新訳 ガンダムSeed Destiny オーブの守護神とザフトの燃える瞳   作:faker00

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不協和音

「ユニウスセブンが地球に向かっているだと?」

 

「ええ、プラントのギルバート・デュランダルから全世界へ向けメッセージが入りました。我が国の監視衛星からの映像でも確認出来ており恐らく本当かと……」

 

「くそっ!アスハの娘がいないこんな時に!!」

 

 

 何度も執務室の中ををぐるぐると動き回っていた初老の男。オーブ五大氏族の一つセイラン家の家督、ウナト・ロマ・セイランはイライラした様子で近くにあったゴミ箱を蹴り上げる。その中からは大量の紙屑がカーペットに散乱したがそんなものを気にとめる余裕はウナトにはなかった。

 

 

「各国の対応はどうなっている!?」

 

 

「規模が規模なので国単一で行動を起こそうという所は今の所……連合の動き待ちと言ったところでしょうか。」

 

 

「やはりそうなってしまうか……」

 

 

 予想通りの秘書の答えにウナトは唇を噛みしめる。ユニウスセブンと言えば十分な質量を持ったコロニーだ。それが地球に落ちるようなことがあれば今までの歴史上に起きた隕石の落下などとは比べ物にならないレベルの災害が起こることは容易に予想がつく。

 

 

「その連合の動きを把握することは」

 

 

「残念ながら。やはり私達は友好国というくくりではないので。」

 

 

「ぐうう……落ちてくるその瞬間まで私達に出来ることはないということか……」

 

 

 だから連合との友好を深めておくべきだと常日頃から言っているのだ!ウナトは今は宇宙にいる小娘に向けて心の中で罵倒する。

 現在の代表、カガリ・ユラ・アスハは先代代表であり父であるウズミ・ナラ・アスハの意思思想を色濃く継ぎどの陣営に対しても理念である中立を頑固なまでに打ち出してきた。

 ウナトとてその理念自体に異論はない。戦争などないにこしたことはないのだから。

 

 

「だが綺麗事だけでは生き残れんのだと言うのに……!」

 

 

 しかしカガリのそれは夢見がちな子供の理想論に過ぎないとウナトはばっさりと切り捨てていた。如何に技術に自信があろうともオーブは世界を牛耳る大帝国ではない。むしろ物資に限ればせいぜい中堅国家レベルなのだ。

 そのオーブが生き残る為には多少の迎合、折り合いをつけることは必要だ。

 それがウナトの持論だった。

 

 

「ウナト、気持ちはわかる。だが一つ線を越えてしまえばそこからはもう止まることの出来ない下り坂だ。そうなればオーブの理念は世界に荒波に簡単に押し流されることになるだろう。お前の言うとおりオーブは大国ではないのだから。」

 

 

 前対戦終結後、次は自分の番だと待っていた所へ軍部の後押しも経て突如台頭してきたカガリと公開討論の場を持った時の彼女の言葉だ。

 全国民が注目した会談で自信満々に言い放ったこの言葉。

 オーブの国民に選挙権はない、だが世論というものは確実に存在し、それは選ぶことが出来る数少ない者の感情にも影響する。結局前任のウズミの支持率が高かったこともありカガリの世襲が認められ、反対の意を示したのは五大氏族の中ではサハク家のみだった。

 そうしてウナトは実質的なNo.2である宰相の地位についたが代表との差は歴然だ。

 

 

「こんな面倒ばかり……」

 

 

 自分の意見など通りはしない。

 その葛藤はこの2年、徐々に大きくなっていた。

 

 

「とにかく急いで関係部署に連絡をとれ!軍、警察どちらも総動員だ!!一般人を早く地下シェルターへ移動させろ!それと車を!」

 

 

「車ですか?」

 

 

「ああそうだ!直ぐに国営テレビ局へ向かい緊急放送で私の口から国民へと伝える!」

 

 

「ですがそれではカガリ様の不在が!?」

 

 

 その言葉に秘書の顔がサッと青くなるがウナトは彼女に詰め寄りたたみかけた。

 

 

「四の五の言わずにさっさとやれ!緊急事態だ!!」

 

 

「はっはい!」

 

 

 その様子に気圧されたか秘書が駆け出していく。それを見てウナトは次の手を考え始めたが一つ言い忘れていた事を思い出し秘書を呼び止める。

 

 

「少し待て」

 

 

「なんですか?」

 

 

「ヤマト…カガリ様についているヤマト准将とも連絡をとれ。降下まであと数時間はあるだろう。万が一それまでにカガリ様が戻られるようなら彼女がやれるに越したことはない。」

 

 

「……わかりました。」

 

 

 そうして今度こそ部屋にはウナト1人になり椅子にどっと座り込む。 

 もう一つ悩みの種があるのを失念していた。、とウナトの頭痛はひどくなる一方だった。

 キラ・ヤマト准将。フリーダムのパイロットにして前大戦の英雄。加えてカガリ・ユラ・アスハの実の弟ときた。このある意味巨大な爆弾も今はオーブにいない。

 

