近所のクールお姉さんポジの英雄が俺の前だけ甘えてくるんだが?   作:だけたけ

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はい、お久々でございます。遅くなって申し訳ありません。色々仕事が忙しくなり、(仕事でシンガポール行ってました。)更新できず....

さて、今までグダグダと続いていた稲妻編、遂に展開が変わります。やっとですね。今まではまぁ前座というか....スランプ気味なまま大きく物語を動かしても中途半端なものしか出来ないだろうな....と思ってグダグダしてたのですが、もうそろそろシリアスも欲しくなりまして....

というわけで本編どぞ


33話 凪、覚醒

「ッ....」

 

顔を歪めたまま、偽りの私は唇を噛んでいた。

 

「目狩り令を行えば他国からの圧には耐えきれません。鎖国している分、それは見えずらいですが文明には進化というものがあります。鎖国が私たちの進化を邪魔している。」

 

夜の屋敷の一室。障子に揺れる三つの影を、蝋燭の淡い光が浮かび上がらせている。その中で、静かに声を発したのは神里綾華だった。

 

「それは外から来た貴女方には、より顕著に映っているでしょう。」

「....」

 

その場の空気は重く、これから自分が背負うであろう責任の重さに、思わず息を詰めた。隣の蛍は、困ったように首を何度もかしげている。

 

「だからこそ、これ以上手遅れになる前に手を打つ必要があります。戦力の低下だけが問題ならばまだ良かった。しかし国内は今、蛮族の対応だけで手一杯。外に向ける力などありません。それどころか....」

 

彼女の言葉は続く。格式ばった口調で、内容も重たい。だが正直に言うと——

 

飽きた。

 

いや、これは飽きる。全然楽しくない。え、俺、間違ってないよな?

とりあえずお酒でも飲めばいいんじゃないか?飲んでたら、もう少し楽しくこの話ができる気がする。ほら、一杯だけ、ね?

 

——もちろん、そんなこと言えるはずもなかった。俺がこの感情を顔に出さずにいられたのは、ただ蛍の前で格好をつけたかったからだ。

 

思い出してほしい。俺と蛍が出会ったのは、どんな状況だった?

酒に酔ってナンパして、そのあと道でぶっ倒れていた俺を、彼女が心配してくれた——しん、ぱいして……

 

……あれ?これ、俺、ロクデナシ過ぎないか?なんで付き合えてるんだ?なんでこんなに好意を向けてくれてるんだ?!

 

「....それが甚だ疑問だな....」

「はい。その通りです。」

「は?」

 

しまった。全然話を聞いていなかった。いや、本当にすまん。でも、しょうがなくないか?政務なんて知らんし、基礎知識すらない。正直、この場にいること自体が疑問だ。神里が指示をくれて、それだけやっていればいい……そんな平凡社畜のように動こうと考えていたのに。

 

「いだいッ!」

 

蛍が俺の脇腹を抓る。ごめんなさい。悪かった自覚はある。反省は、してないけど。

 

「というかお酒欲しい〜」

「はぁ....私の膝使っていいから大人しく「うっへぇーい!」....」

 

蛍に膝枕を許されたら、飛び込まない男なんて居るか?だからそんな目で睨まないでほしい。いつもの「しょうがないなぁ」という目で頭を撫でてくれ。今のしかめっ面は好みじゃないんだ……!

 

「....満足した?」

「ええ、とても。マイレディ?」

「....」

 

あ、ダメだ。好感度下がった。けど俺は知っている。こんな顔をされても、俺のことを嫌いになんか——

 

「いい加減真面目に話聞こ?嫌いになるよ。」

「はいッ!了解しました!!」

「....」

 

……また目を伏せられた。なぜだ。

 

__________________________

 

 

会議は滞りなく終了した。もっとも、それは名ばかりの会議で、実際は現状の共有に過ぎなかった。一つだけ疑問は残ったものの、おおむね今の状況は把握できた。

 

「にしても....」

 

頭に残っているのは、やはりナギの態度だ。真面目に聞かない。聞き始めたと思えば、ちらちらとこちらを見て、にへらと笑ってくる。

 

脳裏に浮かぶのは、以前フィルタが言った言葉——

 

——死を、覚悟した時——

 

死を覚悟? あれが?

