近所のクールお姉さんポジの英雄が俺の前だけ甘えてくるんだが?   作:だけたけ

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えー、皆様、お待たせしました。

この世界でいちばんのクソ二次創作を書くだけたけでございます。

えー、気分が乗らずに筆が爆速ならぬ爆遅になっていました。

15000文字くらい書いたから許して欲しいなぁ....なんて....

と、というわけで本編どうぞ!


26.5話 《if》天使との未来の話。その2

「さてと....蛍?」

「....」

 

優しい口調で僕は自分の妹に問いかけた。

 

「これでよかった?」

「うん。ありがとう」

 

違和感はあった。あんなにも相思相愛、四六時中いちゃついているこの2人が他の異性に目移りするわけが無いと。

 

本当はわかっていたのだ。正直まだナギとの関係は長くないし全幅の信頼を持っていると言えば間違いにはなるが、こと妹のことに関しては人生で支えにしてきた夢でさえ捨てられる程に惚れていると見れば分かる。

 

そして問題は蛍だ。

 

いつも冷静を装って居るけれど気づけば彼の姿を視線で追っているし、目が合えば毎回頬を染めて彼にしか向けない微笑みを浮かべて笑うのだ。

 

もちろん最初の方からそうだった訳では無いのはわかっている。ただ良くも悪くもナギは隠し事はするけれど裏表は無い素直な性格で思ったことはふざけながら全面に出す。そんなだから蛍にも少なからず影響があったのだろう。

 

そして、命を懸けあって旅をしてきた弊害か....自身のことよりも相手のことを何よりも優先してしまう。

 

そんな2人が相手の嫌な事、それも浮気なんて明確な地雷を踏むわけが無い。

 

「理由は?」

「...最近ね?ナギがつまらなさそうなんだ。」

 

そんなことは無いだろう?と声に出しそうになった。新婚生活。こんなに愛し合っている相手との結婚だ。人生の新天地とも言えるような状況。苦労はありこそすれ、つまらなさそうなど考えもしなかったしナギからはそんな気配など1ミリもなかった筈だ。

 

「あはは...多分、私にしか分からないと思う。でもね?確信があるんだ。だって私もそうだから。」

「蛍が....?」

「うん。私たちは旅をしながらお互いの好きを大きくしたんだよ。だから、いきなり旅がなくなって、刺激がなくなってさ....なんて言うか....」

 

きゅっと口を結んで言葉をとめた。

 

なるほど。だいたいわかった。多分2人は....まぁ主にナギだと思うけど、旅に依存しているのだ。刺激のある毎日を経験して、常人には耐え難い道のりでも慣れてしまえばそれが無くなれば寂しくもなる。

 

「だから、ナギに刺激を....ってこと?」

「まぁ....」

 

でも納得は出来ない。他の方法だってあったはずだし、だいたいこじつけの理由感が所々から滲み出ている。

 

だからといって素直には話さないだろう。となればだ。少しカマをかけてみるしかない。

 

「ふむ...なるほど....つまり蛍は嫉妬したと。」

「うぇえ?//」

「当たりだね?」

 

肩がビクッと震えてそのまま顔を真っ赤にして蛍はこちらを睨んできた。

 

その行動がもう答えを言っているようなものだ。

 

言っておくけど、僕だって英雄の兄、アビス教団の王子だ。洞察力と勘は2人に負けていない。

 

「それで、本当は?」

「いや、本当だって。本当に刺激を....」

「じゃぁもうひとつの理由は?」

「空...明日の晩御飯抜き。」

 

それは嫌だなぁ。まぁそれはそれとして抵抗しようとも可愛い妹の隠し事を暴くことに躊躇いなど生まれない。

 

だから僕は意図してニコニコ顔を崩さずに蛍を見つめ続けた。

 

「....」

「....」

 

沈黙が続く。無言の応酬。

 

その空気を崩したのは、折れた蛍の方だった。

 

「....ぃ....ら」

「ん?」

「か....構って....くれない、から....」

 

ああ〜....

 

「ぷふっ....な、なるほどなるほど!ふふふふっ....あははっ!」

「なっ///笑わなくてもいいじゃん!!///」

「い、いや....べ、別に....ふっ.....」

 

割と手加減無しで胸あたりを殴ってくる蛍に意を返さず僕は5分ほど笑いをこらえるのに全神経を使う。

 

そして収まってきた頃には頭から湯気が上がり、涙目になった蛍がむくれながらこちらを睨んで来ていた。

 

「もう空なんて知らない。」

「ご、ごめんって....」

 

笑いは収まったものの、まだニヤニヤは止まらない。これはもう話題を変えないと収まらないだろう。でも変える気はさらさらない。蛍には悪いけれど少し踏み込まさせてもらう。

 

「原因は詩ちゃんのこと?」

「....うん。い、いや、あの子は悪くないんだよ?甘えたがりなのはしょうが無いし、将来反抗期になったらナギは嫌われるだろうから今のうちにいっぱい可愛がりたいのもわかるんだけど....っ!」

 

理解はしているけど納得はできない、か。まぁナギは器用では無いからそこら辺、同時に構うなんてことはできるはずないよね。

 

