近所のクールお姉さんポジの英雄が俺の前だけ甘えてくるんだが? 作:だけたけ
はい、本編どぞ(適当すぎる)
「ここ....どこ?」
涙で前はほぼ見えないけど、それでも耳には嫌という程のうるさい喧騒が入ってくる。
「別にッ....お母様が居なくても、いいもん....」
自分でなんとかできる。
そんな楽観的思考が温室育ちの俺にはあった。まぁ言わずもがな、それが後に大惨事に繋がるのだが....この頃の俺はまだそれを予想するだけの余裕と精神年齢は持ち合わせてはいなかった。
ただの意地。意固地になって、庇護を受けなければ生きていけないたった5歳の子供が道を歩いていく。
「....」
いや、恐怖もあったと思う。かたやただ脅えていただけの女性。かたやそれを助けた男性。たったそれだけ。確かに僕にとってそれは気持ちのいいことでは決してなかったけれど、だからといって死ねばいいのにとか微塵も思ったりしてなんか無い。
のに....
気付いたら生首が晒し者になっていた。無惨な、あの綺麗な顔をした女性があんなに絶望を表面に出して、酷い顔で吊るされていた。
誰がやった?
母か?それとも使用人の誰かか?はたまた外部の人か?
そんなのどうでもいい。
あんなの初めてだった。みんな、僕を恐れてどこかに行ったのだと、そう思っていたしそう伝えられていた。でもそれが実は嘘で本当は殺されて....
「おぇぇえッ、....」
「ッ、汚ねぇなこのガキっ」
今はその罵倒も気にならない。
吐き気が止まらない。初めて見る死は刺激が強すぎた。この世界では死ねば消えて天に還ると教わったがなぜ生首があるのか。
「一丁前に無視かよてめぇ....なぁッ!!!!」
「っぐ....ぁぁ....」
殴られる。
痛い。痛いよ....なんでこんなことするの?痛い、痛いっ....痛いっ!!
苦しい、やめて、痛い、殴らないで痛いやめてやめて痛い痛い苦しい痛い痛い苦しい痛い痛い痛い苦しい苦しい苦しい苦しい痛い痛い痛い苦しい痛い苦しい、やめて
「ぁ....っ....」
殴られ続け、思考が回らなくなるのにはそう時間はかからなかった。頬、頭、顔に四肢。思いつく全てが痛みを訴えている。
「ッ、おいやめろって!そいつは....」
「ぇ....」
助かったと思った。あかないまぶたを無理やりこじ開けてこの状態にした相手を一瞥する。
その顔は恐怖に染っていた。
「ひ、ひぃいッ!....く、クソッ!」
「....」
声も発することは出来ない。ただそこにあるのは自身へ向けられる恐怖の感情ただ一つ。
なんなんだ?自分は一体なんなんだ?
さすがに幼い自分でもわかる。これは自分がおかしい。自分が悪いのだと。だから何も言えなかった。
ああ、そうか....
そうだね....
きっと僕の居場所は無い。
国を出よう。この稲妻を出よう。
そうすればきっと....
淡い希望。そんな言葉が似合うであろう思考の結論に自身の事ながらも少し苦笑が漏れる。
「な、なんで笑ってやがる?!....」
「に、逃げるぞ!」
ああ、逃げろ。逃げてくれ。この去勢が役に立つならいくらでも張ってやる。
常識を知らないならもう知らなくていい。僕の居場所はないんだから常識を覚えたところで受け入れてくれる先なんてあるはずがない。
力をつけよう。力をつけて国を出よう。
「ははっ....」
心が壊れかけてる。そんなことは知識がない自分でも直感的に分かっていた。
でも、信じていた人に突き放された時ほど絶望はしていない。
いつか、いつかだ。強くなって、なんにでも勝てるようになって、またお母様に会いに行こう。
「認めて、くれるよね....?」
ふらつく足取りで街の外を目指す。
そのまま外に出ると程なくして見かねた大人が僕を保護してくれた。
問題をあえて一つ挙げるとすれば....
その保護してくれた人がファデュイだったことだけだろうか....
