近所のクールお姉さんポジの英雄が俺の前だけ甘えてくるんだが?   作:だけたけ

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はい。どもども。こんにちわー。やっと本編です。お待たせしました....

最近やっと筆の速度が戻ってきたところでございます。と言ってもまたすぐスランプ入るので期待はできないけども....

というわけで見てくださっている皆さんには本当に感謝です。見てくださっているという閲覧数とかが無くなれば一瞬で書くのを辞める自信しかありません....

という訳で本編どぞー


30話 天使の優しい激昂

「この感情....久しく感じていなかったけど....」

 

響く声。この無窮の空間でひとつの孤独が終わる予感、心を締め付ける何かがそこにはあった。

 

意味を求めるのは不可能でも考え続けた、その答えがそこにはあるはずだった。

 

「ここがお前()の中でゲームの世界だと思うなよ?視界に走ったノイズは決してそんな生易しいものじゃない。もっと身近で、残酷な....」

 

誰に向けての手向けなのか。無自覚なままこの口は勝手に動く。後悔か懺悔か、それとも恨みか。

 

自身では到底理解のできない数多の感情が頭の中を混乱させる。

 

それでも懸命に正解を探すように、まるで小さなネジが砂場に落ちてそれを見つけようとしているかのように。ただ淡々と決して伝わることの無い言葉(想い)を口にした。

 

「こんな事実、受け入れたくなかった。けどお前も経験しろ。俺の後を追って地獄に着いて来い。そこで待ってる結末を見ろ。それまでは....せいぜい幸せな夢を見るといいさ。」

 

経験は楔に、心の闇へと変容する。

 

だから....

 

 

だから、お前は呑まれるな。

 

例えこれからが敵になろうと...いや、俺が蛍の敵になろうと....

 

ともかく、決して間違えるな。

 

「利用しろ、都合のいいものを受け入れろ。絶対に....違うと思っても....間違えるな。」

 

そんな言葉と共に暗闇の中に怪しく佇む思考は砂に溶けるかのように霧散した。

 

 

 

 

__________________________

 

 

「見つけた....凪様....私たちの希望....」

 

雅な様子に幼さを持ち合わせた唯一無二の魅力を持ったその女性の目線の先、

 

そこには....

 

「ところで....これはなんなのでしょうか....」

 

草むらに隠されるように置かれたツボ。そこに貼られている紙には汚い稲妻語で「触るな!触ったらお前の大事なものも触るからな?!」という言葉。

 

語彙力皆無....ああ、いや、じゃなくて、ゆ、ユーモアに溢れたお方のようで....

 

「それにしても大事なもの....とは....」

 

無意識に自身の胸に手を伸ばす。

 

い、いや、そんなことがあるはずない....けど一時期、凪様はファデュイに所属していた情報は掴んでいる。となれば多少は紳士からかけ離れていたとしてもしょうがないのでは無いのだろうか?

 

「やめです。私らしくない思考が....いきなり見えた希望に少々興奮していたみたいですね....」

 

何かしらの方法でこのツボの中に入るところを見たと部下は言っていたのだが....正直にわかには信じられない。

 

とにかく、観察は続行....一先ずここは出直そう。

 

「ったく!2人して酷いぜ!オイラだって居るのに最近空気みたいになってて....テイワットの案内はオイラの役目だろ!」

「ッ?!」

「うえぇえ?!?!な、なんだ?!」

 

後ろから声がした。染み付いた武道の心得はそういう状況の時、どうするか。

 

答えは分かりきっていた。驚き、体が一瞬強ばった私は扇子を手放し、抜き放ちざまに後ろの声の主へと刀の刃を突きつけていた。

 

正直、しまった....と思った。声は子供特有の高い声、それでいて少し拗ねるような言葉....

 

無害

 

そんな言葉が浮かんできた。

 

「ご、ごめんなさい!....つ、つい....」

「ついじゃないぞ!本当に非常食になる所だったんだからな?!」

 

非常食になる....

