クロスベル自治州 クロスベル市
「やれやれ、まだ昼間だというのに襲ってくるとは、夜闇が安全でなくなったとて日の下は君達の味方ではない事を学ぶべきだな。さて、そろそろ日曜学校が終わる時間なのでね私は失礼させてもらうよ」
クロスベル市の湾岸区、雄大なエルム湖を眺めながらコーヒーを嗜んでいたウィリアムは怪しい男達の襲撃を受けた。雰囲気を意識して人が少ない場所を選んだのが悪かったのだ。
仕方なく剣を持って打ち倒したが思った以上に時間がかかってしまったせいでそろそろマインツの子供達が日曜学校を終える時間だ私に課せられた子供達の送迎の仕事は後には回せない
「それにしてもキャプテンクロスベルとやらのおかげで夜の治安は上がったがその分昼にも厄介な輩が蔓延るのは問題だな。魔都クロスベルから魔が祓われるのはまだまだ先か…」
最近、クロスベルの夜を賑やかしている全身甲冑の正義の味方も昼の間は姿を見せない。その隙である昼は人気の少ない場所で警察と悪党がバチバチにやり合っている危険な時間となっていた
基本的には警察側の方が強いが問題は逮捕後に司法が犯罪者をまともに裁けない事による即時釈放だ、そのせいでクロスベル市民の司法への信頼は湖の底よりも低く落ちぶれてしまっていた
「さて、興味本位で買った苦酸っぱい液体も飲み終えたしそろそろ教会に向かうとしようか」
「「シスター今日もありがとうございました!」」
「はい、それでは皆さんまた来週。エイドスの加護のありますように。それではウィリアムさん子供達をマインツ村までお願いします」
「承りました。では、みんな行こうか」
クロスベル自治州随一の教会、クロスベル大聖堂、どれだけ大きくても七曜教会が子供達に学問を教えている事は変わらない。マインツやクロスベル市の子ども達は皆この教会で将来の知識を学んでいる
今まではマインツの大人が順番に子供達を送り迎えを行なっていたが今ではウィリアムの仕事だ、宮廷剣術を身につけているウィリアムならば道中の魔獣を退けながら安全に移動が出来るという理由だ
未だに日曜学校を卒業していないエミリアもこの時ばかりは子供扱いだ
「あ、ちょっとそこの滝に寄っていい?今日父ちゃんの誕生日だからレインボウ釣って帰りたいだー」
「ふむ、みんなは大丈夫かい?」
「わたしは大丈夫!早く帰ってもお母さんから掃除とかお手伝い頼まれるだけだし」
「ボクも!」
どうりで背中に長いケースを背負ってる訳だ、子供達は釣り場で餌のミミズを見つけ出すと慣れた手つきで竿を出す。
ソレをウィリアムとエミリアはのんびりと魔獣を警戒しながら眺めている
「ふむ、それで君はどうなんだい?エミリア女史、君には仕事があるだろう?」
「別に?アタシの仕事はやろうと思えばすぐ終わるしな、いや書類仕事が面倒で溜まってたんだ。んー、ま、アタシは1人で帰れるし1人で帰るわ」
「了解した、そういう事でエミリア女史は先に帰るようだからみんなは釣りを楽しもうじゃないか」
「「はーい」」
背中に背負ったケースから取り出した自作の導力砲を肩に担いでエミリアは1人で先にマインツへと戻る。普段からマインツ山道を通って工房に出入りしているエミリアにとってこの程度は散歩みたいなものなのだ
そして1人でのんびりと時間の浪費に勤しむウィリアムは貴族時代を思い出す。あの頃は1人でのんびりと出来る時間は殆どなかった、公爵という物は常に派閥のトップであり周りには必ず誰かが付いて動かなければならなかったからだ
「貴族をやっていた頃はこのような時間は取れなかったな、男爵家や子爵家ならば出来たのだろうが公爵だったし。こんなに時間の浪費が出来るのはマインツの人達のおかげだな」
「ウィリアムさーん!見て、キレイなロックが釣れたー」
「鱗にここまで傷がついていないとは珍しい、お父さんに見せたら驚くかもしれないな」
「ほんと!やった!」
男の子が見せてきたのは体の斑点が美しい見事なロック、魚が釣れて子供達も大喜びだ。そうして更に時間がたち1時間、そろそろ帰らなければお母さん達にドヤされる時間だ
「さて、それではソロソロ帰り支度をしよう。私も少し片付けをしてくるからここで待ってて欲しい」
そうして子供たちに見えない様に腰に下げた細剣を抜いて藪の中へと歩いて行った
「さてと、出てきたまえ子供達には血の赤を見せたくないのでね。ここで終わらせよう」
「っち、やはり気付いていたか」
「DG教団とやらか、帝国にいた頃は噂でしか知らなかったが、成程、思ったよりも深いところまで入り込んでいる様だ」
現れたのは黒いローブを着た集団、しかし何故かその姿はボロボロだ中には出血をしている者もいる。恐らくは先に帰ったエミリアを襲った結果返り討ちにあったのだろう
「今日は襲う相手を間違えた者によく出会う、まったくエミリア女史もちゃんと捕縛して欲しいが彼女も忙しい身だし仕方ないと思うしかないか」