「コレイから聞いた時は一瞬頭真っ白になって店の外に出ちゃったけど、大方、ナギがなにかやったんだなってすぐ冷静になったし....その後、コレイに改めて聞いてみたらナギが『愛しい人がひとり増えた!』とか自慢してたらしいから....十中八九、詩の事なんだけどさ....」

 

でも、それはそれとして複雑なのだろう。家事はしてくれるし子育てが起因する体調も気にかけてくれている。大事にされていない訳が無いとわかっていたとしても、本音としてはもっとイチャイチャしたいのだろう。

 

「うん。だいたいわかった。つまり、意趣返しという訳だ。」

「そ、んなんじゃッ....ない、と思うけど....」

 

しりすぼみになっていく言葉。少し微笑ましく思えて協力しようと僕は心に決める。

 

「ただいまぁ〜旅人〜!」

「パイモン?」

「ん?顔真っ赤だぞ?どうしたんだ?あっ、もしかして!」

 

嫌な予感がした。咄嗟にパイモンの口を塞ごうとするがもう間に合わないのは分かりきっている。

 

口が開いてそのまま地雷という名の音が部屋に響いた。

 

「ナギに愛してもらったのか!!」

 

空気が凍った。

 

さっきまでの高揚感と微笑ましさはどこへやら。僕と蛍は頭に冷水をかけられたように固まり、周囲の空気は冷えていく。

 

「空、ごめんね?ちょっとまってて?....パイモン。愛してもらうってどういうこと?」

「オイラにもよく分からないんだけどな?一昨日の夜、旅人が小さい声で『最近、ナギとしてない....愛して欲しいな....』って言って「パァイィモォンッ!!!!!」ぴぃっ?!な、なんで怒ってるんだ旅人?!?こ、怖いぞ?!?!」

 

蛍が掴みかかって容赦なくパイモンをもみくちゃにしていく様子を見て僕は逆に冷静になった。

 

分かりきっていたことじゃないか。子供さえいるんだ。そういう行為をしてない方がおかしい。というか詩ちゃんがいる時点でしてなければ辻褄が合わなくなる。

 

でも、でもだ。

 

正直、妹のそういうの....兄としては聞きたくなかった。シスコンとかそんなの全部どうでもいいとしてもやっぱり聞きたくはなかった。

 

「....」

 

ちょっと浮かんだ悪い思考を打ち消すように近くのナギが飲んでいたであろう飲み物を一気に飲み干す。

 

「あっ、空!それ....って遅かったか....」

 

まぁ、でも仲睦まじいようで何よりだ。今回の件でナギに制裁を加えることはほぼ確定したけれど。

 

そんなこと、些細なことだよね?

 

 

__________________________

 

 

 

「ど、どうしよう!旅人に浮気してるって言っちゃった....」

「何してくれてんのお前ッ?!?!」

 

阿鼻叫喚。人畜無害な俺が虐げられているこの現状に異を唱えたい。

 

ああ、終わりだ。現実逃避したいけどあいにく目の前のやらかしてくれちゃった子の存在がそれを許してくれない。

 

一言でまとめると絶望。そんな感情に任せて彼女の肩を掴んで前後に激しく揺らす。

 

「訂正しろ!今すぐに!じゃないと空に俺が殺されるッ!!」

「わ、わかった!わかったからちょっとはな、離し「騒がしいな、どうし....たの....」」

 

ここで登場ティナリ先輩。さぁ始まる予感がしてまいりました!俺の勘は言っている。これは拗れると。

 

さてさてさて!衝撃のあまり固まってしまった俺の体、先輩の言葉を待つしかないこの現状!さぁ耳を澄ませてみましょう!

 

「....浮気?」

「こんちくしょうがあぁぁぁあッ!!!!」

 

コレイの肩を掴み、あまつさえそれを激しく前後に振りながら絶望やら焦りやらで顔が近くなっていた。この状況、普通に他人から見たらイチャついているようにしか見えないことに今更ながらに気づく。

 

だが現状は全くの真逆。普段の俺なら冷静に否定できただろう。だが今の俺は焦りに焦っている状態。

 

結果....

 

「ち、違ぇしッ!」

 

言い訳のような口調になってしまった。

 

詰みです。将棋かな?逃げ場が次々に埋められて行く。

 

人生を、少なくとも寿命が尽きるまでは苦楽を共にすると誓ったのに.....こんな誤解で終わってたまるか。

 

「コレイのことなんて好きじゃないッ!勘弁してくれッ!」

「ナギ、君を想っていながらも旅人のために身を引いた人にそれは無いんじゃないかな?」

「う、うぐっ....そ、それはその通りだッ!....って俺の事好きだったの?!?!ごめんッ!友達としては好きだぞ?!」

「やっぱり浮気?」

「どうすればいいんだこれッ?!」

 

ティナリ、お前絶対楽しんでるだろ?!お前の賢さならこれがそうじゃないことぐらいすぐわかるはずなのに俺をからかって楽しいのだろうか?

 

「愛しい人が1人増えたとか言うから....あと全然好きじゃないし」

「それは俺の娘だッ!!!ふざけんなよ?!娘を愛したら浮気とかどこの理屈だ!あと、自意識過剰っていう傷口をえぐらないで?!」

「うっ....ごめん....」

「はいはい。とりあえず大体はわかったから落ち着こうか?」

 

こうなってるのあなたのせいもあるんですけどね?!