 

プンスカと言わんばかりに怒る子供の前でそう、心の中で反芻した。

 

「ちょっと待ってろ!」

「え?」

 

こちらを指さして言葉を吐いたあと、ツボの方にふらっと飛んでいく女の子....男の子?

 

「ッ、待っ....て....」

 

その瞬間、姿が消えた。

 

一瞬光が出たと認識した瞬間、その体は光の粒子となって元からいなかったかのように不可視になった。

 

「....」

 

そして待つこと、すでに5分。たったそれだけの時間なのに妙に気が休まらない。状況的には喜ぶべきものなのだろう。どんな形でさえ凪様に接触できるのだから。

 

懸念点は一緒にいたという女性の方だろうか。何を持ってして、何を理由に凪様と一緒にいるのかは分からないが....

 

「ほら、ナギ!あいつだ!あいつがッ!」

「わかった!わかったから引っ張るな!転ぶぞ?!俺、転ぶぞ?!」

「ぇ....」

 

先程の剣を向けてしまった子供に連れられた一人の男。流れ的に凪様が出てくるのは予想して覚悟も決めたはずだった。

 

「んぁ?そういや、お前どっかで....」

「ぅ、ぁ....」

 

問題は....乱れたパジャマ姿だったこと。そして登場早々に自分が転ぶぞとか言う情けないことを口にしながら....

 

おかしい。これは絶対におかしい。私の中にある記憶ではもっと聡明で思いやりのある素晴らしい方だったというものがある。なのにこれは....

 

「....お久しゅうございます。凪様。」

「誰?」

 

切り替えなければ....

 

武の名家の娘で政治にも関与していたことが幸いしたのか、思いのほか早く心を切り替えることが出来た。

 

しかし、できただけだった。

 

心の持ちようは自身で何とかなる。しかし目の前の事象までは行動を起こさずしてどうにかなるわけも無い。

 

「私は....」

「....待て....お前....あや....か...、か?」

「ッ?!....ご慧眼、流石でございます。」

 

驚いた。最後に会った時はお互いにまだ幼子の頃。かく言う私もそこまで明確に覚えている訳では無い。小さい頃父が凪様と私のことで頻繁に話しているのを聞いていたのがなければ私もそこまで重要視していなかっただろう。なのにも関わらず目の前の彼は私を覚えていた。時が経って容姿など変わっているはずなのに。

 

観察眼か....恐ろしい程に冴え渡っている。

 

「....お前も俺を追って来たのか?」

「い、いえ。ただ、進言したいことがあったため、馳せ参じた次第です。」

「....はぁ....まぁ敵じゃないことはわかったからその堅苦しい言葉使いをやめろ。稲妻の作法なんてとっくに忘れた。」

 

とりあえず上がれ。そう言って壺に視線を向ける彼の目は....

 

 

__________________________

 

 

「それで....この人は姉?それとも妹?」

「いや、どっちでもない。昔にちょっと何かがあった人。」

 

そんな事しか覚えていない。普通に名前が出てきたのは奇跡だ。顔は見覚えあるな....とか服装..とか言う情報でやっと出てきた知識。ただそれだけ。大方の覚えているものは前世でのキャラとしてのものだけだ。

 

「ってなわけで....それで?」

「はい....そ、その前に....」

 

扇子を口の前に持っていき戸惑ったように声を上げる来訪者。ぶっちゃけ気が滅入るって言ったらありゃしない。ただ、何か引っかかる。こいつの話は聞かないと。そういう感覚....

 

「元許嫁として確認しておきたいことが....「いたっ」」

「蛍?!」

 

気になる単語があったがそんなことは後回しだ。後ろのキッチンから聞こえた「痛い」の言葉。それだけで俺が飛んでいくのに理由は十分。

 

今行くよッ!蛍ちゅわぁん!

