近所のクールお姉さんポジの英雄が俺の前だけ甘えてくるんだが?   作:だけたけ

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第1話ですねぇ。暫くはイチャイチャは無いです。導入終わるまでお付き合い下さい。2話からは徐々にギア上げていきます。


出会い編
1話 天使を見ました。


あの時、世界で1番輝いていた英雄。

 

ずっとあの姿が頭から離れない。色々な人に聞くとどうやらあの人は旅をしているのだとか何とか。兄を探して色々な国を回っては神に訪ねるのだと聞いた時は俺の中の彼女への株は上がった。

 

貧乏家庭育ち。

貧乏なのに子供作んなよ。面と向かっては言えないけど、内心こう思うこともあった。野垂れ死にそうになったり雑草を煮てアクを取って食べたり。働ける歳になった瞬間働いて、家に金を入れる始末。もうこんな世の中クソッタレ、滅べと何度心の中で呪ったか分からない。

 

まぁ、若い頃特有の願望とかこの状況に対する願いとか、そんなものは軒並み捨て去った俺でもひとつ捨てられないものがある。

 

笑われて当然。みみっちいとか言われても、ダサいとか言われてもいい。だってこれが俺の本心だから。

 

その願ってやまない望みとは.......

 

「すっごい可愛い女子の後ろでこいつのこと一番わかってるのは俺だぞムーブしたい....」

「えっと.......」

 

太陽に輝く彼女の横顔は困惑の色に染まっていた。それも愛おしく感じる。

 

「大丈夫。俺が君をまも....「おーい!旅人ぉー!」.......チッ」

 

ま、まぁ、そんなこともありつつ.....今日も俺は黄昏れる。

 

 

__________________________

 

 

「おい、そろそろ帰れお前。」

「んなもん俺が決めんだよ....帰りたい時に帰る!ここは自由の国だ!!」

「ルールを守っての自由だ。身勝手を自由とは言わねぇよ。この酔っぱらいめ」

 

モンドという国のエンジェルズシェアという店で1人、カウンターに居座る突っ伏した酔っ払いがいる。なんなんだと言いたげにバーテンダーはため息を吐く。

 

「はぁ、お前、予定あったんだろ?こんなに飲んでいいのかよ?」

「んなのすっぽかせばいいんだよ〜....あいつら酷いんだぜ?なんちゃら騎士とか勝手に任命して....えっと、ほら、あれだ!な?」

「いや、わかんねぇよ。」

 

そんなくだらない会話。酔い加減を見るにこの会話は覚えていないだろう。そんな無駄な会話でもカウンターの向こうの男は仕方ないなぁという呆れた顔で接する。それを見るだけで彼は常連の厄介客ということが分かる。

 

「ところでよ、最近騎士共が色々騒がしくない?なんでか知らねぇの?」

「なんでその騎士のお前が知らないんだよ。」

「ほんとだ!こんな騎士の鑑である俺が知らないのはなんでだ?あんなにモンドに尽くしてるのに!」

 

バーテンダーは言い返す気力もないのかため息を一つ吐くだけ吐いてコップを拭き始める。

 

「おい聞いてんのかァ?いいか?俺は....」

 

不意に声が止まった。

 

「どうした?」

 

少し動きが止まったあと耳の裏を掻いてバツの悪そうな顔を一瞬うかべた。

 

「....」

「んだよ、その苦虫をかみ潰したような顔。拭く手止まってるぞ」

「んや、また面倒事かって思ってな。」

 

その言葉を出した瞬間ドアが開いた。

 

「おいッ!ナケ!」

「おいおい、代理団長さんよぉ、入ってきて一声目が泣けとか騎士としてどうなんですかぁ!」

「お前がそう呼べと言ったんだろう?!」

「俺は新鋭寄進(しんえいきしん)唯我独尊(ゆいがどくそん)にして自分勝手(じぶんかって)!黒煙に眠る稲妻.....ナギ・ケナヤだ!伏してひかえ....いっでぇ!!」

「うるさい!!」

 

顔を真っ赤にして彼を睨む一人の女性。その手には剣が握られており鞘に入ったままそれで殴ったことは容易にわかる。

 

「あるぇ?顔真っ赤?真っ赤じゃん?うっひょーッ!ジンが照れた?照れた!!ついにデレた!照れデレだぁ!!」

 

両手を上げて立ち上がる彼、もといナギは続いて手拍子を初めて煽り始めた。くだんのバーテンダーはと言うと軽く頭を抱えて視線を下げている。

 

「頼むから店の外でやってくれ。」

「ああ、すまん。ほら行くぞ、ナギ」

 

ドスの効いた声で手を掴むジン。ただそんなことをされたナギが黙っている訳もなく.......

 

「きゃー!!セクハラ!セクハ....」

 

ガンッという鈍い音が聞こえた。その瞬間彼の動きが止まり、地面にくずれおちる。

 

「このバカが迷惑をかけた。すぐに出る。」

 

そう言ってジンはナギの腕を持って引きずって出ていった。

 

「やっぱり厄介事だったか.......」

「それなぁ?迷惑この上ないっての」

「うわッ?!お、おま.......今外に言ったんじゃ.......」

「お、この金、ジンの奢りか?アイツ良い奴だなぁ、もっとからかってやろ〜」

 

外に出て行った筈のナギが何故か視線を戻した瞬間カウンターにいるこの異常事態。いつ戻ってきたとか色々言いたいことはあるのだろうが一旦言葉を飲み込んだようだ。

 

「さて、と.......戻ってきてあれだけど、そろそろ行くわ。」

「もう二度と来んな。」

「寂しいくせに.......」

「やかましい」

 

その時、彼以外の最後の客が帰るためにテーブルに小銭を置く音が聞こえた。それを聞いてまたお越しくださいとだけ言って視線を戻すとさっきまでいた彼の姿が消えていた。

 

