クロスベル自治州 マインツ山道
「おーい、ノバルティス先生。今週の食糧持ってきたぞ」
「おお、エミリア。食糧は受けとろう……ニンジンが入っとるではないか」
「いや、ニンジンぐらい食えよ」
「ニンジンはいらん、しかしまた変わった物を作った。ふむ、一般的に地面との接地面積を減らす事で速度を上げようとするがコレは逆だな。接地面積を増やす事で走破性を確保している。悪路が多いマインツ山道を移動する為に作ったのだろう。エンジンの性能も既存の物を凌駕しているな、ふむ?エンジンを回してモーターを動かすエネルギーを作る訳か。素直にエンジン一本にすれば良いだろうに」
エミリアが乗ってきたのは冬に雪が積もるマインツ山道を走破する為に作った履帯式装甲輸送車、定期的にローゼンベルク工房に出向く為の移動手段である
「コイツ専用のエンジンじゃミッション作るのが面倒なんだよ、モーター回転数でどうにかすりゃ楽じゃん」
「そこに手を掛けるのが技術者じゃろうが。あと、モーターの回転数を完全に一致させる制御系の方が苦労するわ」
「だけど出来た、なら問題なし」
「やれやれ、全くこれだから天才は……」
そうして荷物である食糧の荷下ろしを終わらせて他にエミリアが作成した導力装置についてノバルティスから助言を貰ってローゼンベルク工房を後にした
「♪~」
機械音はするが揺れの無い操縦席、その乗り心地にご機嫌な様子で輸送車を運転するエミリアはマインツに続くトンネルの途中でブレーキを踏んだ。ライトの先に倒れた人の姿を見たからだ
「おーい、こんな所で倒れてたら危ねえぞ。この辺、普通に魔獣が出るからなって…ディーター・クロイスじゃねえか何でこんなとこ、いや月の僧院で何かあったのか?」
トンネルに空いている横穴、その先には月の僧院というDG教団を由来とする遺跡が存在する。その横穴の出入り口に金髪恵体の青年、ディーター・クロイスが倒れていた
「僧院の方から人の足音もする……とりあえずマインツまで連れて行くか」
恐らくディーター・クロイスを目的としているであろう追手から逃げる為に輸送車の荷台に無理やり押し込んでその場を逃げて行った
「こ…ここ…は?」
ディーター・クロイスが目を覚ました場所は見知らぬ小さな工房であった。ディーターの大柄な体では窮屈な小さなベッドに低めの机、机の上には多くの道具が整理され工房の各場所には何に使うか見当も付かない機械が設置されている
DG教団の関連施設かと身構えていると部屋の隅で何やら作業をしている少女が目に入った
「此処はマインツだ、にしてもようやく起きたのか、お前がデカすぎて寝床に持ってくるのが大変だったんだぞ」
「君は?」
「エミリア、此処の主で技術者だ。山道でお前を見つけてマインツまで連れてきた」
どうやら僧院から逃げ出した後に山道までは出れたらしい。其処で力尽き倒れていた所を彼女が見つけてマインツまで連れてきてくれたようだ
「そうかありがとう」
「礼はいらねえよ。あのままだと人の味を覚えた魔獣が生まれるから連れてきただけだし」
ぶっきらぼうに顔をそむけるエミリアの姿は少女の見た目以上に美しく逞しいと感じてしまった
1:クロスベルの技術者
なんかディーター・クロイス拾ったんだが
2:名無しのゼムリア民
え?あのディーター・クロイス?
3:クロスベルの技術者
あのディーター・クロイス
4:名無しのゼムリア民
落ちてるんだディーター・クロイス
5:崑崙脱走者
誰?ディーター・クロイス?
6:名無しのゼムリア民
ゼムリア大陸で1番デカい銀行の経営者一族当主、碧の軌跡でやらかす人
7:崑崙脱走者
優秀な銀行員なん?
