近所のクールお姉さんポジの英雄が俺の前だけ甘えてくるんだが? 作:だけたけ
それではブランクに苦しみながら書いたこの34話、どうぞ
目の前の1人の
さっきの様子はどうしたのだろう?感情を殺していた?それとも別の理由が?
そんな疑問は私の
「影母さん...なんで最初から出てこなかった....そこまで俺と会いたくなかったのか?」
「....捨てた....そうですね....そう、なるのだと思います。」
そんな悲痛とも取れる声に将軍は反応せず、私の問いに答えた。肯定の言葉で。
「そう....」
「....蛍、行こう。」
もうダメだろう。相手が肯定してしまった。その時点で先程の本心であろう驚きの言葉はなかったことになってしまった。私の最優先は仲を取り持つことであって、決してナギを傷つける事を看過している訳では無い。これ以上はナギへの毒でしかない。
ならばとる行動はひとつのみ。
この場を離れる。そしてなるべく遠くへ。また楽しい旅に戻る事。優先すべきこと。
そう考え、私が手を引くためにナギの手を握った時、ポツリと後ろからまた声が聞こえた。
「....捨てるつもりは、なかったのに....」
咄嗟に後ろを振り向く。
だが、もうそこには何の影もなかった。
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「....」
どうにもならなかった。会うのは気まずくてもやっぱり期待していたのだろうか?
自身の中で無理だったらそれまで。それに対しては何も思わない。そう折り合いをつけたと思っていたのに気付けば怒鳴って、激情のままに叫んでいた。
「ごめん、なさい.....私が会ったらきっとなんて言わなかったら....」
「蛍は悪くない。踏み込んだことを悔やんでるならそれも必要ない。将来結婚するんだから蛍は身内だ。権利はある。」
そう。権利はあるのだ。実際、俺自身もわかっていない関係が蛍に分かるはずもない。こんなに後悔している彼女を責める奴なんていないだろう。例え、その行動がエゴによるものだったとしても。
「俺はさ、多分、物語の主人公みたいにエゴで行動するやつが嫌いだったんだよ。人間性がズレてるって。捻くれたやつだった。」
何を言いたいのか自分でも分からない。この話の結末がどこに着地するのかさえも。でも止めることは出来なかった。話すことを辞めるなんてできない。
今、俺の足の上に座って、縮こまっている彼女を離したくない。
「.....」
「でもさ、でも....蛍は好きなんだよ。大好きなんだよ....初めて本気で好きになった人なんだよ。....」
そう。本当に大切と呼べるものは少ない。母には捨てられ、1人目の姉には先立たれ、2人目の姉は生きてるけどずっと俺の近くには居てくれない。母代わりの奴は何処にいるか、どうなってるか分からない。
俺には、俺にはッ....
蛍しか居ないんだ。
「....蛍は俺の事、捨てないでくれるよな?」
「捨てない。絶対に。どれだけ悪に染っても、見捨てない。」
俺は、甘えたい
今は甘えていたい。
腕から胴体、足に至るまで震えるこの情けない体を必死に抑えながらそう思った。
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「捨てたい....」
そんな言葉がリビングに響いた。
「女を捨てたい....」
「それ、俺が困るんだが?」
読んでいた本を閉じて横目で蛍を見る。
グッタリとしていて手足はソファーから投げ出されていた。女性としてはアウトだが蛍だから良い。むしろこれがいい!
