近所のクールお姉さんポジの英雄が俺の前だけ甘えてくるんだが?   作:だけたけ

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はいお久しぶりです。

まぁ....とりあえず更新は続いています。本編の方も八割方書き終わっているので明日か明後日には投稿できるかと。

仕事でシンガポール行ってました。普通に久しぶりの英語トークで精神を削られ、勝手の分からない土地で苦労しましたがこうして生きてます。精神的には死にかけですが....

とまぁ自分語りはこれくらいにして今回はひとまず番外編完結です。見切り発車の番外編で終わり方を悩んだ挙句中途半端に終わってしまいました。また気が向いたらその3を書きます。

それではどぞー


29.5話 《if》天使の次は女神 その2

我、困惑中。

 

「ナギ....っどこ行ってたのッ!」

 

我、焦り中。

 

「な、ななっ、なな?!?!」

 

娘、マイペース。

 

「んじゃ、お母さん。パパ連れてきたから寝るね〜」

 

俺に抱きついている蛍に俺の横を通り抜けながらで眠そうにあくびしているこの子。やっぱり蛍の姿は変わらずに可愛い少女の姿で....はたから見たら俺が女の子を泣かせた浮気現場だ。

なんじゃこりゃ........ん?

 

カオス。買ってないほどのカオス。俺がなんでこうなったか理解できないカオス、初めてすぎるんだが?

 

だいたい詩も詩でじじょうくらいせつめいした....ら........ど、う....

 

今、俺の事パパって言った?

 

「おい!ちょっ、待てッ!!!」

「え?何?パパ」

「聞き間違えじゃなかった?!?!」

 

思わず大きい声を出してしまった。詩が肩を竦めて目を瞑ったのが見える。

 

「あっ、いや、そんなつもりは....」

「....ママを放置しない方がいいんじゃない?後で話そ。」

 

手を後ろで組んで前傾姿勢。そしてそんな言葉を吐く子に育てた覚えはありません!!!あざとい!可愛い!....

 

ってちげぇえよ?!育てた覚えないじゃなくて育ててないんだって!そんな可能性微塵もないのっ!ってか俺のことをパパと呼ぶ時点で蛍の親戚パターン消えたんだが?

 

「....ほ、蛍?」

「うぅ....わかってても待つ時間、長すぎるよ....」

「えっ、と....何の話?」

 

ホントに申し訳ない。そんな気持ちになりながら俺は恐る恐る口を開いた。

 

「....多分、俺は蛍の知ってる俺じゃ、無いと思う....」

「ぇ?」

 

そう。俺は仮説を立てた。

 

パラレルワールドだと言う仮説を。それか未来の話、とか。まぁ夢であるにしてはリアルだし、そう考えるのが1番、適してはいるが....

 

「ぶっちゃけ俺もわかってないけど....認知しないとかなんでもなく、俺の記憶では蛍とまだ稲妻を旅してて....」

「....うそ、じゃないんだよね?」

 

首を縦に振る。

 

だいぶ落ち着いたのか俺からそっと離れて赤い顔を離す彼女。その頭を俺はぎこちなく撫でる。

 

「....ごめん。」

「ん....大丈夫。」

 

 

__________________________

 

 

 

話が出来る状態になるまで20分ほど。まだ顔が赤い状態の蛍と頬杖つきながらこちらをニコニコと見てくる詩。そしてテーブルを挟んで対面する俺。

 

完全に尋問される位置だった。

 

「それで?ママをぬか喜びさせた挙句、私を認知してないとか言い放った不徳の父親さんは何をしにこの世界に?」

「だいたいあってるけど過程を抜かしたら俺、だいぶ悪者だな?!」

「コラ、詩。ナギが困ってる。」

「だって....」

 

まぁ不満も分からなくはない。

 

「それにしても懐かしいね、ナギがまだ19歳かぁ....」

「え?同い歳?」

「ま、まぁ....でも詩が19ならこの世界の俺、少なくとも39歳か....」

 