「はぁ.......またかよ、あいつ。」

 

__________________________

 

 

「俺らと遊びに行かない?怪しいことしないから。話聞いてよ〜?」

「や、やめて下さい!」

 

今、私は恐怖の真っ只中にいる。最近、失恋、仕事の失敗、親の体調、財布を落としてなけなしのお金でお酒を飲んで....死のうと思っていた。もう私には何も残っていないのだろうと思える程気分は沈んでいた。

 

「そんな暗い顔しないでさぁ?」

「暗い....ですか。」

「お?抵抗無くなったってことは同意ってことでおけ?」

 

そう、私には守るものさえ、もう何も無いのだ。死ぬこの体、乱暴されたってもう関係ないのかもしれない。自暴自棄と言いたければなんとでも言えばいい。でも生きていく希望なんて持てない。もう限界。もう無理だ。

 

「....わかりま「はぁい、ストップ〜.......ウヒック....騎士参上〜」ぁ........」

「ヘベレケじゃねぇか。何が騎士だよ。痛い目合うだけだぞ?」

「んな事ねぇよ。俺は強いからぁねぇ〜」

 

そう言って瓶を煽る彼は足元も覚束無い千鳥足でこちらに近づいてくる。オマケに剣も持っていない丸腰姿。

 

ーダメな人だー

 

思わずナンパしていた男たちですら顔を顰めたのが見える。

 

暴漢が1人、拳を振りかぶって彼に殴り掛かる。

 

「これまたテンプレだねぇ.......あれ?天ぷらだったっけ?」

「コイツッ.......」

 

2発目も難なく避ける彼は.......

 

3発目を顔面に食らった。

 

「は?.......」

「え?」

 

強者感漂っていたのにも関わらず1分かからずに終わったこの勝負。静寂が流れる。

 

騎士ダウン。

 

本当にシャレにならない。あんな自信満々で出てきて瞬殺、ダサいという言葉が喉まで出かかる。

 

「はぁ、気分じゃなくなった。行くぞ。」

「まったねぇ?オネェサーン」

 

猫なで声で手を振る男が去って行き.......視線を下に向けた瞬間、自称騎士が口を開いた。

 

「....きみ可愛いね?どこの学校?」

 

地面に寝っ転がったままの彼がそう言った。

 

相手が変わっただけじゃんこれ。

 

「学校って何?」

「それよりさ、怪我なかった?足腰痛めてない?気分はどう?怖かったよね、助けられてよかった。付き合ってください。」

「うん。だ、だいじょ.......はい?」

 

今おかしいのあった。絶対今おかしいのあった。

 

「空耳かも、もう1回.......」

「付き合って下さいッ!!!」

「ドストレート?!?!」

 

その瞬間頭におりてきた4文字、最近聞いたことがあったはずだ。確か.......

 

「もしかして、最近異国から来た....出会ったら関わるなと評判の変態騎士?」

「だいぶ名声が出てきたみたいだねぇ.......」

 

器用に寝っ転がりながら自慢げな顔をする彼。

 

「あ、ありがとうございましたっ!じ、じゃ........」

 

そうしてその場を離れた。

 

後々になって放置したことを後悔してしまうだろうが今はもう家に帰って寝たい。

 

混乱していたからだろうか?この時、私の顔から絶望の色が少し抜けたことに気付けなかった。

 

 

__________________________

 

 

 

「あー、どうしよ。起き上がるにしても夜の空綺麗だから起き上がりたくない。」

「えっと....大丈夫?」

 

寝っ転がって5分。いろいろな人に見られるも奇異の視線に晒されていた頃、一人が近づいてくる足音がした。

 

「ああ、大丈夫さ。なぁ知っているか?人生ってさ.....200色あるんだ。」

「何言ってるんだこいつ....」

 

なるほど。俺に惚れたなさては。そうだろうな!この道路の真ん中で寝っ転がって空を見上げてる男に話しかけようとする人なんてそれしか考えられん!

 

「ん?女の人2人か。俺の好みは鈴を鳴らしたような優しい声音の君だよ。マイ....えっと、マイビューティフルガール?」

「悩むなら言うなよ....」

「俺の口説き文句が効かぬだと?!くっ、やるなっ.......」

「大丈夫そうだね」

 

あ、やばい。俺、彼女いない歴年齢。ピーチボーイを超えてアップルボーイの俺からしたらこの波に乗り遅れたくないッ!

 

「大丈夫じゃないです体が動きません指一本ピクリとも余裕なんてあるはずがなあああああい!!!」

「うわっ.......」

「.......」

 

あ、間違ったことだけはわかる。すっごい、顔を1度として見たことないから正確には分からないけど俺の横顔を冷たい視線で刺されてるのだけは分かる。

 

「はいごめんなさい。私の名前はナギ・ケナヤ19歳独身。趣味は星を眺めること。お酒とギャンブルが大っ嫌いなナイスガイです。」

 

よし。これで完璧だ。自分の落ち度も拾える俺完璧。最高の男だな。誰か貰ってください。

 

「なぁに言ってんだ。合ってんの名前と年齢だけじゃねぇか。」

「えっと.......?」

「そこのバーの店員だよ。こいつの.......しりあ....顔見知りだ。」

「あからさまな降格?!ってか邪魔すんな!いいか?!俺は今恋にチャレンジしてんのこの可愛いすぎる声の持ち主の彼女.......に.......」

 

顔を上げて文句を言っている最中に不意に声が止まる。

 

 

「あ、やっばい、めっちゃ好み.......」




はいぃ.......こっから暫くは蛍にウザ絡みするオリ主が見られます。

どうする?

  • ストーリー重視
  • 日常回多め
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