 

キッチンに飛び込んだ俺の目の前には胸の前に両手を置いて左の薬指の先から血を滴らせる蛍の姿....

 

周りからは戦闘をしている上でこの怪我は大したことないと皆が言うだろう。

 

「手を見せろ!....あぁ....切っちゃってるな。」

「だ、大丈夫だよ?」

「んな事言ってられないだろ。細菌入ったり....化膿なんてしたら目も当てられない....」

 

 

そして周りを見渡してなにか無いか確認する。これが行けなかった。全体を見渡すために狭まっていた視界を広げた瞬間、俺と蛍の体勢が人様に見せるものでは無いと気づいてしまった。

 

左腕で肩を抱き寄せて蛍を持たれかけさせ、右の手は蛍の切ってしまった手を持ち上げている。

 

「心配しすぎだって....ほら、もう少しで出来るからテーブルで待ってて?」

「....あい」

 

この状況にそんな言葉をかけられるともう離れるしか洗濯しなくなるじゃんか....

 

「な、仲がよろしいのですね。」

「まぁ....嫁だし....いたっ?!」

「よ、よめ.....?」

 

キッチンからスポンジが飛んでくる。視線を向ければ顔を真っ赤にしておたまを振りかぶる蛍の姿。

 

「ち、ちょっと待った?!」

「ねぇナギ。私も恥ずかしいんだよ?」

 

このやり取りもイチャついているようで恥ずかしいと気づいた方がいいと思います。蛍さん。

 

言葉にするのを禁止されたので代わりに視線で伝える。

 

おい、俺の蛍可愛すぎるだろ?!とか....クールだけどあれ、人前だけで2人だけの時、デレデレでだな....とかそういった意味を込めて....

 

「いだぁっ?!」

「妙にキラキラとした目で相手を見ない!もう....ごめんね?困らせちゃって....これ、良かったら食べて?」

 

....

 

........

 

............

 

俺の前に置かれたのはパスタ。ミートソースがかかっている。蛍のことだからこのミートソースも手作りなのだろう。....問題は目の前の女性の前に置かれたものだ。

 

明らかに俺のものよりも赤い。トマト成分よりも禍々しい何かがそこにはあった。

 

「....蛍、真剣な話らしいんだ。だから....」

「真剣な雰囲気になってないのナギのせいだけどね。」

「あっ、これ美味いぞ!」

「お粗末さま。」

 

不利になれば話題をそらす。これ、処世術です。世の中を渡るにはこういうものも必要なのです。別にいい訳じゃなく本当に....

 

「許嫁について後で詳しく聞かせてね?」

「....」

 

逃げられていなかったらしい。

 

と言っても俺、普通にそのことについて知らなかったんだが?元って言ってたし多分俺が家出してから破棄になったんだろ。というのは予想が着く。

 

となればこの真剣な話は予想が着く。

 

断固拒否!また許嫁になるとか拒否!

 

「という訳でして....お出口は後ろ手になります。」

「す、少し待ってください!」

「待たないッ!俺は蛍と結婚するんだ!それ以外の人を受け入れるほどクズじゃないし甲斐性も無いッ!あなたは世間一般的に普通に美人だと思うのでいいご縁があると思いますッ!お帰りください!」

「ち、違います!は、話を....話を聞いてください!凪様!」

 

何が違うと言うんだ。このラブラブ恋仲を引き裂こうとしたってそうは行くか!

 

「聞かないもーん!知らない!今、この瞬間から俺の耳は無くなりましたッ!」

「ナギ?落ち着いて。」

「あい。」

 

はい。そこ。耳あるじゃんとか言わない。

 

あの、嬉しいんだけどね?俺の頭撫でてなだめないで?2人きりならもうそれは堪能するけど今、目の前に人がいるのよ。普通に恥ずいの。わかる?!

 

「それで?」

「あ、はい....」

 

なんか頭が痛いとか言いたげにこめかみをつまんでいるんだけど....?痛いのはこっちだ!!