そう言った瞬間、心底不思議そうな顔で顔でこちらを見ながら我が娘が口を開いた。

 

「え?その理論だと38じゃない?」

「妊娠から出産までに少なくとも1年はかかるだろ。今の俺の時点で蛍に手を出した記憶はない。」

「うへぇ....ヘタレ。」

「うるっせえ!」

 

とまぁこんな感じだ。ぶっちゃけると娘とか言う感覚よりも同世代の友達という感覚が強い。そもそも親の自覚もクソもない今の俺には父親なんて無理だ。家庭すっ飛ばしてすぐに親面できるほど俺は器用じゃない。

 

「....ところで詩が食べ終わったのはわかるけど蛍の分のご飯は?」

 

そう聞いたのは話題を逸らしたいからというのは自覚している。ヘタレなのは自分がいちばん理解しているのだ。何度も蛍は受け入れようとしてくれてたのにも関わらず旅を言い訳にして手を出さなかったのはこっちだ。

 

とまぁ結局、娘が目の前にいる時点でヘタレは脱却してるのは確実。今まで通りでいいのだろう。

 

とここまで考えたところで2人の目線が俺の料理にあるのに気付いた。

 

「え....もしかして、これだったのか?」

「うん。」

 

おおい....マジかよ....。相変わらず蛍は優しいらしい。結婚してもこういった気遣い....なるほど。過去の俺、ナイス!よく蛍を射止めてくれた。

 

「ま、まじかー....」

 

でも変な罪悪感がある。目の前の蛍は蛍だけど俺の知らない蛍で、俺では無い俺の嫁....なんか特殊な寝盗られ現場みたいで気が引ける。

 

まぁ娘に嫌われるような父親じゃなくて良かったと言う意味ではほっとしている。だから心のうちでは普通に複雑なのだ。ぶっちゃけどうしていいか分からない。

 

「お母さん食べないの?ならあたしにもちょーだい!よっと!」

 

意味ありげにうんうんと頷いてカッコつけていると膝にそこそこ大きな衝撃を感じた。その瞬間伝わってくるやわっこい感触。

 

「な、なにやってんの?!?!」

「んぇー?だってこっちに椅子はひとつしかないし、ならパパの膝の上でいいかなぁって。」

「詩?行儀悪いよ?」

「違うパパだとしてもパパだもーん。久しぶりだしこれくらい、いいでしょ?」

「もう....」

 

え?!それだけ?!突っ込むところそれだけ?!

 

「別の部屋片付けるから....ナギはちょっと詩の事見ててあげて?」

「ェ?いや、ちょっと!!!」

 

こっちの思考を読む能力は相変わらずだな蛍!!

 

なんなんだ?!こちとら男。こんな事したら相手が娘だと知っていても普通にドギマギす、る....

 

してねぇな。本心を言うと普通に罪悪感で焦ってるだけでそれ以外の理由は無い....気がする。

 

というか娘相手にこういうこと悩んでんのやばくない?

 

い、いや、こいつは娘であって俺の娘では無いから!だから大丈夫!そう。大丈夫。

 

「し、詩!降りろ!そっちのイス持って来ればいいだろ!」

「えぇ〜、ケチ〜」

 

ケチって何だ、ケチって!!!

 

おしくらまんじゅう状態。女の子が男に抱きついて、男はそれを押しのけようとしている構図。なんなんだこれ。

 

「....実は頼みがあるんだ。お父さん。」

「パパ呼びじゃないのか?」

「えぇ〜?それ気に入ったの?変態パパ」

「それ、違う意味になるからな?!?!」

 

ほんとにこの娘は度し難い。こんなので突っ込んでしまう自分もだが....

 

「娘....ねぇ....実感はないんだよなぁ。」

「とか言いつつ19歳の娘を膝に乗せて頭撫でている弁明は?」

「いや、普通に愛でたいから。」

 

....

 

........

