近所のクールお姉さんポジの英雄が俺の前だけ甘えてくるんだが?   作:だけたけ

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どうも〜

いやぁ、遅くなってしまって申し訳ありません。

しかし、今回は....珍しいものを見れますよ。ってハードル上げとく....とりあえず今回は前置き、何も思いつかないのでそのまま本編どうぞ!


28話 天使と船旅と看病

視点が定まらない。

 

ぐるぐると体の中のもの全部を掻き回されているかのような感覚。正直な所、耐え難い。

 

込み上げてくる吐き気。それに耐えながら俺は今、ベッドに居ます。

 

「あぁ....ぎもぢわる....」

 

絶賛船酔い中です☆

 

いや、驚きました。あの指ペロ事件の後、雨が降ってきたと思ったら次の瞬間、海が荒れ出したのだ。

 

そして今日、その荒れた海に旅立った今日この頃。普通にダウンしました。

 

ギィ....という音と共にドアが開くのが視界の端に映る。

 

「ナギ、大丈夫?」

「....なんで蛍は大丈夫なの....」

 

英雄補正だろうか。むしろ揺れる船を楽しんでいる節すらある。船の傾きに体を壁に打ち付ける人が続出する中、彼女だけは持ち前の身体能力故にスルスルと移動して俺をベッドまで運搬してしまった。

 

「氷貰ってきたよ。」

「病人ではないのよ、これ....」

 

酔いに関して、頭を冷やすとかそういうのは関係ない。1番の特効薬は揺れがおさまることなのだから。俺の三半規管が悲鳴をあげているこの現状、何も打つ手はない。

 

「初めてだから....どうしたらいい?」

「...蛍が近くに居てくれれば....」

 

本心がポツリと口からこぼれ落ちる。当たり前といえば当たり前だった。気分が良くなることはないだろう。ならばせめて近くに好きな人くらい居て欲しい。

 

めちゃくちゃダサいこの格好を晒せる人は蛍しかいない。

 

「いや、それは当然としてさ....他には?」

「....伝染るからマスクつけて....」

「病人じゃないって言ってなかったっけ....」

 

軽口叩けるならまだ大丈夫か。とボソッと呟いた後、掛け布団を少しめくって俺の手を握ってくれた。

 

酔いで血の気が引いていた俺の体が手を起点に温まる感覚。剣を握る女性は剣だこがあるイメージだがこの世界においてはそんなことは無い。

 

ここに来てご都合主義か....いや、前に回復とかいうチートの所為とか考えてたっけ....今度、ケアはどうしてるのかとか聞いてもいいかもしれない。今は到底無理だけども。

 

「....ありがとう....」

「ふふっ....弱ってるナギって珍しいね。なんか可愛い....」

 

この可愛さを享受できるほどの精神的余裕がないのが恨めしい。いつもなら跳ね上がって喜んでいたであろうこの言葉でさえ、今は話半分に聞くことしか出来ないのだ。

 

「天下のファデュイ執行官様でも弱点はあったと....」

「やめてくれ...元だ。今はフィルタに譲った....うっぷっ....」

「あっ!待って待って!ほら、これ!....」

 

ああ、情けない。彼女に何をやらせているのだろうか。汚物など見たくもないだろうに。

 

「....大丈夫....もう大丈夫....」

「ほんとに?....」

 

先程の楽しむ表情はなんだったのか、今はもう、取り繕うのは辞めたのか、眉をひそめて心配そうに覗き込む顔。いや、取り繕ってないのか?ああ、思考が歪む。本格的に余裕がなくなってきた....

 

「あぁ....駄目になりそう....」

「ダメにしてあげるよ。...って冗談は置いておいて....ほら、寝たら少し楽になると思うけど....」

「....でもせっかくの蛍の看病シーン....」

「寝なさい。ほら、一緒にいてあげるから。」

 

そういうところが俺のダメになる要因なんだけどなぁと頭の中で呟く。ありがたくいけれども申し訳ない。

 

「これなら私だけ先に行ってワープポイント使った方が....」

「1人はダメだ。絶対に....」

 

困ったような苦笑を浮かべる蛍。入国するにあたって稲妻人の俺がいた方がスムーズなのはいざ知らず、逃げることになっても地理を知っている俺がいた方が何かと便利なのは間違いない。蛍は1人でもそこら辺問題は無いだろうが、だからといって俺の預かり知らぬ場所で問題が起きるなど俺が許容できるはずがない。

 

「いいか、蛍....稲妻は物騒なんだ....盗賊みんなが武術を納めてるって考えろ....」

「ナギ程じゃないなら何とか....」

「....」

 

