カルバート共和国 首都イーディス アラミス高等学校地下
「よく見ると人が入った痕跡が有りますね。恐らくはシンジさんでしょうけど」
「痕跡ですか?」
「ええ、よく見てくださいな」
指先から灯された火を汚れた床に近づけると僅かにカビの付き方が他と違う部分が点在している、心得がある者が見てようやくソレが足跡であると分かる程度であるが確かに人が入った痕跡であった
「入ったならば何故周囲に知らせなかったのか?恐らくはシンジさんでは手に負えない何かを見つけたのでしょうねえ。危険な魔獣の類では無いでしょうが念の為用心してかかりましょうか」
「奴で手に負えないなら俺に話してくれれば良かったんですがね。ソレも無いとなると何だ?」
「何が出てくるのやら。おや?この部屋が最奥ですかね?入りましょうか」
通路の行き止まりに存在する古い扉、錆びつき重い扉を開けると広い石造りの部屋に出た
部屋には長机と椅子が並んでおり過去に多くの人が此処で過ごしたことが窺える。
その机の上には食器や壊れた武器が置かれておりこの場所を利用していた人々が何者かを表していた
「革命軍の隠し部屋ですか。成る程、アラミスが隠したがるのも納得です」
「王党派の弾圧から身を隠す為の基地ですか。コレは当時の古都の地図、凄いな今でも読めるぞ」
「こっちには当時使われていた武器があります。危なかったですね、この通路がテロリストに渡っていたらアラミス高等学校は未曾有の危機に直面する所でした」
部屋の隅に積み上げられていた木箱には質の悪い銃と弾薬が詰め込まれていて当時の革命軍の懐事情が思い浮かばれた
そして各員が部屋の中を捜索していると共和国役人よりキツネに声が掛けられた
「コレをどう思いますか?」
「内部から導力が感じられます。導力の発展は革命よりも後、革命軍が所有していたアーティファクトではないかと」
「やはりそうですか。という事は七曜教会に報告しなければならない訳ですから。困った事になったな」
作成立案に使用されたであろう長机に無造作に置かれた古い機械、ソレは当時ではありえない導力器であった
「ふむふむ、此処を押すと起動する仕組みの様ですねぇ。どれ、さっそく起動してみましょうか」
「え、あっちょ!」
共和国役人が止まる間も無く押される起動スイッチ、そして光り輝くアーティファクト。何が起こるか期待半分恐れ半分で眩しさに閉じた目を開けて見るとそこには数多の兵士が並んでいた
「コレは一体!?」
「おやおや、面白い事が起きましたね」
「グラムハート君は後方へ、警戒を怠らないように」
「警戒は入りませんよ」
ずけずけと前に出て並ぶ兵士の1人に手を当てるキツネ、兵士に当てられた手は一切の抵抗もなく兵士の中にめり込んでいった
「ソレは一体?」
「どうやら立体映像の類の様です。この部屋で起きた事を再生しているのかソレともアーティファクトに記録された物なのかはわかりませんがね」
指と手で部屋のある方向を指し示す。その方向には此処に来るまでに見たある人物が欠けたティーカップで紅茶を飲んでいた
「あれはアラミス・ゲンズブール?という事はこの兵士達は革命軍なのか」
「他にも色々と居ますよ、あちらにはシーナ・ディルク。地図の前にいるのはアトキンソン将軍でしょう。そして部屋の隅っこにいる豪華な服を着た人物は」
「オーギュスト・アルダンですか。革命の四英雄が揃って作戦会議でもしているのですかな?」
「そんなところでしょうね。恐らくは革命前夜、最後の作戦会議といったところでしょう」
会議が終わった様で1人また1人と部屋を去っていく革命軍、そして最後にはシーナ・ディルクただ1人が蝋燭の灯る部屋に残された。
そして机の片隅に置かれた機械を片手に持ち何やらいじり始めた
「あれは、このアーティファクト。シーナ・ディルクはコレの存在を知っていたのか」
「もしかしたら彼女の持ち物なのかもしれません。シーナ・ディルクは王国貴族出身、アーティファクトを受け継いでいても不思議ではないでしょう」
『コホン、明日は最後の決戦です、その勝敗に関わらず此処には2度と戻っては来ません、だからこそ最後にこの場の思いを記録します。コレを見ている方が私達の同志であるかは分かりません、私達の理想に共感されないかもしれません、ですが知って欲しいのです。私達は此処に居ました、理想の為に過ちを犯すと分かりながらも進みました。貴方が生きる時代は全ての人が手を取り合えていますか?カルバード王国は素晴らしい国となっていますか?幸福な国となっている事を切に願います』
アーティファクトの光が収まり元の古びた一室へと景色が変わる。部屋には無音となり共和国人の2人は汚れた床に両膝をつくほど憔悴していた