 

............

 

待って?俺、今何言った?

 

おい、攻めて来たのそっちなのに顔赤くするところホンットに蛍似だなぁ?!?!辞めてくれない?!なんか違うんだけど浮気してる気分になるから!!

 

「....その、ありがとう....」

「甘酸っぱい雰囲気にはしねぇよッ?!?!」

「娘を認知してくれると?」

「父親のドッペルゲンガーみたいなやつにそれを求めんな。」

 

俺は何をしたいのだろう?突き放したいのか愛でたいのか。ぶっちゃけ扱いに困る。ここに居るべきでは無いのは確かだ。でも一人で生きて行けるほどこの世界を知っている訳でもない。

 

さて、どうするか....

 

思考の海にしじみそうになった直前に、今、もっとも恐れる事態が起こった。

 

「....お邪魔だった?」

 

そんな言葉を残してドアを閉めようとする蛍の姿。

 

「ってちょいちょいちょい!!!!」

「えっと....」

「ママ!パパが意地悪する〜!!!」

「なっ?!こいつッ!!!」

 

本気で拒絶しようとしたが普通に力が強すぎて離れない。

 

「パパもいまは同い歳だもんね〜、興奮した?」

「バカ言うな。蛍以外にそんな気分にならん。」

 

これは本当。

 

「詩はパパに甘えただから....お願いね?」

「甘えたとかそういうレベルかこれ?!」

 

待て。今思った。焦れば焦るほど蛍一筋の俺自身に亀裂が入るんじゃないか?毅然に対応するのが正解なのでは無いのか?

 

「まぁ....詩、今回だけだぞ?」

 

....

 

ちっがあああう!!これじゃねぇ!こんなんじゃねぇ!!!何言ってんの?!何が今回だけだぞ?だ!!!

 

え?はっず。普通に恥ずいんだが?

 

「んふ〜....」

「ご満悦だな....」

「まぁねぇ....パパ。あーん」

「....」

 

こいつさては狙ってやってんな。さっきの父さん呼びはどこに行ったよ。

 

いいよ。もう。浮気にならないなら別に....胡ねぇとかにやられたらその瞬間に元素ぶち込むけどこれは悪い気はしないし、こいつも悪気というかほんとに父親に甘えたいだけらしいし...度はすぎてるけど。

 

「だいたい反抗期はどうなってんだ....」

「知りたいこととかある?なんでも答えるよ?」

 

いきなり来た好機。ぶっちゃけ気になることとかは多くある。蛍の消えた過去の記憶とか、空はどうなったとか。サフィーラのことだって知りたい。

 

でも....

 

「いや、いいや。とりあえず娘がいるって事実だけで十分だ。」

 

少なくとも夫婦は円満。こんなに元気な子供もいる。その事実だけでこちらとしてはもう十分。

 

そもそもこんな形で未来で知ることを先に把握するのは違う気がする。そもそも世界線が違う説が本当ならこの娘も俺の娘では無いし、あの蛍も俺の知ってる蛍とは別人。

 

子供と言う事実で愛情に似た何かが俺の中に芽生えつつあるけど冷たいことを言うと俺は赤の他人。交わるはずのなかった異物。

 

ああ、冷静になってきた。

 

「帰らなきゃな....」

「....元の世界に?」

 

近くにある顔を見てみると少し眉をひそめて俺の事を不服そうに見ている詩の姿があった。

 

「ああ。...なんだかなぁ....蛍に甘えたい気分だ。」

「....ちぇっ、親のそういうのを見せられる娘の気分考えてよ。」

「俺の世界ではまだ居ないからセーフだ。」

 

そう言うと「まだ....ねぇ?」と母親譲りのからかう顔をして俺の上からおりる。

 

「....テイワットは特殊でさ。あの世界に入ると記憶が1部抜け落ちるんだ。だから多分ここのことは覚えてないよ。それでも知りたいこと、聞かない?」

「聞かない。」

「即答....やっぱりお父さんはお父さんだね。」

 

そんな言葉がなんか気恥ずかしくて、深く考えないように家を意味もなく見渡した。

 

「....そんな男らしいお父さんにお願いがあるのです。」

「詩....やめなさい。」

「でもッ....」

 

....え?シリアス?待って。まだシリアススイッチ入ってないから!