__________________________
6年後
「凪、大事な話があるのだけれど....」
ミラーメイデンの服を来た女性が口を開いた。
「んだよ。改まって。そんなタマじゃねぇだろうが。」
「はぁ....割と育てかた間違ったかしら....」
口調のこと言ってんならもう遅い。俺だって好んでこんな口調になったわけじゃないのだ。ただ拾われた先が男所帯で、その中で生活していたとあればたいして不思議じゃない。
「....本題に戻るけど、そろそろ独り立ちしてみない?」
「....は?」
ほんとに耳を疑うくらいには疑問だった。思わず聞き直したくらいには。ミラーメイデン....もとい、サフィーラは妖艶に人差し指を口元に持っていき、言葉を続ける。
「もうあなたも11だし、頃合いだと思うのよねぇ」
「いや、待て待て待て。」
「....?」
「何わけわかんねぇみたいな顔してんだよ。ふざけんなよ?」
「早めのはんこ「反抗期じゃねぇよ?!」....なら何よ....」
つぶらな瞳でこちらを見てくる。いや、あんた、もう26でしょうや。つぶらな瞳って....歳考えろ、歳を
「ぐふッ....痛てぇよ!何してくれてんだこら!!」
「変なこと考えてたからよ。」
「なんでわかんだよこの歳m....」
言葉の続きは音にならなかった。みぞおちに本気のナックルを食らって悶絶していたからだ。恨めしそうに睨むことしか出来ない。
「こ、このとし....お姉さん....」
「よろしい。」
「このクソアマ....ッ」
はぁと相手はため息を吐いてこちらを見てくる。多分続きを促しているんだろう。そう判断して未だに痛む腹を抱えながら言葉を発した。
「俺は【
「うんうん。頑張ったわね?えらいわ」
「ッええい、撫でんな!!!」
「うんうん。それで?」
「もう立派に独り立ちしてんだよ!!」
微笑ましそうにこちらを見るその目をやめろ!!頭撫でる手をどけろ!!
「おー!何してんのー?」
「また厄介なのが来たな....」
「なにおー?このフィルタお姉様が来たんだぞ?喜べうりうり!!」
「ええい、
雷の蛍術師であるフィルタというやつが来た。この部隊では1番歳が近い。
淡い紫が入った水色ショートカットの髪が揺れた。
そのフィルタは後ろからいきなり抱きつくやいなや両頬をつまんで上下左右に動かし始める。
「あははっ、変な顔ー!」
「
もう殺意しかわかない。いつもは逃げられるが今回は絶対に逃がさん。同じことして俺も笑ってやる。俺の気持ちを思い知れ!
「これで独り立ちしてる....ねぇ?」
「なんだよ....」
やっと頬から手が離れたと思った瞬間後ろからギュッと抱きしめられるから心臓に悪い。というか華の20歳、俺にそんなことしてたらいつまでたっても男できねぇぞ。わかってんのかこのショタコンが!
「気付いてないの?あなた、今すっごいニヤニヤしてるわよ?」
「嘘っ?!....」
急いで確かめようと顔に手を伸ばそうとするも上からフィルタに抱きつかれている現状、どうしても手が届かない。
「....フィルタ、腕どけろ。」
「やだ〜」
「....おい、いい加減にしろよ?」
「しないよーだ。ほら、抵抗してみなさい!」
力的には術師のフィルタよりも俺の方が強いのだが毎度毎度、これから抜け出そうとすると脇腹をくすぐってくるので負けるのだ。だが今回はそうはいかない。
「....おらッ!」
「ぇ....あ、あひっ....あはっあははははっ、や、やめッ....わ、わかった、!ギブ!ギブぅう!!!」
いつものお返しとばかりに脇腹をくすぐる。すると割とすんなり手がほどける。その隙にそこから離脱して顔を触る。
確かに口角が上がっていた。
まぁ、嬉しくないと言ったら嘘だ。俺を受け入れてくれたのはここしか無かった。少なくとも俺の中ではそうだ。
だから....
ん?
「はぁ、はぁ、はぁ....」
「ッ....」
フィルタの方を向くとそこには床にへたり込みながら荒く息をする姿があった。
いや、わざとだとはわかっている。でも、こちとら思春期入りたて。ぶっちゃけ....
