【悲報】俺達の転生先、ゼムリア    作:石黒 雲水

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グランセル到着

リベール王国 ルーアン

 

 

 

「後は此処とこっちのパイプを繋いで、出来た。フェリシティさん、導力器を起動してみて下さい」

「ハイ!導力器起動します」

 

導力器の起動と共にホバークラフト各部位が駆動を始めて金属が高速で回る低い音が響く、各パイプの故障もなく無事に組み上げが終わったようだ

 

「よしよし、部品の脱落も無い。いい子だ、惚れ惚れする」

「アンヘル技師、もうすぐ出発なので頬ずりしてないで体中に付いた機械油を落としてきてくださいな。あと、フェリシティさんは導力器のスケッチを止めてください、アナタも服に機械油が付いていますよ」

「失礼しました、少々身を清めて着替えてきます」

「あら、いつの間に油が。私も着替えてきますね」

「頼みますよホントに、特にアンヘル技師」

 

2人がいなくなったホバークラフトの上に今回の操縦役であるバレスタイン大佐が現れる、マニュアルを片手に丁寧に各部位の安全チェックを終わらせる姿にその生真面目さが濃密に表れていた

 

「リベール王国で組み上げると聞いた時は安全性に不安があると思いましたが、流石はアンヘル技師ですな。これならば安全にグランセルに向かえるでしょう」

「アニス様、バレスタイン大佐はノーザンブリアで行った慣熟訓練で最も優秀な成績を収めていた、というか設計の限界に近い起動を行うという無茶をこなしていました。ホバークラフトの操縦技術においてゼムリア大陸に彼より優れた方はいません」

「ハハハッ!いや、面白すぎて大人げもなくはしゃぎすぎてしまいましたな。ご安心ください、リベール王国の美しい風景を楽しみながらゼムリア最新の旅を演じて見せましょう」

「ふふっ、よろしくお願いします」

 

そして身を清めて着替えて来た2人を乗せてホバークラフトの旅は始まった

 

 

 

「と言ってもヴァレリア湖に出てしまえば只の観覧旅行な訳ですが、ってアニス様あまり身を乗り出さないでくださいませ、あまり波が無いとはいえ落ちるかもしれません」

「あ、申し訳ありません。でも凄いですね、大公様が風よりも速いと気に入られるのも納得です」

 

波の穏やかなヴァレリア湖を陸伝いで左回りに航行する一行はその自然溢れる風景を楽しみながらグランセルを目指す

 

「ふわぁ、速いです!流石は導力のエネルギー、コレは風防の形状を改良していけば更に速度を出せそうですね。アンヘル様、帰ったら私に風防の改良設計をさせて下さいませ」

「設計ならまぁいいか……いえ、これよりも速い速度だと制御できずに事故の元。フェリシティさんには使用者の安全性についても学んでもらわないと」

「推進力もプロペラから圧縮空気を利用したジェット方式に換装して目指すは音速の壁ですわー」

「何を目指しているのでしょうかこの子は……いや、あの父にしてこの娘ありというか」

 

道中、もはや人間では扱えない魔改造を考えるフェリシティにアンヘルが頭を抱えたり

 

 

「「523 524 525」」

「兄者手首が使えないからってひたすらスクワットって…」

「付きっ!合わ!なくて!いいんだ弟よ!」

「いや、俺はまだ余裕あるからいいんだけどさ。兄者、もう汗だくじゃん」

「うるせえ俺だってまだ余裕があるわ」プルプルプルプル

「でもよ、兄者。足が」

「うるせえ、俺が余裕があるって言ったらあんだよ」

「じゃあ、切りがいい1000までやろうぜ」

「やってやらぁ!」ガクガクガクガク

 

兄弟が足を震わせながらひたすらスクワットを行っていたり

 

 

「アレがグランセルを包むアーネンベルク、見事な城塞都市だ。攻め込むには余りにも硬いだろうな、アレが機能し続ける限りリベール王国が滅びる事は無いだろう」

「軍人らしい感想ですねぇ、私としては湖の上に立ったグランセル城に驚いて欲しいものですが」

「如何にも美しい城ではあります、歴史も重ねてきたのでしょう。ただ武骨者としてはやはり見事な城壁と門が気になってしまいましてな」

「武骨者ですねぇ。リベール軍人となら気も合うでしょうし、どうせなので良い友達を作ってみてはいいでしょう」

「キツネ様は洒落が上手いですな、ノーザンブリアにとって良い友達作り頑張ってみましょうか」

 

感想と称して裏で策略を練りながらもグランセル地方へ上陸を果たした

 

 

 

「ほっほー!アレが噂に聞く『導力ほば~くるぁふと』という物かのう?まさか地上も走れる船とは……ハイカラじゃのう、そこの凶手殿もそうは思わんか?」

「やはり気付いていたか、流石は伝説の剣豪だな」

「先代に比べて気配の殺し方が未熟也。ま、儂の目を誤魔化せる者などそうはおらんから悲観する事は無いぞ」

 

アーネンベルクの物陰からノーザンブリア一行を覗く3名の武人。1人は極東最強の猟兵団である斑鳩の頭領ユン・カーファイ、もう1人は共和国における伝説の凶手 銀

そして

 

「そちらの婦人も一緒にどうじゃ?あのキツネは主の知り合いじゃろう?」

「身を潜めている女性を呼び出すものではありませんよ。あと、確かに以前に彼女の毛並みを櫛で梳いた事はありますがそれも200年前の事、今となっては過去の思い出でしかありません」

 

金の髪を靡かせ汚れ1つ存在しない甲冑に身を包んだ美女、リアンヌ・サンドロットが姿を現した

 

「何時の間に……」

「なんじゃ気付いておらなんだか、儂達よりも先に潜んで居ったぞ」

「先代には兜を割られましたが、当代は精進が必要なようですね」

「父が…」

 

ゼムリア大陸にその名を響かせた武人達の前では未だ若い銀では力不足、その覇気に萎縮を隠す事は出来なかった

 

「儂達の目的もどうせ同じじゃろうし、どうじゃ?3人で本番まで一献というのは?」

「仕事に酒は」

「スタインローゼンのブランデーならご一緒しますが」

「断り方も年季が入っとるのぉ」

 

籠手でしばかれたのは自業自得という物だろう

 

 

 

 

 

ノーザンブリア大公国 歴史研究所

 

 

「コレさ、キツネさんに伝えた方がいいよね」

「だよねー、変人さんは予想してた?こんなの」

「してないよ、黒の工房がちょっかいかけてくるなんて」

「だよねー。あ、スパイちゃんをもう一度洗脳しとかないと」

「念入りだねぇ、ホントに」

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