近所のクールお姉さんポジの英雄が俺の前だけ甘えてくるんだが? 作:だけたけ
尚、この物語は本編とは基本的に関係しません。完全なるifの世界としてご覧下さい。
外から差し込む朝の光が顔にかかり目が覚めた。気持ちいい風が頬を撫で去っていく。
「んんぅ.......」
少し呻いてみる。
足は動く。手も動く。いつも通りで問題は無い。喉は少しかわいているが、体調不良のところは今のところなかった。
少し体に力を入れてみる。なにか強い抵抗を感じた。それに体を起こすことを阻止されている様なそんな感覚。だが不快感はない。寧ろ幸せしか感じられないのだ。
なぜならその正体を俺は知っているから。
「....呑気な顔してんなぁ.......」
俺の隣、布団からぴょこっと顔を出している金髪の少女。英雄と呼ばれ、外ではそれ相応の態度をとっているが実の所普通の少女。その娘の頭を恐れ多くも不躾に優しく撫でる。
「....な、ぎ.......」
「お、起きたか?」
名前を呼ばれたので小さい声で返事をした。しかし期待した返答は返ってこない。寝ぼけているのかまだ睡眠の中にいるのか。
俺の首に回された華奢な腕を少し擦りながら起こさないように体制を変えた。仰向けから横向きへと。正面に広がる小柄で線が細い彼女を見てどうしようもない幸福感を感じた。
「うぉっ....ははっ、こいつめ」
「あぅっ....」
俺に抱きつく力を強くした彼女....いや、もう他人行儀な言い方はやめよう。その蛍の額にコツンと小さく指を当てた。
「起きてたな?」
「....うん。暖かかった。」
「そらどうも。体温は蛍の方が高いはずだけどなぁ....布団のおか....痛い痛い。ハイハイ。」
「空気壊すのナギの悪いところだよ?」
ここで誤解をといておこう。ベットと言ってもお互い服は着ているし何もやましいことはして居ない。俺が蛍のベットに侵入してるだけだ。書き間違いじゃないぞ?蛍が、じゃなく俺がだ。
「毎回その空気を作るきっかけを作ってる俺に感謝しろ。」
「ハイハイ。えらい」
「適当だな....まぁいいか。いつから起きてた?」
そう言うと少しの間、眉をひそめて何かを考える。それを静かに待つ。外からの子鳥のさえずりのみが聞こえる幸せな時間。そこから唐突に鈴の音が聞こえた。
「ナギが期待し始めた時から?」
驚いて窓から蛍の顔へと視線を戻して見るとその顔は俺をからかう時のものへと変わっていた。
「ったく、空気を壊すなって言ったの誰だよ。しかもそれなら蛍が寝れてないってことになるぞ?」
「えへへ....じゃあ寝不足だからもうすこ....し........この、まま.......」
そう言ってすぅすぅと寝息を立てて寝てしまった。なんか釈然としないが、可愛いので許す。
この様子だと今日は朝ごはん食べれないな。昼も怪しいがさすがに2食抜くとなると午後の予定に差し障る。仕方ないと考えて声を上げた。
「パイ公、居るか?」
「んー?どうしたんだー?げっ....」
姿を現してこちらを見た瞬間、喉が詰まったような声を出したその小動物に少しため息を吐いて頭に手を伸ばす。
「そんな反応しなくてもいいじゃねぇか。もう俺はお前のこと疑ってねぇんだし。」
「剣を向けてきた相手を信じられるないゾ!」
「騒ぐなって。蛍が起きる。」
俺は視線を蛍に戻す。
言葉を聞いたパイモンは慌てて両手で口を覆った。
「パイモン、俺と蛍の昼メシ買ってきてくれないか?」
「....」
「パイモン?」
声が帰って来ない。気になってまたそちらに視線を戻すと....
顔を真っ赤にしてこちらを見てきていた。もちろん照れている訳では無い。証拠に表情が険しいというかもう無理と言いたげで苦しそうだ。
「ぷはぁっ!....」
「なにやってんだよ....」
「ふふっ.......「あははっ.......」」
起こさないように小さく笑う。こんなのもパイモンを疑って喧嘩ばかりしていたあの頃では考えられない進歩だろう。
「わかったぞ。オイラも....」
「ああ、何か買ってきてもなにか食ってきてもいい。」
「言ったからな!じゃぁ行ってくるぞ」
こんな日常がいつまでも続いて欲しいと思いながらも彼女の兄を連れ戻したいという思いもあり、矛盾があるのだが....