「な、なな、なにやってんだ?!?!」
「な、ぎ....責任、とって?///」
「ふ、ふふふ、ふざけんなッ!!!!」
そして、その場から逃げ出した。もうこうするしかなかった。サフィーラがなにか引き止めるような声を出していたがそれを振り切って俺は走り続ける。
まぁ、何かと大変だけれどこの環境は....ほんとに理想だった。
「凪。」
「....追ってくんな。」
「まぁまぁ、ごめんね?少しやりすぎちゃった。」
手のひらを合わせてこちらに謝ってくるフィルタ。それを見ていたらもうなんかどうでも良くなる。
「あなたのお兄さんにね?頼まれたんだ。」
「....?」
「魔神の調査、可能ならば討伐だってさ。」
「は?」
無茶にも程がある。俺が率いるこの部隊。俺はリーダーとは名ばかりの保護者同伴組と言った方が正しいまであるこの部隊が魔神調査?
頭おかしいんじゃねえか?
「詳細、教えろ。」
「凪は連れてかない。」
「....おいてめぇ。冗談なら許さねぇぞ?」
「冗談じゃない。」
微笑みかけながらも真剣なその瞳に少したじろいでしまう。彼女がこんな表情の時は決まってなにか覚悟を決めた時だからだ。
「あなたは子供だから。」
「お前らよりも強い俺が行かなくてどうすんだよ?!勝てるはずねぇだろ、ふざけんな!」
「凪からしたら私はお姉ちゃんで、サフィーラさんは母親みたいなものでしょ?だからだよ。」
分からない。本当に分からない。何を言ってるんだ?
「....出発はいつからだ?」
「1時間後。」
「はぁ?!?!なんで今まで言わなかった?!」
「言ったら準備して追いかけてくるじゃん。絶対。」
もっともだとは思う。ただ俺には捨てることなど出来るはずがない。また唯一の居場所が無くなる。そんな事許容できるはずがなかった。だから俺は声を荒らげる。
「当たり前だろッ、心配するだろうがよ!そんな無茶な任務なら尚更ッ!」
「うん。えらいえらい。ありがとね?でもいい子ならここで待ってられるよね?」
「られねぇよ!俺も連れてけ!」
困ったように笑いながら頭を優しく撫でてくる。いつもの激しいスキンシップではなく、今回はただこちらを案じるような優しいもの。
「泣かないで、待ってて。帰ってくるから。」
だが、帰ってこなかった。当初の計画では1ヶ月。でも3ヶ月、1年待っても帰ってこない。
「また、独り.....」
__________________________
「フィルタ....」
帰ってくるはずがない。もうあれから4年、俺は15歳になり、お目付け役も居なくなり正式に部隊を任された。だけれど正直、この4年間何をするにも上の空だ。
「家族を2回失ったってか?勘弁してくれよ....ほんとに」
俺は幸せにはなれない。染み付いた人生からの負け癖がそう言っている。齢15で2回も家族を失うなどひねくれても当然だろう。
正直希望などない。
「ぁあ....ファデュイ辞めよ....」
俺を年下ながらに慕ってくれていた部下たちには言わず、ただ、仮面を脱いで、マントを脱いだ。
『凪、その紫色の髪の毛が嫌なら色抜けば?』
「ッ....」
フィルタの声がチラつく。俺を捨てた訳じゃないってわかってる。けれど心はそれを理解してくれない。捨てられたとだけ叫んでくるのだ。
『あら、その髪どうしたの?綺麗な水色のグラデーションになってるじゃない』
「ぁ....ッ....」
サフィーラが優しく撫でてくれる。そんな過去の話。
もうないのだ。そんな環境。
だから俺は....もう期待しない。家族、仲間など信頼しない。信頼するのはサフィーラとフィルタで最後だ。期待するだけ自分が傷つくだけで何の得もない。
ファデュイの目的は世界の救済....だと聞かされた。本当かどうかは知らないが。でもさながら俺の目的は自分の救済だ。
心地よかったのだ。2人と一緒にいると。
「ごめん....」
だから、もういいだろ?諦めて逃げたって
「さよなら....最後の家族。」