 

「凪様....そして旅人....この稲妻をどうかお救いください。」

 

 

はい、せーの

 

「「はい?」」

 

 

__________________________

 

 

あの驚きからわずか30分。

 

蛍の計らいでお嬢様がこんな勉強まで来たことで疲れているだろうと風呂を勧めて、一泊することになった。渡りに船だったのか「お世話になります。」と大して遠慮もせずに受け入れた彼女。頭が良く賢い。そんな印象だったのに後先考えずにこちらに来た辺り、だいぶ切羽詰まっているのだろう事が簡単にわかる。

 

「さてと...そろそろ真剣に話をしようか....」

「うん。最初からやろうね?かっこいいナギ、もっと見たいから」

「うぐっ....え、えっと....許嫁とか言うのは....」

「ああ、それはもういいよ。」

 

....うん。知ってた。

 

似たようなこと、何回かあるし、その度に俺のこと信じてくれてるから....

 

って考えたら俺、蛍に救われてるな....俺に向ける愛が重いとかたまに悩んでるみたいだけどその愛のベクトルが男の俺からしたら心地いい方向にしか向いてない。これはもう年の功というものだろう。蛍は自分の感情と付き合うのが恐ろしく上手い。

 

今まで経験したことの無いこと以外。

 

だから魅力的なんですよ?!分かります?!普段クールでお姉さんみたく引っ張ってくれるのに今まで恋愛を経験して来てないからそれに起因する感情についてはもうほんとッ!

 

....ん?ならなんで愛のコントロールが上手いんだ?俺の他にそれをつける相手が居た....?!

 

なんてな....俺は知ってる。これ、焦り損だって。結局空とかいうオチなのは知ってんだ。

 

「蛍は....空よりも愛してる相手....って....」

 

そう言った瞬間、蛍は驚きを浮かべた後、少し下を向いて頬を染めた。俺の顔を見てから。ここ大事。俺の顔を見てからッ!!!!

 

「うぐあッ?!」

「なんで?!」

 

もうなんかいてもたってもいられずに自身の頬を殴ってしまった。ああ....痛い....可愛い....

 

「蛍。」

「えっと....んぅっ....もうっ....」

 

我慢できずに唇を奪う。

 

「ありがと。」

「いいよ。突飛なこともナギが私の事好きすぎてたまにうわぁぁ!ってなることも知ってるから。」

 

そんなナギが好きだから。そんな言葉を付け足す蛍。ほんとに、こいつ....襲うぞ?!約束とかかなぐり捨てて襲うぞ?!デキ婚になるがいいんだろうな?!

 

「....蛍。こっちゃこいこい」

 

そう言うと何も言っていないのに当然というように椅子に座る俺の上に蛍が座る。見たか?!この流れる美しい流れ!長い時間をかけてこれを常識化した俺の涙おも流れる努力を!

 

内心歓喜しながら表面は平然を装って両手を細くて柔らかい蛍のお腹の上に重ねて抱きしめる。

 

「すぅ....」

「....そんなにいい?この体制。」

「そりゃぁな。蛍を守ってるって感じだし....いい匂いするし....離れたくない。」

 

本心だ。もう何度嗅いだか分からないこの優しい匂い。驚くべきことにこのミルクのような匂いは何かをつけている訳では無い。もう生まれながらの天使だろ。なんなんだこの最強最カワ生物。

 

「匂い....何もつけてないんだけどなぁ....」

「むしろつけたら怒る。」

「ナギは変態だねぇ....」

 

そう言いながら俺に背中を押し付ける蛍。顔を横に向けて俺の匂いもスンスンと嗅いできた。

 

「....どんな匂い?」

「ん〜....内緒。」

 

そりゃない....と嘆く訳もなく。このやり取りだけで満足な俺。

 

ワンピースというラフな格好をした蛍。このアングルだとやっぱり相手の胸元は見える。

 