「ゆっくり、2つともやってけばいいよな。」
そんなことを思いながら再び眠りについた。
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「ーーーってなことがあってな?」
「また惚気か?最近ちゃんと金払うと思ったら今度は厄介客とか冗談じゃねぇよ。」
んな事言わなくてもいいじゃねぇか。と言いたくなる口を気合いで閉じて仮初の余裕を表に出す。そう、俺は紳士クールに生まれ変わったのだ。そう。どれだけ感情を動かされても"待て"を出来る紳士になった。そう、これこそ.......
「ステイクール....」
「おう。それは喜ばしいこった。」
「だろう?何せ俺だからな。自身のことはいちばんわかっているんだよ。バーテンダーくん」
「おうおう。わかったから宣言通り二度とこの店に来るなよ?」
「ファッ?!」
待て待て待て。何かおかしい.......二度と来ないとか俺宣言してないけど?!どういうこっちゃ、
「ステイクールって言っちゃぁ今生の別れの時の挨拶ってこの前お前が言ってたじゃねぇか。」
「....あっ.......」
....今から取り消せないかな?この状況ごと俺の記憶だけそのままで時を戻したいんだけど。
「....確か全部凍らせて分子の動きを止めたら時も止まるってどこかで.......」
「おい、何言ってるか分からねぇけどやめろよ?!」
やんないって。さすがにどんなに馬鹿でアホで惚気バカの俺でもそんなこと....自分で言ってて悲しくなってきた。
「今日天気良かったなぁ....」
「はぁ、わかった。無かったことにしてやるよ。」
「へへっ、悪いな。」
片手を胸の高さにあげて謝る。それを見たバーテンダー、いや、チャールズはなにか感心したような顔でこちらを見てくる。
「なんだよ....気持ち悪いな。」
「いや....お前、変わったよな。飲んだくれてたのに最近はベロベロになるまで飲まないし....」
「ああ、バレると怖いし.......」
そういった瞬間チリンチリンと扉が開く音が鳴った。普段気にしない俺もバレないように飲んでいると話した手前気になって何気なしに後ろに視線を送った。
そこに立っていたのは....
「っびっくりした、蛍かよ。」
「....俺もいるぜ?」
はい。ガイア。終わりました。
テーブルに一つだけ栓が開いている酒瓶。言い訳は不可能。俺が飲んでいるのはもうバレている。でも、足掻けば何とかなるかもしれない。よし。そうだ。希望に賭けよう!
「いや、今聞きこみ調査をだな.......」
「ナギ、それは無理あると思う。」
だよなぁ....じゃぁ、次の手だ。
「お前!人の彼女とデートとか許され「任務先で偶然会ってな。旅人が多分ここにいると教えてくれた。でも俺だけ来ても逃げるだろう?」....」
「蛍?!?!」
裏切られた。
そう思い視線を向けると苦笑して仕方ないなぁという表情をしながら言葉をかけられた。
「サボるナギが悪いと思うよ?」
「おっしゃる通りですッ!!!」
そうなった俺は次の手を打つ。俺はデキる男なのだ。策ぐらい何通りも思い浮かんでいる。その大半が無駄だったがこの最終奥義は誰も打ち破れない!行くぞ!
「申し訳ありませんでしたああああああああぁぁぁ!!!!!!」
俺は即座に土下座をした。
いや、だってこれ以外ないじゃん。誤魔化そうとしたけど結局後でバレるもん。直す気はないけど反省はしてるんです。本当に。だからさ、もういいじゃん.......許して?ほんとに.......やる度に土下座するからさ。
「お前...ヒルチャールの群れがどんな被害を出すか知って....」
「あ、あの!!!」
俺が叱られ始める瞬間またドアが開いた。そこにははぁはぁと息を切らしながら立っている女性が居る。
「へ、へんたぃ///....騎士さんっていらっしゃいますか!!」
「ん?俺か?」
こちらに視線が向けられる。その瞬間こちらに走って近づいて来る。
「おお?おおおっ?!」
あまりの速度で俺も少し身構えてしまうが幸い俺の建前で失速して止まった。そして紡がれる言葉は.......
「あ、あの!私の父をヒルチャールから救っていただいたみたいで....ありがとうございました!」
「ファッ?!」
出ました2度目の"ファッ"。もうレパートリー乏しいのバレるから次は"ドッ"とかも言ってみようかなぁ....
「....えっと、横からすまない。お嬢さん。そのヒルチャールって何処に居んだ?」
「えっと、確か星落ちの谷って言ってました。」
ガイアの顔から困惑の色が出てきた。
「お前に頼んだのは星落ちの谷のヒルチャール退治だったよな?」
「お、おう....」
「なんでやってるのにやってないって事にしようとしたんだ?もしかして頭が.......」
「失礼すぎねぇ?!?!」
いきなり頭大丈夫か?とか許されないからな?!バカだけど一応正常に思考できるわ!このボケ!あ、ごめんボケは言いすぎた。このおボケさん!!!