 

「今日の夜、私の部屋に来て。お父さん」

 

....はい?

 

 

 

__________________________

 

 

 

現在、娘(別世界線)の部屋の前。立ち尽くす俺、汗ばんだ握り拳。ついでに背中にも変な汗がたれてきた。

 

状況的には犯罪的絵面。子供が見ればホラー展開に、大人が見れば胸糞展開が容易に想像出来るその景色の中の登場人物。

 

そう、俺だ。

 

 

ほんとに....信じたくないけど俺なんだよなぁ....

 

もう隠さずにいえば、逆夜這いッ....ってアホか?!実の娘に夜這いする父親って事案どころじゃねぇぞ?!実の娘じゃないけどっ!違うけど!!!

 

奉仕に来ましたァってか?アホなのか俺の頭は?!来いと言われて行かない父親は居ないけども、俺は他人でもあるんだぞ?!信用するなほか世界線の俺を!!!

 

「うぐぁぁああああ!!!」

 

声にならない声で叫びながらのたうち回る俺。不審者感はさらに増してしまう。

 

「....何してるの....パパ」

「....忘れろ。」

「いや、急にキリッとしても....入って?」

 

はい。どうもすいませんでした。

 

....というかさ、The、女の子的な部屋。ベットの上にはぬいぐるみが居る。数が異常だけど....

 

特に異常なのはこの状況で全然緊張しない事。

 

と、ここまで考えたところで詩が口を開いた。

 

「まずは....改めて、詩と言います。どうぞ、よしなに....お父様。」

「...何故に稲妻式の奥ゆかしさ....」

「まぁ、形式?」

 

目の前で膝まづく詩。行動の意味がわからない。公式の場ではないのにこの態度。

 

「お父様には頼みたいことがあります。」

「畏まってるのはそれが理由か?」

「はい。」

 

心が切り替わる。きっかけは詩の態度、表情。そして....肩を震わせているその所作。

 

「聞こうか....」

「....実は....」

 

そこからの話は普通に拍子抜けだった。正直に言うと作って欲しいものがあると言う。「昔、教えてくれた折り鶴を作りたい」との事。

 

「私は....」

「その前にその話し方やめない?」

「えー?あんなにカッコつけて頑張ってたのに?」

「か、カッコつけてないわいッ!!!」

「笑いを堪えるの大変だった」

 

肩震わせて他のそれかよ?!てっきり何か深刻な事を秘めてるのかと思ったのに....

 

「まぁ、もういいや。それで、誰にあげるんだ?」

「お母さん!」

「....お前、19だよな?」

「?うん」

 

.....もしかして子供っぽい.....というか頭が残念なのだろうか?と考える俺は悪くないと思う。この頃の女の子って普通に反抗期とかじゃないの?親にプレゼントとかいい所14までだろと....偏見なのか?これ偏見なのか?別に悪いとは思わないが、あんなに強いならば金を稼げる訳で、普通にもの買うのが一般だと思ってたんだけどな....

 

「お母さんがね、昔お父さんに貰ったっていう鶴を大事にしてて....」

 

まさかのブーメランかよ?!俺?!俺がそれやったの?!

