カルバード共和国 首都イーディス オーベル地区 学生寮
「成程、確かにこのお菓子はコーヒーと合うな」
購買に新しく入荷したチョコレート、リリヤさんとソフィーちゃんがおススメするならと買ってみたが確かにこれは美味しい。
材料のカカオは産地では生薬としても親しまれてるらしく苦みと油気が心を落ち着けてくれる
砂糖とミルクが欲しくなるがリリヤさんが一緒に売ってくれたコーヒー豆との相性も抜群だ
課題を終わらせて寮の自室で休息をしていると唐突に自室の窓が鳴る
三階にある自室に窓から人が訪ねてくるとは思わず鳥でもぶつかったのだろうと思い窓を確認すると
「ロイ。悪い、ちょっと助けてくれ」
先日、イーディスを旅立ちレミフェリア公国に向かったはずの友人が窓にへばりついていた
ダボダボの服を着た少女をその背に背負って
「とりあえず、僕は警察かギルドに通報すればいいのかな?」
「やめてくれ」
「それで?レミフェリア公国に向かった君がどうして女の子を背負ってイーディスに戻ってきたんだ?」
「D∴G教団だ。連中、レミフェリアに向かう道に張ってやがった。この子は連中の実験台にされてた被害者でな」
「只の被害者じゃないんだろ、君を襲撃するなら子供なんて連れ歩かないし君も救出した後ギルドを頼るだろう。ギルドに頼れないこの子は何なんだ?」
崑崙からイーディスへ来る道中、村一つを救って村人全てをギルドに預けた男だ。D∴G教団が関わる案件なら直ぐにギルドに頼る筈、それをしないとなると頼れない何かがある
「鋭いなホント。D∴G教団が作り上げた天使らしい、今はこんなナリだが戦いになると凄いぞ。巨木やら大地やらが抉られて地図が書き換わる」
「天使って、そりゃあ頼れないわけだ」
僕のベットで大人しく眠っているエディンと呼ばれた少女は年相応にしか見えないのだが、この男が連れて帰って来るならそうなのだろう。
そうなるとイーディスに戻ってきた理由はレミフェリア公国に向かえなくなったからか
「明日、リリヤさんに事情を説明してくる。どうせ直ぐにリベールに向かうんだろ?」
「ほんと鋭いな。そのつもりだクロスベルも無理そうだしな、リベールなら教団の勢力も少ないらしいしリベール経由で帝国を抜けてノーザンブリアまで行けば流石に追ってこないだろうしな」
どういう訳かD∴G教団はノーザンブリア大公国では活動していない。正確に言うなら活動拠点が作られるも悉く何者かに襲撃されて壊滅を繰り返しているらしい、そんなノーザンブリアならば追っても来ないだろう。
「それじゃあ、一晩だけエディンを頼む」
「頼むって君はどうするんだ、床でなら寝れるから少しでも体を休めればいい」
「悪い、少し夜遊びしてくる。終わったら戻るから窓だけ開けといてくれ」
そう言って窓を飛び出して彼は夜のイーディスへと溶けていった
「寝るか」
どうせ追手を潰せば帰って来るだろう、明かりを消して椅子に座り目を閉じた
1:崑崙脱走者
という訳でエディンが寝ている間に追手を殲滅するぞ
2:名無しのゼムリア民
気絶させてギルド前に吊るすのじゃ
3:名無しのゼムリア民
明日はエディンちゃんがイーディスを観光する。それまでに安全を確保せよ
4:名無しのゼムリア民
そういや、エディンちゃんって年いくつ?
5:崑崙脱走者
10歳だってさ、小柄だから幼く見えるけど単に栄養不足なだけだろ
6:名無しのゼムリア民
天使化から解放されたら死にかけてたもんな、まともに飯も食わせてもらえてなさそう
7:名無しのゼムリア民
肉の脂で腹を壊すから野菜ばっかり食べてるの不憫で仕方なかった
8:名無しのゼムリア民
道中だとトイレとか中々いけないもんな仕方ない
9:名無しのゼムリア民
リリヤさん達に美味しい物沢山食べさせてもらうんやで
10:名無しのゼムリア民
ちなみにミラは大丈夫なん?
