ノーザンブリア大公国 技術局
技術局特務技師は夜と朝が遅い、そろそろ朝ごはんの時間に寝床に入り昼ごはんの時間に目を覚ます。少なくともアンヘル特務技師の日常はそうである
疲れが取れるようにとこだわったシングルベッド、誰も入ってこれない研究室には何故かフェリシティが入り込んでアンヘルを起こしにかかっていた
「起きて下さい旦那様」
「おはようございます、何故フェリシティさんが私の研究室の鍵を持っているのか聞かせてもらいましょうか」
「母にお願いしまして、母が父にお願いしました。その後父が大公様に許可を頂いてキツネ様が複製したのが此方の鍵です」
「何やってるんですか貴方は、あと関係した方々は」
「子供の特権です」
可愛らしく舌を出すフェリシティだがやっている事は全く可愛くない、そして何故か笑いながら鍵の複製をしている女狐の姿がありありと想像出来た。
「やってしまった事仕方ありません、それよりも食事にしましょうか。確か、とっておきのエナジーバーがあった筈」
「それよりも此方にバケットサンドを用意したのでどうぞ」
「え?ありがとうございます?」
よく見れば普段コーヒーと資料で散らかっている机の上が片付けられ見事な朝食が並べられている。片付けられた書類もちゃんと整理整頓されて纏められていた
「では、いただきます」
もう考える事はやめて取り合えず目の前の食事に感謝する事にした
「お食事も済んだところで忘れていたのですが父が旦那様をお呼びでした」
「局長の指示は真っ先に伝えて下さい、行ってきます」
「行ってらっしゃいませ、私は帰りますね」
時間は既に正午、局長の呼び出しに盛大に遅刻しながら研究室を飛び出して局長室へと疾走した
「おはよう、相変わらず帰らないのだねアンヘル特務技師。ところでフェリシティはどうしたのかね?」
「まあ、導力ネットワークの研究が面白いので。フェリシティさんなら帰りましたよ」
「そうか…そっかー」
ノーザンブリア大公国、技術開発における責任者であるネヴィル・ラフリーは優雅に昼のティータイムを堪能していた。
別に娘に頼んだ呼び出しが無碍にされてへこんでいる訳では無いのである
「取り合えず雰囲気を戻すか。仕事中毒も大概だな。最後に帰ったのは何時かね?」
「飛行艇のお披露目の時に礼服を取りに帰った時が最後ですかね、研究室にシャワールームも寝室もあるので最早何処が自宅なのか分かりませんよ」
整えられたベッドに換気性が高く高品質なシャワールーム、最近では簡易的なランニングマシンまで完備され住もうと思えば普通に住めるのだ、余りにも部屋から出なさすぎて食事すら研究室に届けて貰っている有り様である
「その内住所が技術局になりそうだな。さて、君を呼んだのはちょっとした公務でね。来週末に大公様主催の秋の狩猟会が行われる、君にはそれに参加してもらいたい」
渡された物は見事な封蝋が施された招待状であった、折り目1つ付けない様に丁寧に受け取る。上司の命令なら従うが一つだけ懸念点があった
「狩猟なんてやった事は無いのですが」
「おや、そうなのかね。畑に魔獣が出ることもあるだろう?我が家では魔獣が出ると私やフェリシティが愛用の猟銃で撃っている物なのだが」
「父の役目でしたよ、それか家を継ぐ担当だった兄の。流石に子供にとって魔獣は危険なので」
幼い頃から畑仕事の手伝いはしていたが魔獣が出た時は基本的に家にいる父や長兄に報告するまでが仕事でそれ以降は討伐された魔獣を引っ張るぐらいであり直接魔獣と対峙した事は一度として無いのである
「それはそうだな。なに初心者ならそれはそれで都合がいい」
「都合ですか。私に何をさせるつもりです?」
「君には狩猟会でコレを使って貰う、出来れば良い成果もあげてもらいたいがそれは高望みだろう」
そう言って局長室に備えられだガンロッカーから取り出されたのは七色に輝くレリーフが施された白く輝くライフルであった
「コレは、導力銃ですか。ノーザンブリアで作られていたとは初耳ですが」
「私が暇潰しに作った物だ、内蔵している導力器の部品の関係で量産は効かないがね」
「みたいですね、それにしてもセミオートリボルバーライフルとは」
目立つシリンダーに刻まれた溝、発射の反動で前後する機構。余りにもマイナーなセミオートリボルバーである
またゲテモノを作り出した上司に内心頭を抱えながら動作を確認していく。滑らかな動作、導力器の性能も素晴らしい、間違いなく高性能な代物だろう。あえて言うならギラギラと七色に光り輝くレリーフが気に入らない
「導力器が複雑な分、他の部分は簡素にしてみた訳だ。いいだろう?火薬を用いない導力銃ならではだ」
「ふむふむ、セミオート機構もスムーズですね。それにしてもこの彫金は一体?」
「狩猟会に持って行くものだからな、飾りの1つでも必要だろう?」
「そんな物ですか」
「見栄が必要なのだよ貴族というのは」
そんなパーティに行く女性のアクセサリーみたいな理由で変なゲーミングレリーフを刻まないで欲しいと思うがこの銃は局長の私物、趣味の合わなさは仕方ないだろう
「さて、それでは私は失礼します。コレの調整は私が行っても構いませんよね?」
「地下の射撃試験場を使いたまえ。構え方はフェリシティに習うといい」
「失礼します」
その後、地下で無駄に高い精度と威力、そして装填のしにくさに局長製である事を身に覚えさせられる事となった
1:北国の技術者
そんな訳で狩猟会に参加する事になりました
2:名無しのゼムリア民
ご苦労さん、貴族社会も大変だな
3:名無しのゼムリア民
あれだろ?会社でやるゴルフみたいなイベントだろ?