 

「元人間のお父さんの血が入ってるから....私の寿命がどうなってるか分からないしその前にお母さんになにか残したいんだ....」

「....なるほど....」

 

神に人間、蛍の正体は正確には分からないが多くて3種類、少なくても二種類は混ざっている。確かに心配ではある。親よりも先に死ぬ可能性が普通の親子よりも高い。

 

「人間の方を継いでいるとしても俺よりも先に寿命で死ぬことは無いと....」

「うん。だからお母さんに....」

 

2度目のなるほどをくれてやろう。

 

物品よりも心のこもっている物をって訳か。

 

「....それは、無理かな。」

「ぇ....」

 

断られるとは思わなかったんだろう。まぁそりゃそうだ。当たり前だ。俺だって断る気は無い。ただ一つの、この理由がなければ。

 

「....この世界と俺の居た世界の違いは分からない。分岐してるのか、それとも並列世界で時系列だけが違うのか....そもそも並列世界という考えは合っているのかどうか。何も分からない。」

「....言いたいことは分かるよ。バタフライエフェクトとか言うやつ....」

「本来作り得なかったものを作るのは矛盾....ってまぁ難しいのは置いといて、1番は思い出す事だ。寿命だってあと40年はある。大丈夫だ。」

 

はがゆくおもいながら、せめてと彼女の頭を撫でる。

 

「不安に思うにはまだ早いだろ?」

「....」

 

これ以上の語彙は持ち合わせてない。そして、わかったことがある。

 

「....俺が帰る手段、本当はわかってるんだろ?」

「ッ....なんで....」

「簡単だよ。普段、世界を渡っているなら知ってるはずだし、その推測を裏付ける言葉は詩自身から貰ってる。」

 

とか偉そうに言ったけど気づいたのついさっきなんだよなぁ....さすがに見栄張りすぎた?ちょっとキモイやつになってないか?おれ!

 

「言ってただろ。記憶が消えるかもしれないって」

「....ごめん。」

 

何に対しての謝罪か分からなかったがとりあえずうなづいておく。

 

「さて、と....蛍のところ行ってくるわ。別れの挨拶ぐらいしなきゃな。」

「....リビングで待ってて。あたしも行く。」

 

涙をふいて少し微笑みながら言うその言葉。吹っ切ることも何も出来ていないその仕草が妙に心にざわつきを残す。

 

だからといって何をできる訳もなく、ただ、ドアを開けて詩に背を向けるしかできなかった。

 

「情けねぇな....」

 

そう自身を責めながら。

 

 

__________________________

 

待ち始めて早15分。

 

俺の知ってる物よりも傷んだ天井。詩の成長記録のような家の柱に刻まれた線に見覚えのない家具。1番目を引いたのは蛍の形をした石像。

 

そんなものを飾るタイプではなかった気がするけど....これも世界の違い故なのか。

 

「ああ、それ?ママの七天神像だよ。」

「はぁ?!?!」

 

思わず声が出る。

 

七天神像って....え?神なの?え?神だったの?可能性は頭にあったけど....

 

「....思ってる様なものじゃないよ。まぁそれも旅してればわかると思う。私が産まれる前からのだから私もママに聞いただけだけどね?てへ」

 

てへ、ちゃうわ。謎が解決したら新たな謎、多数出現。頭痛くなる。聞かないと決めたのに早くもその決意が揺らぎ始めていた。

 

よし。一つだけ聞こう。一つだけ....ほんとに一つだけだ。それ聞いたら終わるから。ほんとに、それ以上聞かないから。

 

「....なんでほかの像は本物より美人だったりするのにこの蛍のだけ本物の方が可愛いんだよ。おかしいだろ。」

 

そう言った瞬間、詩はあからさまにうへぇと言った顔をして後ずさりをし始めた。

 

「な、なんだよ....」

「逆に聞くけどなんでそれで惚気けてる自覚ないの?」

 

惚気けてないからとしか言いようがない。ただ事実を言ってるだけだ。疑問を口にしただけだ。何がいけないんだよ、言ってみろよ!!!