「ただ....」
「....」
おい、固唾を飲むな。尚更言いずらいだろ。
「............やったらやったでもっと難しい仕事を任されるから.......でもやらなかったら困るやつ居るだろ?」
「こいつ、バカなのか真面目なのかはっきりして欲しいぜ.....」
「それがナギのいい所だよ?」
このバカップルめと一言貰う。くだんの女性は困惑しながらこちらを見てくる。
「あ〜....いや、全然いいんだよ。これが仕事だし。今の話は完全にこっちのことだから気にしないでな。」
「あ、は、はい。」
ペコリとお辞儀をしてそのまま外に退散する女性。今度顔合わせたら今日のこと、謝んなきゃなぁ。と少し思いつつ目線を戻した。
「仕事終わってるなら今日はもう予定ないの?」
「ああ。無いな。」
なんでガイアが答えるんだよ。
「任務の完了報告はちゃんとするように。あとは熱々のお二人さんだけで。じゃあな。」
「やばい、クール.......惚れsいっだぁ!」
脇腹を抓られた。はい。わかっています。これは俺が悪い。
「....」
「わーってる。俺が悪かった。」
普通の人ならば重いと言うだろう。しかしこちらとしてはいつ死ぬかも分からない世界を生きている。普通の恋人同士よりも求めるものが多くなるのは仕方が無い。
「あー、ご馳走様。ナギ、お前の迎え来たんだから早くそこ避けろ。」
「ひでぇなぁ。蛍。1杯飲まない?中身余ってるし。」
「お酒弱いの知ってるでしょ。ほら行くよ。」
小さく頭を下げて俺の背中を両手で押してくる。背中からなにか暖かいものが広がる感覚がしてしみじみ思った。
俺はもう蛍がいないとダメだな。と。
扉を開けて外に出る。
「任務先で会ったっての、あれ、嘘だろ?」
「あー、わかっちゃった?」
驚いた顔をした後、なんともないようにはにかんでみせる蛍。もうその顔を揉みほぐしてやわらかさを堪能したい欲望に駆られるが外なのでぐっと堪えた。
「わかるも何も」
「服汚れてないし、今日は顔に力が入ってないからな。」
「なるほど.......?」
そう言ってペタペタと顔を触る蛍。それを見て苦笑する。
「ほら、戦った後、蛍ってキリッとしてるからさ。今はいつも通りのほほんと....な?」
蛍が隣まで早歩きで近寄ってきた。横顔に夕日が反射して神秘とも言えるような雰囲気を醸し出している。
「そんな顔してない。」
「んー?してるって。そんな蛍も好きなんだから。間違いない。」
「....それならそれで........」
少しは納得したらしい。いや、この場合妥協か。
少し複雑そうな顔をしながら俺の手を握ってくる。自然な動きだった。まぁ長い間やっている事だから当たり前といえば当たり前だが。
「こんなのでもケンカにならないんだもんなぁ」
「なる前に話し合えるからね。それもこれもナギが感情的にならないからだよ。ありがとね?」
....なんでそういうこと言うかなぁ....なんか最終回みたいじゃん。たまにふとそういうこと言うからこっちは大変なんだよ。
「ふふっ、顔真っ赤だね?」
「わざとかよッ!」
こいつ、マジでコイツ!もー限界!
尊い清楚かクールなのか小悪魔なのかはっきりしてくれ!全部使い分けてシフトしながら来るのほんとに俺の心臓が口から出てくるぞ?!いいか?話すとか多少の接触はもう慣れた!心臓はバクバクするけどとり繕えるようになってんのにそういうのは良くないと思います!!!また緊張でどもるぞ?!バイブレーションするぞ?!
「そりゃまたなんで....?」
純粋な疑問ゆえの質問であった訳だが.......
「だって、お店の中に入ろうか入らないか迷ってずっと立ち尽くしてたなんて恥ずかしくて言えないもん」
蛍の言葉で路上にもかかわらずうずくまってしまった。顔をほんのりと染めて上目遣いをしてくる蛍の頭に手を伸ばしてわしゃわしゃ撫でて呻き声を発するしかなかった。尊さへの絶叫。
これが俺の彼女、俺の大切な人なんだぞ!と吹聴したい。
「わ、私だって.....ナギのこと大好きだから緊張く....ら、い.......」
顔を真っ赤にして言葉が止まった。今になって何を言ったか気付いたようだ。とはいえ、俺も顔が真っ赤なので人のことを言えないのはそうなんだけども。
蛍から自分の気持ちを話すのは珍しい。自身のことを語らないのだ。そんなクールな性格。ただ....ただだよ。
2人きりの時、たまに不意打ちしてくんの勘弁してくれ.....