 

というかこれ、もう俺の力だけじゃ何も出来ない気がする。だいたい、なぜ俺がこんな目にあってるんだ....?完全に流れ弾だろ。俺悪くないじゃん。

 

コレイが勘違いした。そのまま蛍に伝えた。蛍がそれを信じた....

 

ん?信じた?

 

いや、状況まとめてみると割と違和感ありまくりだな。普段思慮深い空が勘違いの線を考えてなかったのはおかしいし、そもそも人から聞いたところで蛍は俺が浮気したなど信じないだろう。現場を見ない限り。

 

つまりだ....

 

これ、全部フェイク?

 

「馬鹿らし....帰ろ....詩と蛍抱きしめて寝よ。もう疲れた....」

「だ、大丈夫なのか?」

「大丈夫だいじょ....ぅぶうう?ッ!?!」

 

その瞬間だった。テントの出入口の布を開ける体勢で話をしていた俺の背後から不穏な空気を感じ取る。まるで俺に恨みでもあるかのような殺気が。

 

殺気なんてあるの?ってリアル思考の人は思うだろうが、これは戦闘経験による勘と言い替えてもいいかもしれない。その勘が避けろと叫んでいた。

 

身を真横に動かしてその場から離脱する。その瞬間....

 

「ぬぉあっ?!」

 

すぐ真横をヒュンッという風切り音とともに何かが早い速度で通り去っていった。

 

「ここに居たんだ。ナギ?」

「空がさっきよりもガチギレしてらっしゃるんだけど?!?!」

「ん?ああ、ごめんね。僕は冷静だよ。至って冷静だ。」

 

嘘つけ!という言葉は出てこなかった。なぜなら今俺の目は地面に釘付けになっているからだ。

 

「えぐれてるじゃねぇかッ!おま、マジで殺すつもりだっただろ!!!」

「それじゃぁ蛍が悲しむじゃないか。大丈夫。半殺しで許してあげるよ。」

 

大丈夫じゃねぇし半殺しって今どきの中学生でも言わねぇよ?!

 

「う、浮気の件は誤解なんだよッ!ほら!コレイッ!早く説明しろ!!」

「む、無理無理無理っ!」

「使えねぇッ!!!!!」

 

もう阿鼻叫喚。何を言っても話通じないし、この場の希望であるコレイはビビりまくっている。お前レンジャーだろ?!戦闘員だよな?!と思いながらも視線は空に向けていないと普通に殺されそう。

 

そう、俺も十分にビビっていた。

 

 

「浮気の件はどうでもいいんだよ。」

「....は?」

 

頭の上にはてなマークが浮かんでくる。

 

「蛍が2人目を欲しそうにしてるんだ。」

「は、はぁ....う、嬉しい限りですね。」

「そうだろうそうだろう。でも僕はね....」

 

1呼吸おいて件を振り上げながら最後の一言を空は口に出した。

 

「僕の妹と君がそういうことをしているのに耐えれないんだよ。」

「子供もいるのに今更過ぎないッ?!?!」

「毎回イチャついて愛を確かめ合うのは微笑ましいと見ることが出来る。それくらいの信用は持っているつもりだよ。」

 

雰囲気が変わる。でもそれは俺の言葉で元に戻ってしまう。

 

「お、おう?なんかロクでもなさそうだけど一応聞く。」

「でもやっぱり嫌なんだ」

 

い、一旦、ここ離れてやらない?俺が借りたテント、ボロボロになっちゃうから。頼むって。というかいい加減慣れてくれ。

 

「わかるけどもッ!あんな可愛いすぎる妹さんがいれば心配で猫可愛がりするのもわかるけどもッ!」

「僕がいない間に君みたいな相手が蛍に出来て良かったと心から思っているよ。それは本当だ。君は誠実だし、悲しませるようなことはしないって信じれる。」

「も、もうオチ読めてるから辞めない?」

「でも嫌なんだ!」

 

うん。わかった!わかったよ?

 

もう頭の中がめんどくさいで覆い尽くされそうになっている。頭を振って何とか耐えているけれどやっぱりそれでも....うん。普通に辞めて欲しい。義兄さんがこんななの普通に見られたくない。

 

「ほらァァァァ!はい!シスコンッ!しょうが無いけどやっぱり最大の障壁は家族でしたね!結婚認めてくれたじゃん!子供出来た時は喜んでくれたじゃん!!」

「結婚は異界の僕らとこの世界の人で子供なんてできるはずないと思っていたから認めた。いざ子供出来た時は蛍の幸せそうな顔で全部吹き飛んだ。」

 

でも体は正直で俺も言いたいこと言ってしまうのだ。これはもう収集つかないぞ....

 

というかどんだけ好きなの?!どんだけ自分の妹好きなの?!人のこと言えないけどやっぱりこの兄どこかズレてるって!好きの大きさは負けねぇぞ?!