まるで神に、私が勝てないと告げられているようで、無性に腹が立った。それでも、ナギが居なくなることを想像すると怖かった。綾華の言葉を聞けば聞くほど、稲妻の世情がわかるほど、フィルタの言葉が現実味を増していく。

 

気付けば、膝を軽く叩いてナギを誘っていた。

 

彼の髪は少し硬く、毛先だけ色が違う。その境目をつい撫でると、確かに質感が違った。太ももを出した私の格好では、膝にちくちくとした感触が伝わる。それでもナギは幸せそうに顔を緩ませ、私は自然とその頭を撫でていた。膝枕と撫でる手は、もうセットになっている。

 

世の中の女性は、頭を撫でられるのを嫌う人も多いらしい。髪型が崩れるとか、子供扱いされているように感じるからだとか……

 

でも私は好きだ。髪は短く、セットに時間をかけていない。最近は彼と付き合い始めてオイルを塗るくらいはするようになったけれど、美容に特別力を入れたことはなかった。

 

そう考えて、ふと思う。

 

——私が化粧したら、彼はどう反応するのだろう——

 

喜ぶだろうか? きっとマイナスな反応はしない。けれど……少し気になる。

 

長い思考の末、ようやく「今はそんな場合じゃない」と思い直すことができた。このまま膝に彼を乗せていては、また思考が彷徨ってしまう。それは駄目だ。

 

断腸の思いで、彼に告げる。

 

「....満足した?」

 

幸せそうに目を閉じた彼の顔を見ていると、胸の小ささもプラスに思える。この顔を見られなくなるのは惜しい。本当に、名残惜しい。

 

「ええ、とても。マイレディ?」

「....」

 

ピキッ、と心の奥で音がした。

 

こんなにも悩み、勇気を出して伝えた言葉を、当の本人はふざけきった態度で返したのだ。

 

「いい加減真面目に話聞こ?嫌いになるよ。」

 

気付けば、少し尖った言葉を口にしていた。その瞬間、心の中で「ああ、やってしまった」と後悔が広がる。それでも、出てしまった言葉は戻らない。

 

恐る恐る彼の顔をうかがうと——

 

世界に絶望したようなひどい顔をした後、引き攣った口元で無理やり笑い、

 

「はいッ!了解しました!!」

 

と返した。

 

胸が痛む。そんなつもりじゃなかった。でも、これも彼にとっては薬になったのかもしれない。

 

……いや、やっぱり駄目だ。綾華の話に集中できそうにない。これなら、膝枕をしていた方がまだマシだったかもしれない。

 

後で謝ろう。そう心に決めながら、私は再び綾華に視線を向けた。

 

__________________________

 

 

「....失敗した....」

 

与えられた客間をうろうろと歩きながら、俺は腕を組んで頭を抱えていた。

 

「嫌いになるよ。」

 

——あの一言。俺のことを思っての言葉だとわかっていたはずなのに、ほんの一瞬、本気で闇落ちしかけた。心、弱すぎだろ、俺……。

 

さっきの蛍を思い出す。彼女がドレスを着れば、たぶん冷徹なお嬢様みたいに見えるだろう。……いや、まずい。この依存の仕方は絶対に良くない。物事を考えるとき、すべて蛍主体で考えてしまっている。

 

「蛍、離れかぁ....」

 

無理な気しかしない。そう思ったとき——

 

ガタンッ、と背後で大きな音が響いた。

 

「ぇ....」

 

振り向くと、風呂道具を床に落としたまま、泣きそうな顔の蛍が立っていた。

 

「違うからな?!ほら!ちょっと変な方向で蛍を愛そうとしちゃってたから!!!」

 

焦りで言葉がぐちゃぐちゃになる。自覚はある。でも、この失敗は想像できないだろう……

 

「へあっ?!////」

 

泣きそうな顔から、一瞬で真っ赤に変わる蛍。百面相とまではいかないが、表情の変化が激しすぎて、さらに頭が混乱する。

 

「い、いや、だって蛍だって嫌だろ?俺に変な接し方されるの....」

「せ、接しっ?!///ぁ....ぇ....っと....///」

 

蛍にしては珍しい、か細い声。

 

「で、でもそういうことは旅の後でって....」

「感情は別だろ....変化を全部我慢なんて出来ない。それは蛍もわかってるだろ?」

「ぅ....あ....////」

 

……うん。だいたいの状況は把握した。

 

「蛍、少し部屋で話そうか。」

「部屋っ?!///」

 

やばい、これ楽しい。かつてないほどのからかい、かつてないほどの赤面、かつてないほどの動揺、そして——かつてないほどの高揚感。

 

……でも、ここ人んちなんだよな!!