逃げた。ファデュイ内で脱走兵として指名手配されているだろうこと、これからのことに憂鬱になりながらそれでも脚を回す。
「はぁっはぁっはぁッ.....」
「いたぞッ!そっち回れ!!」
「しつこいなッ!!!」
四肢は悲鳴を上げている。だからといって彼らを殲滅するなど出来るはずがなかった。だって、元部下だから。
「なんでッ、そんなことしたんですかッ!千花様ッ!!!」
「ッ....帰れッ!お前らじゃ俺は止められないッ!」
「俺は、俺らはあんたに憧れてファデュイに入ったんだ!決してあなたを追いかけ回すためじゃないッ!!!」
月並み、そう言ったらそれまでだろう。だがそう感じるほどにその言葉自体に俺の心は揺らがなかった。動揺している理由はただ一つ、彼らが涙で顔をぐしゃぐしゃにしながらこちらに走ってきていることだけ。
「でも....お前らじゃ俺の家族にはなれない。」
信じることをやめた自身の心はもうこいつらを受け入れることなど叶わない。どうしてもできない。そりゃ試したさ。何度も何度も気が遠くなるくらい、心を軽くしたくて、何度も....でも無理だった。だから....
だからこうするしかない。
『追って来るなッ!!!』
「ッ!!!」
自身の後ろに氷壁を生成。およそ元素スキルと言うには粗暴なそれは紛れもなく足掻きだった。だが....半透明の向こう側に見える彼らの姿は....
「....ごめん....」
その場で必死に剣や銃を氷壁に叩きつけている。およそ大人とは思えない行動。慕われるのも素直に喜べない俺を上司に持った彼らは不運の一言に尽きるなと何処か冷めた思考をしてしまう。
目の前に桟橋。少し離れたところに大きな船。それを確認するやいなや、すぐやるべきことは決まった。
足に力を入れて薄い木の板を蹴るようにして体を上に飛ばす。
船に乗り移り、そして振り向くことなく、稲妻を後にした。
「おめぇ、誰の船乗ってんだ?ああ?」
「....」
「なんだァ?その目はッ!」
そりゃそうだ。いきなりの不審者乗船。乗組員がそれに気づかない筈がない。大きい船といえど木造船。着地時に板の軋む音やマスト上の見張りの目を欺ける筈がない。
「すまん、この船はどこまで行くのか教えてくれや。」
「あ"あ"?んなもん教えるはずがな「おいおい待て待て。」....
奥からでてきた赤を基調とした服装のワイルドな女性。
「ああ、てめぇが船長か。」
「そうだが..ファデュイの要求、呑む訳には行かないねぇ....」
意地の悪い顔。女性と言うより男よりのそれは割と好感が持てるものではあった。まぁ相手はそんなこと1ミリも思っていないようだが。
「ファデュイならさっき抜けてきた。」
「信じろと?仮にそうだとしても元々ファデュイだったのは変わらんだろ。」
「なら....」
そうして、俺は躊躇なく自身の腹にナイフを突き立てた。一気に熱が抜けていく。血がドバドバ出て自身の体重を支えるのもやっとだ。
ここで見つかる俺の弱点。
子供だからと無茶な任務に行けなかった、そもそも俺は強かった。そんなことで怪我もする機会が少なかった俺。心のダメージもあり、簡単に腹を切ったが思ったより苦しくて、
まぁ今更....死んでもいいんだけどな
「ちょッ....!」
「ッ....これで、俺は満足に動けねぇ。乗せてくれ。」
「...はぁぁ....話はあとだ。ゴズ、医務室に運んでやれ。」
そうして船内に消えていくひとりの乗組員。多分担架か何かを持ってくるのだろうが...
「....自分で歩ける。....船長、恩に着る。」
「まだ乗せるって決まってねぇよ。乗せないと決めたら海に落とす。いいな?」
厄介なものを見るような目。まぁそんなものだろう。国外に行ければ御の字。稲妻の中でもまぁ....逃げれたことで良しとしよう。
そう考えているとだんだん意識が遠くなる。
ああ、もうダメそうだな。まぁ殺されても文句は言えない。流れに身を任せるしかないだろう。
ほんとに、運が悪いというかなんというか....