 

「~~!!」

 

 

 いてほしいときに限っていないとはなんと不便なものなのか。

 外交問題に発展しかねない現状に考えれば考えるほど袋小路にはまっていく感触をウナトはおぼえていた。

 カガリの不在だけでも面倒だというのにフリーダムまでいないのがバレでもすればそれは間違いなく最悪の事態だ。下手をすればユニウス条約不履行の疑いを掛けられ、主権問題になっても文句は言えない。

 

 

「となると……」

 

 

 自分が出て行くのは得策なのか?ウナトはこう考えた。自分が出て行くと言うことは即ちカガリの不在を暗に認めることになる。それに加えてフリーダムの件まで露呈してしまえば問題は大きくなる……

 

 

「気は進まんが彼女に協力を仰ぐしかあるまい……」

 

 

 重い溜め息をつき2年前カガリやキラと共にオーブへやってきた彼女の滞在先を書いておいたメモを探す。対外的な露出が昔に比べ減ったとは言え未だその影響力は絶大だ。彼女をオーブ政府公認で表に出せば世間の目はそちらに向くはず。

 

 

「……これだ。」

 

 

 メモに書かれた連絡先に電話を掛ける。今の所悪いことしか起こっていなかったウナトだったがどうやらまだ運が残っていたらしく3回も呼び鈴がなるころには電話に応対した彼女はウナトの願いをあっさりと快諾した。

 

 

「ええ……分かりましたわ、ウナト・ロマ・セイラン。本来ならどこかの政治に肩入れしてと言うのはあまりそぐわないのですが今回は別です。引き受けさせて頂きます。」

 

 

「そうですか!それは助かります!それでは迎えを寄越しますのでそのまま会見場へ……」

 

 

 簡潔に用件を伝え電話を切りすぐに職員を迎えに出す。これでひとまず最悪の事態は避けられるのではないかとウナトは安堵した。

 ラクス・クライン。反戦の歌姫の声は人々の目を釘付けにしてくれるはずだ。

 

 

「大変そうだねお父さん。」

 

 

「……ユウナか。」

 

 

 大方整理がついたところで話しかけられ顔を上げると先ほど秘書が走っていった際に開けたままになっていた扉の位置によく見知った青年の姿があった。

 見るからにいい育ちをしたのだろうというのがよくわかるその青年はユウナ・ロマ・セイランと言いウナトの実子である。

 

 

「ああ、随分と怒ってたじゃないか。あれじゃあ部下に愛想つかされちゃうよ?」

 

 

「……お前の専門は経済だから分からんだろうが外交にはいろいろとあるんだ。」

 

 

 大袈裟な手振りを交え近づいてくるユウナに対しウナトの対応は手厳しいものだった。

 頭は確かにキレるのだが自分の思い通りにならない、自分の一存だけではどうしようもない問題に対しての対応力はあまりにも乏しい。なまじ裕福で思い通りになることが当たり前になる家だったので持っている世界観が狭いのだ。

 それがウナトのユウナに対する評価であった。

 だから今までも外交問題には口をださせなかったし面倒だからあまり耳にも入れさせなかったのだが……どうやら今回は迂闊だったと頭に血が上った自分を後悔した。

 

 

「全く、カガリもヤマト准将も活動的すぎるよね。だからこんな時にオーブにいないなんてことになるんだ。」

 

 

「カガリにも考えがない訳ではないだろう……」

 

 

「だけど気にくわない。そうでしょ?」

 

 

「何か言いたげだな。」

 

 

「いいや別に。ただここまで私的感情で動いて国を揺らすのを何とも思ってないような連中が国のトップなのはどうなんだろうね。もっと安定させる方法はいくらでもあるのに。」

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーー 

 

 

「合流ポイントまで残り10分を切りました。インパルス、ザクファントム、ガナーザクウォーリア、各機のパイロットは所定の位置で待機してください。」

 

 

「もう何時でもいけるって。」

 

 

 館内に鳴り響くメイリンの声にシンは1人突っ込む。既に機体の整備は万全、バッチが開けばすぐにでも飛び出せる。

 

 

「シン、ルナマリア、今日の任務の確認をしておくぞ。」

 

 

「了解。」

 

 

「りょーかい!」

 

 

 その時通信がONになりレイとルナマリアの見慣れた顔が画面に映る。いつものごとく仕切るのはレイ。特に決まっているわけではないがこれはもう暗黙の了解とやらだ。

 

 

「それでは説明だが……簡単に言うと俺達がやるのは本土から向かってきているジュール隊の破砕作業の補佐だ。彼らはメテオブレイカーを積んできている分極端に武装が少ない。」

 

 

「そもそもメテオブレイカーってなによ?」

 

 

「あ、俺もそれ気になる。」

 

 いつものように簡潔に要点のみを話すレイにルナマリアが質問する。シンとしてもそこは気になっていたので賛同するがその瞬間レイが僅かながらむっとしたように見えたのが妙に残った。