 

「だから頼む。わかっているんだよ。ナギに非は無いこと。でもさ、一撃だけでも受けてくれないか?」

「やだよ?!?!普通に一撃で死ねるが?!」

 

未だにピンチは去っていない。むしろなんか狂気を見て混乱している時点でこちらの方がデバフかもしれない。

 

こんなの空らしくない。だいいちこんな感情が先走って行動に移すことなんて無かったはずだ。いくらシスコンといえど俺に対してもここまでの反応は無かった。

 

「....もしかして」

 

スンスンと斬られない程度に近付いて鼻を鳴らす。するとほのかに香る柑橘系のいい匂いともうひとつの独特な匂いがした。

 

「....お前、俺の酒飲んだな?」

 

全ての謎は解けた。理性でいつも納得していたものが酒に酔って外されて感情が表に出てきている。

 

つまり、これも本音ということに....

 

なるほど。これは俺が目を逸らしてきた問題か。みんな納得しての結婚と思ってたけど勘違いだったみたいだ。

 

いうなればこれは俺の責任....俺がやり残した蛍と夫婦になる前の最後の仕事だ。

 

「....話し合わないか?空。お前の本音が聞きた「はぁぁぁあああっ!!」空ァァァァアアアアアッ!?!?!」

 

いきなり、凛とした威勢のいい声が聞こえてその瞬間空が地面にズボッと埋まる。そして頭からは見事なまでの丸いタンコブと煙が立ち上っていた。

 

「いや、コメディかよッ?!リアルで初めてなんだけどこの状況?!」

「す、凄い....さすが旅人....」

 

その感想は違くね?!あ、いや、間違ってはないんだけどさ?!ちょっと整理のためにお口チャックして欲しいかなぁ....お願いだから!!

 

「....はぁ、はぁ....いきなり走り出すから何かと思えば....ナギ、怪我ない?」

「お、おう....え?」

 

あまりにも普通の態度。むしろ慈愛の目で心配してくる蛍の姿。俺の予想は正しかったらしい。蛍はやっぱり浮気をしてたなんて信じていなかった。

 

「いや、怪我してるじゃん。強がるなよ」

「コレイ?!ちょっと黙ろうか?!」

 

頬のちょっとした切り傷、なんて事ないのに、というかこれで強がるとか言ってたら旅なんてできません。

 

というかカッコつけポイント潰されたのに少し文句を言いたい。けどそれは両頬に触れた蛍の柔らかい両手に阻まれる。

 

「ナギ、ごめんね....大丈夫?痛くない?」

「....女神ですか?」

「違うけど」

「なら、天使ですか?」

「....まぁ....その、ナギの....天使ではある、かも?」

 

顔真っ赤にして言う蛍。もう抱きしめたくなる。というか抱きしめた。

 

「んぅ....強いよ、ナギ。」

「あ、悪い悪い....」

「....後で空は説教だね。」

 

俺の腕の中から手を伸ばして頬に触れながらそう言う蛍。もう説教とかどうでもいいです。もう幸せすぎて全てがどうでも良くなりました!

 

「じゃあ俺は蛍に説教かな?」

「うっ...じゃあ私はナギに説教。」

「何故に?!」

 

プクっと頬をふくらませながら言うその姿。可愛い怒り方の時は本気じゃないって過去に学んだ。

 

泣かれた。俺の軽率な言動で蛍を泣かせてしまった。俺に罪があろうとなかろうと関係なかったのだ。そこに気付いてないあたりまだ俺はガキなのかもしれない。でも今回でまた2度目の学び。女の涙には勝てないと言うが、実の所、子供じゃあるまいし蛍も大人で、なんなら俺よりも年上で。そんな人が普通のことで泣くはずないじゃないか。それなりの理由があって、まぁ結局のところ....

 

「蛍は不安だったんだな?」

「あ、それは全然無い。」

「あるぇ?」

 

えっと、おかしいな。

 

シリアスは?あの悟りを開いたみたいな恥ずかしい思考の数々は俺の恥で終わるんですか?

 

「でも、まぁ嫉妬はしてたかな。」

「嫉妬....そりゃまたなんで」

「詩に構ってて私に構う時間が少なくなったから。」

「おっとぉ?」

 

なるほど、つまり自分の娘に嫉妬してたと。でも普段貴方も俺のことより娘の方に行きますよね?そこんところどうなんですか?!お、俺だって嫉妬くらいするわい!

 

「だいたいナギが浮気なんてするはずないし....」

「お、おう?」

「私の気持ち抜きにして考えても私の事好きすぎるもんね?」

「あ、あの....蛍さん?」

「だから、別に不安になんてなってない。」

 

....

 

........

 

............

 

なにこれ....めちゃくそどちゃバカ可愛いんですけどッ?!?

 

え?何?結局不安だったってこと?!しかもそれに気づいて欲しいと?!拗ねた口調可愛すぎるんだけど?!もうなんか色々考えること放棄してここで走り出したいんですけど?!?!

 

「....その顔やだ....」

「ん〜?」

「....やめて、なんか、いたたまれないから....」

 

もうニヤニヤが止まらないんですよ。許せ。もうなんか出会ったばかりの頃を思い出す勢いで暴走しそう....

 

「....もう、バカ....」

 

出ましたああああ!!!!!拗ねながら言って欲しいセリフランキング堂々の1位(俺調べ)の『もうバカ!』

 

さっきまでの絶望と今の幸せの落差でのぼせる。というかのぼせた....

 

「....パパ?」

 

....え?

 

えっと...蛍さん?これどういうことですか?あの、この状態、教育に悪いと思うんですが....だいたい娘の立場としては親のこんな姿見たくは無いはずじゃ....

