【悲報】俺達の転生先、ゼムリア    作:石黒 雲水

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その日俺は運命の師と出会った!

ノーザンブリア大公国 とある山奥

 

 

「しっかし魔獣ばっか倒してて実力が上がるのかね?どうにも実感が湧かねえな」

 

ノーザンブリアのとある山奥、普段ならば人が入り込まないその土地は強力な魔獣の支配する領域である。その領域に自ら足を運び自身を追い込んで強くなろうとする若い武芸者が1人、筋骨隆々の肉体を誇るシンジ・グロウルである

 

「飯も食ったし次の魔獣でも探しに行くとすっか」「メ〜メ〜」

「ヒツジン?どっかからこんな山奥に入り込んだのか?」

 

遠くから聞こえるヒツジンの鳴き声、ここまで来るのに一度も群れを見ていない。何処からか入り込んだ迷いヒツジンかもしれない

気付いたなら見捨てるのも気分が悪いと鳴き声のする方向へと足を向けていた

 

 

 

「やたらと歳食ったヒツジンだなおい、俺より幾つ年上だよアレ」

 

白い毛皮にシミが浮かび顔もしわくちゃ、青草をハム姿も頼りない程の老ヒツジン。こんな山奥にいる方が不思議である

そんなヒツジンを遠くから観察しているとさらに奥から重く地面を鳴らす様な足音が響いてきた、現れたのはこの地域一体の主をしている巨大なライノサイダー。分厚い装甲を纏いその巨体と牙による突進は並大抵の生き物を打ち砕く猪型の魔獣である

そのライノサイダーがヒツジンを捉えた

 

「危ねえ!」

 

思わず叫んで飛び出すもヒツジンとの距離はソコソコにある。ライノサイダーの一撃でヒツジンが吹っ飛ぶと思ったその時

 

「メ〜」

 

吹っ飛び地に伏していたのはライノサイダーの方であった

 

「嘘だろおい」

(今の動き、間違いない。あのヒツジン、崑崙流の達人だ!)

 

故郷崑崙で見た武の達人すら凌駕するであろうヒツジン、ソレを見たシンジはすかさずヒツジンに頭を下げて

 

「俺に崑崙流を教えて下さい!」

「メ〜」

 

ヒツジンの崩拳によって吹っ飛ばされた

 

 

 

ソレからシンジはひたすら山を駆けずり回った、ある時は背中に籠一杯の青草を背負って崖を這い上がり、ある時は川傍の大根を収穫するため冷たい滝壺に飛び込んで達人ヒツジンを追いかけた。

その度に吹っ飛ばされて気を失う事を繰り返して10日目、いつもの様に吹っ飛ばされ気絶から目を覚ますとある事に気が付いた

 

「日が暮れてないだと?」

 

何時もならば目が覚める時は日が暮れているか既に夕暮れに入り込んでいるのが今日は傾いているがまだ空が青い、大体正午に気絶している事を考えるとかなり早く目が覚める様になっていた

コレが修行の成果と思いどれだけ強くなったか確かめようと構えを取る

 

(なんだコレ、何時もよりも気の流れがハッキリと分かる。そうか、こうやって崩拳を打てばいいのか)

 

体内を荒れ狂いながら流れる闘気、穏やかに無駄なく流れを整えてやる。そして全身の気を込めて静かに打ち出した崩拳は硬い山の岩壁を砕かず貫き腕が肩まで刺さる程の貫通力を生み出した

 

「メ〜」

「師匠、コレが正しい崩拳ですか」

 

いつの間にか背後に姿を現していた達人ヒツジンはメ〜と一度だけ鳴いてシンジの意識を刈り取った

目を覚まして辺りを探してもヒツジンの姿は見つからずその痕跡すら存在しなかった

 

「師匠、お世話になりました」

 

山に一礼だけしてシンジは山を降りて行った、遠く彼方からメ〜という鳴き声が聞こえた気がしたのはもしかしたら気のせいかもしれない

 

 

 

 

5:崑崙脱走者

そんな訳で俺は崑崙流を身に付けた訳だ

 

 

6:名無しのゼムリア民

いや、流石に信じられねえよ

 

 

7:名無しのゼムリア民

達人ヒツジンって何だよ、何で崑崙流を覚えてるんだよ

 

 

8:北国の女狐

……もしかしてですが、そのヒツジンって頭頂部に星型のハゲがありませんでした?

 

 

9:崑崙脱走者

あった、特徴的だったからよく覚えてる

 

 

10:北国の女狐

という事はあのヒツジンですか。まだ生きてたんですね、長生きにも程があります

 

 

11:名無しのゼムリア民

知ってんのキツネさん?

 

 

12:北国の女狐

私がイスカ神聖皇国を旅立って直ぐの頃です、路銀が尽きて崑崙で牧羊犬の日雇いをやっていた時期がありました

 

 

13:名無しのゼムリア民

牧羊犬のバイト……

 

 

14:名無しのゼムリア民

まあ、イヌ科ではあるから……

 

 

15:北国の女狐

雇い先の方が崑崙流の達人でして、ソコに青草狙いで入り込むヒツジンが一匹居ました。達人はヒツジンを気に入って自分が身に付けた武術をヒツジンに教える事にしました。ヒツジンは学んだ崑崙流を駆使して羊を魔獣から守る代わりに安心な棲家を得る事が出来ました。いい話でしょう?

 

その結果私はクビにされて崑崙を旅立つ事になりましたが

 

 

16:名無しのゼムリア民

250年以上昔の話しなのに何でそのヒツジンまだ生きてんの?とか、何で崑崙からノーザンブリアに来てんの?とか色々分かんねえんだが

 

 

17:北国の女狐

不思議な事もある物ですねぇ、まあ崑崙を旅立ったのはイスカ神聖皇国を滅ぼした天変地異は崑崙も若干巻き込んだのでそのせいでしょうけど

 

 

18:名無しのゼムリア民

そういやキツネさんもイスカ神聖皇国が滅びるから東ゼムリアから西ゼムリアに来たんだっけか

 

 

19:崑崙脱走者

そんなスゲェヒツジンだったのか師匠。250年鍛えてたらそりゃあ達人にもなるわな

 

 

20:名無しのゼムリア民

ソコに200年鍛えてるけど理に至っていないキツネさんが居るんですけど

 

 

21:北国の女狐

たかだか10年20年鍛えただけで理に到達する人間がおかしいんです!貴方だってまだ理に至ってはいないでしょう

 

 

 

22:崑崙脱走者

まあ、身に付けたのは気の運用であって確かに理ではないとは思うけどな

 

 

23:北国の女狐

ソレに貴方崩拳以外の技教わってないじゃないですか

 

 

24:名無しのゼムリア民

え?教わってないの?

 

 

25:崑崙脱走者

そういや教えてもらってねえわ、次に師匠に会えたら教わらないと

 

 

26:名無しのゼムリア民

フィジカル喧嘩殺法に気の運用が合わさっただけじゃねえかよ。お前ちゃんと崑崙流学べ本当に

 

 

27:リーヴェルト家の変人

クソ硬い奴の火力が上がったら普通に脅威ではあるけどねえ、まだまだ負けるって思う相手では無いかな

 

 

28:名無しのゼムリア民

あれ?帝国でずっと仕事してる変人じゃん仕事の調子どうよ

 

 

29:リーヴェルト家の変人

いやーやっと見つけたよ黒の史書の写し。雪が積もる前で良かったよコレで漸くノーザンブリアに帰れる

 

 

 

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