「ナギを励ましたい....ナギを甘やかしてグズグズにしたい....」
「おいコラ。俺が暴走するからやめろ。」
「....でもそれをできないこの精神状態....体調....あぁお腹が重たいぃ....」
いつにも増してズボラな言葉遣いだ。本当に余裕が無いのだろう。言葉を選ぶ余裕もないように見える。
「....あぁ、そういう事....」
"お腹が重たい"この言葉で察することが出来たのは前世の知識あっての事だろう。性知識の薄さが際立つこのテイワットではスメールを除いて察せる人は少ないと見た。
しかし困った。サポートしてあげたいが現代の対処しか知らないので何も動けない。
「何すればいい?」
「聞かないでよ。」
....なるほど。これが女の子の日か。普段気遣いができる彼女なので知らなかったが好きな人でもイラッとするものはイラッとするらしい。まぁ今のところ可愛いが勝っているのでむしろプラスなのだが。
「....ごめん。....確か相手がいる場合は性行為で緩和されるとかなんとか....」
なわけないだろ?!って叫びたかった。
「ふふっ....焦ってる....可愛いね」
「ッッ〜〜〜!!!」
「ちょっと元気出たかも....」
笑ってるのを見るのは好きだけど辛そうな時にまで見たいとは思わないんだよッ....
お腹暖めるといいんだっけか?
「....1人になりたいか?」
「むしろ居て....」
頭に浮かんだ対策とも言えない対応策を口に出すとキュッと裾を掴まれ、弱々しく引っ張ってくる。
....は?可愛いかよ....
「じゃあお菓子でも作ろうか?」
「要らない。手握ってて。」
はい。むしろ望むところです。
「じゃあ....抱きしめようか?」
「....ん....」
許可ですか?許可ですね?!行きますけど大丈夫ですよね?今更いや、やっぱりなしで!とかないよね?!
と、考えつつ俺の体はしなやかで柔らかい蛍の体を抱きしめていた。
わずかに熱を持っているその身体を全身で感じながら俺は....
「蛍って....柔らかいな....」
「....」
そう言った瞬間、背中を弱々しく叩かれる。
「.....頭撫でようか?」
「....」
無言。小さく頭を縦に振るそれを見て俺は何も言わずにサラサラの髪を撫でる。
女性はこういう日はマイナスな事しか考えられないと言うが、数あるカップルのみなさんはこういうのに四苦八苦すると言う。
「....こんなに重い筈は無いんだけど....」
「まぁそんな時もある....と思うぞ。うん。」
「....」
「....なんか不満とかないか?言うなら今だと思うけど。」
背中の服を握る手が少し強くなる。絞り出すように蛍は口を開いた。
「ナギの女性の知り合いが多い。みんな少なからず良い印象を持ってるのに嫉妬する....私のなのに....私のナギなのに....」
「おっふ....」
不満言われて反省するどころか可愛いしか感想出てこないんだが....
「後、最近、ちょっと抑えられない時が....」
「んふふっ、かわいすぎるかわいすぎ....へ?」
「稲妻出るまでって約束したけど最近めちゃくちゃにして欲しいって思ったりして....////」
「めちゃく....はぁ?!」
「ナギはどういうのが好きなのか?とか....あんまり痛いのは嫌だけどそれ以外なら.....」
「ストップ!ストップ!そ、それは多分素になったら恥ずかしくて悶えるやつだからやめよ?!ね?!ね?!」
いきなりぶっちゃけられた。そういう方面の話なんてしたこと無かったからそんなこと考えてるなんて知らなかった。
「あとは....ふとどっかに行っちゃうかもとか....」
ナチュラル可愛いやめよう?略してナチュカワやめよ?これの可愛いところってさ、普段はそんな雰囲気ないのに弱ってる時にふと言ってくるこのギャップと言いますか....世の中の男全員好きだと思います。
あ、でもこれを狙ってやってくるやつは嫌いです。でもそれがわざとだって言うのに気づかない人は多いです。男って馬鹿だね。
「蛍に愛想つかされない限りないな。」
「じゃあ一生一緒だね。」
ナチュラル可愛いから昇格してガチ可愛いに進化した。1歩前進した蛍は今、女神になりました。お疲れ様でした。もう限界です。勘弁してください。
2日後。
「忘れて」
「え?いや....」
「忘れて」
忘れてしか言わない蛍サン爆誕しました。
例え愛しの人に言われたってそれだけは聞けないなぁ。俺は忠告したもん。その後延々と放送コードひっかかること言いまくったの蛍だし。なんかキャラ崩壊してたし。
「忘れないと心の準備が出来てないまま実家に帰すよ。」
エグいてぇ....