11:崑崙脱走者
D∴G教団の連中がやたらとミラを持ってたからそれで。あとクレイユ村までに倒したポムで何とか
12:名無しのゼムリア民
これはポム狩りしながらノーザンブリアを目指さないとダメじゃないかな
13:名無しのゼムリア民
あとはクレイユ村からイーディスを2日でエディンちゃん背負って走り終えた健脚で弾丸旅行もすれば節約になる
14:名無しのゼムリア民
信じられるか?こいつクレイユ村から走ってきてそのまま追手の殲滅に入ってるんだぜバケモンだろ
15:名無しのゼムリア民
崑崙はYAMAだから致し方なし
16:名無しのゼムリア民
あ、追手を吊るし終わった
17:名無しのゼムリア民
手慣れた動きで身ぐるみ剝いでいく
18:名無しのゼムリア民
そして流れるように黒芒街の質屋送りに
「ここ、どこ?」
目が覚めた時初めて見えた物は知らない天井だった、何処だろう昨日は森の中で寝た筈なのに何で私はベッドに寝てるのだろう
「お母さん、この子起きたよ」
「だれ?」
隣には綺麗な金の髪の女の子とちょっと離れた所にそのお母さん。ここは一体どこなんだろう
「おはよう、エディンちゃん。さ、先ずは着替えて朝ご飯にしましょ」
枕元を見ると綺麗に折りたたまれた服が、これを着ればいいのかな
「あの、この服」
「いいのよ、どうせ古着なんだもの。子供が大人の優しさに遠慮しないの」
そう言って、上着も持ってきてくれた。綺麗な服、何時ぶりだろう。あそこに居た時はずっと縛られてて服なんて着れなかった
着替えてみると少しきついけど久しぶりの綺麗な服は暖かかった
「それじゃあ朝ご飯にしましょ、沢山食べてね」
連れられて入った部屋には助けてくれたお兄さんと知らないお兄さん、さっきの女の子が既に席に座っていた
テーブルには沢山のサラダとサンドイッチ、暖かいスープと果物が並んでいた
「お、起きて来たな。しっかしぐっすり眠ってやがって」
「やれやれ、此処まで来るのに警察や人の目に留まらないかヒヤヒヤだったがよく眠れて何よりだ」
「脂が苦手って聞いてサンドイッチとサラダにしてみたの、召し上がれ」
空いてる席に促されて目の前のサンドイッチに手を伸ばす。
「いただきます」
助けてくれたお兄さんが手を合わせて食べ物に祈っている。知らないのにやらないといけない、そんな気がして伸ばした手を戻して私も真似して祈りを捧げる
「いただきます」
そして今度こそ朝ご飯を食べ始めた
「それで、この後はお買い物をするんだっけ?」
「そうっスね、エディンの分の旅支度の予定っス」
朝ご飯の後、これからの予定を聞いた。私を捕まえてた人達が追って来てるからリベールって場所に行ってノーザンブリアって国を目指すみたい
「それじゃあセントルマルシェに行かないとね。行こ!エディンちゃん」
「うん」
ソフィーちゃんに引っ張られるようにやって来たセントルマルシェという市場は見た事も無い位の人がいろんなお店でお買い物をしていました。
家族みんなでパンや野菜を買っている人、本屋さんで買った本を抱えて出てくる人、広場の噴水の前でお菓子を食べている人
みんな笑顔でした、笑っていました、泣いている人は誰もいませんでした。
私達はあんなに辛かったのに苦しかったのに痛かったのに
(ゼンブコワシチャオッカ)
私の中のライカが暴れる、私を守ってくれる友達、話し相手になってくれる友達、痛みを分かってくれる友達
それが暴れる
「駄目、此処じゃダメ」
口を抑えて蹲る、暴れないよう零れないように溢れないよう
「エディン!」「エディンちゃん!」
ダメ、もう溢れる、ライカは止まらない。このままだと街が大変な事になる
少しでも離れようと顔を上げたらソレがあった
私を止めてくれたもの。それを口にした
「いきなり蹲って苦しみ始めたと思ったら何でワサビ丸かじりしてんだコイツ」
「好きなのかな、ワサビ」