場所はアーモーリーワンの敷地内でも最高級に警備が厳しいVIPルーム……なにを隠そうあのプラント代表ギルバート・デュランダルその人が滞在している部屋の前、もちろん防音も完璧。そんなことはこのアーモーリーワンに招かれ、現場マニュアルを少しでも読んだザフト軍兵士なら確実に分かるはずのことだ、だというのに……目の前の少女はまるでドアの隙間から物音が聞こえるんじゃないか?いや絶対に聞こえる!と言わんばかりに必死に四つん這いになりながら聞き耳をたてているのか。そして明らかに適正な長さではない短さのスカートの下から下着が丸見えになっているのはふれていいのかだめなのか。

 

 

「頼むよレイ、今年度士官学校主席の力ってやつをみせてくれよ……ってあれ?」

 

 

 少なくとも俺の手に負えることじゃない。そう判断しシンは全ての処理を隣にいるレイに全て押し付け……もとい、委ねようとした。俺が何かしたところでどうせ火に油、まず意味はない。

 そう思い顔を上げたのだが話し掛けたはずの相手は既にその場から姿を音もなく消しており現状シンは誰もいない虚空に話しかけるただの頭の可おかしい人以外に表現のしようがない状態になっていた。

 

 

 ーーあの野郎……逃げやがった!

 

 

 反射的に辺りを見渡すがお目当ての姿はない。そして近場に横道にそれる通路はたくさん。

 こうなると導きだされる答えは一つしかない……責任を押し付けようとした相手はいち早くそれを察知しいち早く先手を取った、というところだろう。

 周りに人は誰もいない、スルーするというのも非常に魅力的な手段だ。だが今に限ってはそれはきつい。悪手としか言いようがない。

 未だに奇行をやめる様子がないルナマリアを見ながらシンの頭はグルグル回っていく。なにせ今回の初陣、結果からすればこちらの完敗なのだ。セカンドシリーズの機体は奪われミネルバも傷付いた。こんな状況で更に問題を起こしてどうする?それこそ大変なことになりかねない……

 

 

 「おい、何やってんだよルナ」

 

 

 「あ、シン!、何って盗み聞き?」

 

 

 「あのなー……」

 

 

 てへっ、と舌を出すルナマリアにシンは空いた口が塞がらなかった。盗み聞きってなんだよそんな軽く言いやがって。

 止める、同期の暴走は同期である自分が止めるしかない。時間にすれば1分とたっていないだろうがシンの中ではそれよりも遥かに時間のかかった脳内での問答の後下した判断は特攻。様々な対処パターンをシュミレーションした。だというのに初っ端から予想を遥かに越えるフランクさで返され完全に気勢をそがれてしまった。

 

 

「で、レイは?」

 

 

「あいつなら呆れてどっか行っちゃったよ。お前もこんな馬鹿馬鹿しいことしてないで早く戻るぞ。」

 

 

「ふーん……レイはいないんだあ……よし」

 

 

 レイの不在を確認するとルナマリアはいたずらっぽい笑みを浮かべると同時になにやら制服のポケットをガサゴソとあさりはじめる。そしてイヤホンを耳に付けると集音機とおぼしき機械を分厚い扉に接続し再び盗み聞きに精を出し始めた。

 

 

「おい!やめろよこのバカ!こんなんバレたらどうなるか」

 

 

 ーー今度こそただじゃすまない。これは盗み聞きなんてかわいいものじゃない。立派な盗聴行為だ。

 血の気がひくと同時にルナマリアを扉から引き離そうとするが彼女はいーやーだー、と頑として離れようとはしない。一体この華奢な身体のどこにこれだけの力が隠されていたというのか、女子とはわからないものだ。

 

 

「大丈夫だって!それにシンは興味ないの?議長とあのキラ・ヤマトの会談よ?そこらへんの国家機密よりよっぽどビッグニュースよ!」

 

 

「知るかそんなもん!!それよりもお前のやってることのほうが俺からしたらよっぽど大きな問題だ!!」

 

 

「こんの分からず屋ー!」

 

 

「どっちがだよ!?」

 