 

「充分美化されてると思うけど....」

「アホ言え。いいか?本物はもっと目が優しげなんだよ。大体なんだこの目じり。正直いって作者の正気を疑う。剣を握ってる手もそうだ。もっと指はすらっとしてるだろ!こう、小さくて華奢だけど沢山の責任をもってて、だから頼りがいがあって....でも見てるだけで頭撫でられたくなるような....」

「長文引くわぁ....というかほんとに引くわ....」

 

ついに部屋の端っこまで逃げられた。それに対して俺も負けじと蛍の魅力について話していると不意に詩の目線が俺の後ろに向いて「あっ」という声を上げた。

 

それにつられて俺も後ろを振り向くと、そこには....

 

「やっべ....」

 

顔を少し赤くしてニコリと笑う蛍がたっていた。椅子の足を持って振り上げた形で。

 

「続けて?」

 

その華奢な指はあろうことか椅子の足をしっかりと握っている。

 

「お、俺は何も悪いこと言ってない!」

「ふぅん....?これ、ナギが作ったのに?」

「俺が作ったのッ?!?!」

 

作者の正気を疑うって、自分で自分のこと疑ってんじゃん?!い、いや、でもしょうがないだろ!石像ごときに蛍の魅力を再現出来るはずもないし....

 

「作ってくれた時、上手く再現できたって満足げだったのに....その理論で言うと、私と違って他の世界の私はさぞ美人で可愛いんだろう....ねッ!」

 

遂に振り上げられていた椅子が俺の頭上に下ろされる。

 

そして、強い衝撃と共に....お約束の暗闇の世界へご招待される..ことはなかった。

 

「....それで?」

「へ?」

「続きは?」

 

蛍さんも欲しがりねぇ....でも対価なしにって言うのは少し....ねぇ?そうそう。例えば....

 

「語尾にゃしてくれたら話す。」

「続き、聞きたいにゃ」

「躊躇なしかよ....めちゃくそどちゃくちゃ可愛いけども....」

 

なんか、もう完全に俺の無茶ぶりに慣れた感じだな....詩が頭に手を当ててヤレヤレモーションしてるのを見ると普通に娘の前でもやってんのか、この世界の俺。

 

恥ずいからやめてくれる?!はい、そこ、ブーメランとか言わない。

 

「あ、そういえばパパに聞きたいことあったんだった。」

「ん?」

「嫌いな人間のタイプは?」

 

時が止まった。いきなりの話題変更、蛍の褒めポイントの話から一転、転がり落ちてネガティブな内容に....

 

「好きな人にアタックして迷惑をかけた挙句、何もしてないのに好きな人を失いそうになれば私を責めてくる人。」

「なんでそんなにヤケに具体的なの?え?今後そんな奴が出てくんの?!盛大なネタバレだって?!?!」

 

何故か盛大なヘイトが誰かに向けられている。

 

「来るなって言ってるのに....力がないくせに近づいてきて人質にされて足を引っ張るあの女狐....ッ」

「し、詩?蛍の後ろに般若が見えるんだけど....」

 

確かに全面同意だけど....心配なのはわかるけど人質になられたらこっちの生存率まで下がる。余計なことに頭を使わないと行けなくなるし戦闘に集中もできない。

 

「ってそんなのはどうでも良くてッ!....」

「あ、ああ....ごめん。私もちょっと我を忘れてた。」

 

まぁキャラ崩壊並に怒りマークが浮かんでいたのは確かだ。クールのクの字も無かった。

 

「あはは....えっと.....俺も、覚えてたら、これ真似していい?」

 

そう言いながら蛍の姿をした七天神像に触れた。その瞬間焼けるような熱さが手に伝ったかと思うと次の瞬間俺の体が光り始めた。

 

「なんだぁ?!?!?!」

「世界を渡る道具ってそれなんだよ!何やってるの?!パパ!」

「先に言ってくれよ?!?!ってかそんなもんリビングに堂々と置くなッ!」

 

エコーのように音が伸びて聞こえる

 

そして....

 

意識が深い海に落ちた。

 

ほんとに、解せぬ....