8:ギルムッド兄弟の兄
政治力こそ低いけど商人や銀行員としては極めて優秀、クロスベルで味方につけたい人材としてSSRではある
9:名無しのゼムリア民
そこまでか?銀行って晴れてる時に傘を貸して雨が降ると取り上げるイメージしかないが
10:北国の女狐
正確には雨が止むのが見えるなら嵐だろうが傘は貸してくれます、いやーディーター・クロイスと知り合えるとはかなりの幸運ですねぇ
11:ギルムッド兄弟の兄
その縁、絶対手放すんじゃねえぞ
12:クロスベルの技術者
そんなにかよ、アイツって盛大にやらかした奴だろ
13:名無しのゼムリア民
まあ、やり方は間違えたけどクロスベル民の民意を示したのは間違いないし
14:名無しのゼムリア民
あの選挙、不正は無さそう何だよな。クロスベルの立場を考えると
15:名無しのゼムリア民
民意「あー、独立したい。帝国人と共和国人の顔色伺わずに生きていきたい」
16:北国の女狐
実際、貴方も独立の選挙があったら独立支持に投票するでしょう?
17:クロスベルの技術者
絶対する
18:北国の女狐
ですよね?クロスベル市民の願いなんですよ公的に表に出てないだけで、それを表に出しただけでも充分過ぎるほどの功績です。勢い任せですが無視できない実績を作り上げる方なんですよ
19:ギルムッド兄弟の兄
優秀な銀行員で後のクロスベル大統領と考えると確かに味方に付けたい人材SSRではある
20:名無しのゼムリア民
この世界、戦闘能力だけじゃ生きていけねえんだ
21:ギルムッド兄弟の兄
そうだな、どうやって繋がりを維持するか……
22:名無しのゼムリア民
ちょうどいいし正式に起業すれば?まだ法人化してないでしょ
23:北国の女狐
そうですねぇ、私としても資産管理がしやすくなるのでありがたいですし
24:クロスベルの技術者
えー!!アタシそういう知識まるでねえぞ!
25:名無しのゼムリア民
ディーターに相談すりゃいいじゃん。お前の技術なら間違いなく相談に乗ってくれるぞ
26:崑崙脱走者
だな、優秀な銀行員ならミラになる技術は理解してる筈だ。大企業まで育ててくれるだろうな
27:名無しのゼムリア民
ついでにマインツの村をクロスベル第二の都市になるまで発展させちまえ、お前の技術ならそれが出来る
28:クロスベルの技術者
うーん、確かにマインツを発展させたい気持ちはあるけど
29:名無しのゼムリア民
ま、結局はお前さんの自由だ。ノーザンブリアじゃなくてクロスベル所属のな
30:名無しのゼムリア民
どっちにしろコレからも取り引きは続けて行く訳だし手は貸すぜ
31:クロスベルの技術者
しゃーない、やるか会社経営。
32:崑崙脱走者
頑張れよ!困ったら相談に乗るぜ、ギルムッド兄とキツネさんが
33:ギルムッド兄弟の兄
イヤ、俺かよ。やるけどさー
34:北国の女狐
力を貸す代わりにノーザンブリアの繁栄に協力してくださいまし
35:名無しのゼムリア民
コレでクロスベル事変はディーター側で参戦になった訳か
マインツに来て早三日、その間だけでも自身の知らない多くの知見を得る事が出来た。自分を運んできたという輸送車という導力機械を筆頭に多くの導力機械がマインツという小さな町には存在したのだ
特に目を引いたのは導力ミシンでジーンズ生地を縫い出来たズボンを洗濯機で洗う子供を持つ女性たちの姿だ。そのミシンや洗濯機について作成者と思われるエミリアに聞いたところ
「あん?ミシンの事か?確かにあれはアタシが作った、マインツは鉱山で事故が多いからな、未亡人でもミラを稼げる様にジーンズを作ってもらってんだ」
「成程、鉱山の労働者ならばジーンズの消費量も多い。着眼点として見事だ。誰かに聞いたのかな?」
「アタシはノーザンブリアと商売してっからな。そこの担当に相談したらジーンズやシャツを作ったり洗濯なら出来るんじゃないかって話になってな」
成程、彼女達は皆、夫を事故で亡くした未亡人との事である。だから子供を連れて働いているのだ。
「コレが才有る者の義務という物か」
DG教団とは比べ物にならない素晴らしい投資先の発見に何時の間にか銀行員として胸が熱くなっていた
お久しぶりです、仕事が落ち着いたので戻って参りました。暫くは少しずつやっていこうと思っております