近所のクールお姉さんポジの英雄が俺の前だけ甘えてくるんだが? 作:だけたけ
遅くなりました。もうね、2日ごとに投稿は諦めました。仕事があったらそんなの無理です笑
という訳でナギの悲痛な叫び、ご覧下さい
「は?....おい、嘘だろ?」
心が痛い。
生みの親が私に誤魔化せと言った。邪眼を奪われたと言えば元素が使えないことにも説明が付くと。
記憶はある。当然だ。私は本当の私を取り込んで作った特注品らしいから。だけど全部偽物。私は....
私は彼に殺されるべき存在。敵なのだ。
「凪....ごめん。」
「ごめんで済むかよッ!ほんとッ....ふ、ふざけんなッ!!!」
嗚呼、顔をそんなに歪ませて....そこまで
理解してしまった。私は彼の前には絶対に立てない。立ってはいけない。彼を傷つけ、あまつさえ彼が親愛を抱く相手を汚してしまった。
「氷元素の制服もそういうことかよッ!」
「....うん。私の元は氷元素のトリックフラワー....だから。」
「このッ!」
私に掴みかかろうとする彼を蛍が静止する。
あのね、その人は凪に冷たくしてたんじゃないんだよ?ずっと警戒してた。多分私の正体がバレてたんだ。
そう言いたかった。それでも口は動かない。もう何言っていいか分からない。どうすればいい?....いや、これも聞けない。聞けるはず....ないよね....
「ナギ、彼女に敵意は無いよ。」
「蛍もわかってたんだろ?!なんで言ってくれなかった?!」
罪悪感はある。申し訳なく思ってる。死んで詫びれるならそうする。そんな覚悟をして来た。でもなんだ、この気持ちは。
「裏でほくそ笑んでたのか?!笑ってたんだろッ?!お前が俺らを騙して見事に踊ってるのをッ!!!」
「ッ....」
「そら嬉しかったさ、ずっと会えなかった。死んでたと思ってた家族にあえたんだ。それでも、それでもこんなのってないだろッ!!!」
目に見えて肩が震えている。泣くのを我慢しているのだろう。それは彼女の前である意地か、それとも弱さを見せまいとする男の性か。
ああ、強い。強いが....弱い。昔と変わらない。でも今は彼を見てくれる人がいる。そこに本物の私も偽物の私も要らない。
息が詰まる。どれだけ吸っても体はどんどん酸素を求めてやまない。
「ッ....だから....だからッ」
ダメだ。抑えろ。私は言える立場じゃないでしょ?
凪は私の弟じゃない
やめろ、愛おしく思うのを辞めろ!今すぐ!
「ああッ?!何か言ってみろよ!この偽物がッ!!!」
「ッ....ぁぁ....」
何かが割れた気がした。どこかで私を受け入れてくれるなどと思っていたのかもしれない。厚かましいにも程があるよ、私。弟に甘えてどうす....いや、弟じゃないッ....こいつは弟じゃないッ!!!
辞めろ!思い出すな!笑わないでよッッ....そんな凪の顔、思い出したくないッ....やだッ
やだやだやだやだやだやだッ!!!!
「私....わた、し....」
「俺の、俺の気持ち返せよッ!!!!」
「私だって....」
「ああ?!」
ダメだ。出すな。こんな感情。そんな言葉。
「なんッ....泣いてッ....な、....泣きたいのはこっt「だからッ!!!!こんなこと、やりたかった訳ないじゃんッ!!!」ッ....?!」
「私だって大切な弟を傷つけたりしたくないッ!私だってッ....私だって....ッ凪の姉だッ!!!」
息がキレる。喉が痛い。
嗚呼、出てしまった。吐露してしまった。こんなこと、誰も望んでないのに。こんなこと、凪は聞きたくないだろうに....
もう、いいや。どうせ死ぬ。凪は剣を向けるだろう。なら、今ここで全部を....