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先程の漫才はどこへやら。真っ赤に腫れた片頬を手で押さえながら俺は今日も稲妻城へと歩く。
「....」
その足取りは勇者の如く、恐怖を知らない俺は地面を踏みしめて一言、口を開く。
「気をつけろ。ここからは命がいくつあっても足りない。そんな魔境だ。」
「ナギって前から思ってたけど犬みたいだよね。」
「へ?」
俺のどこが犬だ?いつの間にか見えてきた稲妻城に乗り込む前に1回それについて話そうか。
「見直してもらおうとカッコつけてるところとか。」
「またまたぁ、そんなことないでざんすよ?」
「....まぁ、そういうことでいいや。」
そうそう。そういうことなんですよ。何がそうなのか知らないけど。
「....やっぱり良くない。」
「へ?」
肩に強い衝撃を感じた。
「ねぇ、嫌だ?」
気づけば押し倒され、そんな事を聞かれていた。その顔は朱に染まり、目を少し伏せながらもこちらを見ている。
「....な、何が?」
「....押し付けがましいことして、物語に居るようないい所で無駄な正義感を振りかざして結果ピンチになったり、そんな人にはならないって思ってたのに....」
「....」
ヒロインという性質上、それはしょうがないと思うのだが、作風に寄るとしか言えない。こと『原神』に対して言うなら、それは悪だと思う。
「ナギは優しい言葉ばかり、肯定だけで何も言ってくれないし....ねぇ、私ってそんな完璧じゃないよ。」
「そんなこたぁわかってるよ。」
男としては面倒臭いことでもそれが好きな相手だとそれもいいと思えてしまう。誰しもナーバスになる事はある。マイナスな考え。それが表に出ない方が問題だ。....と思う。
「なら、本心を教えてよ。」
「............迷惑だ。」
「ッ........」
そう。迷惑なんだ。
家族の問題だから。そんな逃げをするつもりはない。俺は母親と仲直りしようとも思ってない。戻るつもりもない。稲妻は好きだけど相変わらず親は嫌いで、捨てたのは母だ。
要らないと判断したのは俺じゃなくて母だ。
俺を拾って、勝手に捨てて。
でも....蛍が居るから話は変わった。蛍は親に挨拶したいと本気で思っている。だから
「数日だけ、ほんの数日だけ....別々で行動しよう。」
「ほ、蛍?」
ゆらりと俺の上から体を離してつぶやく蛍に俺は困惑の声を漏らす。
何が困惑だ。わかっていただろ。だから俺は口に出さないで心の内に秘めていたのだ。
「俺は....二度と蛍から離れたくない....」
「....前にナギから居なくなった癖に....いや、でも....こんな心地いいところにずっと居たらまたきっと甘えちゃうから....大丈夫。ちゃんと作戦までに戻ってくるよ。」
空気感と、感情が追いつかず、俺の口は変な音を出すばかり。
ああ、終わった。と。
今までまっさらだった絆にヒビが入った。
手を伸ばして、そして過去、自分がやった事の後ろめたさで手を引っ込めたり。
そんなことをしているうちにその愛しい人の背中は見えなくなっていた。
....
........
............
という夢を見た。
いやぁ、だってさ?だてに散々俺と蛍の間で仲違いしそうになったり、色々あった訳じゃないよ?そんなことは既に話し合い済みであります。はい。
要約すると、
「ナギ、ごめん。」
「ん、いいよ。それはそれとして母親とは仲直りしたくないけど、蛍は仲良くしといたら?」
はい。これです。
そもそも蛍の兄を探す上で雷電将軍野協力は必要だし、悪くは無いと思う。
何故こんな茶番を設けたのか。
現実逃避です。少しでもこの状況において冷静になろうとした結果です。感情がプラスに振り切りすぎてマイナスで中和出来たならなと思いました。はい。
だが結果はどうだ?