 

「ねぇ、なんで目を逸らした?蛍」

「....忘れてた....」

「おい親!」

「な、ナギもじゃん!」

 

その場で素早くお互い離れて俺は詩に説明をしながら先程の失態を忘れるように言い聞かせる。

 

その間にも蛍は周りに娘だけならず、他の友達やらみんなが居ることに今更気がついたらしい。真っ赤になった顔を両手で覆ってその場で蹲る。

 

「し、(しおり)?!あのな?俺とお母さんは仲良しなのは知ってるよな?」

「うん。毎回行ってらっしゃいの時、チューしてるもんね!」

「ふぁ?!?」

 

いつ見たんだ?!ってか毎回?!どこから見てんの?!もう既に時は遅いかもしれない....

 

「....いいか、ああいう行為は18歳になるまでやったらダメなんだ。ほんとにこの人と一緒に居たいって思う人が出来たらその人パパに紹介しなさい。その後にパパが許可出したら初めてできることなんだからな?わかったか?」

「いや、嘘教えるなよ」

「コレイ、シャラップ!」

「うんわかった!」

 

余計なことは言わないようにな?人の家庭の子育てに口を出しちゃダメだぞ?

 

あと詩の返事ではっきりわかった。あ、これわかってないやつだ....ってな。これこそ親子の絆!

 

そうつまり、俺は娘を蛍と同じくらい愛してるッ!

 

「ねぇ....パパにはダメ?」

「ッ....おい蛍ッ!俺らの娘、可愛すぎて死にそう!間違いなく蛍の娘だぞ?!」

「当たり前でしょ?!あぁ....もう顔熱い///」

 

ちょっとはマシになったのか蛍が立ち上がってこちらに歩いてくる。まぁ顔は真っ赤なままなんだけど....今考えれば復活早くなったな....慣れたっていう言葉は間違いじゃなかったという訳か.....

 

「いい?詩。パパとママにしかしたらダメだよ?」

 

屈んで視線を合わせながらそう言う蛍の姿、あぁ....もう、なんか、感無量だ....

 

「パパとママならいいの?」

「うん。ほら、おいで?」

 

うきゃーっと声を上げながら蛍が広げた腕の中に飛び込んでいく娘....うへへ....眼福でござる....

 

「うちの女性たち、最高だろ?」

「まずその緩みきった顔どうにかしろよ....」

 

無理です!

 

「それで、これどうするんだい?置いてかれてもこちらとしては困るんだけど....」

「ああ、持って帰るよ。誰かスコップとツルハシ持ってるか?」

「つるはし....って何??」

「ああ、空お兄ちゃんを助けるんだ。尖ったトゲがついててそれで岩を壊すんだよ。今回は木の根だけど....ついでに少しやり返しを....」

「....ナギ?」

「すいませんでした....」

 

これは俺が悪い。ほんとに俺が悪い。首傾げてるから多分聞こえてなかったとは思うけど....ふむ....言葉遣いはなるべく強制したと思ってたけどまだまだってことか。

 

「完全に伸びてる....蛍、どれだけ強い力でやったんだ?」

「ちょっと強いかかと落としを....その、お兄ちゃん、ごめんね?」

 

いや、聞こえてないと思う....ッ!?

 

その蛍の言葉の瞬間、耳が微かな音をとらえた。何かが高速で移動している風切り音とともに微かに何かが割れる、もしくは軋むような音。

 

血の気が引いた。この場の誰も気がついていない。平和ボケした弊害か誰一人も動けていないのだ。今何か出来るのは俺だけ。言葉にしている余裕はない。守る人も多すぎる。

 

誰が狙われている?誰を優先で守ればいい?俺が前に出るだけじゃダメだ。神のごとき力を持ってしても俺は所詮は戦士、暗殺に抵抗する術などない。

 

視線が音の方向にやっと追いついた。

 

その瞬間キラッとした光とともに閃光が一面に広がる。

 

暗闇で慣れた目には効果てきめん。一瞬動きを止めてしまった。

 

ああ、やらかした。この場で身を守れない相手は1人のみ。それは....

 

コレイ(・・・)ッ!伏せろ!!」

 

彼女だけだった。

 

アーチャーの彼女は接近戦はもとより、元素的にも他の元素の補助がなければ基本的には真価を発揮しない。それでも相当な実力者ならば対応は可能だろう。しかし....経験が圧倒的に足りない。

 

ん?娘は大丈夫かって?

 

見てな。

 

俺の読みをはずれて氷の塊が詩の頭目掛けて高速で飛んでくる。

 

その瞬間、娘の瞳が金色に光る。

 

『せんがんばんらい!』

 

拙いその口から発せられた言葉に呼応するように地面が一瞬で隆起した。

 

『千岩万来』

 

蛍の血を示すかのように神の目無しで元素を操り、俺から受け継いだ膨大な元素力をいかんなく発揮してその攻撃を防ぐ。

 

英雄と半神の娘。

 

その肩書きに違わぬ程の可能性の塊。

 

それが詩。俺らの娘なのである。

どうだ?すごいだろ?!な?!

 

「さすが、2人の娘だね」

「....なんのつもりだ?」

 

その目の前の姿に少し納得が行きながらも少し睨みながらそちらを見る。

 

「フィル「ししょー!!」....タ....」

「おお〜!よしよし!偉いぞぉ?ちゃんと防げたね?よぉしよしよし!」

 

さっきの緊張感は何処へ?