 

約束もある。旅が終わるまで、せめて稲妻のことが片付くまでは……

 

いや、無理じゃね? 全然無理じゃね?

 

目の前にこんな完璧に可愛い彼女を置いて、何もしないとか俺偉すぎない?

 

天使と悪魔が脳内で大戦争を繰り広げる。爆弾が降り注ぐ中、若干悪魔が優勢……

 

そのときだった。不意に蛍が動きを止める。

 

「....その、な、ナギ....ごめん....」

「へ?」

 

頭が真っ白になる。え、何に対して? 心当たりがない。

 

「その、嫌い、じゃない....から。大好きだから....その....////」

「....蛍は襲われたい?それとも優しくされたい?」

 

——何聞いちゃってんの俺?!

 

「今のは忘れてくれ....」

「や、約束だから....そういうのはできないけど....他のことならなんでも....」

「喜んで」

 

蛍着せ替えショー、ここに開催決定した。

 

__________________________

 

 

「....これ、恥ずかしいんだけど」

「良いでは無いか、良いでは無いか!」

 

ナギは自分の服には興味がないくせに、私のことになると着せ替え人形のように扱う。両手に軽く二桁を超える服を抱えて、じりじりと迫ってくるその目は、完全に獲物を捉えた捕食者のそれだった。

 

しかも、見たこともない服ばかりを持って。

 

「いやぁ、機会があるかと思って作ってもらっててよかったわ〜。店員にはクズを見る目で見られたけど。」

 

ホクホク顔で服を選ぶナギを横目に、私は必死に裾を下に引っ張っていた。せめて見えないように。

 

「ん?オーバーサイズだからそんなに引っ張んなくてもいいんだぞ?萌え袖彼シャツノーパン」

「ノーパンじゃない!!」

「え"....」

 

二人きりで、なんでもやるって言ったけど——これは想定外だ。まだ、からかう目的なら許せた。でも、これは完全に本気。目の輝きが違う。

 

恥ずかしい、恥ずかしい、恥ずかしい!!!

 

なんでこんな薄い生地で、下に何も着ないとか思いつくのか。本当に意味がわからない。

 

「決めた!!次これ!」

 

ナギが差し出したのは、一見何の変哲もないセーターだった。……腕は何故かないけど。

 

「わ、わか....」

 

解放されたい一心で返事をしかけた私の口は、彼がセーターを裏返すのを見て止まった。

 

——ない。あるべき布が、ない。

 

「なんでないの?!?!」

「あ、下着はお好みでね。つけると後ろから見えるし、つけないならそれはそれで....」

「〜〜ッ!!!!」

 

もう、ナギは本当にもう!!!

 

「....それともヘタレてる?」

「ッ?!....き、着るの?着ないの?」

 

ああ、なるほど。彼は今、自分の心と戦っているのだ。こういう服を着せることで、ぎりぎりのところで理性を保とうとしている。

 

私は、からかいのスイッチを入れた。

 

「....わかった。着てくる。」

 

ハンガーを受け取り、奥の襖に引っ込む。どう着るのかまるでわからない服に悪戦苦闘しつつ、最後に一つだけ悩んだのは——ブラを外すかどうか。

 

悩みに悩んで、そして——

 

襖を開け、ナギの前に戻る。

 

「....ナギ、私胸大きく無いけど....こういう服似合うのかな?」

「ふへ?!に、似合うと思うよ?!」

 

互いに真っ赤な顔で、からかい合う。今なら——聞ける気がした。

 

「ねぇナギ?私、化粧とかした方がいい?」

「え?普通に嫌なんだけど。」

 

さっきまでの恥じらいが吹き飛ぶほどの怒りが込み上げ、私は彼の顔を真正面からぶった。

 

 

__________________________

 

 

 

「入りなさい。」

 

"厳"という文字がふさわしい鋭い声が部屋に響く。その主はその場から一切動かず、目だけを前に向けた。

 

「あら、相変わらず無愛想ねぇ?そんなに威厳振りまいていたら相手が見つからないわよ?」

「....生憎ですが、相手を欲しいと思ったこともありません。」

「....なるほどねぇ?まぁいいわ。さぁ交渉しましょう?将軍様?」

 