「すぅ....すぅ....」
「ッ....」
俺の肩に頭を乗せて気持ちよさそうに寝ている蛍がここにいる....たまに頬を擦り付けては「うみゅ....」とか言ってるし。普段の冷静な蛍とは違う何処か気の抜けた姿に俺はもうメロメロです。
「な、仲が良いのですね。」
「そりゃもう....と言いたいけどぶっちゃけ内心ラッキー!!って叫んでる。」
「....恋人ならこういうことに限らずもっと先のことも日常茶判事なのでは?」
「それがなぁ....まだ旅の途中だし、そういうことをやるのは稲妻が終わってからって約束しててさ....」
目の前に座る神里綾華。その彼女が少し驚いた様子でそう問いを飛ばしてきた。
だいたい俺の心臓が耐えられるかが分からないのでそういうことをやるのはもっと先になるだろうとは思うけど、禁止されているのと許されるのとでは心持ちが変わってくる。具体的にいえばもっと自分から進んで抱きしめたりとか、頭撫でたり撫でられたり....うへっ、うへへっ....
「えっと....」
「おっと危ないな....」
苦笑いで返される。まぁバカップルぶりは俺も自覚していることだし、仕方ないことではある!そう!これはしょうがないのだ。不可抗力というやつだな!
ところで、いきなり話は変わるがこの馬車は今どこに向かっているかと言うと、稲妻城である。
なんか分からないが以前から計画していたことが俺たちが来たことで前倒しにできたらしく、決行は悟られていない今のうちにという事だった。
問題は俺らに
ぶっちゃけると俺はどっちでもいい。怒りがないかといえばあるが、殺したい程かといえば今はそんなことはないのだ。そのお陰で蛍にも会えたし、こんな幸せな生活などできるはずもなかっただろう。
だが話し合いの時、俺は蛍に言った。「蛍は仲良くしといたら?」と言った時、うん。と言った。それは仲良くする意思があるということ。殺してしまえばそれは叶わない。
「....俺は蛍、至上主義だ。」
「....?はい。」
「蛍がお前らを悪だと思ったら俺はそれだけでそちらに寝返るからな。」
「ッ....肝に銘じます。」
ああ、と言って目を閉じる。
胸に小さい痛みが走った。斜め下を見ると少し頬を赤くした蛍の姿がある。手は痛みが走ったあたりをつまんでいる。いや、起きてたんかい。
「....」
俺はやり返しに肩に手を回し、肩を押して蛍の体を優しくこちらに寄せてから肩を少し堪能するかのようにむにむにしてみる。
「これが原作の主人公....ねぇ....」
運営、見る目ねぇなぁ....と内心、ひとりごちる。
明らかにヒロイン属性の高い蛍をプレイアブルキャラとして採用するのは本当にどういう事なのか。
まぁそれはいい。とりあえず....
「着いたら起こすぞ?」
「ん....いい。大丈夫。」
そう言ってまだ赤みの残った顔を上げ、俺の肩から離れる彼女。少し名残惜しく思いながら頭を振って心を入れ替えた。
その時だった。
コンコンッという音が扉から聞こえる。
「はい、どうぞ。」
神里がそう声を出すとドアが開く。
「紹介します。彼女は....凪様?」
俺は....その入ってきた人物を見て....固まる。
「サフィーラ....?」
そこには妙齢の女性が立っていたのだ。
はい。どうでしょうか。思ったより書いたと思ったのに短いやら、筆が遅いやらでだいぶ時間かかりました。またここから技量を元に戻せればなと思っておりますw
猪狩の兄貴さん、ボンボルド擬きさん、ご感想あざます!また復活するので良かったら続けてみていただけると嬉しいです!
それでは!
稲妻編の先、見たい?
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見たい!
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最近飽きてきたからいい
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とりあえず空救済まではやれ