 

そんなもの知ったこっちゃないと言わんばかりに娘を撫で回す叔母さん。もうほんとに訓練のためとはいえど困ったものである。

 

「つまらないって....?」

「?」

 

ぼそりと呟いた俺に蛍が少し視線を向けて首を傾げた。

 

「考えることが山積みだよ....はぁ....」

 

その嬉しい悲鳴はもう暗くなった空に消えていった。

 

 

__________________________

 

 

 

世界が乱れる。

 

空間が歪む。前世の知識を借りるならばノイズのような何かが空間に走るのだ。

 

「....」

「ナギ?」

 

あれから何とか誤解を解いて和解した空が不思議そうに声をかけてくる。

 

この世界の皆はこれを感じても察してもいないのか気にした様子は無い。

 

察しは着く。俺はもうこの世界で用済みという事だろう。今更、使うだけ使ってあとはポイかよとか怒るつもりは無いが、問題はある。

世界を渡ったという意味では俺もこの兄妹も同じのはずなのに俺だけなのはおかしい、という事だ。

 

英雄として活躍して、この世界のために動いた第一人者は他ならぬ蛍。俺よりも先にこの異変を感じていないとおかしい。

 

多分、もうこの世界に居れる時間は少ない。

 

「....なぁ、俺も、お前らの旅について行けるかな....」

「以前のナギなら難しいだろうけど....今は神の自分を受けいれたんだろう?」

 

力無く、俺は頷く。

 

「できるよ、きっと。」

 

彼は聞かなかった。この世界に留まる選択を3人1緒にしたのに。今は旅に出たいと言ったのにも関わらず。蛍と同じく、察しの良さか、気立ての良さ故か。

 

「それに、蛍もそろそろかなって言ってたからね。」

「....バレてたか....」

「最近様子がおかしいって。元素も使いたがらないから多分そうだろうねって。」

 

どこまで気づくんだよ....察して察しては上手くいかないとかいう世論はどこ行ったんだ?

 

「はぁ、多分元素は関係ないんだよ。ただ....」

「ただ?」

「世界が、たまに歪むんだ。」

「....天理か....」

 

全部推測、予想、妄想。間違っていたならそれでいい。何も無いならそれに越したことはない。だけれど、それで済ませられるほど平坦な人生を歩んできてはいないのだ。自然と色々な可能性が頭をよぎってしまう。

 

俺が世界に弾かれるかもしれない。

 

もしかしたらここは異世界などではなく本当にゲームの中で、バグを修正されたかも。

 

正史へ戻そうとするパラドクスかもしれない。

 

可能性など無限に広がっているが、その全ては、ここに俺がいなければ問題がない事象だ。

 

とは言っても....

 

「帰って来れるのか?」

「....限りなく無理に近い....ね」

 

結局のところ、旅に出る前提で考えると真っ先に気になるのはこれだった。

 

だが返ってきた返事は何となく予想していた言葉。

 

まぁくよくよ考えていたって仕方ない。

 

「パパ?」

「おお〜!詩!どうした〜?」

「あのねあのね?アンバーお姉ちゃん来た!」

「....?何の用なんだ?」

「なんかね?すごい綺麗な人と一緒なの!」

 

そうかそうか....綺麗な人かぁ....

 

いや、綺麗属性持った知り合いなんて母さんかジンくらいしか思いつかない。特にこれといって特別仲がいい人など居ないし、ましてやこの家を尋ねてくるなんてことは滅多にないため、普通に困惑している。

 

「まぁ....行くか....」

「おじゃましまーす!旅人は?」

「....詩、戸締りはちゃんとしたか?」

「ご、ごめんなさい....」

 

謝れてえらい。次からは鍵、閉め忘れないように気をつけようね?

 

「よし。ほら、おいで。」

「うきゃー!」

 

俺が手を広げるとそこに飛び込んでくる詩。我が子の頭を撫でながら改めて赤を基調とした少女に視線を向ける。

 

「不法侵入だぞ。」

「ナギ先輩、細かい男はあいそつかされますよ?」

「ぷふっ....」

「おい、空。お前今笑ったな?」

「笑ってないよ?」

 

嘘つけ。

 

声を大にしてそう言いたい。大体、不法侵入に細かいも何も無いと思う。実際、知り合いじゃなかったら制裁ものだ。

 

「まぁ、それは置いておくとして....もうひとりってのは?」

「えっと...」

「やっほー!元気?」

「....詩、今日の晩御飯はトリックフラワーの盛り合わせでいいか?」

「うん!」

 

ちゃんと報告した!偉いでしょ?褒めて!と言わんばかりの万遍の笑みでこちらを見てくる詩を問いただす気にもなれず、結果、目の前のバカ姉を標的にする。

 

「酷いなぁ〜。細かいこと気にするとモテないよ?」

「2回も言うな2回も。それとモテなくていい。蛍さえいればな。」

「ふむふむ、娘に嫌われてもいいと?」

 

そんなことは言ってない。訂正しよう。家族にきらわれなければそれでいい。あまりにも理不尽なその意見に俺は少しムッとなりながらも受け流す。

 