まぁもうどうでもいいけど。
世界が暗転した。
まぁ、一言で言うと璃月に着いた。と言うより気を失っている間に着いた。どうなってんだこの船の速度。と思ったが1ヶ月も眠っていたらしい。ただの失血でそこまでの長期間、気を失うとかなんなんだ?と思うが、まぁそんなこと考えていても埒が明かない。
と思っていたが割とすんなり種明かしされた。
「暴れられても困るからな。私が命令して眠っていてもらった。」
「麻酔か?」
「ます....なんだそれは。まぁ薬物だ。後遺症はないから安心しろ。」
すんなりと口から出た言葉に疑問が浮かぶ。
麻酔とはなんだ?そんなもの聞いたことも見たことも無いはずだ。なのになぜすんなりと口からそれが出てきた?
「....起きたならさっさと出ていけ。」
「チッ...わぁってるよ。」
まぁここにはもう用は無い。お礼を言おうとは思ったが無しだそんなもん。眠らされて何されるかわかったものじゃない状態で放置され、事後報告までされたんだ。これでチャラだろう。
「はぁ....どうするかなぁ....」
見たことがないはずなのに妙に懐かしい感覚。デジャブというものか?度々起こるものだが、まぁ気にするほどのことでもな....
「....は?」
小さい子供が港に立っていた。生気を感じない小さい子供が。脳内に浮かび上がったのは2文字のみ。ただそれが問題だ。
「七七....?」
__________________________
おかしい。さすがにおかしい。
初めて来る璃月の街並みが何故かわかって道には迷わないし、港で見かけた子供の名前がすんなりと出てきた。ほんとにどうなってんだこれ。
「ついに俺の頭がイカれたか?いや、勝手に飲まされた睡眠剤の影響か?」
記憶をうえつける薬品?んなもんあるはずが無い。アホみたいな発想。子供の考えそうなものだ。
ああ、クソが。考えがまとまらねぇったらありゃしねぇ。だいたいこの記憶が正しけりゃこの璃月には執行官の本拠地が....
「あるし。バッチしあるじゃねぇか....」
ファデュイ執行官、タルタリヤ。その本拠地。
ということはこの謎の記憶は概ね正しいって事だ。
嘘の記憶ではない?妄想の類では無いとしたら....
誰かの記憶か?
「はぁ....バカバカしい。」
「あなた、ここで何をしてるのかしら?」
後ろから声が聞こえた。ピシッとしたいかにも硬そうなその声。振り向くと紫髪の....
「ちっちぇな....」
「なッ....あなた、とっ捕まえますわよ?!」
「その言葉遣い辞めた方がいいぞ。ガキ」
「ガっ....?!」
わなわな震えているその姿。それは俺の小さい頃のようで....
