ノーザンブリア大公国南部 フォモール伯爵領 オサイ
「これで終わりだ!アルゼイド流、鉄砕刃!」
「弟よ当たってねぇぞ、だがバランスは崩れたな。くらいなぁ!」
振り下ろされたクレイモアは見事に地面を耕した、来週には見事な雑草が生えるだろう
兄が放った弾丸も崩れた体をくねらせて避けられる。戦いが始まって数分が経ったが
「しっかし当たらねぇな。動きが速いしぬるぬるくねるしで気持ちわりぃ」
「どう考えても見切られてんな。俺達揃ってまだ2、3回しか当たってねぇぞ、どうする兄者」
武器を使わない徒手空拳でありながら陽炎の様な動きで回避する暗殺者にまともな有効打は与えられず
「兄者!」
「っちぃ!足が」
逆に相手の攻撃は防ぐことかなわず、既に兄の左足は負傷し弟は肋骨を2本骨折している
「弱いくせに頑丈だな。適度に反撃して動き回るサンドバッグとしては一級品だ」
「うるせぇよ、兄者なら今に起死回生の作戦が出てくるはずだ」
キツネから戦闘になったら逃げろと言われているが残念ながら背を向けたらどちらかが死ぬだろう。
(実際、あの変な動きは掴めてねぇ。俺も弟もスピードがある訳じゃねぇから当たるまで近づいてくるのを待つ訳だがどうすっかね)
ゆらゆらと手をだらりと揺らしながら此方が焦れて動き出すのを待っている姿は幽鬼のようだ、兄の拳銃ならば狙えるが構えた瞬間に突っ込んでくるだろう
(俺の方に突っ込む?いけるか?)
思いついた作戦はあるが問題はどうやって弟に伝えるかだ。奇策も奇策、アイコンタクトでは伝えられない
(何かあるか、あ)
1:ギルムッド兄弟の兄
弟、いるか?
2:ギルムッド兄弟の弟
兄者、作戦があるんだな
3:ギルムッド兄弟の兄
俺が奴に銃を構える、奴が俺に突っ込んでくる、お前が奴をぶっ飛ばす
OK?
4:ギルムッド兄弟の弟
OK
5:ギルムッド兄弟の兄
いざ、参る
「こっちだ幽霊野郎!」
背中に隠したとっておきの超大型拳銃を引き出し暗殺者に発砲する、1発2発と撃つが見事に避けられ詰められる
しかし、此処までは分かりきっている
「兄者!」
「加減するなよ!弟!」
「アルゼイド流、鉄砕刃!チェスト!!」
兄弟を巻き込む覚悟で渾身の力を込めて振り下ろされたクレイモアは兄の左肩を掠めて暗殺者の右拳を砕いて見せた
硬すぎる拳は斬り落とされなかったが指は幾つか地面に零れ落ちもはや握る事は出来ないだろう
「俺を外すとはナイスだ弟、今度こそくらいな俺のとっておきのフルオートだ!!」
超大型拳銃の設定を単発から連射にしてマガジン内の全弾を叩きこむ。マガジン内のライフル用弾薬8発は暗殺者の体を至近距離から貫いてその身を血だまりに沈ませた
「兄者、そこまでするなら初めからライフル使わねぇ?」
「ハンドガンだからかっけぇんだよ。あー手首逝かれた」
6:ギルムッド兄弟の兄
初陣、勝ったどー
7:ギルムッド兄弟の弟
流石だよな俺達
8:元木馬団
え?勝てたの?嘘でしょ
9:ノーザンブリアの女狐
片方死ぬか重症だと思ってましたが。ケガとか大丈夫です?
10:ギルムッド兄弟の弟
俺は肋骨2本骨折
11:ギルムッド兄弟の兄
俺が左足と右手
12:名無しのゼムリア民
むしろその程度で済んだのか、意外と俺達強いんじゃね?
13:名無しのゼムリア民
毎朝牛乳代わりに命の雫飲んでた甲斐があったな
14:ギルムッド兄弟の弟
確かに怪我で済んだのは命の雫のおかげだろうけど勝てたのは俺と兄者の作戦のおかげなんだが
15:名無しのゼムリア民
名誉の負傷みたいに言ってるけど右手は自爆だろうが
16:ギルムッド兄弟の兄
正直、此処までふざけた反動とは思わんかった
17:名無しのゼムリア民
何処で買ったんだよ、そんなゲテモノ銃
18:名無しのゼムリア民
ライフル用をフルオートするなら初めからライフル使え
19:ノーザンブリアの技術者
確かそれってうちの局長が設計した奴、まだ売ってる店あったんだ
20:名無しのゼムリア民
技術局設計かよ、なんでこんなゲテモノが
21:ノーザンブリアの技術者
主武装のライフルと弾薬を共通化出来るサブウェポンとして設計されてたはず
22:名無しのゼムリア民
設計コンセプトはまともに見えるのに出来た物がこの様だよ
23:ノーザンブリアの技術者
あの人の設計ってカタログスペックは高いのに人間じゃ引き出せない事に定評があるから
24:名無しのゼムリア民
もしかしてノーザンブリアのスナイパーライフルが無駄にブルバップ式なのも
25:ノーザンブリアの技術者
あれ、精度と威力は優秀なんですけど肩に担がないと撃てなくて苦情来てるんすよね
26:名無しのゼムリア民
なんて無駄な設計なんだ
27:ギルムッド兄弟の兄
この粗大ゴミの誕生経緯は分かったが結局の所俺達はどうすりゃいい?街道通り越して森まで流されたから帰り道分からん
28:元木馬団
ちょい休んでから迎え行くから待っとき
29:ギルムッド兄弟の兄
了解、銃の整
30:名無しのゼムリア民
おい、どうした
31:名無しのゼムリア民
何かあったか?元木馬団急いで
「雑魚が、やりやがって」
「その雑魚にしてやられたのは何処の誰だよ」
全身に銃弾を撃ち込まれたはずの暗殺者がゆらりと立ち上がった。砕けた右手は変わらず口からは血が零れているが先程よりもその気配は禍々しい
「ったく。お前らのせいで大公に使う薬をテメェに使わなきゃならねぇじゃねえか。どうせ死ぬならよぉ、お前らも道連れにしねぇとなぁ」
暗殺者の左手から大型の注射器が転げ落ちる
「弟よ逃げろ、クラールかキツネさんを呼んで来い」
「兄者、それは無理ってもんだ。魔人は流石に兄者が死ぬ」
人を元にした異形、魔人がノーザンブリアに顕現した