そういうと無遠慮に部屋へ踏み込んでくる一人の女性。妙齢と言うべきか、色気のある見た目に怒気をチラつかせながらトゲのある言葉を突き付けた。

 

「稲妻を渡しなさい?」

「願い事なら少しは遠慮するのが礼儀ですよ。」

「あら、あんな(・・・)事をした貴方に遠慮?冗談が過ぎるのではない?」

「一方的に要求するなど、交渉ではありません。」

 

部屋にいる他の家臣たちが一斉に動揺を走らせた。

 

緊張に次ぐ緊張。とてもではないが一般のもの達が耐えれるものではなかった。

 

「貴方をファデュイに引き渡してもいいのですよ?」

「できるものならやってみたら?その場合、貴方も不利益を被って共倒れになるのは分かりきっているのだけれど....?」

 

両者1歩も譲らない。

 

「....では斬るとしましょう。」

「あらあら、そんな物騒なものを出して、もとからそのつもりだったとでもいいたげね?」

「この偽りの、それも作られた世界で何を切捨てても変わりはありません。」

「作られた世界....やっぱり分からないわね。あなたの行動原理が....」

 

そんな言葉の応酬。それが途切れた。

 

キィィン

 

澄んだ音が聞こえ、一瞬にしていきなり現れたかのように来訪者の首筋に刃先が添えられていた。

 

「....しまって欲しいのだけれど?」

「....ッ....」

 

初めて、雷電将軍の顔が歪む。苦痛に耐えるような、生理現象の無いはずのその体が心無しか少し震えていた。

 

人殺しの恐怖?違う。

 

相手への恐怖?違う。

 

ではなにか。それはその場の誰にも分からない。ただ見ているだけのカカシにしか過ぎない家臣(ロクデナシ)には知る手段はない。ただ、その相手に対して将軍が恐怖していると勘違いして絶望の表情を浮かべるのみ。

 

絶対の支配者が、崇高なる支配者が初めて見せるその隙に恐怖するのみだ。

 

「また来るわ。その時こそ、いい返事が聞けることを楽しみにしてるわね?」

「....返答は変わりません。」

 

それを聞いた来訪者は何も言わずに踵を返して出ていった。

 

「....ッ....凪....ごめんなさい.....」

 

そんな声がかすかに響いた。

 

 

__________________________

 

「うっひょーう!!」

「ちょっ?!と、飛びすぎ飛びすぎッ!!!!」

 

俺は今、ジャンプしています。腕に蛍を抱えて。

 

昨日、蛍のまじ殴りを食らった頭はまだジンジン痛むし、なんなら普通に怖かったけど原因が分からないものはしょうがないよね?ウンウン。

 

「それにしても蛍はこういう所が可愛いよなぁ〜、普段戦う時はこの高さなんてなんでもないだろ。」

「自分で動くのとは違うの!」

 

うん。知ってた。

 

「ふんぬっ!!!!」

「ちょっ?!きゃあッ!」

 

こうなったのには理由がある。はい。回想シーンどぞ。

 

 

「おい見ろよ!これ食えるぞ?!」

「....ナギ、何してるの?」

 

そんな俺らは今稲妻城に向かっています。道草を食いながら。....文字通りな!!!

 

「うぇああええ!いおう!!!」

「....この人お酒飲むと知能指数下がるの忘れてた....」

 

失敬な。俺だって馬鹿じゃないんだ。この行動がおかしいことくらいわかってる。でもな。人は時にノリに生きないと行けないこともある!そう!この俺みたいにな!!!

 

「いやぁ、最近真面目なこと多かっただろ?もう疲れたんだよ〜慰めてくれよ〜蛍ちゃぁん〜」

「....」

「いでっ」

 

勢いで抱きしめに行けば躱された。

 

「外でそういうことやらない。」

「手遅れだって〜....じゃあ手を繋ぐくらいいいだろ?あ、それともお姫様抱っことか?!」

「やらない.....やら、ない」

 

 

とまぁこんなことがありまして。まぁ経緯なんてどうでも良くて....正直今はそれ以上に優先すべき事柄がある。

 

「....着地地点、ミスった」

「ぇ.....海ぃぃ?!?!ばかぁぁあああ!!!!」

 

はい。馬鹿です。調子乗って力込めて踏みしめた俺の足、痛い。多分捻った。

 

いや、前方注意はしてたんだよ?うん。してた。ほら、その....主に前にいる蛍にだけど....

 

ま、まぁだから見落としたってしょうがないよね。崖を見逃したって....