「どうした?ガキ。腹減ってんなら金渡すからどっかで買ってこい。ついてくるなよ?」
「2回もッ....わたくしはとっくにおと「その口調やめろって。似合ってねぇぞ。」っ....う、うわぁぁぁああんっ!!!」
「はぁ....めんどくせぇ....」
普通に会話してるのに泣き出した目の前の子供に辟易する。正直、こいつと話す意味すら感じない。
「....」
「うぐっ、ひっぐ....大人だもん....っ」
大人なら泣かねぇんだよ。そんな言葉が口から出かかってすんでのところで踏みとどまる。また何か言ったらさらにめんどくさい事になる。目立ちたくない。もう遅いかもしれないが。
「その口調の方がらしいぞ。年相応っぽくてな。」
「....だって、だって!」
子供ってめんどくせぇな。
「おら、飴やるから友達と遊んでこいや。」
「....ひっぐ....ありがとう....」
お礼はちゃんと言うんだな。まぁ悪いやつじゃないらしいしほっといてこの国をさっさと出よう。タルタリヤに見つかったら面倒なだけじゃ済まない。ただでさえいつも会う度に戦いを頼まれるのに脱走兵という肩書きがついた今、大義名分と言わんばかりに襲いかかってくるに決まってる。
「じゃあな。」
「....友達、居ない。」
「あ?知らねぇよそんなこと。」
ほんとに心底どうでもいい。友達を作ることに意味を感じないって意味では完璧同意するが、欲しくてできないのは意味がわからん。作れよ。
「みんなと話し合わないし....」
「....はぁぁぁぁあ....んで、てめぇは何がしたいんだ?何して欲しいんだ?」
「私は刻晴、遊んでほし「断る。」」
ほらみたことか。結局クソめんどくせぇ要求された。もう付き合ってられ無い。勝手に遊んでろってんだ。
「ほら、保護者らしい奴来た....ッてめぇ、どういう了見だ?これ」
冷や汗が垂れる。目の前から歩いてきたのは長身と言っていい背丈を持つ角を生やした水色の女性。刻晴とかいう奴と俺を視界に入れた瞬間、俺の眼前につららが現れた。
「大丈夫ですか?」
「おい、聞けや。」
「....」
「街中でドンパチやる気か?あ?」
ほんとに意味がわからない。この少女に迷惑かけられて、あまつさえ実力者に命を狙われるし、俺は長居できない。ほんとに運が無い。アホほどない。多分髪の毛1本分ですら無いだろう。
「....どういうことですか?」
「あ?あぁ....こいつが遊ぼう?とか言うから断わってんだよ。」
「....それでなんで泣くんですか。」
「知らねぇよ。口調似合わねぇぞって言っただけで「....」ッぶねぇなッ!」
頬を氷が掠めた。つーっとした感覚とともに血が滴り落ちる。
それを近くした瞬間、氷の剣を1本具現化。瞬間的に踏み込んで相手の喉に押し当てた。
「喧嘩打ったのてめえだからな?」
「ッ、速いッ!」
剣を滑らすのとほぼ同時に相手は後ろに飛んだ。結果、相手は傷一つない。速いとか言っときながらてめぇの方が速ぇじゃねぇか。こいつらなんなんだ。一体....
「ッ....かん、う?」
「....なぜ....?」
まただ。また名前が頭に浮かんできやがった。そして反応を見るにそれは当たっている。どうなってんだ?頭いてぇな....クソ
「....辞めだやめ。俺は先を急ぐんでな。事情はそこのガキに聞けや。」
「....」
何も言わないのを了承と受けとり、俺はその場を後にする。
ああ、もうダメだ。死のう。
思考はただでさえネガティブだったのにも関わらず、今回の1件でさらに急降下した。
生きるのが辛い。もういいだろ。
「君、不器用だね?」
「....またガキか....」
「む、何それ!!私は立派なレディ!13の立派な女性!」
「うるっせぇな....どっか行けよ。めんどくせぇ」
「いや、ここ、私の家だし」
周りを見てみるとまぁそれはそれはまたまたデジャブ。もう驚かない。そして芋づる式に目の前の子供の名前も出てくる。
「あー、胡桃ね。ハイハイ。もう驚かねぇよ。」
「え?私ってそんなに有名?!いやぁん照れちゃう〜!」
くねくねと可愛らしく動く胡桃とか言う子供。ぶっちゃけクソどうでもいい。
のに....
ほんと、なんなんだこれ....
このテンション懐かしいな....