 

 実のところ興味があるかないかと聞かれると答えはイエスだ。キラ・ヤマトと言えば恐らく、間違い無く現時点で世界最強のMSパイロットであることに疑いの余地はない。それに加えて数々の武勇伝は枚挙にいとまがない。なるべく前回の戦争については公平の見方が出来るようになりたいとザフト、オーブ、連合の3つの視点からの大戦の歴史を学んだがその圧倒的な力は否定のしようがなかった。

 砂漠の虎と呼ばれた男との戦い、まさに戦局を1人でひっくり返すという荒業をやってのけたアラスカ防衛戦、何時までも語り継がれるであろう伝説のヤキン・ドゥーエ、そして……全てが壊れたオーブでの対連合戦。

 怨みが無いわけではない、あの戦いに関わっていた人は正直なところ全員に憎いという気持ちはある。特に平和などというできもしないあいまいな言葉で国を潰したアスハには憎しみしかない。だがそれ以上にあの時本当は何があったのか知りたい。もうあんなことを繰り返さないために……直接話せるものなら話してみたい。

 率直にシンはそう思っていた。

 

 だがそれはあくまでその話が出来るなら、の話だ。すくなくとも今の会話の流れでそんな昔話に彼と議長が興じるとは到底思えないし仮にその話をするんだとしても処罰のリスクをおってまで聞きたいとは思わない。

 

 

 

 

「男がそんなちっさいこと言わない……やばっ!?」

 

 

「は?」

 

 

 シンを威嚇していたルナマリアが突然慌てたように扉に取り付けていた機材を取り外し、こっちよろしく!とコードの一部を押し付けてくる。

 ほんの数秒前までの死んでも外さないというような態度から突然の豹変に戸惑いながらもなすがままに焦るルナマリアに従うシンだが結果的にその判断が成功だと知るのにはそこから時間はかからなかった。

 

 

 

「ええ、それじゃあ失礼しま……っ!?」

 

 

「きゃっ!?」

 

 

「おわ!」

 

 

 

 シンのポケットの形が変わるほど中に色々な物が押し込められるのとほぼ同時。ルナマリアが一体どこからそれを取り出したんだと聞きたくなる鞄に色々放り込んで横にそれる通路へと投げたのも同じくほぼ同時。絶対に開かないものとして2人の目の前にそびえ立っていたVIPルームの扉は突如、なんの前触れもなく内側から襲いかかるように開かれた。

 

 

「え……と……大丈夫?」

 

 

 急な出来事に飛び退いたシンとルナマリアだが一瞬で遠くまで移動する事など出来はしない。扉を開けると目の前に奇怪な光景が広がっていた茶髪のいかにも大人しそうな青年はシンの予想通り困惑の表情を浮かべどうしたらいいかわからないととりあえずの謝意を表している。この時点でシンとしては何か言い訳でも考えてさっさとこの場から早く立ち去る為の算段を頭の中で必死に考えていたのだが、そのせいもあってかそもそもの元凶であるルナマリアが隣でむしろ活き活きとして目を輝かせていたことに気付くことができなかった。

 

 

 

「アハハ……ごめんなさい。あの?キラ・ヤマトさんですか?」

 

 

「え?うん、まあそうだけど……」

 

 

「それじゃあアスランさん」

 

 

 この瞬間、とっさにシンの身体が動いた。

 何か考えあっての行動ではない。ただとりあえずこの何故か状況も見ずにテンションが上がっている少女を放置しておいたら大変なことになると察知したのだ。

 

 

「こら!シン、ルナマリア!余計なことしないの!」

 

 

「おい!こら行くぞルナ!すいませんでした!」

 

 

「えっ?ちょっと待って……」

 

 

 

 恐らくキラ・ヤマトであろう青年の後ろから現れたタリアから逃げるようにシンはルナマリアをそれこそ首根っこを引っ付かんで強引にその場を後にする。

 その場にとどまっていても待つのは手加減なしの厳しいお説教であるのは考えるまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

「意外と普通なんだな。」

 

 

「なにがよ?」

 

 

 

