リベール王国 グランセル城
「いいですか、表情は余裕を保って微笑み何か聞かれたら担当である私に説明を促して余計な事は言わない。相手は歴戦の曲者、人の形をしたタヌキです。経験の浅いアニス様では容易くカモにされてしまいます。いいですね」
「タヌキですか、キツネ様が言うと何というか」
「私なら狩れる相手でもアニス様では食べられるという事です、変な言質取られたら何が起きるか分かりませんからね」
会議の控室、公妃アニスとキツネは会議の打ち合わせを行っていた。打ち合わせと言ってもゲストとして参加したノーザンブリアは帝国と共和国の舌戦を眺めるだけだが一挙手一投足から利益を絞り出そうとしてくるタヌキ相手に油断は禁物である
「食事の作法は分かっているでしょうが特に他国が関わっている場では舌に全感覚を集中してください。私が毒見をしてるとしても万が一がありますからね、極少量を舌に乗せた後問題が無い事を確認してから頂いて下さいませ」
「フフフ、キツネ様まるでお母様のようです。大公様が頼りにされるのはそういう所なのでしょうね」
「はい、油断しない。そろそろ時間ですのでスイッチ入れて集中してくださいませ」
そして控室の扉がノックされ2人は会議場にその足を向けた
「ふむ、ノーザンブリアでは導力ホバークラフトを港の荷下ろしの為に使用しているのか。確かに水上と陸上を移動できる乗り物であるなら必要な労力は段違いに下がるだろうが……」
「まぁ、普通なら港で荷下ろしをしますからね。元々導力ホバークラフトは私の技術と発想で作れる限界を試したくて作った物ですから。アレの使用用途を考えたのは軍や港の方々なんです」
「作るだけ作って運用は使用者に丸投げ、気に食わん帝国のアイツを思い出すのぉ」
「シュミット博士の考えも分かるのですがね、あの方は技術者であり同時に研究者でもありますから」
「それで碌でもない使われ方したら堪ったものではないわい」
グランセルの一角、大型のガレージで木箱を椅子にしてアルバート・ラッセルとアンヘルがホバークラフトを前に設計に関して議論を行っていた
「実の所、ホバークラフトの設計ってあまり好きじゃないんですよ」
「自分で作った物なのにか?」
「私の設計ポリシーは何処でも作れて誰でも修理できる大量生産品なので。規格統一前の部品を多数使用している導力ホバークラフトは時間があれば再設計したい所です」
「ふむ、規格統一か。だが未熟な技術者でも作れてしまったら動作に不安が出来るだろう」
「精度や強度等で部品にグレードを作ればいいんですよ、そうすれば動作や性能の安定性にも繋がります」
「成程のう、流石は儂達に並ぶ天才と呼ばれるだけはあるか」
「恐縮です」
ノーザンブリア技術局内で権力を握って以降アンヘルが行った規格統一、その結果は少しずつだがゼムリア大陸に浸透しつつあった。
その事をアルバート・ラッセルも知っていたが技術者の腕を重視していた彼は未熟な技術者が増える事を恐れて導入を遅らせていたのだ
「惜しい、既婚者でなければ娘の婿に欲しかった」
「まだ既婚ではないですし娘さんまだ10歳にもなってないでしょ」
「そうですよ、アンヘル様は私の旦那様です」
「フェリシティさん、まだ結婚はしてませんしあなたもまだ15歳じゃないですか」
泥の様なコーヒーに胃を痛めながら進める技術談義は燃え上がり
「フェリシティさん、あなたの設計は性能を重視しすぎていて人が使うという視点が抜け落ちています。何ですか音速の軽トラって」
「軽トラという物が何かは知らんが人が使いこなせない物は失敗作と呼ぶものだろう、儂もよく失敗して工房を爆破してしまってな」
「最高性能を求めてそこからダウングレードしていく時って『物を作っている!』という気持ちになりませんか?」
「「それはある」」
最終的に結論が何処か遠くに着地してしまった
1:元木馬団
キツネさんに緊急連絡~
なんか黒の工房が企んでるっぽい
2:北国の女狐
えー、あの根暗どもがちょっかい出してくるんですか?
3:名無しのゼムリア民
この時代の黒の工房って何してんの?
4:名無しのゼムリア民
D∴G教団の一員としてOzシリーズの改良開発に従事してる
5:崑崙脱走者
またD∴G教団か!
6:名無しのゼムリア民
ホンマ何処にでもおんなアイツ等
7:名無しのゼムリア民
アメザリ並みに生息域広いな連中
8:名無しのゼムリア民
もうアイツ等の隠語をザリガニにしません?
9:名無しのゼムリア民
ザリガニに失礼過ぎるのでNG
10:名無しのゼムリア民
D∴G教団とGだとGの方がマシ
11:ギルムッド兄弟の兄
しゃーない、俺と弟でグランセル城の食堂を警備しとくわ
12:ギルムッド兄弟の弟
毒とか入れられたら大変だもんな(モグモグ)
13:崑崙脱走者
ライカ連れて街中警備するか
14:名無しのゼムリア民
今日はライカ君なんだ
15:ライカ
頑張りまーす
16:北国の技術者
もしもに備えてバレスタイン大佐から離れないようにしましょう
17:名無しのゼムリア民
戦えないんだから無茶はするなよ
18:名無しのゼムリア民
バレスタイン大佐は技術者ニキの警護担当なのか
19:名無しのゼムリア民
そりゃそうだろ、公妃様の隣にいるのはキツネさんだぞ
20:名無しのゼムリア民
ノーザンブリア最強戦力だからな
21:名無しのゼムリア民
心配するのは公妃様を巻き込まないかどうかだけ
22:北国の女狐
巻き込みませんよ、危険物組じゃあるまいし
23:元木馬団
危険物組!?
24:リーヴェルト家の変人
僕ら同族だって思われてるの!?
25:名無しのゼムリア民
危険物って意識はあったんだな……
26:崑崙脱走者
まぁ、危ない人物って括りだと間違ってないだろ
27:名無しのゼムリア民
いや、お前は別の意味で危険物だからな
28:崑崙脱走者
嘘やん
29:エディン
確かに危ない人だと思う
30:名無しのゼムリア民
エディンちゃんも言ってるやんけ
31:ライカ
夜になると何処かで戦ってるの知ってるんだよ
32:名無しのゼムリア民
お前まだやってたのか……
33:崑崙脱走者
貴重な収入源なんだよ