「コレがシーナ・ディルクの、革命の意思。ハハハ、政治に明け暮れ人種主義に溺れた私には眩し過ぎる」
「授業で革命については学びますが。本物の願いは此処まで強いとは。シンジの奴が黙って隠し通すはずだ、コレは手におえなさすぎる」
(やれやれ、共和国人には此処まで衝撃的でしたか。シーナ・ディルク、革命の為に作られた偶像と思っていましたがコレは認識を改めないといけませんねぇ)
「さて、コレはどうしましょうか?革命の四英雄が関わる事です共和国側に任せますよ。もっとも今の共和国の社会ではコレを受け止められるほどの度量は無いと思いますが」
「そう、ですね。情けないですが事実です。今も続く人種格差に経済格差、立場の違いが事実上の身分差になってしまっている今の共和国にはコレは劇薬すぎる。下手すれば内乱の火種になりかねません」
よろよろと立ち上がりズボンの汚れを払う役人、先ほどの精神的ダメージは色濃いが何とか立ち上がれる程度には回復出来たようだ
「ですがこの部屋については政府に報告しなければなりません。アーティファクトである以上七曜教会に渡してしまったら封印処理とされるかも……」
「仕方ありませんねぇ、教会には歴史研究所から口添えしておきましょう。そうですね、20年後あるいは30年後に共和国の社会が改善していたならば表に出せる様に、それまではイーディス大聖堂にでも保管してもらいましょうか」
「20年、30年とは長いですね」
「革命から既に70年以上たっているんです、その積み重ねが5年10年で何とかなる訳ないでしょう?急な社会革新は歪みを生みます、じっくり一歩ずつ進めてくださいな。それこそロイさんのような若者を中心としていけば変われるのではないですか?未来を作るのは年寄りではありませんので」
そうして3人はアラミス地下を後にして地上へと帰還していった
42:北国の女狐
やっぱり歴史探求は最高ですね…夜までに一度大使館でシャワーと着替えないといけませんが
43:名無しのゼムリア民
同じオーベル地区にノーザンブリア大使館があってよかったっすね
44:名無しのゼムリア民
そういや、結局脱走者が言ってたあり得ない代物ってなんでした?
45:北国の女狐
革命軍、恐らくはシーナ・ディルクの残したアーティファクトです。イーディス大聖堂に2~30年程度の保管をお願いしてきました
46:名無しのゼムリア民
そういや脱走者ってアーティファクトを直接見たことないんだっけ?
47:名無しのゼムリア民
まあそうそう見るものでもないし
48:名無しのゼムリア民
今から2~30年後って本編開始直前から本編ど真ん中ぐらい?
49:名無しのゼムリア民
今が1177年だから1197年~1207年の間でそんな代物が公開できる事件ってなると
50:名無しのゼムリア民
1198年のDG殲滅作戦か1206年ヨルムンガンド戦役ぐらいか
51:名無しのゼムリア民
個人的にはDG殲滅作戦の時に公開してほしいもんだが
52:名無しのゼムリア民
今回の案内人がロイ・グラムハートなんだろ?ヨルムンガンド戦役の時に発表して士気爆上げで帝国軍を真正面から押し返して、なんて事もいいな
53:名無しのゼムリア民
確かに、挙国一致した共和国の底力も見れるしな
54:北国の女狐
とはいえかなりの劇物です、公開するタイミングを間違えると革命戦争再びからの共和国壊滅まであり得ます。慎重に対応しないといけませんね
55:ギルムッド兄弟の兄
脱走者の奴、合理的に脳筋やってるだけあってその辺のバランス感覚上手いんだよな。俺だったら見つけてすぐに表に出しちまうな
56:北国の女狐
伊達にバイト感覚で共和国の裏社会と表を行ったり来たりしてた訳じゃないってことですよねぇ。山籠もりから戻ってきたらもっと仕事を背負わせてみましょうか
57:名無しのゼムリア民
担当するなら外交系?
58:北国の女狐
方針だけ伝えて自由にやらせるのが一番な気もしますがねぇ
59:名無しのゼムリア民
ほっといたら余計な事件を起こして解決して成果上げてそうだもんな
60:ギルムッド兄弟の兄
そんじゃアイツはその方向で調整しときますぜ
61:北国の女狐
お願いします、私は明日からはラングポートですので
62:名無しのゼムリア民
ういうい
63:名無しのゼムリア民
ラングポートまで馬車ってどんだけ時間かかるんすかね?
64:北国の女狐
3日かかります、走ったほうが早いですが流石に公的な外遊じゃ仕方ありません
65:名無しのゼムリア民
ちなみに走ったら?
66:北国の女狐
1日です
67:名無しのゼムリア民
マジでこの世界の上位層はさぁ……