甘い。考えが。

 

街や村の中ならまだいいだろう。ヒルチャールやトリックフラワーなら余裕で対処出来る。しかし問題は野党だ。あちこちに蔓延る仁義もクソもない連中が、その脅威度を底上げしている。

 

それに伴ってファデュイの面々も当然、精鋭ばかりになる。世界が全く違うのだ。魔境と言ってもいい。

 

「1体1ならいざ知らず....多対一になれば蛍も危ない。頼む、俺から離れるな....」

 

気持ち悪い体を無理やり動かして蛍の肩を掴んでそう言う。脅かしすぎだろうか?いや、そんなことは無い。蛍ともあろうものが油断するなど考えもつかないが、それでも予備知識があることないのとじゃ雲泥の差であるのは分かりきっている。

 

「まぁ....そんなことより、今は蛍の愛情マシマシ看病を堪能するとし....うおっぷ....」

「ああっ、もう....わかった。認識改めるよ。」

 

彼女の目付きが変わった。やっとわかってくれた。今の稲妻がどうなっているか分からないが、生憎、アイツらが居なくなっていることなど想像もできない。きっと今も荒野を蔓延っていることだろう。

 

気を引き締めなければ。

 

「愛を確かめあってるところ悪いけど....おふたりさん、そろそろ着くよ。」

「んぁ...チェンジでぇいった?!」

 

容赦なくゲンコツを落とされる。

 

聞き覚えのある声に視線をそちらに向けると赤を基調とした服、眼帯をした女性がそこに立っていた。

 

俺が幼い頃、稲妻から抜け出すのにお世話になった人だ。

 

「いてぇよおばさ....お姉様?」

「....よろしい。」

 

その煙の挙がっている拳を下ろしてくれませんかね?大剣を振り回すような腕力の持ち主にゲンコツ落とされるのトラウマでしかないんですが。

 

いや、ほんとにシャレにならないからね?!

 

「....蛍、助けて....」

「ナギが悪い。」

「大きくなって丸くなったと思えば、失礼なのは変わらないね。とりあえず風にでも当たってきな。」

 

味方はいなかった。俺が悪ければ蛍は味方になってくれない。そんなこと何回も繰り返した愚行で身に染みて買っている。

 

そう、英雄は愛で思考が曇らない。

 

うん。やっぱり蛍は最高ということでここはひとつ....

 

「....頭使いすぎた....また気持ち悪っ....」

「ほんとにだらしない...想い人を心配させてどうすんだい。おら、立ちな!」

 

スパルタパワハラおばさんめ....この恨み、覚えたよらな!

 

....エウルアの気持ち、わかったぞ。今、俺....すっごいこの目の前の奴が恨めしい....

 

あぁ....眠くなってきた....このまま寝てしまおうか....

 

立てるわけがない....人は船に乗る前提で出来てないのだから....

 

「....あぁ....何か、忘れてる気が....す、る....」

 

頭がぼーっとして何も考えられない。

 

「....ちょっと、ね、る....」

 

頭を撫でてくれる蛍の手の感触を楽しみながら、まどろみの中に身を委ねた。

 

__________________________

 

 

ナギが寝た。顔色がなんぼかマシになったように思う。正直、私も気分がいいとは言い難いけれどナギよりかは全然マシな方だろう。

 

「知ってるか?」

「え?....」

 

不意に後ろから声がかかった。その声は初対面の私でも分かるくらいに懐かしむような優しい声だった。

 

「こいつ、昔はすごい荒れてたんだよ。もう何やっても反発したり、生意気言ったり、恨み口叩いたり。もう手につかねぇ!って感じでな。」

 

話には聞いている。なんでも今よりも口悪くて、特定の数人しか信じないような寂しい子供だったと。

 

フィルタが言うには彼にとっての家族は私たちの感覚とは少しズレているらしい。信用できる人、心を許せる人をまとめて『お母さん』とか『お姉ちゃん』とか呼ぶ。年下の胡桃でさえ姉扱いしているあたり弟とか、妹とか。そういう家族が居ないのは信用のおける相手として弱い....とか考えているのだろうか。

 

無意識、なんだろうなぁ....。この人はそんなに器用じゃない。

 

「子供ながらに考えて自分を守った....」

「そういうことさ。でも、その様子だと旅人、あんたがこいつを救ったんだろう?」

「....私じゃないよ。....出会った頃にはもうこの人は救われてた。」

「....そうかい。....いい所で起こしてやんな。」

 

そう言って外に出ていく。

 

私じゃない。

 

ああ、悔しいな....心からそう思う。救ったのが私なら、もっと早く、この世界に来ていれば。この苦しいほどに締め付けてくる心の縄が少しは緩くなっただろうか。

 

後悔、では無い。ただ、無性に、....