「全部知ってるッ、私にちょっかいかけられて困りながら嬉しそうな顔するのも、それでやり返しする時、楽しそうに笑うんだッ!!忘れられるわけないじゃんッ!忘れられないに決まってるじゃんッ!!!私だって、凪に救われたうちの一人だよッ?!」
「そ、それはお前じゃ、ッ!」
「私だよッ!だって、こんなにッ!こんなに辛くて、こんなに胸が痛くて....こんなの嘘なわけない、嘘だと思いたくないッ!!!」
「ッ....」
ああ、どんどん出てくる。もう止まらない。1度漏れ始めた本音は止まらなくなる。
「私だって会えた時は嬉しかったよッ!騙したくなんてなかったよッ!ちゃんと事情話して受け入れて欲しかった!当たり前じゃん!!!」
「だ、だったらなんでッ」
「全部凪たちのために決まってるッ!近くに博士が居た!そこでバラせる訳ないじゃんか!!!」
戸惑いの色を浮かべて居た凪の顔が少し緩む。
違う。許して欲しい訳じゃないんだよ。そうじゃないんだ。ただ、否定しないで欲しかった。偽物の私でも凪を愛してることを本人にだけは否定して欲しくなかっただけ。
「ぜ、全部お前の嘘だッ!こんなの、」
「死んでッ....欲しくなかったから....ファデュイを抜け出してまであの攻撃を教えにきたんだよ....」
顔を顰めないで。簡単なことなんだよ。私は偽物だけどフィルタで、本物と同じく凪を弟として愛してる。だから足を怪我してまで抜け出して、次の偽物のフィルタが作られて、そして....胡桃やジンさん。アンバーさんを攫った。私は、見捨てた。この3人を見捨てて凪を選んだ。
ダメだ。落ち着け。これ以上言ったら凪が正しい判断が出来なくなる。私を殺すという正しい判断が。
「....ねぇ、凪、約束したよね?」
「....は?」
「あの日の夜、2人でテントの外で....」
これは説得じゃない。きっと本物には伝わらない。それでもこれは私なりの贖罪で、彼にまやかしでも会わせたかった。姉に会って、ずっと話したかったであろう事を1部でも吐き出して欲しい。
「ねぇ、凪。こんな歪な存在になったけど....帰ってきたよ?」
「ッ....」
彼のダムが決壊した。もう抑えられないというように、出会った頃と同じように。子供みたくみっともなく。
「彼女の記憶を持ってる、私は彼女の....フィルタ・アベリアの言葉を伝えられる。」
「....」
ナギは黙ったままだ。ただ静かに顔を俯かせて泣いているだけ。それは彼にとって重大なことで避けては通れないもの。それを私が作ってしまったことは本当に申し訳なく思うけど....それでも私は....
「ねぇ、凪。私を殺して?」
「その声でッ、んな事喋んじゃねぇッ!!!本物はどうした?!生きてるんだろ?!なぁッ!」
私は首を振った。彼女は間違いなく死んでいる。私が取り込んだからでは無い。取り込んだ時には既に死体だったからだ。
「うぁぁああああああああぁぁぁア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ッ!!!!」
「ナギッ!」
膝の上にいる蛍のことなどお構い無しに剣を抜いてこちらを睨みつけて斬りかからんと迫ってくる。
そう、それでいい。
「ッ....なんで....ッ、なんで笑ってんだよッ!」
「ぇ....」
自身の頬に震える手を置く。しっとりと湿った感覚が伝わっわてきた。
「....うん....ごめんね?」
「....本当に死んだのか?」
「うん。私は死んだ。」
覚悟は決めた。ねぇ、凪あと2センチだよ?あと2センチ剣を進めるだけで私の首に食い込む。
「ごめんね、本当に、ごめん。」
そう言ってから私は凪の剣を自分の首の方へと押した。
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....最悪の気分だ。本当に最悪だ。なんなんだこれは。
彼女と同じ仕草、彼女と同じ言葉遣いに声色。彼女と同じ
「はぁ....」
「ナギ。」
「蛍か....ごめんな。見苦しいもの見せたと思うけど....」
首を横に振って隣に腰を下ろす蛍。その横顔は夕日に反射していて何処か憂い顔だ。原因はわかっている。俺の事だろう。
「ごめんな、1人で行かせて。どうだった?」
「ジンとアンバーは無事。胡桃はまだ分からないけどモナに占ってもらったらここまで歩いて帰ってくるって。」
そうか、と一言返してそして無言。気まずいとは思うけどそれを1番感じてるのは蛍の方だ。俺がいちばんしっかりしなきゃなのに、守るべき相手を不安にさせてどうする?
「....ナギはさ、なんでフィルタさんのこと殺さなかったの?」
「殺さなかったんじゃないよ。殺せなかったんだ。」
何を躊躇っているのか自分でも分からない。あいつはフィルタを汚した張本人で、博士と同じくらいに憎くて....でも....
