クロスベル自治州 クロスベル市
「遅くなってしまった、だが導力灯のおかげで明るいな」
陽が落ちて僅かな導力灯のみの街を金髪の恵体スーツ姿の若者が歩く、今はまだIBCの若い銀行員に過ぎないディーター・クロイスだ
担当顧客とのやり取りを終わらせて本社に戻る最中、彼は街の裏通りに赤い人影を見てしまった
「な!っ!大丈夫ですか!?私が分かりますか!?」
石畳を赤く染めていく男の正体はディーターが以前担当していた帝国からの輸入雑貨を扱う店の店主であった
「家族………助け…」
「息がある、誰か!!誰か手を貸してくれ!!!」
彼は直ぐに大声を上げて周りに助けを求めた、直ぐに人が集まり教会に運ばれたがその時には息を引き取っており、やっと到着したクロスベル警察は彼に事情聴取を行った
2日後逮捕された犯人はルバーチェ商会の一員で逮捕されて数日後お咎めなしとして釈放された
「そんなクロスベルの日常聞かされてどうしろっつうんだ?ディーター」
数日後、ディーターはマインツにやって来ていた。殺された店主の家族の今後を何とかしなければならないと思ったからだ
「私は悔しいんだ、被害にあった店主にはまだ子供が産まれたばかりだコレからだと言う時にルバーチェ商会に狙われてしまった。だが私に出来る事は何もない」
「遺族支援でミラは出せねぇのかよ」
「そんな事をしたら遺族がミラ狙いで襲われてしまう。どうしようもないのだ」
既に店はルバーチェ商会の報復を防ぐ為に売却し家族は用意した隠れ家に避難させている、後は今後の身を寄せる場所だけだ
「成程な、で?ディーター、お前は何でここに来たよ」
「残された遺族を雇って欲しい、君の会社ならば子供の世話をしながらでも働ける筈だ」
「雇うのは別に構わねえよ、似たような境遇の人も普通に雇ってるし。けどな、お前の要望はそれだけか?」
クロスベルがクロスベルとしてある事が出来ればいいなんて些細な望みだがその小さな希望すら今のクロスベルでは叶わない
何故ならクロスベルには大国と渡り合う力が無い、ディーターもその事は分かっている
「私には力がない、出来る事などこの程度しかない」
「つまりは力が欲しい訳だ。アタシも帝国と共和国は大っ嫌いなんだ作ってやるよお前が欲しい力ってやつを」
どこか楽しそうな面白そうな玩具を見つけたようなワクワクした子供の表情を浮かべるエミリアに思わず一歩後ずさる
「何?」
「とりあえず採寸だな。ディーター、お前デカいせいでアタシ用のサイズじゃ入んねーから」
片づけられた工房の片隅から取り出した採寸用のメジャーを片手にエミリアがにじり寄ってくる、今まで生きてきて此処まで瞳孔が開いた目をした少女に今感じている物が恐怖であると認識する
「まて?君は何を言っている?いや何かを作ろうとしているのは分かる、何を作ろうとしているのだ?」
「そう焦んなよ。帝国と共和国、何ならリベールや財団も作ってない発明品をお前に作ってやるだけだから。あ、ミラは貰うからな、材料費だけでもバカに何ねーし」
「いや、だから君は何を?」
遂には壁際まで追い詰められながらも逃げ道を探すが残念ながら逃げ道など何処にもない
「久々に腕が鳴るな。あははは、どうせだし研究中のあの機能も付けてみるか?前に作ったアレも付けてみるか、取り付ける導力器にちょうどいいのが無いな、この際だ新作でも作ってみるか。さあさあだからさっさと採寸させろ!服脱げ!ディーター・クロイス!」
工房から上がった悲鳴に駆け付けたマインツの住民が見た物は13歳の少女によって下着姿にされ全身を採寸されているディーター・クロイスの哀れな姿であった
1:クロスベルの技術者
なあ、ちょっとゼムリアストーン分けてくんねぇ?ミラはちゃんと払うから
2:名無しのゼムリア民
うん?まあいいけど加工できんの?
3:クロスベルの技術者
アタシを誰だと思ってんだ、ゼムリアストーン製の加工機械ぐらい自作してあるわ
4:名無しのゼムリア民
自作出来るんだ……
5:名無しのゼムリア民
流石はローゼンベルク一門…
6:クロスベルの技術者
戦術導力器の製造方法とクォーツを取りに来る時に持ってきてくれりゃいいから
7:リーヴェルト家の変人
明日ノーザンブリアを出るのに今言うかなソレ、簡単には手に入らないからねゼムリアストーン
8:名無しのゼムリア民
キツネさんのストック持ち出すか……どうせ死蔵してるやつだし
9:名無しのゼムリア民
後で補填しとけば何も言われんでしょ
10:北国の女狐
いや、言いますからね。何サラッと私が集めた物持ち出そうとしてるんですか
11:名無しのゼムリア民
でもコレクションって訳じゃないんでしょ?何か崩壊した地下倉庫にあったし
12:北国の女狐
一応、100年ぐらい前に集めてたコレクションです
13:名無しのゼムリア民
ここ数年は?
14:北国の女狐
…………集めてません
15:名無しのゼムリア民
キツネさん、断捨離しましょ?
16:名無しのゼムリア民
研究所を探索してると集めてたけど飽きたんだなって物がちょいちょい出てくるんすよ
17:名無しのゼムリア民
腕ぐらいのサイズの高純度七曜石の結晶が埃と腐った虫の死骸に埋まってたの意味わかんなかったんすよ
18:北国の女狐
そういえばありましたね、120年ぐらい前の大公様に頂いた奴が
19:クロスベルの技術者
なあ、使ってないなら100万ミラぐらいで売ってくれないか?
20:北国の女狐
仕方ないですねぇ、どうせ飾ってもない物ですし
21:名無しのゼムリア民
ちなみに七曜石は何に使うん?
22:クロスベルの技術者
めちゃくちゃ性能の高い導力器を作りたい
23:名無しのゼムリア民
確かにソレなら高純度の七曜石が必要だな
24:リーヴェルト家の変人
それじゃあ持っていくから2~3日予定空けといてね
25:クロスベルの技術者
おう、了解