 

そう、私が救いたかっただけなのだ。

 

どうしようもなく、彼を愛しているから。だから彼の全てが私であって欲しい。どうしようもなくこの人は優しいから、誰であろうと最後には受け入れようとする彼だから。最後には絶対に傷付いてしまう彼だから。

 

せめてその傷を癒すのは全て私でありたかった。

 

「ダメ、だなぁ....日に日に強くなってく....」

 

独占欲。

 

長く生きているだけあって、これが罪悪感だと思う様な甘酸っぱい恋はしていない。今までの長い間、今までの全ての旅を、全てをひっくるめての唯一の恋。

 

「....私の愛が....重いのはわかってるよね、ナギ。」

 

表には出さない、確かな本心だ。メンヘラでは無い。....と思う。彼に多くは求めない。私も必要以上には与えない。過剰なものは何一つない、ただ、彼が私のそばにいてくれれば満足なだけの愛。

 

近くにいてくれれば....

 

「せい、いぶつ....げんせん....しな....きゃ....」

 

....ダメだこりゃ、これは稲妻に着くまで多分ナギの隣を離れられないな....

 

ベッドの横に座って、ベッドの縁に肘を乗せる。そして彼の髪をすきながら、一言....

 

「挨拶....頑張んなきゃな....」

 

1人意気込んだ。

 

 

__________________________

 

 

同時刻。

 

 

「報告しますッ!」

 

ある城の中でひとつの鋭い声が響いた。切羽詰まったようなその声の主の様子に周りはそれをしたためる。

 

「騒々しいぞ!何事だッ!」

「凪様が、凪様が稲妻にご帰還なさるとの情報がッ!」

「ッ!....」

 

その唐突な情報に国の高官とひと目でわかる装いの彼らは一気に表情を固くした。

 

ここは稲妻の中枢。雷電将軍が住まう要塞。10数年前に姿を消したそのご子息が稲妻に帰ってくる。

 

「絶対に将軍には伝えるなッ!....クソッ!なんで今なのだッ!....」

「高杉殿ッ!これでは計画がッ!!」

「ええい、わかっておる!もう少しと言うのにッ!....」

 

情報の裏付けが必要だ。その為には....その為にはまず接触をしなければ。

 

「何をしているッ!早く行動に移せ!必要なら暗殺しても構わんッ!!」

 

稲妻に巣食った闇が、一段と濃くなる。

 

焦った表情の面々、その中にひとつ、ニヤリと笑う影がいた事には誰も気付いてはいなかった。

 

 

__________________________

 

 

 

「っ開放されたああああッ!!!!!」

「元気だね。良かった。」

 

青い空。ふわりと懐かしい香り。そして自身の回復。

 

隣で自分の事のように嬉しそうな顔で微笑む蛍。

 

そして....これから待ち受けている事への憂鬱さ。

 

「....嗚呼........」

「....と思ったらテンション下がった..、よしよし」

 

ああ、優しさが痛い。母に会うのも憂鬱の原因の一つだが、直近で悩みの種がもうひとつある。

 

「そこのお前ら。止まれ。」

「ほらなぁ....こうなるじゃん?....」

 

そう。ここは今鎖国中。外から入ってくる人には絶対に疑いの目が向けられる。行動は制限されるだけでなく、入国時に身体検査などの面倒なものに巻き込まれるのは分かりきっていた。

 

「お主ら、我が帰って来ることは聞いてない訳ではあるまい?」

「「は?」」

 

いや、なんで蛍まで驚いてんの?....俺、一応、元この国の王子よ?相応の言葉遣いはしないとダメでしょうが。

 

と思いつつも久しぶりに帰ってきた母国に降り立って、実際、憂鬱以外に少しの興奮を覚えているのも事実。帰ってきたのだ。そう、帰ってきてしまった。

 

「この容姿、覚えがないとは言うまい。」

「....何を言っている。怪しいな、おい、連れてけ!!」

 

ですよねぇ〜....俺が公に立ってたのってまだ7歳とかそこら辺だもんねぇ。知ってたよ?知ってたけどさ....