「憎くいけど、それ以上にあいつがフィルタだったんだよ。」
「....なるほどね....」
どれだけ揺さぶっても、どれだけ怒鳴りつけても終始ボロを出さなかった。違和感など微塵もなかった。当時より伸びた身長や見た目のこと以外には何も無かった。
「....」
「....蛍?」
右手を見れば蛍の手がその上に重なっている。その手は剣を握っているとは思えないほどスベスベしたもので、柔らかくて、剣だこなどひとつもない綺麗なもの。
「私はね、思うんだ。」
「....」
「フィルタさんはきっと仮面を付けきれなかったんだよ。」
「ッ....」
そうだ。あの時、博士が偽物だと言った時、フィルタ自身が否定すれば良かったんだ。そしたら俺だって信じた。
「私は仮面を付けれた。でもフィルタさんは付けれなかった。だからずっと手で持って、腕が疲れたら外れかけて....」
「....」
「ねぇ、私を助けてくれたのって私だから?」
「....ああ、そうだよ。」
少しぶっきらぼうに答える。緊張してた頃とは大違いだ。短い間だけどそれでもここまでになれた。成長している。
「....私はあのやり取りを聞いて思ったんだ。このトリックフラワーは悪い人じゃない。ちゃんとナギのことを弟として大切にしようとしてるって。」
「どうせ命乞いしてただけだ....」
「命乞いなら、最後、剣を自ら押し込むはずが無いよ。」
ちゃんと見て?とそう続ける蛍の顔は安心させるもので、あれからずっとざわついていた心の中の何かが少し無くなる気がした。
でも、やっぱりしこりは残る。疑問は募る。頭の中であれは敵じゃないとはわかっているのだ。でも心は納得してくれない。感情が先立って理性が置き去りになる。
じゃあどうする?逃がすか?いや、論外だ。悩む必要も無い。答えはNOだ。アビス教団には同情する余地がある。ヒルチャールには暗い過去がある。でも....トリックフラワーには何も無い。理由付けなんて出来るはずがない。
いや、そういう問題じゃないだろう?あれは偽物で、本物は死んでてッ....
「クソッ....」
「やっ....とッ....着いたぁ〜!」
「胡ねぇ....ッ大丈夫か?!」
そういえば歩いて帰ってきていると言っていたなと思い出して後ろを振り向くと真っ赤に染った腹を抑えながらこちらに歩いて来る胡桃の姿が見えた。
なんで気付かなかった?俺がこうしたんだろう?!余裕がなかった?!そんなの言い訳にもならねぇだろ!ここまで歩けたのが奇跡だ....死に恐怖がないからと言って苦しくないわけが無い。
偽物の姉に執着して本物の姉を疎かにして、2度も死にかけさせた。
「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ッ!」
「ナギッ!やめて!!そんなことしても、意味なんてないよッ!!!」
俺はもうどこにも行き場のない感情を地面にぶつけるしか出来なかった。溜まりに溜まった何かを拳に乗せて何もかもお構い無しに力いっぱい腕を振る。
「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ッ!無力だッ!俺はッ....無力だあああッ!!!クソッ!クソクソクソッ!!!!」
後ろから羽交い締めにしてくる蛍。だがそんなもの関係ない。もう何もかも終わりだ。俺に関わったヤツら全員死にかける。フィルタなんて死んだッ、サフィーラだって俺の目の前で....
「ナギッ!!!」
「ッ....は....は?何してんだ蛍ッ!おい待てッ!辞めろッ!!!!」
「辞めるのはそっち。じゃないとこのナイフ、このまま私の喉を刺すよ。」
「ッ!!!!辞めた!やめたからッ、頼む、お前を失ったらもう....俺はッ俺はッッ....」
震える手でナイフを自身の首元に向ける蛍。怖いだろうに、必死にこうまでして俺を止めた。ああ、みっともない。惨めだ。俺は....何してるんだ?
ああ....蛍の望んでることはわかってるよ。もうそれしか方法は無いんだろ?聡い蛍の事だ。きっとそれが正しいのだろう。
でも、それを決断するのには時間が欲しい。とてもじゃ無いが今の俺にその決断は出来ない。
また逃げるのか?
また後悔するのか?
いや、逃げてもいいだろう?だって時間はあるんだから。後悔するかもしれないけどその時はその時だ。うん。
「バーバラ、居るんだろ?....」
「ぇ....ば、バレてた?」
外に出てきた瞬間にわかっては居た。
「胡ねぇ、治してやってくれないか?」
「う、うん、わかった....」
そう言って後ろで寝っ転がって荒い息を吐いている胡桃に駆け寄っていくのを見て蛍に向き直る。
「わかった。わかったよ。けど、さ....」
「....うん」
「ちょっと、こうさせて....」
思えば初めての蛍主導のハグだ。いつもは俺が上で、俺の胸に蛍の顔を納める体制。でも、今は。今だけは違う。俺が蛍の胸に納まっている。やましい感情など何も無い。
ただ....欲しかったのだ。蛍の温もりが。蛍の愛が。俺の傷ついた心を埋めて欲しい。だから....