だけどそう言うところも可愛くて大好きであるので何も言えない。
「ま、まぁ.......ごめん、何言っていいか分からないわ....ありがとう」
「....」
無言でポカポカと叩いて、俺の後ろに移動してきた。
スっと背中に重量がかかった。まぁそれも些細なものではあるのだが。
「ハイハイ。お姫がおんぶをご所望とあらば....」
依存、では無い。これはもっと純粋なものだ。恋とか愛とか。そんなありきたりな名前を付けたくないほどに尊いと感じるもので、これは俺の中だけのものだと確信を持って言える。
この時間は1秒も無駄にしたくはない。そのためにも彼女が俺を想ってくれるように俺も彼女を守れるようにもっと頑張ろう。少しは真面目にやろう。そう思わせてくれる。
ああ、やばい、感情が止まらない。
「夜ご飯は何がいい?」
「甘いものだな。」
「辛いのは苦手だもんね。」
初めての手作り。それもサンドイッチという男のロマンをかき混ぜたようなものが渡されたあの日。体を温めるために少し辛く作ったあの食べ物が割とトラウマなのだ。
「苦手だからなぁ。」
「私もそれをジンから聞いてたから控えめで作ったつもりだったんだけど....」
その時やっと気付いた。味覚音痴では無いが辛さにはめっぽう弱いと。苦手程度だと思っていたものが実は大の苦手だったのだと。この人生20年、やっとわかった新事実であった。
「少しからかおうと思って作りはしたけど倒れるとは思ってなかった。ごめんね?」
「んや?自分のことも分かっていないまま付き合うことにならなくて良かったわ。」
「....」
無言でこちらの肩に頭を預けて来る蛍。それが彼女の返事だった。
"好きが溢れて止まらない"そんなフレーズは使い古されてもう大したインパクトは無いと思っていたが実際経験すると納得だ。
「それ以上に適切な表現なんてないな....」
「ん?」
「いや?ほら行くぞ。」
たまに俺がからかって、蛍はそれに本気では無い文句を言う。そんな日常。
ほらね?尊い以外の言葉なんて思い浮かばないでしょ?少なくとも俺はそうだ。
俺の全てを受け入れてくれた人。俺に全てを受け入れさせてくれた人。
逃げずに、向き合って。話し合っていれば彼女とずっとやって行ける自信がある。ほんとに蛍は比べる相手がいないほどにいい女だ。
「ほら、早く早く。」
ね?可愛かろ?
小首を傾げながらこちらに笑いかける彼女を横目に見ながらそう思ったのであった。
はい。ここまでお読み頂きありがとうございます。
ここで言い訳1つ。感想にて『蛍は料理美味かったはずなのになんで辛くてナギは倒れているんだ?』というご指摘を受けました。はい。その通りですね。この小説でも蛍は料理は美味しいです。上手いです。しかしですね、ナギが馬鹿舌なんです。プロット的にはもう少し後の本編でこのネタバラシをする予定だったのですが割と皆さんちゃんと見てくださっている笑笑
ぶっちゃけこの感想が来た時、おっ?!っとなりましたね。同時にすっごい嬉しかったです。そんなに真剣に私の小説を見てくださっているんだというね笑笑。完成度はそこそこにと思っていてもやはり自身の狙い通りに行くと嬉しいものです。
これからもどしどしご感想お待ちしております!ではエンドロールです。
あわは様、感想ありがとうございます!
はい....えっと.......終わりです笑笑
あ、ダメ?い、いや一旦説明させてくださいッ笑
というのもですね、私が思っているよりこの小説が伸びに伸びているというか...作者本人も困惑している次第でございます。お気に入り登録が5話投稿時点で60前後だったのが今なんと150件という....手が震えておりま....ぎゃあああ!また1人増えたぁぁあああ!ありがたすぎるッ!
というわけで元々長いあとがきをこれ以上長くする訳にも行かないのでものすごく伸びた時は件数で感謝させていただきます!もちろんお気に入り登録してくださった人の名前はちゃんと見ておりまする。全員答えられるかと言われれば....
と、とにかく、皆さんありがとうございました!次回からは本編にまた戻りますのでよろしくです!では!!!
どうする?
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ストーリー重視
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日常回多め