 いつまでも引きずっている訳にもいかずどうしようかと考えたが、そう言えば夕食を取るのがまだだったということで食堂へそのまま移動してシンとルナマリアは遅い夕食を迎えていた。

 目の前に座るルナマリアは不機嫌の一言である。それは数分に渡りずっと首をつかまれていたことを考えれば至極当然のことでありいまも右手でフォークを操りながら左手で首筋をさすりパスタを食べているという状態である。シンとしても少しやりすぎたかという後悔はあり気まずい空気を打破することができなかったのだが……口を開けばルナの反応は案の定素っ気ない。

 

 

「あのキラって人。もっとこう何というか……オーラみたいなのがあるもんだと思ってた。」

 

 

「まあそんなもんでしょ。同じ人間なんだから。」

 

 

「そうだな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「キラ・ヤマトか……」

 

 

 誰もいなくなった部屋の中でギルバート・デュランダルは一人呟いた。

 憂鬱そうに溜め息をついた彼の手に握られているのは白のナイトとルークの駒。

 

 

「クイーンを守るナイトは未だ健在。いや困ったな、ここまで意志がしっかりとしているとは想定外だよ。」

 

 

 デュランダルからするとキラ・ヤマトとの面会の結果は芳しい物とはいえなかった。2年前、プラントの実権を握るためには最大の障害であったラクス・クライン、彼女を排除するために色々と手を回してなんとか成功したのはよかったのだがその代償も大きかったと言わざるを得ない。彼は爆弾だ、それも最上級の。それがまともなバックアップを手にすれば敵に回した状態で事を運ぶのは簡単ではない。それを見越してできることならばこちら側に引き込みたいという思いもあったがせいぜい五分五分が良いところだ。

 

 

「せめてフリーダムだけでも……それは無理か。それでは彼女が黙っていなかっただろう。フリーダムがあってこその彼だ。」

 

 

 考えたところで結局現状が今のところの最善なのだろう。悪手は一つとして打っていない。なにをするにもここからがスタートだ。

 

 チェス盤の上にルークを倒す、そして連鎖するように立ててあったクイーンも。

 道はいくらでもあるのだ。そう思い直しデュランダルは不敵に微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

 

「ユニウスセブンが軌道を変えたですって!?」

 

 

「その通りだタリア。」

 

 

 翌日。タリア・グラディスに舞い込んだ報せは昨日の襲撃がかわいく見えるほどの大惨事になりかねないものになる可能性を秘めたものだった。

 ユニウスセブン……かつて血のバレンタインによって引き起こされた悪夢の地、そのコロニー全体が今や廃墟となりその中には今も回収出来ていない死体が数万眠っているといわれる正にコーディネーターにとっての誓いの地、今は数百年周期の安定軌道に入ったと言われていたがその軌道が突然ずれ、地球に向かい始めたというのは人が自力で起こせる最悪の事態を遥かに越えている。

 

 

「連合は……」

 

 

「まだなんの動きもないのだよ。これは大変なことだ、もしもこのまま地球に直撃するなんてことになればそれは人類の絶滅につながりかねない。」

 

 

 そんなことは言われなくてもわかる。ユニウスセブンが直撃すればその直接的な破壊力はもちろんのことその後に起こる二次災害で地球は死の星になるのはどうやっても避けられない。終わらない死の冬、津波、地殻変動、どれも人には耐えられないのは歴史が証明している。

 

 

「では私達がやるべきです。ザフトだの連合だのは今は些細なものです。」

 

 

「もちろんだ。君ならそう言ってくれると信じていたよ。」

 

 

 タリアの答えを予想していたように満足げな微笑みを浮かべるとデュランダルは立ち上がる。そしてこれを見たまえとタリアにとある髪の束を手渡した。

 

 

「オペレーション・メテオ。急拵えなのは否めないが今我々ができる最善手だと私は思う。タリア、君とミネルバにも力を借りたい。」

 

 

 

 

 

 

 




どうもです。遅くなりました。

感想は次話書いたところで買えずシステムにしてましたがそれだと遅くなりすぎるので今回からは早めに返します(_ _)


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