 

 

「質問なら全部終わった後にしてほしいのだがな、ルナマリア。」

 

 

「えー、良いじゃない別に。疑問を残すのはよくないって言うし。」

 

 

「ハア……分かった。メテオブレイカーというのは採掘用の汎用土木器具の改良型だ。ただそれの威力を常軌を逸したレベルまで押し上げている。結果惑星の内部だろうと滞りなく抉れるという訳だ。ジュール隊はそれを複数持ってきていてユニウスセブンをバラバラに砕く。」

 

 

「えーと……あれか、地球にあった石油採掘?とかそんなのの応用だろ?」

 

 

「なにそれ?」

 

 

「そういうことだ。」

 

 

 見たことが有るわけではないが地表凡そ数千mまでドリルで抉る技術はかなり昔からあったらしい。恐らくそれに類似したものなのだろう。

 シンの疑問はあっさりと解けていた。ルナマリアはまだピンときていない様子であったが。

 

 

 

「それもあってジュール隊には補佐が必要だ。それを俺達が担う。そうしてユニウスセブンを何分かの1のサイズに小さくしたらその後はミネルバがタンホイザーを中心に全武装を使用して更に細かくする。どれだけ役に立つかは分からんが俺達もやれるだけやるべきだろう。そこまでやったら後は大気圏に任せるしかない。」

 

 

「そういうことね……」

 

 

 最後の最後が運というが気にくわなかったがそれはどうしようもないことなのだろう。ともかくやれるだけやる。

 シンはもう一度深くヘルメットをかぶり直した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これが……ユニウスセブン……」

 

 

「資料で見たことはあるけど生で見るとやっぱ違うわね。」

 

 

「これを砕くって正気か?」

 

 

「やるしかないだろう。そら、ジュール隊もおいでだ。」

 

 

 

 正に壮観、今のシンの頭の中を支配していたのはこの言葉だった。

 大きい大きいと聞いていたがこれはもう惑星だ。こんなものを人の力で砕こうというのだからもう目眩さえしてくる。

 

 

 

「あれがメテオブレイカーか」

 

 

 視界にMS隊が入るとその姿がぐんぐんと大きくなる。2機で1つ、メテオブレイカーと思わしき巨大なドリルを持った彼らの姿は見る見るうちに大きくなり数分もしないうちに向かい合う形になった。

 

 

「ジュール隊隊長のイザーク・ジュールだ。今回は協力感謝する。」

 

 

「ミネルバ艦長のタリア・グラディスです。ジュール少佐、こちらこそよろしくお願いします。」

 

 

 少し詰めの話をするかもしれないからONにしておけと言われた回線からタリアの顔とそして初めて見る顔が映る。

 イザーク・ジュール、その武勲は有名だがどのような人物なのかは全く知らず顔もシンはほとんど知らなかった。

 

 

「最後はそちらの火力次第の面もありますから……それで、このひよっこ達がミネルバ隊の?」

 

 

「ええ、今年最高のルーキーと自負していますわ。」

 

 

 画面越しにイザークの眼光がギラッと鋭く光り詮索するように3人を見渡す。その視線にシンは悪いことなどしていないのにどこかバツが悪いような、そんな気分になるのを感じた。

 

 

「2年前は俺もこんなのだったとは信じがたい……おい、奪われなかったインパルスに乗ってるのはどいつだ!?」

 

 

「は、はい!自分であります!ジュール少佐!」

 

 

 なんで俺にふるんだよ!?

 慣れない敬語に加えて背筋を伸ばしながらシンは一気に緊張が高まっていくのを感じた。これは直感だがこの人は多分理不尽だ。しかも正論を盾にくるから反論ができないタイプの。

 そんな人に目を付けられたら後に待つのはストレス地獄である。

 初見の人にこんなことを思うのは失礼極まりないと思ったがそう思ってしまった。

 

 

「お前がねえ……その機体がどれだけ重要なもんか分かってるんだろうな?」

 

 

「承知しておりますです!」

 

 

 ルナマリアが噴き出すが視界に入ったがそれを気にする余裕など今のシンにはなかった。

 

 

「ならいいが。そのインパルスは今後のザフトの象徴になるかもしれん機体だ。それだけは肝に命じておけよ。」

 

 

「了解です!」

 

 

「ふむ。ところで……」

 

 

 激励されたのかどうなのか。シンが測りかねているといざという時の眼光はまた更に鋭くなりまるで仇敵を呼ぶかのように刺々しい言い方である人物の名をつげた。

 

 

「アスラン・ザラはどこにいる?あいつには散々言いたいことがあるのだが。」

 

 

 




どうもです!

ちょっとセイラン家の事情にもフォーカスを当てております。

どんなやつにも正義があるというスタンスです。

いよいよユニウスセブン崩壊へ向け皆合流し本格始動。次回をお楽しみに!

評価、感想お気に入り登録じゃんじゃんお待ちしております!感想ほしいです!

それではまた!!
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