涙が1滴、流れる。枯れたと思っていたが案外まだ流せるものだと思う。
「その服装珍しいね?どこから来たの〜?」
「どこだっていいだろ。構うな。」
「え〜?まぁいいけど!うん。君に決めた!」
そう言うなり俺の右手を無理やり引っ張ってどこかに連れていこうとする彼女。ぶっちゃけこの歳で、この見た目、この性格でかなりの実力者だとわかる。簡単に振りほどけないことからそう予想する。
手を右にひねれば上手いこといなされ、左にひねればその力を利用して強制肩組み状態。背が低い彼女が脇の下に潜り込む形になって傍から見ると仲のいい子供2人の構図。
「離せッ!」
「もしかして照れてる?」
悪女かこいつは。このまま金銭要求されるんじゃないだろうな?払わねぇぞ俺は。年下13歳の美人局に引っかかるとか冗談じゃない。
だいたい、あどけないと言ったらありゃしないその風貌で言われたって照れようが無いだろこんなの。
「名前は?」
「は?」
「な!ま!え!」
「....なんで、ハマると思った?そんな罠。」
「ハンデ・カバル?」
「はぁ?!」
誰だよそいつ。そんなツッコミを入れそうになったけどすんでのところで堪える。これ以上深入りしたくないと言うのも本心だが、一番の理由はなんか癪だから。まぁ俺もガキということだ。
「んな事言ってねぇよ!なんでそうなるんだよ、消せ、今すぐその記憶!」
「ん〜、難しいなぁ」
「こいつッ....」
「それで本当の名前は?」
ウキウキしたような顔で、俺の腕の中からそう言ってくる幼女。毒気を抜かれるったらありゃしない。
「そんな顔しないでよ。なればなる。ギリだぜ!」
「どんな文法だよ。ちっとも意味わかんねぇぞ....」
「いいじゃん!璃月のことわざだよ。確か....あれ?どんな意味だっけ。」
「絶対嘘だろ。それ。....はぁ、凪だ。」
「ナレバ・ナル・ギリダゼ....わかった!」
「わかんなよ!ちげぇからな?!舐めてんのかこのガキ!」
「きゃー!怒ったー!」
そして逃げていく。
と思いきや、途中で足を止めていきなり思案顔になる彼女。
「かっこいい名前考えてあげる。」
「いや、要らねぇって。」
「かっこいいと男の子って元気になるんでしょ?」
「どんな理屈だよ。それ教えたやつ絶対バカだからな?それ」
「....ナルバ・ギルゼ、略してナギ!ナレバ・ナル・ギリダゼから文字った!」
もうすきにしてくれと言いたい。俺の事おもちゃにして笑うなら勝手にしろと。でも割とその名前を気に入ったのも事実で....ネーミングセンスはピカイチだと認めざるをえないだろう。癪だが....ほんとに心から癪だけど。
「ってことでナギナギ〜、あれ取って?」
「おい、初っ端から前提崩すな。ナギナギって誰だよそれ。」
きっと、多分、他人より当たりが弱いのはあいつに似てるからだろう。顔や風貌は似ても似つかないが....そのやかましいテンションがそっくりだ。フィルタに。
「あそこか、俺でも手が届かねぇぞ。」
「....」
胡桃の視線の先には帽子が木の上に引っかかっていた。
「ってかなんであんなとこにあんだよ。」
「高いところ面白そう!って思って登って降りたら帽子だけ取り残されちゃった。」
「馬鹿なんだろ?そうなんだろお前?!」
ほんとに何やってんだこいつ。能天気というかなんというか。昔のフィルタへのノリでツッコンでしまう。
「....元気になった!よしよし!」
「....」
....なるほど。俺を元気づけようとしたんだな。....馬鹿だけど。無駄だけど。未だに死んでもいいって考えは変わらんけど。
「お、おおう、一気に表情がネガティブに逆戻り....」
「うるせぇよ。おら、棒かなんか持ってこい。」
「はーい!!」
そう言っていえと思われる建物の中に消える胡桃。それを見届けて俺は一言発した。
「....よし。逃げよ。」
クズである。助けるフリしてそのまま逃げる。ぶっちゃけもうこんな所に留まる訳にはいかなかった。見つかるのは時間の問題で、一刻も早く遠くに逃げなければいけない。
「見つけたッ....!」
「....もういいだろ、甘雨....」
もうげんなりする。
それでも逃げるしか無いので踵を返してそのまま逃走のために足を踏み出した。
「待ってください!」
「待つわけねぇだろ、この勘違い仙獣ッ!」
はて、なんで死んでもいいと思っているのに俺は逃げているんだろう。
逃げるというのは生きようとする本能からなるものでは無いのか?なら俺は生きようとしている?この期に及んで?