 

「身体検査をせずにか?」

「そんなもの、お前らにはいらない!ほら、お前ら早くしろ!」

 

横暴。少しカッチンと来た。捨てられた俺を排斥するための敵対ならばいざ知らず、何も確認せずに悪と決めつけて処罰しようとするその姿勢。神経質になるのはわかるが人情も侍の誇りもクソもあったものでは無い。

 

なるほど、稲妻はここまで腐ったか。

 

「蛍、ごめん。ちょっとお灸を添えてくる。」

 

今一度、ここに言おう。俺は稲妻が嫌いなのではない。俺を捨てた母、ひいては城の人が嫌いなだけだ。国のあり方にはある程度の誇りは持っていた。

 

だから、母をぶっとばしに来ただけだ(十分に敵対理由)

 

「....いいけど、その代わり....ん。」

 

そう言って手を広げてくる蛍。それを見て俺は固まった。

 

「ハグ。」

「い、いや、わかるけども?!なんで今?!?!」

「ん....」

 

あ、返答無しなんですね....?!わかりました!

 

いや、普段もっとすごいことしてるはずなのに改まってやるとなると緊張するんですが?

 

「....カップルだぞ?」

「ッ....」

 

なんっ、でこいつはこんな可愛いことしか言わないの?!

 

体の前面に柔らかい感覚。

 

そして周囲からは奇異と少し羨ましそうな眼差しが向けられる。

 

「....」

「おい、守衛。まじかよみたいな顔でこっち見んな。」

 

いや、わかるけどね?俺だって目の前でいきなり繰り広げられたらそんな顔する自信あるけどさ。でもちょっと1回退散してくんない?!逃げないから今はこっち見んな!!!

 

....あれ?人前で恥ずかしがる役、俺になってる?え?入れ替わってるよな?な?!

 

「....こ、コホン....とりあえず、責任者に参れと伝えよ。」

「い、いやいや....突っ込む以前に無理だから....」

 

残念な人を見るみたいな顔するな....そんなことはわかってるんだよ。

 

「と、とにかく、君は稲妻人みたいだからまだしも彼女を何もせずに通す訳には行かない。理解してくれ。」

 

毒気が抜かれたのか、いくばかマシになる口調と態度。それを聞いて何となしに蛍へ視線を向けると....そこには真っ赤なりんごの木があった。

 

「あ、恥ずかしかったのね....」

「私としたことが....っ....///」

 

全くの無意識の行動だったらしい。いや、意識せずにやれる蛍も蛍だけれども....

 

「話を聞けよ、このバカップルッ!」

「褒め言葉だな。」

「こいつッ....」

 

まぁ、落とし所だな。ただ蛍だけなのはいただけない。

 

「よし。蛍の代わりに俺を牢屋にぶち込め!」

「それ、拘束の意味無くない?!?!」

 

ナイスツッコミ。まぁそれはそれとして、身体検査ならちゃんと女性がついてもらいたいものだ。でなければこいつらの事、気づいたらサイコロステーキ○輩にしてしまう自信がある。あ、俺が身体検査やる場合は俺の心臓が死ぬので無しで!本望だけどな?!

 

凝りもせずにそんな思考をしていた俺の視界に、見たくもない姿がいきなり、なんの前触れもなく飛び込んでくる。

 

「ッ....」

「その方たちは大丈夫だ。通せ。」

「....蛍、逃げるぞ。」

「ぇ?」

 

言葉など聞かない。縁などない。何も無い。あいつのことなんて知らん。

 

そう頭の中で自分に言い聞かせながら蛍の手を引いて守衛の間を気づかれる間もなく通り抜けてこの村を駆け抜ける。

 

いきなりのことで蛍はつまづきそうになるがそれを耐えて自身の足で走り始めた。そこまで確認したタイミングで蛍が前を見て俺に声を飛ばす。

 

「ナギッ、前!」

「ん?まえ....って危ねぇッ?!」

 

視線を戻すとそこには幼い子供と手を繋いだ母親の姿。足に力を入れて漫画みたいに飛び越えるッ!