「....蛍、その....見えてる。」

「....ッ....」

 

慌てて蛍は隠したが、少し間を置いて腕の力を抜くのがわかった。

 

「....その、見る?」

「....お客さんがいるからやめとく。」

「ヘタレ。」

 

そんなこと言われたってと愚痴ると楽しそうにふふっと笑う蛍。

 

「あーあ。チャンス無駄にしたね。ナギ。」

「大丈夫。いくらでもチャンスあるよ。まだまだ旅は長いから....」

「そうじゃなくて....」

 

どういうことだ?と思っていると不意に蛍が1度降りて今度は向かい合わせて座ってくる。そしてそのまま俺に抱きついできた。

 

伝わってきた感触は....柔らかい。のみ。その感触を邪魔するものはせいぜいワンピースと俺の来ている薄いTシャツという名の薄い布2枚だけ。

 

そう、2枚だけ。

 

モロに胸の辺りに感じる一際柔らかい物体2つ。

 

「........これは....無駄にしたかも....」

 

俺の気絶なら何度でもくれてやる。その対価さえあれば俺は何度だって蘇る!

 

そんな馬鹿な思考と共に今あるこの幸福を噛み締めて背中に手を回そう。

 

「まぁ許嫁とか....理解はしてるけど....」

 

そんな言葉が聞こえた。その瞬間....首筋の下らへんに小さな痛みが走る。

 

「....かぷり....?」

「カプリ?!?!割と本気で噛んだよね?!」

 

ちくしょう!!可愛いなッ....あと耳元で囁かないでくれます?!全身の力抜けるんで!

 

そして、その力の抜けきったぼーっとした目の先にいたのは....

 

口元を両手で覆い、耳まで真っ赤にして食い入るようにこちらを見つめる綾華の姿だった。

 

「....」

 

死にたい。

 

 

 

__________________________

 

 

「というわけでナギが使い物にならなくなったから私が代わりに聞くけど....」

 

隣に座る石化したナギを見る。

 

まぁ恥ずかしかったといえば恥ずかしかったが、今は....正直敵対心が勝っている。

 

今までナギと距離の近い女性は沢山居た。その度に少しの嫉妬はしてきた。でも警戒はしなかった。それはそもそもナギが相手を姉妹としてしか見ていなかったということもあるが、1番はその女性達にその気が全くない事にある。あくまで姉弟として親密に接するだけでそれ以上のことは無いのだ。

 

だが目の前のこの人は違う。

 

元許嫁だと言った。その言葉の真偽は定かではない。反応からしてナギ本人も把握してなかったのだろうが、私の心はかつてないほど焦っている。

 

「は、はい....えっとまず自己紹介....からですね。神里綾華と申します。」

「....蛍です。恋人のナギと一緒に旅をしてます。」

 

「恋人」を強調して言うが、それに対しての反応は残念ながら何も無かった。

 

「なるほど、では蛍さん....この国の今の状況はどこまで知っておられますか?」

「鎖国してるのとあと神の目を回収....」

「その通りです。その中の一番の問題は目狩り令....つまり稲妻幕府が神の目の押収という暴挙にでたこと....」

 

そしてひとつ唇をお茶で湿らせてから綾華は淡い水色の髪を揺らし、一言、言い放った。

 

「つまり、聞いていただきたい話というのは、指示を出した雷電将軍の事なのです。」

「....それは黒幕がナギのお母さんだって言ってるんだよね?」

「はい。その通りです。最も、黒幕と言うには将軍は矢面に立ちすぎな気もしますが....」

「....」

 

厄介なことになった。ナギが気絶している今、判断は私がする他ない。だがその内容はナギが判断する他ないのも確か。正直に言うともうこの時点で判断するべき人は私じゃなくてナギなんだけど....なんかこの人に対抗心みたいなのが出てきてるんだよなぁ....

 

さて、どうするか....