 

「うわぁぁあああ!!!!」

『風と共に去れッ!!!』

 

蛍が風の元素爆発を発生させ、前から強烈な風が吹き、俺たちの体が崖の方へ戻っていく。

 

「はぁっ、はぁっ....ナギってほんとにバカだよね....」

「....面目ない....一応水面を凍らせて何とか....ほんとごめんなさい。口ごたえしてすいませんでした!!!怖いッ!その顔怖いって?!」

「はぁ....それで、どうしたの?」

「はい?」

 

いや、ほんとになんのことか分からなかった。悩み事なんて母親に会う憂鬱しかないし、それ以外にはもう蛍可愛いしか頭にない。いや、マジで。

 

「なんでそんなに今日は落ち着きないの?」

「酷くね?!」

「最近は出会った頃より落ち着いてたのに、何かあった?」

 

そんな言葉と共に心配するような顔を向ける蛍。

 

長いまつ毛をふるわせて、目尻を落としてこちらの頬を両手で挟んでくる。

 

いや、ほんとになんでもないんだけど....そういう気分だっただけだし....というか今までの真面目な方が俺じゃない迄ある....ある....

 

相変わらず逃がさないように優しく俺の顔を固定する蛍を見て、おれは....

 

悪戯心が刺激された。

 

「蛍が....悪いんじゃん....」

「ぇ....」

 

か細い声が聞こえた。

 

目線をあげると当人は目を丸くして困惑しているようだった。

 

「蛍さ、言いたいこと我慢してたりしてない?」

 

カマかけ。それは古来から伝わる伝家の宝刀。俺の懐刀。数多ある敵を葬ってきた血濡れの刃....でも無いけど。

 

....ん?なんでそんなに顔赤くしてるの?というかなんでそんな恥ずかしくて死にそうって位に涙浮かべて俯いちゃってるの?

 

え?え?もしかしてカマかけ成功したの?いい所ほんとに心当たりないどうしようって困る蛍見たかっただけなのに....

 

まずい、まずい....本当は適当でなんにも察してないことがバレたら終わる。まじ殴り(本日二回目)が来る。絶対嫌だッ!

 

「ねぇ、蛍....俺、彼氏だぞ。言ってくれよ。そんなことくらい。」

「そんなことくらいじゃないんだょ....」

 

ーーどんなことだよッ!!!そんな重大なことなのかよ?!あああッ....何この可愛い生き物。ふざけんなよ?!頭沸騰するわ俺の頭ッ!!助けてええッ!くっそ。抱きしめてやらあああッ!じゃないとやってられねぇよ!なんか崖の先端で泣き顔の女の子抱き締めるのエモくね?!なんかいいよね?!ね?!

 

「....でも、そういうこと....ナギの口から聞きたい....」

「お、おう....そうか....」

 

そうか(イケボ)じゃねぇんだよッ!声震えてんだよ、通常蛍だったらバレてんぞ?!照れ照れ蛍じゃなかったら終わってるってこれッ!!!

 

「........あの、さ....現状....維持は....さ....」

 

困惑ッ!たった2文字で困惑ですッ!頭痛くなってきた。なんも考えたくない。ただただ腕の中にいる蛍を感じてたい....

 

もうこれ、いいんじゃね?結婚申し込んでもOKだろ、これ絶対。

 

ね?多分そう言う系統のことだろ。

 

「....いや、ここでのことが終わったら言いたいことあるんだ....終わったら....」

「ふふっ....言いたい癖に....」

 

はい、正解ッ!結婚、そこまで行かなくても婚約!はい正解ッ!!

 

ハアハア....すんでの所で立ち止まってよかったわ....ほんとに....雰囲気に流されるのは不味い。いや、ほんとに。どうせならカッコつけたいじゃん。わかる?男心だよ、これ。単純バカな俺でも一応プライドがあるんだ。

 

「楽しそうですね」

「「ッ?!」」

 

後ろから声がした。

 

 

俺の体感時間が引き伸ばされる。そんな頭の中で思考が一瞬で巡る。

 

頭から足へと冷水を浴びせられたかのように冷えていく。

 

聞き覚えがあった。

 

面影があった。

 

夕暮れの湿った空気がさっきとは違い、鬱陶しい。影が揺れ、それを見ながら俺の体は震えて動かない。

 