__________________________

 

 

目が覚める。まだ外は暗さが残っている朝方。

 

まどろみの中、隣に感じる温もりに身を任せる。至福のひととき。これを手放すなんて考えられない。

 

思えば最初の頃はこうなるとは思っていなかった。割と恋心に気付いたのは初期の頃で、そこから付き合う関係になるまで時間はかからなかった。あれからもう随分経ったような気がする。けれど実際はまだそんなに経ってはいない。濃密な時間とはこのことを言うのだろう。

 

「すぅ....すぅ....」

 

横にいるパートナーに身を寄せる。さすがに顔に触れたりはしないけれどやっぱり外ではこうも行かない。

 

「....」

 

無言の中に混じる自分の吐息のせいで少し今朝は気分がおかしいようだ。

 

隣の寝息もその要因だろう。

 

2人きりのこの空間。誰にも邪魔されないこの瞬間。

 

いいのだろうか....きっと相手は気づかないだろう。

 

いい、よね....?

 

 

そう自分自身に言い訳して唇を舐める。

 

「....っ....」

 

胸に広がる甘い何かが全身に広がる。体が震えそうになる。後にも先にも、自分がこんな気分、こんな状態になるのはこの相手以外に無いだろう。

 

「あぶ....ない」

 

そう呟いて自分に言い聞かせる。

 

お互い、そろそろ我慢するのも限界だろうと分かってはいる。このままだと間違いなく約束をどちらかが破って相手を襲いかねないと。

 

正直いって理性が働くのも今のうちだ。

 

ああ、やっぱり....好きだなぁ....大好き....いや、愛してる。

 

「ね、ナギは?」

 

返答は当然ながら返って来ない。

 

愛されている自覚はある。それをほかの人に恥ずかしげもなく言える自信もある。

 

そもそもナギは分かりやすいのだ。私のことになるとすぐ顔に出る。可愛いとか見とれてる時とか特にだ。それがちょっと嬉しかったり....いや、だいぶ嬉しいけどね....

 

だから、本当は平然と、恥ずかしく無く言える言葉でも恥ずかしがったり、恋愛ものの本で出てくる仕草をわざとしたりするのは内緒だ。

 

「あざとく....ないつもりだったんだけどな....」

 

ドライだって自覚していた。長年生きてきた経験からかちょっとやそっとじゃ強い感情は抱かないつもりだった。

 

そりゃ嬉しいとか悲しいとかは普通に感じる。驚きもするし嫌がることだってする。でもそれはどこか空虚だった。

 

 

景色が色づくってこういうことか....と。そう思った。

 

 

隣にいるだけで全てが輝いて見えるとはこういうことかと理解した。

 

小説などの文法的な表現が本当に正しかった。今、私はこの愛しい彼と共に、充実した毎日を送っている。

 

でも、でもだ....

 

「充実してても、満足とは限らないんだよ?このっ....」

 

額を小突いてみる。

 

誘惑して、その気になっても私のことが大事過ぎるせいで一向に手を出してこない彼を責めるように優しくおでこを押す。

 

「ほた....るぅ....」

「....ふふっ....なぁに?」

「い、す....おろし、て....」

「ほんとになんの夢見てるんだろう....」

 

やばいなぁ....そんな可愛いこと言われたら我慢できなくなる。

 

やっぱりちょっとくらいは....いいか....

 

ちゅっ....と言う湿った音を部屋に響かせて頭を軽く撫でた。

 

「今日は、ここまで....ね?ナギ。」

 

甘やかされるのも好きだけど、やっぱり甘やかす方も性に合っているようだ。

 

一区切り、このままだとこの先に行ってしまいそうなのでとりあえずベットから出て朝ごはんを作ろう。少し早い気もするけど....

 

そう考えて体を起こしたその瞬間。

 

体を支えていた手を掴まれる感覚がした。手が滑って支えを失った体はあっけなく元の体勢に戻ってしまう。

 

だが驚くべきはその先のナギの行動だった。

 

「今回だけだぞ....」と寝言を言いながら....