「数はこちらの方が多い、やる気ならば加減はせんぞ」
「怪我人は戦力にならないだろうに、では参ろうか」
戦いは一方的で終わった。怪我人を容赦なく盾にしてあえてとどめを刺さず追加の盾として扱う戦術はDG教団員相手でも残念ながら機能してしまったのだ。
「噂では非人道的実験を行う外道集団と聞いていたが存外身内を大事にするものだな。さて、終わったし子供達の元に戻ろう…血とか付いてないよな?」
剣に付いた血をその辺の葉っぱで拭い子供たちの元に戻る事にした
「むむむむむむ、釣れんではないか!子供でも釣れるというのに何故釣れん!」
「おじさんうるさい、魚逃げちゃうよ!」
「ソレに投げてすぐ釣れる訳ないじゃん。もう少し待とうよ」
「どういう状況なのかな?」
子供達の元に戻ると先程と違って何故か白衣の男が増えていた、しかも何故か子供達に混じって釣りをしており魚が釣れない事に大声で文句を流しているアレでは釣れる物も釣れないだろう
何者か聞いてみたらエミリアに用がある様だ
「成る程、あなたはエミリア女史の師の1人なのか」
「師ではあるが同時に兄弟子でもある、それでエミリアはどうしたのだ?この子供達と一緒ではないのか?」
「書類仕事が溜まっているようで先に帰りましたよ」
「っち、スポンサーが付くというのも考え物だな他者の意思のせいで好き勝手出来なくなるとは。まあいい、試作品の自慢が出来なくなっただけだ、お主名前は?」
「ウィリアムですが」
「コレをやろう、エミリアならば整備も出来るはずだ。時々データだけワシに寄こせばそれでいい」
渡されたのは白いフルフェイスの仮面、デザインは趣味ではないが以前舞踏会でこの様な仮面をつけた者を見た事はある
「フルフェイスの仮面?舞踏会でもあるのかな?」
「そんな訳が無いじゃろうが、付けて右目の上のボタンを押してみろ」
「これかな?」
言われるがままに押してみるとマスクが輝いていきなり視界に見慣れない表示が現れた、驚いて周りを見渡すとどうやら自分を中心とした人間の位置を表しているらしい
「「「すっげー!!」」」
「コレは一体!?」
「導力レーダー搭載型戦闘マスク、クロスベル市の方で最近話題のキャプテンクロスベルとやらの頭装備をワシなりに分析改良した物よ」
「何故コレを私に?」
「エミリアの近くの輩では無いと整備が出来ん、そしてそれは戦える人間でなければまともにデータが取れん故に貴様が適当だと私が判断した」
「そういう事ならばいただこうか。データとやらはエミリア女史の元に行けば取得出来るのかな?」
「奴ならそれを見れば何をすればいいか分かる、毎週エミリアの元に持っていけばいい」
「成程、了解した」
以降クロスベルでは仮面を被った騎士が弱き者をを助け悪事を働く者を討ち果たす様になったという、助けられた人が名前を聞くと
「ノーブルマスクとでも呼んでもらおうか」
そう言ってクロスベルの建物の上や山の中へと消えていき新たなヒーローとして親しまれる様になった
1:クロスベルの技術者
なんかさノバルティスがアタシの発明品コピってきやがったんだけど
2:名無しのゼムリア民
なにコピられたん?
3:名無しのゼムリア民
アイツの専門って分析と改良だろ?お前の発明品でも出来んの?
4:クロスベルの技術者
キャプテンクロスベルのマスクコピられた
5:名無しのゼムリア民
大丈夫かソレ?
6:クロスベルの技術者
レーダー機能だけしか付いてないし素材もゼムリアストーンじゃないから改良はされてねえけど間違いなくベースはアタシの作品だわ
7:名無しのゼムリア民
ディーター・クロイスから漏れた?
8:名無しのゼムリア民
漏れるとしたらそこしかないよな
9:クロスベルの技術者
いや、それだったらもっとヤバい物が出来てるから違う、多分町で聞いた噂から分析したんだろうな
10:名無しのゼムリア民
そんな眉唾から分析できんの?ヤバくねノバルティス
11:クロスベルの技術者
まあ間違いなく天才の器だわな、クロスベル以外の土地で生まれて国家に雇われてたらゼムリア大陸の文明は30年は進んでる
12:名無しのゼムリア民
流石は世界線によっては1人で文明を背負った男
13:名無しのゼムリア民
少数の天才が居ないと発展しない文明もどうかと思うがね
14:クロスベルの技術者
何言ってんだ?文明を進めるのは少数の天才で文明を文化に変えるのがその時代の人々だろうが
15:名無しのゼムリア民
まあ文明論は置いといてノバルティス放置していいんか?何か対処必要じゃね?
16:名無しのゼムリア民
確かに、アイツは倫理観とか薄いから監視しとかないとダメじゃね?
17:名無しのゼムリア民
奴の監視どうしようか、ローゼンベルク工房って監視しづらいんだよな
18:クロスベルの技術者
とりあえずアタシがノバルティス止めとくわ、アタシの研究の手伝いしてもらえば監視も出来んだろ
19:名無しのゼムリア民
むしろ不安なんだが!?