「本当に待って....ッ!」
「....」
俺はなんなんだ?一回目は家族が怖くなって逃げ出して、2回目は家族が帰ってこなくて。いつも俺は1人で....なんなんだ、ほっとけよ俺の事なんか。なんで皆、俺に構うんだよ。
ああ、治りたての腹が痛い。
「追って....来んなよッ!『
「なッ....」
町外れに出た。周りに人はいない。ならもう遠慮する必要なんて....無い。そうだ、無いのだ。
だから....
殺さない程度に殺る....
「ッ....待ってください!謝りたいんですッ!」
「....は?」
宙に浮く15本程度の剣は音もなく粉々になり、雪のように降り注いだ。
「ナギナギ〜!持ってきた〜!」
「ちょ、おまッ!それ離せ!!こっちに走ってくんな!そんなもんどこから持ってきたクソガキッ!!!」
甘雨の後ろから走って駆け寄ってくる胡桃。その手には....なんか高そうな槍が握られている。
「これなら取れる?!」
「取れるから素人がそんなもん持つんじゃねぇッ!!!」
だが言うことを聞かないのが子供というもので、そのまま走っている。進行方向の先は途中から石畳になっているなどとは本人は気付いていない。
絶対転ぶぞあいつッ!
そう考えた瞬間体は前に出ており、反応が遅れた甘雨を突き飛ばして自身と位置を入れ替える。
「あっ....」
「言わんこっちゃねぇッ!!!!」
足がもつれた胡桃が持つ槍。それが眼前まで迫っている。避けるのはもう無理。
ああ、死ぬ。
そう思った瞬間、槍の穂先が視界から消えた。
「よっ、ほっ!」
「....は?」
さっきまで素人同然の動きだったはずだ。なのになんで槍を使って棒高跳びの容量で大ジャンプしてんだ?
もう理解が追いつかねぇ。
「いやぁ、危ない危ない。ナギナギが飛び出すから」
「てめぇ....」
才能、それを前にして凡人は何も出来ない。
そんなことないと思っていた。でも自分でも強い方だと思っている俺が、素人の天才に不意を付かれた。それが故意だろうとなかろうと俺には関係ない。
強くなれば失わないと思っていた。だから努力して、ここまで来た。でも強くても失うものは失うと知った。だから絶望していたのに....
まだ俺には伸びしろがある?
いや、考えてみれば当たり前だ。世の中には数多の技術という努力してきた人々の歴史がある。それを全部知ろうとしないでなんで俺は強さの上限に達したと思っていた?
なるほど、俺もガキってことか。思い込みでこうまで目の前が暗くなるものなのか。
まぁもうファデュイに戻る気は毛頭ないが....
「正座だ。正座しろ。」
「えぇ〜?」
「問答無用!!!」
どこかで腰を下ろして、強くなる場所を模索したっていいかもしれない。また大切なものができるとは思えないけども。
「えへへ....」
「....なんで笑ってんだ?お前は変態か?」
「いやぁ、なんか、怒られる姉と怒る弟みたいでいいなって....」
「逆だろ....それを言うなら俺が兄でお前が妹だ。」
「え?だってナギナギ小さいじゃん」
....よし。まずはこいつで氷剣の切れ味試してやろう。そうしよう。
「いい加減に....いい加減にしろぉぉおおおおお!!!!」
「えっと....」
こちらのやり取りを聞いていた甘雨が困惑の声を出すがそれは今の俺には耳には入らなかった。
叫び声が璃月中に広がる。
ああ、第3の居場所....ここになるかもな。
そんな予感めいた妄想が心の中を淡く駆け巡った。
はい。いかがだったでしょうか?楽しめました?んなわけねぇよな?!?!大体、この作品見てくれる人は蛍可愛い!蛍天使!蛍は俺の嫁!勢だと思うんすよ!何が悲しくてイチャイチャなしだけでは飽き足らず蛍が出てこないこの話を見るのか....
あー、蛍....ホタル成分が足りない....ホタル成分があぁぁぁぁ!!!!
ってな訳で、実は次の話、もう執筆半分以上終わってます。明日には出しますね?
猪狩の兄貴さん、ご感想ありがとうございます!
それではまたあした!今度は投稿するする詐欺にならないように頑張る!!
稲妻編の先、見たい?
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見たい!
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最近飽きてきたからいい
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とりあえず空救済まではやれ