 

「....とりあえず詳しく聞かせて?」

「はい。と言ってもそこまでややこしい事ではありません。私はこの政策に意を唱えたい。」

 

ナギと私の目的とも合致している。ナギの母に会うこと。そして説得。外から来た私はともかく息子である彼の言葉にはきっと重みがあるはずだと。私はそう思う。

 

過去のことは聞いた。母に突き放されるようなことを言われたことも。家出したことも聞いている。私はそれを疑わないし、嘘をついているとも思わない。

 

でも私みたいに記憶喪失でも無い、人は母、ひいては家族に対して特別な感情を持つものだ。だから....

 

おこがましくても、厚かましくても、私は彼にもう一度母と向き合って欲しい。

 

そこまで考えたところで綾華は爆弾を投下した。

 

「私の組織する軍の、旗印になって欲しいのです。」

「....は?」

 

軍?誰かの下に着くのはいい。私だって彼だってモンドで騎士として戦った。

 

「目的は将軍の討伐、できなくともこの政策の撤回です。」

「....」

 

かつてないほどに頭に血が登り、激情という名の怒りが頭を駆け巡って自分の知らない自分が出てきたことだけだった。

 

「ふざけないで。」

「え?」

「討伐?ナギにその母を討てと?」

「不満は最もです。ですが目的は一致してるはず、このままでは稲妻は「視点が違う。」ッ....」

 

ああ、ダメだ。先入観のせいだろうと理解はしている。でも私にはこの女が悪女に見えて仕方がない。感情をコントロールできない自分にも腹が立つ。

 

でもこの女は言ったのだ。今まで奪われ、失って、理不尽な目にあい、何も分からずに世界に身を投げ出さざるおえなくなった彼に。勇気をだして母と仲直りをしようとするナギに、その母を殺せと。

 

「私たちにとって稲妻はどうでもいい。重要なのはナギがこの先、遺恨を残さずに幸せかどうか。ナギを捨てた稲妻に私がここまで彼を引っ張って連れてきたのは全部これが理由。」

「....」

「私が英雄と持て囃されていたとしても私も譲れないものがある。正義の味方にはなれない。」

 

以前の私なら二つ返事だっただろう。何せ、その頃の私には個人的に守りたいものなどひとつもなかった。あったのは漠然とした正義感と自身を求めてくれる環境。しかし良くも悪くもナギが私を変えてくれた。自身の感情を優先してもいいと教えてくれた。そしてその感情の居場所をそのナギ本人が作ってくれた。

 

私はナギを愛しているよりも前に恩がある。その恩と愛を投げ出すほど私は利口では無い。

 

ナギが聞いていなくて良かった。心からそう思う。

 

なんやかんやいいながら自身の手で掴める理想なら自身を犠牲にしたって手を伸ばす不器用なお人好しだ。

 

だから私はそのナギが苦しまないように立ち回る。

 

あとは....

 

まぁ普通にムカついたからだけど....

 

「あなたはできなくとも政策の撤回って言ったよね?」

「....えぇ、言いました。」

 

感情のままにテーブルにダンッと手を起き少し立ち上がる。

 

「私は....ナギをこれ以上苦しめるような選択はしない。討伐云々がなくともそんな妥協案を提示するような人の下にはつかない。」

「....そう、ですか。」

 

これで終わりだ....

 

そう思った。言いたいことは言った。まだ言い足りないがこれ以上はただ単に私の感情を叩きつけているだけになると。でも....甘かった。舐めていたのだ。彼女の策を、知略を。

 

「それを聞いて安心しました。」

「....は?」

 

何を言われたか分からなかった。安心?何処がだ。

 

何とか折り合いをつけた感情にまた火がくべられる。わなわなと震える手を抑え、震える声を務めて冷静に....

