ノーザンブリア大公国 公都ハリアスク ラフリー邸
「気が重い」
帰宅したというのにネヴィル・ラフリーの胃は鉛が入り込んだように重かった、原因は分かりきっている。
今日の会議で女狐が提案したアンヘル技師をラフリー家に婿入りさせる縁談のせいだ
「フェリシティはまだ15歳だ、婚姻ではなく婚約だとしても流石にまだ早い。だが、アンヘル技師の立場を考えれば縁談としてこれ以上の物はそうありはしない」
平民として生まれて町工場から技術局に推薦され今では特務技術室まで上り詰めたノーザンブリア随一の出世頭。
三高弟に並ぶ才を持つ天才をラフリー家に取り込む事が出来ればラフリー家はますます躍進すること確実だ
「問題はアンヘル技師が余りに女に慣れてなさすぎる事だ、フェリシティのやんちゃでは萎縮させかねん」
技術局が用意した秘書官と目を合わせる事すら出来ない程の女慣れの無さ。彼が前髪で顔を覆っているのは女性と目を併せない為という噂が立つほどだ
「とりあえず婚約後の考えは後回しか、先ずはフェリシティが縁談を受け入れてくれるかどうかだ。どうせ受けるのだろうな、あの娘は私に似て余りにも導力技術を好み過ぎる」
愛娘に婚約者が出来てしまう日の近さに父親として深いため息を零した
「え、私に縁談ですか?」
「あぁ、まだ今日の緊急会議で歴史研究所の女狐が上げた案ではあるが」
妻が作った食事を食べ終えて意を決してフェリシティに縁談の事を打ち明けた
「あなた、フェリはまだ15歳です。縁談には少々早すぎませんか?それに会議で決まったから婚約というのは流石に強引すぎでは?」
「かもしれぬ。だが、縁談自体は良縁としか言いようがないのだ、バルムント大公もこの縁談を後押しして下さっている。ラフリー家の今後としても彼との縁を結ぶに越したことは無い」
妻の心配はもっともだ、ノーザンブリア貴族の婚約は大体18歳頃。15歳は少々早すぎる
「お母様、私もラフリー子爵の娘です。家の為の婚約は覚悟できています」
「ですが、15歳の娘に縁談を持ち込まなければならない輩など信用出来ないのですよ。会議で決まったとなれば何処か国外に嫁がされるのやも」
「いや、今回の縁談は婿を取る話だ。国外に取られる訳にはいかない男をノーザンブリアに繋ぎ止めるためのな。彼と婚約を結べそうな娘があの場ではフェリシティしか案が出なかったのだ」
実際、探せば他にもいるだろう。彼の立場を考えればこれから先、無数の縁談が舞い込むのは想像に難くない
「どうせ他の方々に追い込まれて断れなかっただけでしょうに」
「すまぬ、その通りだ」
長年支えてくれた妻だ、私の事をよくわかっている
「それで、相手は何方です?伯爵や侯爵には及ばない子爵とはいえ婿として入るのです。それなりに高い功績を誇れる方なのですよね」
「功績ならば問題はない。間違いなく今ノーザンブリアで最も勢いのある男だ」
「ならば私は反対はしませんが」
すまぬ、勢いはあるし天才だが余りにも変わり者なのだ
「あの、お父様。もしも許されるのならば婚約の前にその、私の思い人に思いを伝えてもよろしいでしょうか。片思いでお相手のお顔を見た事もありませんが、これから先はこのような思いを抱えてはなりませんので」
「そのような相手がいたのか。いいだろう、言ってみなさい。私が場を整えよう」
「ありがとうございます、そのお相手は技術局のアンヘル技師というお方なのです」
良かったな娘よ、そのアンヘルとの縁談だぞ。
その晩、1人書斎で涙を流した事を誰も責められないだろう
1:北国の技術者
あの、局長から縁談の話しが来たのですが
2:北国の女狐
そうでしょうね、アタシが会議で提案しといたので
3:名無しのゼムリア民
何してんすか狐さん
4:名無しのゼムリア民
何時かはやるかと思っていたが第一犠牲者は技術者か…メシウマ
5:北国の女狐
出来る限りの良縁をお持ちしましたのに。(ノД`) ヒドーイ
6:北国の技術者
ちなみに、断ったらどうなります?なんかペナルティ的な
7:北国の女狐
別にありませんよ、飛行艇のお披露目パーティの時に玉の輿やあなたを家に取り込みたい各貴族の子女がひたすらアプローチをかけまくるだけですので
勿論、私は助けません
8:名無しのゼムリア民
確かにペナルティじゃないから大丈夫だな
9:名無しのゼムリア民
モテモテじゃない、羨ましいぜ。このこの
10:北国の技術者
どうしてこんな事に……
11:名無しのゼムリア民
ホバークラフトを開発し、トラックを開発して飛行艇まで開発。
そんな20歳独身男性とか獲物としてほっとかれる訳が無いんだわ
12:名無しのゼムリア民
大人しく狐さんの作戦に乗っとき。流石に変な相手は選んでないやろ。多分
13:北国の女狐
ちなみに、15歳で最新技術大好きな美人さんです
14:名無しのゼムリア民
おい、そこ変われ
15:名無しのゼムリア民
モゲロ
16:名無しのゼムリア民
腹殴らせろ
17:名無しのゼムリア民
見合いで無様さらせ
18:北国の技術者
見合いで無様、それだ!
見合いで全力で失望されて噂が広まればお披露目パーティでも言い寄られる事も無くなる!
19:名無しのゼムリア民
あー、確かにそうなるか
20:名無しのゼムリア民
そう上手くいくかねぇ
21:北国の技術者
いける!何故なら俺には高貴な見合いに行くには空気が合わなさすぎる秘策がある!
22:北国の女狐
面白そうなので私も観覧させてもらいましょ
(くくく、両親に送る為に作った物だが今回ばかりは利用させてもらおう)
(整備したせいで油で汚れた白衣に重度の寝不足で浮き上がったクマ、運転の為に前髪は切ったが仕方ない)
(行ってやろうじゃねぇか。この、軽トラでな!!)
その日、アンヘルの婚約が決まった。居合わせたキツネ・ノーザンブリア氏によると
「カモが最新の高級車に乗ってネギと鍋と包丁背負ってやって来た」
とのこと
局長「なんだあの乗り物は。自宅であんな物を作っていたのか…」
妻「なんですかあの乗り物は。これ程の才、是非ともラフリー家の為に」
フェリシティ「なんですのあの乗り物は。あれ?前髪をお切りになったのですね、それにあのクマ、もしかして私の為に寝る間を惜しんで作って下さったのですか?きっとそう、これは運命!」
バルムント大公「彼の婚約は正解だったようだ」
キツネ「抱腹絶倒、腹筋大激痛」