「ハイハイ。」

「毎回住むところ変えるんだもん。お姉ちゃん、探すの毎回大変なんだよ?」

 

引越しがツボを移動させるだけっていうお手軽感。仙人さまさまというものである。まぁそんなだからあちこちに移動しまくってるわけで、探すとなれば骨は折れるだろう。

 

「それで?そこまでして会いに来た理由は?何かあったのか?」

「助けてくれるの?さっすがぁ!」

「....詩、ちょっとあっちにいっててくれるか?ママが遊んでくれると思うから。」

「え〜!パパがいい!!」

 

嬉しいッ!嬉しいけど....今はちょっと我慢してもらいたい。こいつを見せるのは教育に悪い。性格は胡桃に似ているが、あいつは自分の女のところを使ってからかったりしないのだ。

 

それに比べてフィルタを見てみろ。背は高いし、足は長いし、胸は大き過ぎず小さ過ぎず。まぁ一言で言えばモデル体型。性格が残念なだけで....ほんとに残念すぎるだけで....

 

せめてコロンビーナの姿になってやって欲しい。そうしたら教育に悪いところも少しは良くなるだろう。

 

「ん〜、どうしようかなぁ....パパ困っちゃうなぁ....」

「困っちゃえ困っちゃえ!」

「うぐっ....」

 

誰だこんなに悪い子に育てたやつは!俺か?蛍か?俺が詩の頼みを最終的に断れないと知ってのことか?

 

「ちょいと、蛍ー!」

「はーい、どうしたの?って....あ、フィルタ。やほ〜?」

「やほやほ!」

「すまんけど詩、引き取ってくれ。5分、いや、2分だけでいいから....パパとは後で遊びましょーね?」

「うぅ....ママ!パパが虐める!」

「虐めてないけど?!」

 

全くもう親バカだなぁと言いながら苦笑する蛍。そのまま詩を抱きかかえて蛍が来たドアの方へ戻っていく。

 

「...んで?」

「しおりちゃんの誕生日プレゼントって何がいいかな?」

「よっしゃ!今から行こう!すぐにいこう!!」

 

直前の記憶、詩のプレゼントを忘れていたという焦りで2分という約束は一瞬で空の彼方。家を飛び出した。

 

 

__________________________

 

 

 

「久しぶりの姉弟水入らずの買い物....いいね!」

「こ、これ、場合によっては浮気に....?いや、でも姉弟だし....でも血は繋がってない....これ不味い?」

 

ブツブツと呟きながら今更不安になる俺。この場合、蛍や空は関係ない。あの二人は理解を示してくれるし納得もしてくれるだろう。だが世間の目はそれを容認するとは思えない。良くも悪くも至る所で俺と蛍はイチャついているわけで....たまに詩もつれて歩いている....

 

「え?これ不味くね?」

 

考え始めたらもう止まらない。周りの視線が痛くなってきた。決してそんな目で見られている訳ではないのはわかっているが気になりだしたらもう止まらない。

 

「ああ、どうしよ....」

「ふっ....あはは!」

「....んだよ」

 

いきなり笑い出したフィルタに意識を現実へと戻された。その顔はもう万遍の笑み。返答したことを後悔した。

 

笑みの中にからかうような表情は一切浮かんでいなかったから....

 

「あんなに荒れてた凪がねぇ....って思っただけだよ。」

「....うっせぇ。」

 

こうなればもう俺はいい歳して子供のような反撃しかできなくなる。弟は永遠に姉に勝てない運命でもあるのだろうか?こういういざと言う時には毎回口で負けてしまう。ほんとに度し難い。

 

「良かったね。」

「....お前もいい人くらい見つけろよ。」

「私、もう人じゃないからねぇ....」

 

間違った。発言を、言葉を間違った。少し陰った相手の顔を見てそう後悔する。

 

そういうことを言いたい訳じゃなかった。俺だって悩んで、結局、こいつはフィルタだって受け入れた。それに関して今はもう微塵も後悔してない。嘘でも取り繕ってもいない。ただの本心。

 

「ま、ぼちぼち?」

「....空とかどうだ?」

 

せめてもの謝罪の意味を込めて案を出したが以外にもあっさりとフィルタは眉をひそめて間髪入れずに否定した。

 

「あ〜、ダメダメ。なんて言うか...あの人は多分他にもう相手が居るよ。」

「は?!誰だ?!そんな素振りなかったぞ?!」

「お子ちゃま凪には分からないよーだ!」

 

ああ、もうカッチン来た。絶対一撃入れてやる。こいつの脳天かち割ってやる。

 

そう意気込んで剣を出したはいいものの目の前に視線を戻すとそこにフィルタは居ない。

 

周りを見て探してみると前屈みになってフィルタはある露店の商品を見ていた。

 

「へい、いらっしゃい!」

「....どうした?」

「いや、ちょっとね....これ。」

 

指さしたのは銀色のブローチ。確かに詩には似合いそうだ。

 

それにしても....

 

「....」

 

この店主、フィルタの胸を見てんな?あ、次は足か?