4:北国の技術者
局長が作った導力銃で参加します。というか、それが局長の狙いです
5:名無しのゼムリア民
え?ノーザンブリアで導力銃作ってたの?
6:名無しのゼムリア民
職人の方々まだパンク中じゃ
7:北国の技術者
局長が設計して部品から手作りした一品です
8:名無しのゼムリア民
部品からDIYかよ、凄いな技術局局長
9:名無しのゼムリア民
でもあれだろ?ギルムッド兄のゲテモノ銃の設計者だろ、またゲテモノなんじゃねえの?
10:北国の技術者
そうですね、セミオートリボルバーライフルとか初めて見ました、何で動作完璧なんでしょうね
11:名無しのゼムリア民
やっぱり…
12:名無しのゼムリア民
またノーザンブリアにゲテモノが誕生してしまったのか
13:ギルムッド兄弟の兄
それでも俺が狩猟会で使う銃よりかはマシじゃねえかな?
14:名無しのゼムリア民
ギルムッド兄も参加すんの?
15:ギルムッド兄弟の兄
当日共和国に出張するキツネさんの代理だけどな
16:北国の女狐
グレート・ノーザンブリアみたいにやらかされては困りますので監視です
17:名無しのゼムリア民
まあ、そうね
18:名無しのゼムリア民
最近、訓練場で紅葉柄のライフルでライフル射撃やってるのってそういう事か
19:ギルムッド兄弟の兄
キツネさんのライフル使いにくいんよ
20:名無しのゼムリア民
あ、ライフルはキツネさんのレンタルなんだ
21:名無しのゼムリア民
いつものハンドガンじゃダメなん?
22:北国の女狐
ハンドガンは暗殺防止の為持ち込めません、懐に閉まったら誰に銃口が向いてるか分かりませんからね
23:名無しのゼムリア民
暗殺防止ならしゃあないよな
24:名無しのゼムリア民
わざわざライフルじゃなくてハンドガンで狩りする理由もねえべ
25:ギルムッド兄弟の兄
キツネさん、あのライフルじゃなくて自分用の新品使っちゃダメですか?
26:名無しのゼムリア民
そんなに使い難いん?
27:ギルムッド兄弟の兄
ストックだけで重さが15キロ、バレルは5キロ、合計20キロだ
28:名無しのゼムリア民
重すぎだし偏りすぎだろ、何だよその発砲機能付き鈍器
29:北国の女狐
おや、よく気付きましたね。万が一、狩猟会に暗殺者が現れた時用の鈍器ですよ
30:名無しのゼムリア民
猟銃でしょ、撃てよ
31:北国の女狐
私射撃が苦手なんですよね。私が当てられる距離なら石をストレートで頭に投げた方が強いです
32:名無しのゼムリア民
キレのある150キロストレートが相手を襲う(デッドボール)
33:名無しのゼムリア民
あの、当たってるんですけど
34:名無しのゼムリア民
当ててんのよ(ヘッドショット)
35:名無しのゼムリア民
まさに死球
36:北国の女狐
皆さんの明日の訓練を遠泳10時間に変更しておきます
37:名無しのゼムリア民
すんませんでしたぁ!
38:名無しのゼムリア民
遠泳は勘弁してくだしあ
39:北国の技術者
君らさあ……
40:ギルムッド兄弟の兄
キツネさん、新しく俺用のライフル買っちゃダメですかね?マジで使い難いんすけど
41:北国の女狐
別に構いませんよ、代理出席に新品一式の道具で行っても
42:名無しのゼムリア民
おっと?これは?
43:北国の女狐
まあ、参加する狩猟愛好家の貴族の方々から気合いが入った若い新人と可愛がられて休みの度に狩猟に誘われる事になりますが
44:ギルムッド兄弟の兄
全力で遠慮させていただきます!