 

....、ことなど出来るはず無かった。

 

前世の世界とは別物の人智を超えた常識があるこの世界でも俺の脚力はいい所鍛えたアスリートの域を出ない。

 

だから俺はフィルタからの情報を聞いていたのにも関わらず....咄嗟に使ってしまった。元素を。

 

足元に生成される氷。その生成される勢いを利用して宙に飛び上がる。それと同時に後ろから叫び声にも似た鋭い声が聞こえた。

 

「なッ....神の目だッ!....クソ、待てッ!!!!」

「しくったな....」

 

ほんとに何やっているのかと自身を心の中で罵倒する。正直、逃げるのは容易い。連れが居るとはいえ、俺と同等に近い実力者。逃げれないわけが無い。

 

とはいえだ。

 

「....蛍、村の外行くぞ。昔馴染みに会いにいく。」

 

無言で頷く彼女を流し目で見てついでと言わんばかりに後ろから飛んでくる槍を剣で撃ち落とす。

 

鋭い刃鳴りが辺りに響く。顔に当たりそうになれば首を捻って避け、足に当たりそうになれば小さく飛んで躱し、胴体に当たりそうになれば槍の横っ腹を剣で叩く。

 

技量の差がなければ槍の方がリーチが長い為有利ではある。でも俺と蛍ならそんな間合いなど一瞬で詰める自信があった。そういう意味では接近戦をしないこの兵士達の判断は英断であろう。

 

「待ってくだされ!()殿!!!これ、お前ら、やめないかッ!」

「しかしッ!!あいつは神の目をッ、回収しなければ最悪我々の首が飛びますッ!!!」

 

しかし今の稲妻の情勢はどうなっているんだ?あのクソ神が目狩り例とやらを出したとは聞いていたけどこれは少し異常だ。

 

「....さっきの口調は....?」

 

ふと隣を走る蛍から声がかかる。その問いに少し迷い、頭を捻って言葉を探した。

 

「....前世で居た国の昔の姿そっくりなんだよ。稲妻って。だからそれを真似しただけ。」

「ふーん。全部終わったらその世界に行くのもいいかもね。」

 

故郷、では無い。あっちに思い入れなどなく、ただその知識があるだけ。あくまで人格はこのテイワットで生まれた俺だ。そこまで気を使わなくていいのにと思わなくもない。

 

「まぁ、バカ神に会ってからだな。」

「....ナギのお母さんってどんな人?可愛い?それとも美人?」

「普通に綺麗だとは思うぞ。子供の頃にしか見てないから今はどうか知らねぇけど。」

「....ふーん....」

 

少し意味深に相槌を打つ蛍に俺の頭の中にハテナが2つ。脳内を全て漢字で表すなら蛍尊蛍尊蛍尊蛍尊蛍尊蛍尊蛍尊蛍尊??蛍愛蛍愛蛍愛蛍愛蛍愛蛍愛....

 

ごめん、怪文書みたいになった。

 

「まぁ気にすんな。俺のことはいいからちゃっちゃと蛍の兄さん探そうぜ。」

「んぅんぅんぅ....ナギ、痛い。」

「これでどうだ?」

「今はそんな場合じゃないんじゃない?」

「うぇ、いきなりの正論....痛いなぁ〜」

 

....心無しか後ろから追ってくる兵士たちからの殺意が大きくなった気がする。

 

ってなんかすごい顔しながら後ろに般若を顕現させて追ってくるんだけど?!

 

「ひぃい?!?!」

「....ぇ?ってナギ!前ッ!!」

 

その声につられて正面を向いた時にはもう目の前全て木の板だけしか見えなかった。

 

咄嗟に蛍を引っ張り、自分を盾にしてそれに突っ込む。意図せずに蛍の体の柔らかさを堪能出来た....

 

「デジャブを感じっびゃらはッ!」

 

そう考えた瞬間、強い衝撃と共に視界が暗転した。

 

どれほど強くとも、頭に強い衝撃を受けて脳が揺れれば誰だって気絶するということだ。

 

それにしても.....俺、よく気絶しすぎじゃね?

 

 

 




はい。蛍の心の内『愛の大きさ』をテーマに今回は書かせて頂きました。長い年月を生きている蛍。普通ならメンヘラと言われてもいいほどにナギを愛してしまっている蛍がナギに不快感を与えないのは、その長い人生経験の中で培った経験で理性で制御しているから....と、あと蛍の愛の本質は『傍にいてくれるだけで満足』というものだからでした。

二次創作(pixivなどの漫画)を見ているとだいぶピュアピュアな蛍さんが多いですが、私は記憶喪失とはいえ、長く生きている蛍がそんなに一々心を乱すか?という疑問があり、それをより大きな愛ゆえという半ば強引な理由によってその疑問をクリアしています。(しているつもり)

っと長くなりました。

猪狩の兄貴さん、サンさん。感想あざます!ぶっちゃけスランプ&モチベ低下の今、ここまで続いているのは奇跡です。もっと感想で俺をニヤニヤさせてください....

ってな訳で次話で....

稲妻編の先、見たい?

  • 見たい!
  • 最近飽きてきたからいい
  • とりあえず空救済まではやれ
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