 

「んぅっ?!んんっ....」

 

私の唇が開いて少し強引に何かがねじ込まれる。

 

その正体は....

 

 

ナギの指だった。

 

「んぅう?!」

 

もう心の中は阿鼻叫喚。意識があったらナギはこんなことする前に気絶する。となるとこれは起きている訳では無い。

 

「おい、しいか....?」

 

何聞いてるの?!

 

焦った私は少し勢いをつけて自身の口からナギの指を抜いた。

 

少し光るその指....そして顔が熱い私。

 

その状態では誰かに見られたらもう言い訳ができない。

 

「どう、しよ....」

 

頭が回らない。自身の失態は無かったと言うのはわかる。なら、これはからかう材料にするしかない。それしか方法はない。....ない、のに....

 

「....」

 

あろうことか私は興味に誘われてナギの唇に指を添えてしまった。

 

ぱくっ....そんな擬音が聞こえるほどにあっけなく、想像通りに優しく啄むようにハムハムされる私の指。

 

「えっ、と....」

 

創作物のように舐めれただけで声が出るものではないけれど、やっぱり気分は別で....

 

その油断した瞬間襲ってくる背筋がぞわわっとなる様な感覚。

 

「ッ....」

 

....ナギの口が動き始めたのだ。

 

これ以上はやばいと思い、速攻指を抜く。

 

 

そして逃げるように寝室を後にした。

 

 

__________________________

 

 

 

夢の中で失敗....否、俺は今、絶賛現実世界にいます。

 

「そりゃそうだよな....今考えたら普通におかしい事ばかりだったわ....」

 

夢だったという事実にさほど驚いてはいない。ただ、ほんとに、蛍の七天神像が何故に世界渡りの扉になっているのか。蛍の七天神像(作者:俺)というのも普通に考えて頭悪い。どんだけ俺、蛍が好きなんだよ....

 

普通に現実世界に戻っても記憶なくなって居ない。まぁほんとに夢だったならば1時間後には内容を忘れてるんだろうが....

 

それに、あの二人は健全な俺が現れて、それに対して驚きもなかった。

 

「蛍〜....」

「....えっ、と....」

 

ひょこっと顔をドアの隙間から出す彼女。何それ可愛い。

 

「子供の名前さ....(しおり)....」

「こ、ども....」

 

さっきまでのおっかなびっくりの様子とは打って変わって少し朱に染った頬。たずさえて....

 

「ナギ....」

 

何かを堪える様に俺の名前を言ったあとに....

 

一言....

 

「先にお風呂、入ってr....」

 

 

視界にノイズが走った。

 

その瞬間視界が暗転した....

 

 

 

そして、

 

「あ....れ、詩ってなんだっけ....」

 

事実がまたひとつ消えた




はい。どうだったでしょうか?うん。初めは詩の大人の姿を書こうとしたんですがキャラ設定があまりにも平凡....悪く言えば量産系アンドキャラの角が経っていないため速攻ネタ切れ。もう、これスランプというより自業自得というレベルに筆が進まないのなんのと....

まぁ夢落ち風ということで本編で詩がどんな性格かは確定してないということで一つお願いしたく....もう一度キャラを練ります。使うか分からないキャラを....

良くも悪くも本作品の蛍が俺の好みどストライクなんですよねぇ、これを超えるものとなると....ん〜難産....

というわけで....どういう訳か自分でもわからないですが恒例の感謝を....

猪狩の兄貴さん、サンさん、感想あざます!なかなか南山から抜け出せない&モチベ低下中の私に毎回毎回感想あざます!

お気に入り登録もだいぶ増えました....人気タイトルの二次創作なだけあって読んでくださる人が多くてほんとに嬉しい限りです。

次回投稿の本編、[蛍、荒れる]

ぜひこの作品をよしなに....では

稲妻編の先、見たい?

  • 見たい!
  • 最近飽きてきたからいい
  • とりあえず空救済まではやれ
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