「よしよし....よく頑張ったね。」
もう少し、この優しさに溺れてもいいだろうか?
答えなんてかえってこないけど....きっと、
また立ち直る。
強く、なりたい。ずっと俺は強いと思っていた。でも、弱かった。大切なもの全部取りこぼしそうになるほどに俺は弱かった。
蛍、愛してる。
胡ねぇ....感謝してる。
フィルタ....受け入れたいよ....ッ....
そうだよ、俺は、本音は受け入れたいんだ。でも、裏切られたから、だから変なところで意地になって、もうわけわかんなくなって、逃げて拒絶してッ....
ああ、なんかスッキリした。整理したら簡単な事だった。
俺は....
__________________________
「フィルタ、俺決めた。」
「うん....」
空気が張りつめる。フィルタの様子はさながら死刑を待っている囚人だ。立場的にもそうなのだが....まぁ今から楽しみだ。
何がって言うと.....
「俺の首持ってけ。フィルタ。」
「うん....はい?えっ、と....ちょっと待って、聞き間違い?」
「違うぞ。聞き間違いじゃなく、俺の首持ってけって言った。」
「なんで、そう....なるの」
俺は腹を括った。
姉としてはもう見れない。だからといって冷静になった今、敵とも思えない。ならば折衷案だ。
彼女との関係性を姉ではなく他のものに変えればいい。
そう、要は俺の中で引っかかっていたのは裏切られたということ。それを無かった事にしてしまえばいいのでは無いか?と。
「お前は記憶を持ってるって言ったな?」
「う、うん。」
「正直、今、俺はフィルタを殺せない。」
敵と認定していたさっきでなくては無理だった。そして相手も敵意は無い。
「だからフィルタ、俺の首、持ってけ」
「出来るわけないじゃんッ!さっきの話聞いてた?!」
「聞いてたって。だから言ってんだ。今ファデュイの中にはもう1人の偽物のフィルタが居るんだろ?ならそいつと入れ替われ。」
「問題はそこじゃないッ!!!」
わかってる。フィルタは俺を殺せない。
「ああ、わかってる。だから俺はお前を殺せないけどお前を殺す。」
「....どういうこと?」
まぁそんな反応になるよな。わかってた。
「髪を染めろ。髪を伸ばせ。容姿を変えろ。」
「....」
「何も整形しろって言ってる訳じゃない。雰囲気が変わるだけでいい。....ああ、それと....」
1呼吸おいて、この中で一番大事なことを言う。その準備をする。
「元の俺の順位に、ファデュイ執行官....ファトゥス第0位まで上りつめろ。」
「ッ....なん....だってそれはッ....」
「フィルタたちを探す間に上り詰めた俺の順位。今、そこは空席になってるはずだ。ナンバーレス....番外の強者。その地位をお前にやる。」
「ッ....」
フィルタは正しくそれを理解したようだった。俺の過去をお前にやると。それがどれだけ苦しいものなのかも。理解したのだろう。これでお前の罪を許すと伝わったはずだ。
「全て捨てろ。全部、俺の姉であった過去さえも。」
俺からしたら重過ぎるほどの処分。だけど彼女からしたら救いの手以外に他ならなかった。
だから、フィルタはその手をとったのだろう。
「....あり、がとうッ....」
掠れた声で、言うフィルタの顔は、涙で濡れていた。
はい。どうだったでしょうか。
いやぁ....うん。ナギだってわかってたんだもんね。元のフィルタは居なくて、今は目の前のトリックフラワーがフィルタだって。
ここで暴露。普通の改造トリックフラワーは人の姿になるだけで記憶や言葉を喋ることは不可能。しかし、改造トリックフラワーに人の頭を食わせた時、記憶は模倣するわ声帯は手に入れるわでもうほぼ本人になる。
ってな設定です。まぁ無理やりなのはご愛嬌。ちなみに当初のプロットではフィルタなんてキャラ出てきてもいません。苦肉の策ってやつですね。ほんとに....ナギが好き勝手に動くから....
感想、猪狩の兄貴さんあざました!もう今ではあなたが感想くれなきゃやってられません。もっとほかの人もくれていいんだよ....?って強請ってみる。
ではまた次回。
稲妻編の先、見たい?
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見たい!
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最近飽きてきたからいい
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とりあえず空救済まではやれ