体が震える。喉が乾く。返答しようとしても声が空気に溶ける。胸の奥で、幼い頃に泣き叫んだ感覚がひどく生々しく蘇る。

 

あの日の撫でてくれた手、床に座り込んで、小さな手で空気を掴もうとした感触が、指先にまだ残っている。

 

見てくれなかった、俺を捨てた....母親(クソ)

 

蛍が剣を構えているのが分かる。それを見て....一言。

 

「……久しぶり....です。母上....」

 

 

__________________________

 

 

「……久しぶり....です。将軍...」

 

かすれた声が、隣にいるナギの口から出た。ゆっくり振り向く。その瞳の奥に、どこか怯えたような色が浮かんでいた。

 

見たことの無い目だった。怒られたとき、悲しそうに遠くを見るとき、普段、いつも瞳の奥に何かが隠れていたあの眼が....

 

この目の前の女が母親?

 

「大きくなりましたね。」

 

ナギは何かを言おうとするが言葉が出ない様子、かくいう私もそうだ。ナギは母に会わせた方がいいとは思っていた。

 

今も、その意見は変わらない。でも、この2人の間には想定していたよりも大きな問題がありそうだ。

 

空気が重い。

 

咄嗟に剣を構えたが相手は淡々と言葉を紡ぐのみで敵意を見せて来る気配もない。

 

「久しぶりに会えたのに何も無いのですか?」

「ッ!!!」

 

一気に血が頭に登る。叫びたかった。

 

お前が捨てたのだろう?!と

 

お前が捨てたあと、どれだけ辛い道を歩んだかわかるか?!と。

 

だがそんな言葉をあげる前に隣から発せられた怒声にかき消される。

 

「てめぇが言うなよ....?感情も知らねぇ愚図(人形)の分際で....大体母上はどうした?人形だけ寄こして本人は隠れてるのか?巫山戯んなよッ?!」

「....」

 

人形、それが示すものは何か、....分からない。分からないが、ただ1つわかったのは....

 

こいつはナギの母親じゃない。

 

それだけだった。....はずなのに....

 

女の体が少し振るえ、顔を強ばらせて....手がわずかに動き始めた。その指先が空気を掻くたびに、か細い声で「ぁ....」と辛そうに漏らす。

 

様子が変わった。あの無機質な物から母親然とした態度に、

 

その辛そうな、どうしたらいいか分からないとでも言うような歪んだ顔。

 

「なんてな?まぁ実際昔のことだし。そんなに恨んではねぇよ。ただ、俺の母親はお前じゃねぇ。だから今更人形の中からでてきたって無駄だし、お前に興味もない。今、お前と話してるのも蛍が1回話して欲しいって言うからだし。」

「ッ....」

 

甘かった。亀裂は思っていたよりもずっと大きくて深かった。修復不可能なくらいに距離が開いていた。心の奥底では母親に甘えたいのでは?とか考えてた過去の私を殴りたい。

 

そんなことを考えてる人があんな冷たい目をするはずが無い。ほんとに....もう........

 

「わか、りました。....」

「....行こう。蛍。次会うときは殺す時だ。」

「ッ....」

「ナギ、待って。」

 

事実確認だけはしないと行けない。まだ....綺麗事かもしれないけど、それでも希望は欲しい。

 

「....雷電将軍....いや、お義母さま。」

「ッ....あなたは?」

「ナギの恋人....蛍といいます。」

「そう....ですか....」

 

唇を湿らせて、慎重に言葉を選びながら口を開く。

 

「....貴方は、ナギを....凪を本当に捨てたのですか?」

 

違和感。こんな辛そうな顔をする人が捨てるなどあるのだろうか?そんな少しの違和感。少しの条件の違いで簡単に崩れ去るその希望は幸運にも.....

 

「....はい?」

 

正解だった。




どうでしたでしょうか?遂に雷電将軍正式登場。

ナギの荒れた姿、過去編だけでなく、表に出てきてしまった....いいね。そんなナギも好きです。万年厨二病な俺からしたらね。


猪狩の兄貴さん、感想あざます!

もう少しで稲妻編終わる(と思う)のでもう少しだけお付き合い下さい!

あとアンケートの結果、稲妻のあとはアフターストーリーやらスメールやら書こうかなと思います。プロットは組んでいない。どうなるか分からないです。

まぁ続くとは思います。

稲妻編の先、見たい?

  • 見たい!
  • 最近飽きてきたからいい
  • とりあえず空救済まではやれ
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