あれこれやってる間に7年経過とは、時の流れとは早いものです。
時系列はアプリ版3の何処か。ただし園長がパークに居る事を想定した書いたものなので、現行のストーリーとは繋がっていません。
私は覚えている。貴方の手も、声も、温もりも、そしてその優しい心を。
どれだけの時が流れようとも、私は決して忘れたりしない。
仲春。パーク中に植えられた桜の木が七分咲き、即ち「見頃」を迎える時期である。
その日、薄紅色の花びらが舞い散るスタッフ用居住区の街道を、純白の尾を揺らしながら進む姿が一つ。ジャパリパークの守護けものの一角、豊穣を司るオイナリサマ。彼女は黄金色の瞳をゆったりと動かし、目的の人影を目指して歩んでいた。
探し人は程なくして見つかった。数えて七番目の桜の木陰に設置されたベンチに腰掛け、寝息を立てているヒトの青年。垂れた前髪はオイナリサマのそれとよく似た白銀色。数奇な
クオンは完全に熟睡しているようで、すぐ隣にオイナリサマが座っても身じろぎ一つせず静かに寝息を立てている。無理もない。パークの運営計画、アニマルガールや各種動植物についての報告、そしてセルリアン対策会議。ジャパリパークの新しい責任者としての日々の激務に疲労が溜まっているのだろう。
オイナリサマは持ってきた重箱の包みをそっと脇に置き、銀の前髪を掻き分けて額を撫でる。
「……本当に大きくなりましたね」
しみじみと呟く。女王の間で顔を合わせた時はとても再会を喜ぶどころではなかったから、こうして間近で顔を見るのは本当に久しぶりだ。
クオンと初めて出会った日も、確か今日のような桜の花びらが舞う日だった。森の中の神社を秘密の遊び場としていた当時七歳の彼は、
それはとても静穏で、とても幸せな時間だった。
だから突然会えなくなってしまった時は生きた心地がしなかった。ジャパリパークに流れ着いて、
「貴方とパークを守る為ならば、私はどんな事だって……」
その呟きが聞こえたわけではないだろうが、クオンが僅かに唸りながら身じろぎする。手を引っ込めたオイナリサマの姿を6、7回ほど瞬きして捉える。
「オイナリサマ」
「おはようございます。……起こしてしまいましたか?」
クオンは問題ないと首を振る。
「一人でここに来るのは珍しい」
「ギンギツネが探検隊の皆さんのお手伝いに行ってから、ちょっぴり寂しくなってしまいまして。……そういえば珍しくサーバルさんも居ないんですね」
「探検隊の手伝いに行っている。近々ダイオウセルの駆除作戦が始まるから」
「ダイオウ……ヤタガラスさんが仰っていた巨大セルリアンでしたね」
「ああ」
探検隊だけじゃない。自分達もこれからきっと忙しくなる。そうクオンは続けた。
ここ数か月、管理センターや動物研究所が
だがダイオウとの戦いが本格的に始まるとなると、こうして彼とは滅多に会えなくなってしまうであろう事は目に見えている。ダイオウセルの名を聞いてからその結論に至るまで僅かコンマ7秒。オイナリサマの行動は速かった。何も言わずクオンに身体を預けそのまま膝に頭を乗せる。流石にその脚は子供の頃より随分と硬くなっているが、それでもズボン越しに伝わる温もりはかつてと変わりなかった。
僅かに驚いたように息を詰まらせるのが頭上から聞こえ、やがてふぅというため息に変わった。
「ギンギツネが見たら何と言うか」
「良いのですよ、見られても。私は私のしたい事をしているだけで、恥じらう事など何もないのですから。……それとも、もしかして貴方のほうが恥ずかしいのでしょうか」
答えに詰まったクオンの沈黙に小さく笑う。
変わりゆくものもあれば、変わらないものもある。恐らく彼は依然として自分の事を思い出していない。口数も随分と減った。しかし自分の髪を撫でる手つきも、そして自分を含むけもの達に向けられる眼差しも、何れもかつてあの神社で
そう納得しながら白いきつねは目を伏せ、囁きにも等しい声量で呟く。
「私は今幸せですよ」
3章カコ編の描写からして、オイナリサマ=幼少期の園長が助けた「小さなきつねさん」でほぼ確定ではないかなあとタコのスパイは思っています。
またネクソン版のプロフィールで「パークを守るためなら私はどんな事だって…」と思いつめた文体だったのは、子ぎつね時代に園長と離れ離れになったのがトラウマになっていたからなのでは…という妄想。
……もしこれで違ったら恥ずかしいな!
何にせよ、今後ともよろしくお願いいたします!