 

「試して申し訳ありませんでした。」

「なに、を....言ってッ....」

「....」

 

目の前の悪女は先程の動揺は何処へ消えた?と言わんばかりの冷静さでこちらの目を見てくる。その瞳は少しも勢いがおとろえることを知らぬかのように燃えているようだった。

 

「私に....自分に味方する者は多くありません。私兵の中に毒が入り込んでは一瞬で希望が潰えてしまう。それ程に小さな力しかありません。」

「だから....試したと?....ッ」

「はい。旅人を....蛍さんを信用したかったのです。謝罪します。本心ではないとはいえ、想いを踏みにじるような行為....誠に申し訳ございませんでした。」

 

喉の奥から変な音がなった。頭が真っ白になる。涙が出てきて...とめどなく滴るそれは私の感情を明実に物語っていた。

 

ああ....もうダメだ。

 

我慢などするべきではなかった。私は甘えていた?ナギと過ごすうちにここまで腑抜けたのか、私は。

 

もう、いいか。ぶちまけよう。

 

全て、自分の口で、自分の感情でこの目の前の女を....

 

「このッ....」

 

こんな姿、ナギに見せられないな....

 

そんな思考が心のどこかにあった。しかしそんな考えも赤い怒りに塗りつぶされていく。

 

「このッッ!!!「ストップ。蛍。」ッ?!」

 

怒りで歪んだ顔、その目元から口元への湿った感覚。

 

「ッ....」

「ありがとう。....神里、その話受けよう。」

「ナギ?!」

 

そんな困惑の声を気にせずにナギは目の前を見すえてい.た。

 

「....」

「....」

 

ふっと体が浮いた。無言で私が抗議するとナギは私の体を自身の上に置く。そのまま体に腕を回されてぎゅっとされれば私はもう何も言えなくなる。ずるい。

 

「まだ誰にも言ってないけど、俺は親を殺すことも視野に入れてる。稲妻とか正直どうでもいいけど....あいつと目を合わせたら多分一目散に斬り掛かりに行く自信しかない。」

「それは....ッ....」

「はい。御身が受けた仕打ちを考えればと前のことかと思います。」

 

目の前の女は分かっていない。ナギの目尻が少し下がったことを。

 

多分ナギは迷っているのだ。自身から母への恨み節を言うのは何も感じないのに他人からそれを肯定されると少し引っかかる。そんな様子....

 

多分、ナギは母のことを恨み切れていない。一縷の望みがあるかもしれないという可能性。それがついえるまでこの迷いは消えないのだろう。

「雷電将軍の扱いは俺に任せてもらう。」

「異存ありません。」

「....」

 

正直納得は行かない。当たり前だ。

 

でも、敵だと思っていた相手が実は違ったとかいう夢物語を....成すのは英雄の役目。私が...

 

「ってことでお前、今日泊まれ。」

「え?」

 

覚悟を決めようとした私を他所にナギが何気なく出した言葉。それにこの女....いや、綾華は間抜けな声を出した。

 

「....まったく、ナギは....」

 

そんな呆れた様子の裏で私は彼のこういう能天気なところが心地よくて好きになったのだと再認識して....

 

でもまぁ少し納得いかないのも本当だから頭で小突く位は許して欲しいな。

 




どうだったでしょ....蛍はナギのことを一番に、綾華は稲妻を一番に....そしてナギは....っとネタバレするとこだった。

まぁこれはプロット通りなのですがたまにキャラが暴れてプロットから外れた場所に走って行くので油断ならない....

感想....3件?!ふぉお!!!....取り乱しました。えー....猪狩の兄貴さん、闇月零さん。あざます!しかも闇月零さんはなんと14話と15話の時点での感想です。いや、ほんとにあざます.......この話にたどり着いているかわからないですがぜひこれからもよろしくお願いします。みなさんも良ければこの先も応援してください。ナギを。(出来れば作者も!!!)

という訳でまた次回で

稲妻編の先、見たい?

  • 見たい!
  • 最近飽きてきたからいい
  • とりあえず空救済まではやれ
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