 

まぁ見てくれはいいからなこいつ。でもお前みたいな髭モジャハゲデブおっさんには釣り合わねぇよ。見るだけならタダだけど。

 

「店主、これくれ。」

「うぇぇ?!私からのプレゼントにしたかったのに!」

「は?あ、ま....毎度!」

 

こいつ、一瞬ここに意識なかっただろ....というか敵意くらい隠せよ。俺はこいつの彼氏じゃねぇぞ。

 

「って....ナギ様?!」

「んあ?どこかで会ったか?」

「あ、いや、それはもう....か、彼女さんとデートですかい?」

「アホ言うな。このバカ姉に付き添ってるだけだ。」

「アホとかバカとか酷いなぁ....」

 

片方はお前に言ってないんだけど?

 

「んで、他に気に入ったものあるか?」

「ん〜....あ、これ、私が欲しいかも。」

「フィルタのじゃねぇよ....」

「姉ですかぁ....そ、それはそれは....」

 

おい、明らかに敵意なくしたろ。下心丸見えなんだよ....ここには絶対蛍と詩は連れてこねぇ。決めた。フィルタで満足しとけ。

 

と、心の中ではさんざん考えた。だが実際、容姿は優れている。感情的な面ではこの男の行動と態度も分からないでは無い。でもだ、

 

問題はこの世界にはこのレベルの美男美女が溢れに溢れているという事実。おのずとこの世界に住む人間の美醜の価値観の平均が高くなる筈なのだ。

 

だからこそ普段、こんなにジロジロ見られることは珍しい。この違和感は俺の疑問をさらに加速していく。

 

「....いや....なるほどな....」

 

これは全く分からないし、この疑問の正体も分からないので意味深に頷いておこう。顎に軽く手を添えて俯くのがポイントだ。

 

「....」

「....ど、どうした?行くぞ。早く。」

「........いや?凪って結局は家族思いなんだよなぁって思っただけだよ?蛍ちゃんも幸せ者だなぁ〜って」

「んだよ、それ....」

 

文句を言おうとすると少し眉をひそめてこいつはこちらに視線を寄越してきた。

 

「家族以外の異性には割とドライでしょ?」

「あ〜....フィルタとか?」

「私は姉ですぅ〜!家族ですぅー!!....そうじゃなくてさ....」

「あー、ハイハイ。あいにく姉に褒められて喜ぶほど無邪気じゃないんで。結構です。」

「んもー!!聞いてよ!」

 

俺は足を早くしてなるべく距離を取ろうとする。しかし後ろからやっぱり追いかけてくる。

 

「お目当てのものは買えたんだし、俺は帰っ....うぉお?!」

「ドーン!!生意気にはこれだぁ!!!」

 

瞬間、感じたのは強い衝撃と遠慮なくガシガシと俺の頭を撫でる荒い感覚。そこに甘い雰囲気は一切なく、乱暴にかき乱される髪の毛が視界の端をチラついた。

 

普段ならばこのやり取りも平然とやり過ごせる。

 

そう、普段ならばなんの問題もなく頭にゲンコツを落として終わりなのだ。

 

....普段ならば....

 

「や、やっぱり....浮気だ」

 

目の前にコレイがいなければ....

 

 

これ、詰んだ?

 

「た、旅人に報告しなきゃ....」

「ま、待てえええい!!!!!」

「待てないッ!お前が悪いんだろ!」

 

そう言って脱兎のごとく逃げ出そうとするコレイの肩を速攻でつかみに行く。

 

「姉!姉だ!こいつは姉!!!!」

「はーなーせッ!!!謝りに行こうと思った矢先これはないぞお前!報....こ、く....んググッ!」

「待てぇぇえ!!!!」

 

だがもう俺の手は限界。どこからこんな力を出してるんだこいつ。もうダメだと思ったその瞬間、諦めたからか、肩を掴んでいた手がツルンと滑り、彼女を自由にしてしまう。

 

「ど、どうしてこうなったああああああああぁぁぁ!!!!!!!」

 

小さくなるその背中を見ながらそう叫ぶことしか出来ない。悔しい。

 

「えっと....なんか私やっちゃった?」

 

うるせぇよ。このバカ姉....

 

 

後に、英雄に説教される俺とフィルタとコレイの姿が...空によって記録されたとか何とか....真偽の程は分からないが、ひとつ言えるのは....

 

 

色々、あるけど....

 

 

俺は幸せだってことだけだ。

 

....あと、2分だけって言ったのに2時間またせた詩に怒られた。

 

あれ?俺、もしかしてロクデナシ?

 

 

まぁ....でも、戦いのない日常も、

 

いいものと思える辺り、絆されてるんだろうなぁ....

 

「蛍、詩....愛してる....」

「....怒りすぎてナギが壊れた....」

 

ニヤけが止まらない俺は、今日も元気にやっています。

 

「....やましいことやってる?」

「やってないぞ....ましてや浮気なんて....」

「浮気とか一言も言ってないんだけど?」

 

あれ?無意識にやらかした?




はい。皆様、いかがだったでしょうか?

次の話はついに稲妻に旅立つ予定でございまする。乞うご期待。それでは俺にしては短いあとがきですがこれにて失礼致します。

猪狩の兄貴さん、そしてサンさん、感想あざます!この作品、完走できるように頑張ります!....感想だけに....ごめんなさい。もうしません。

それでは次は、本編で....

稲妻編の先、見たい?

  • 見たい!
  • 最近飽きてきたからいい
  • とりあえず空救済まではやれ
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